鹿児島ユナイテッドFC新スタジアム問題とは (カゴシマユナイテッドエフシーシンスタジアムモンダイとは) [単語記事]

鹿児島ユナイテッドFC新スタジアム問題とは、Jリーグに所属するサッカークラブ「鹿児島ユナイテッドFC」が、J1 クラブライセンスの基準を満たすための新スタジアム建設を巡る一連の課題や議論の総称である。

特に、鹿児島市の中心市街地に位置する「ドルフィンポート跡地」への建設を望む声と、行政側の慎重な姿勢との間で長年にわたり議論が平行線をたどり、計画が具体化しない状況が続いている。

概要

鹿児島ユナイテッドFCの現在のホームスタジアム「白波スタジアム（鹿児島県立鴨池陸上競技場）」は、J1 ライセンス基準で定められた観客席を覆う屋根の設置率などを満たしていない。そのため、クラブは将来的なスタジアムの改善を約束することを前提に、例外的にライセンスの交付を受けている状況にある。

この問題を解決すべく、サポーターや経済界からは、鹿児島市のウォーターフロントに位置し、桜島を望む絶好のロケーションである「ドルフィンポート跡地」へのサッカー専用スタジアム建設を求める声が強く上がった。スタジアムを核としたまちづくりによる、大きな経済効果や交流人口の増加が期待されたためである。

しかし、ドルフィンポート跡地は県有地であり、鹿児島県（塩田康一知事）は、スタジアム単体での開発ではなく、一体的なリゾート開発など、より幅広い視点での活用を重視。多額の公費投入が見込まれるスタジアム建設には慎重な姿勢を崩さず、最終的にこの場所でのスタジアム建設は困難であるとの見解を示した。

これにより、計画は振り出しに戻り、現在は既存の白波スタジアムがある鴨池地区の補助競技場などを活用する案が再浮上しているが、具体的な建設計画や財源確保の目処は立っておらず、問題は長期化の様相を呈している。

経緯まとめ

時期	主な動き・やり取り	関係性の変化・ポイント
～2018年	【問題の表面化】クラブがJ2に昇格するなど成長を続ける中で、現在の白波スタジアムがJ1基準を満たしていないことが、将来的な昇格への大きな障壁として明確になる。	サポーターや経済界を中心に、J1昇格の夢を実現するための新スタジアムを求める機運が高まり始める。
2019年～	【ドルフィンポート案の浮上】鹿児島市の中心市街地にある県有地「ドルフィンポート跡地」が、アクセスや景観に優れた最高の立地として、新スタジアムの建設候補地に浮上。サポーターや経済界が中心となり、建設を求める署名活動などが活発化する。	「まちなかスタジアム」という理想の実現に向け、大きな期待感が生まれる。鹿児島市長も前向きな姿勢を示す。
2020年～2022年	【県と市・クラブの温度差】土地を所有する鹿児島県（塩田知事）は、ドルフィンポート跡地の活用について「スタジアムありきではない」と慎重な姿勢を表明。多額の公費負担や、県全体の発展への寄与という観点から、スタジアム単独での開発に難色を示す。	建設を推進したいクラブ・鹿児島市側と、慎重な県側との間で議論が平行線をたどる。計画は具体的な進展を見せず、膠着状態に陥る。
2023年	【ドルフィンポート案の事実上の断念】県は、ドルフィンポート跡地を含む本港区エリアの再開発について、民間事業者から広く事業提案を募集する方針を決定。これにより、サッカー専用スタジアムを前提とした開発は事実上困難となる。	長年議論の中心だったドルフィンポート案が頓挫したことで、サポーターやクラブに大きな失望が広がる。スタジアム問題は振り出しに戻る。
現在 (2024年～)	【鴨池地区への回帰】計画が白紙に戻ったことで、代替地として既存の白波スタジアムがある鴨池地区の「補助競技場」や「駐車場」などを活用する案が再検討され始める。	議論の舞台は鴨池地区に移ったが、具体的な計画や財源、建設スケジュールなどは全くの白紙状態。解決までの道のりは依然として不透明なままである。

補足

県と市のビジョンの違い
ドルフィンポート跡地について、クラブや鹿児島市が「サッカー専用スタジアム」を求めたのに対し、土地を所有する鹿児島県は県の「新総合体育館（アリーナ）」を建設する構想を推進していた。この根本的なビジョンの違いが、計画が頓挫した最大の要因である。
クラブの費用負担
これまでの議論は、行政主導の「公設」を前提に進められてきた。クラブは新スタジアムの建設を強く「要望」する立場であり、その経営規模から、巨額の建設費を主体的に負担することは困難な状況にある。
改修案とJリーグの見解
ドルフィンポート案が頓挫した後、既存の白波スタジアムを改修する案が浮上した。しかし、Jリーグ側は「ライセンスは新スタジアム建設を前提に交付してきた」として、この改修案を認めないという厳しい見解を示した。これにより、議論は再び「新設」を前提としたものに戻っている。