1990 FIFAワールドカップ単語

センキュウヒャクキュウジュウフィファワールドカップ

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1990 FIFAワールドカップとは、イタリアで開催されたFIFAワールドカップである。

概要

1990 FIFAワールドカップ
期間 1990年6月8日7月8日
場所 イタリアイタリア
出場 24ヶ
公式 エトルスコ・ユニコアディダス
マスコット チャオ

イタリアで二度の開催となった。招致の過程では8かが立補したが、イタリアソビエト連邦以外のすべてのが辞退したため、2かによる決選投票となった。この際ソビエト連邦は5票、イタリアは11票となり、イタリアでの開催が決定した。

24のうち開催イタリアと前回優勝アルゼンチンには自動出場権が与えられたため、残りの22が予選で争われた。各大陸の出場欧州が13南米アジア、北中・カリブアフリカが各2ずつとなっている。

この大会では、コスタリカアイルランドアラブ首長国連邦FIFAワールドカップ初出場となっている。一方、前回大会で3位に入った強フランス欧州予選で敗退しており、他にもデンマークポーランドモロッコといった前回活躍したが予選敗退となる波乱が起きている。さらに、メキシコチリの2かはそれぞれFIFAから出場停止処分を受けたため失格となっている。

グループリーグ

※各グループ上位2チームと各組3位になったチームのうち上位4チームが決勝トーナメントに進出。

グループA グループB グループC グループD グループE グループF

イタリア

アルゼンチン

ブラジル

西ドイツ

ベルギー

イングランド

アメリカ

カメルーン

コスタリカ

UAE

韓国

エジプト

チェコスロバキア

ルーマニア

スウェーデン

コロンビア

ウルグアイ

アイルランド

オーストリア

ソ連

スコットランド

ユーゴスラビア

スペイン

オランダ

グループA


勝点 得失
点差


1
イタリア

2-0

1-0

1-0
6 +4 4 0
2
チェコスロバキア

0-2

1-0

5-1
4 +3 6 3
3
オーストリア

0-1

0-1

2-1
2 -1 2 3
4
アメリカ

0-1

1-5

1-2
1 -6 2 8

開催イタリア大本命という組み分けになったグループは、そのイタリアがゼンガ、バレージを中心とした伝統の堅守で3試合連続失点を達成。本来エースのヴィアリが不調に陥り、不安のがあがった攻撃だったが、代役となったスキラッチと若いバッジョが台頭。3連勝でグループを首位で突破。

2位争いでは、スパルタプラハプレーする選手を中心に好タレントったチェコスロバキアイタリア以外の2チームを相手にきっちりと勝利。最初の2試合でグループ行方は決まってしまった。

ほぼ内でプレーする選手で固めたオーストリアだったが、2強とべてタレント不足だったことは否めず、頼みの綱だったエースポルスターが沈黙してしまい敗退。久々の出場となったアメリカは初戦でチェコスロバキアに大敗したことが尾を引き、3戦全敗という惨敗に終わった。

グループB


勝点 得失
点差


1
カメルーン

2-1

1-0

0-4
4 -2 3 5
2
ルーマニア

1-2

1-1

2-0
3 +1 4 3
3
アルゼンチン

0-1

1-1

2-0
3 +1 3 2
4
ソ連

4-0

0-2

0-2
2 -6 4 4

英雄マラドーナを擁する前回優勝アルゼンチン大本命として頭一つ抜け、2年前のEURO88で準優勝ソ連と前回ベスト16のルーマニアが対抗と見られたグループだったが、役となったのは大会前は全くのノーマークだったカメルーンだった。

大会オープニングマッチアルゼンチンと戦ったカメルーンは、1人退場者を出しながらもオマン=ビイクの信じられない打点のヘディンシュートアルゼンチンを破るというワールドカップ歴史に残る大番狂わせを起こしてしまう。勢いづいたカメルーンは続くルーマニア戦でも38歳のロジェ・ミラが2ゴールを決める活躍を見せ、なんと2連勝でグループ首位を確定させてしまう。

開幕戦を落とし窮地に立たされたアルゼンチンは、マラドーナが相手からの底したマークと左足首の負傷ので本来のきを発揮できず、苦戦を強いられていた。しかも、ソ連戦で正GKのブンピードが脛を骨折する重傷を負い、戦線離脱。それでも、ソ連戦でまたもマラドーナの「の手」が今度は味方のゴールを守るために発動し、辛くも3位で決勝トーナメントに生き残る。

ルーマニアは初戦のソ連戦に勝利したものの、アルゼンチン同様にカメルーンみ込まれてしまう。それでも、アルゼンチンとの第3戦を引き分けに持ち込み、総得点の差でアルゼンチンを上回り、2位で2大会連続の決勝トーナメント進出を果たす。

名将ロバノフスキーに率いられたソ連だったが、最初の2試合に連敗したことで崖っぷちに立たされる。第3戦ではすでに首位通過を決めたことでやる気がなかったカメルーン相手に大勝するが、アルゼンチンルーマニア引き分けたことで最下位となり、敗退。1年後ソ連が崩壊したため、ソビエト連邦としてはこれが最後の出場となった。

グループC


勝点 得失
点差


1
ブラジル

1-0

1-0

2-1
6 +3 4 1
2
コスタリカ

0-1

1-0

2-1
4 +1 3 2
3
スコットランド

0-1

0-1

2-1
2 -1 2 3
4
スウェーデン

1-2

1-2

1-2
0 -3 3 6

ブラジルが絶対本命と見られたグループは、予想通りブラジルが抜け出る結果となる。とはいえ、今回3バックを採用したブラジルは、黄金の中盤が全員代表からいなくなったこともあり、麗な個人技よりも守備を重視した堅実なスタイルとなっていた。そのため、民からの支持は低く、カレッカとミューレルの2トップの活躍で3連勝したものの、ブラジル民を満足させるような戦いぶりではなかった。

グループBカメルーンと同じく大きなサプライズを起こしたのがグループ最弱と見られていたコスタリカだった。前回メキシコベスト8進出に導いたボラミルティビッチが率いたコスタリカは、初戦のスコットランド戦をGKコネホの活躍もあって1-0で勝利する番狂わせを演じる。続くブラジル戦は善戦しながらも惜しくも敗れたが、第3戦のスウェーデン戦に勝利し、初出場ながら決勝トーナメントへ進出する。この頃からミルティビッチの采配は「ボラマジック」と呼ばれるようになった。

コスタリカに泣かされたのがスコットランドスウェーデンヨーロッパ勢。スコットランドは、勝ちを計算していたはずの初戦で負けたことが大きくき、可性は残していたものの第3戦の相手がブラジルだったのが運の尽きだった。スウェーデンに至っては3試合連続で1-2で負けるという記録を作り出し、20歳のブローリンの台頭くらいしか好材料が見つからない大会となった。

グループD


勝点 得失
点差


1
西ドイツ

4-1

1-1

5-1
5 +7 10 3
2
ユーゴスラビア

1-4

1-0

4-1
4 +1 6 5
3
コロンビア

1-1

0-1

2-0
3 +1 3 2
4
UAE

1-5

1-4

0-2
0 -9 2 11

2大会連続準優勝西ドイツだったが、「東欧ブラジル」と称されたタレント軍団ユーゴスラビア、そして近年実を付けてきたコロンビアと本命には違いないが、曲者いの油断のならないグループに組み込まれることとなった。そして実際、戦前の予想通り3強1弱のグループとなった。

初戦から西ドイツユーゴという好カードが実現したが、バックラインの編成をいじったオシム監督の奇策が裏に出てユーゴの守備が崩壊。大量4ゴールを奪う好発進を遂げた西ドイツは格下のUAEを相手にも大量5ゴールを奪い、2連勝でくも勝ち抜けを決める。グループリーグで10得点という驚異的な攻撃を見せ、クリンスマンフェラーの2トップはそれぞれが3ゴールずつを決めるという活躍ぶりだった。

初戦で大敗を喫したユーゴだったが、オシム監督が見事にチームを立て直し、直接のライバルと見られたコロンビア戦で勝利したことでチームは自身を取り戻す。第3戦のUAE戦ではストライカーパンチェフが2ゴールを決めるなど圧勝。2位で決勝トーナメントへ進出する。コロンビアは1勝1敗で後がくなった第3戦の西ドイツ戦を終了間際のリンコンのゴール引き分けに持ち込み、滑り込みで決勝トーナメントに進出。鬼才と呼ばれたバルデラマ、自を大きく飛び出して攻撃参加するGKイギータを中心とした異色の個性集団はひときわを引いた。

初出場のUAEは、相手が悪すぎたのもあったが、11失点を喫しての3連敗と実に差があり過ぎたことは否めなかった。もっともこの大会でUAEを率いていたパレイラ監督は4年後大きな仕事をやってのける。

グループE


勝点 得失
点差


1
スペイン

2-1

0-0

3-1
5 +3 5 2
2
ベルギー

1-2

3-1

2-0
4 +3 6 3
3
ウルグアイ

0-0

1-3

1-0
3 -1 2 3
4
韓国

1-3

1-2

0-1
0 -4 2 6

これといった本命がいないグループは、スペインベルギーウルグアイが横一線で争う予想通りの展開となる。初戦のウルグアイ戦を引き分けスペインは、続く韓国戦ではエースのミチェルがハットトリックの活躍を見せ、勝。首位争いとなったベルギー戦もミチェルがゴールを決め、首位でグループを通過。シーフォを擁するベルギースペイン戦は落としたものの、ウルグアイ韓国を相手にきっちりと勝利したことで2大会連続で決勝トーナメントに進出。

ウルグアイは、ライバルと見られたスペインベルギーを相手に1分1敗と勝利できず、第3戦の韓国戦で勝利することが必須となる。しかし、意地を見せる韓国相手になかなかゴールを奪えず、期待されたフランチェスコリが厳しいマークに苦しんでいた。それでも試合終了間際にフォンセカが値千の決勝ゴールを決め、3位に滑り込み、決勝トーナメントへと進むこととなった。

韓国は他の3チームに勝ち点を供給だけの存在となってしまい、スペインから1点を挙げたことだけが思い出となった。UAEと同じく3連敗で敗退となり、アジア勢にとっては世界との大きなを痛感させられる大会となった。

グループF


勝点 得失
点差


1
イングランド

1-1

0-0

1-0
4 +1 2 1
2
アイルランド

1-1

1-1

0-0
3 0 2 2
3
オランダ

0-0

1-1

1-1
3 0 2 2
4
エジプト

0-1

0-0

1-1
2 -1 1 2

イングランドオランダという強が同居し、戦前の予想では2強2弱と見られていたが、いざ蓋を開けてみると6試合中5試合が引き分けで、生まれたゴール数がわずか7と他のグループべて非常に少ない、泥試合の続いたグループとなった。

2年前の欧州選手権に優勝し、ファンバステン、フリットライカルトACミラントリオを擁するオランダ優勝補に挙げるも多かった。だが、本大会に入るとファンバステンとフリットの両エースって不調に陥り、エジプトイングランドと2試合続けてドローフーリガン対策のためにサルディニアで3試合を戦うこととなったイングランドだったが、このグループ一決着が付いた第2戦のエジプト戦に勝利したことで首位でグループを突破する。

共に2引き分けという状況で第3戦で突したオランダアイルランドの試合は、ようやく調子を取り戻し始めたフリットゴールオランダが先制するが、その後はアイルランドの手堅い守備の前に追加点を奪えず。逆にアイルランドが後半に入り、クインゴールで同点に追いつく。結局試合は1-1の引き分けに終わり、共に3引き分けという結果に終わった両チームはくじ引きで順位が決まり、2位アイルランド、3位オランダという順位で3チームが決勝トーナメントに進出。

また、12大会ぶり2度の出場となったエジプトは、結局グループリーグで敗れたものの、ヨーロッパの3チームに放り込まれた中で大健闘といっていい戦いぶりとなった。特に初戦でオランダ相手に引き分けに持ち込んだことが大混戦を招き、このグループをかき回した存在となった。

決勝トーナメント

ラウンド16

カメルーン歴史的なアフリカ勢初のベスト8進出

今大会話題を振りまいている両チームによる試合は互いに0-0のまま譲らず、延長戦に突入する。すると、延長後半1分いつものように大きく前に出てビルドアップに参加するGKイギータからミラボールを掻っ攫い、人のゴールシュートを流し込み、カメルーンが先制する。その3分後にもミラゴールを決め、カメルーンリードを広げる。

終盤コロンビアも1点を返すが、試合はそのまま終了。延長戦の末にコロンビアを下したカメルーンアフリカ勢初のベスト8進出という歴史的快挙を成し遂げる。

進撃のコスタリカチェコ巨人が粉砕する

初出場ながらベスト16進出という快挙を成し遂げたコスタリカだったが、その前に立ちはだかったのは「巨人」スクラヴィーだった。前半11分圧倒的な高さを活かしたヘディンシュートゴールネットを揺らすと、この試合でハットトリックの活躍を見せる。

コスタリカにとってはグループリーグ突破の立役者であったGKコネホを負傷で欠いたことで大きくいた。

長らく低迷の続いていたチェコスロバキアにとっては1962年大会以来28年ぶりのベスト8進出となった。

南米2強対決は、マラドーナの一きが苦難のアルゼンチンを救う。

ラウンド16で実現した因縁の両国ライバル対決は、グループリーグで低調だったアルゼンチンに対し、下評ではブラジル優位と見られていた。試合もほぼブラジルボールを握り、攻勢をかける展開となっていた。

今大会に入って本来のきを放てずにいたマラドーナはこの試合でもブラジル底したマークに苦しみ、攻撃の形が作れずにいた。

しかし、ブラジルの一の隙を見逃さなかったマラドーナは、後半36分絶妙なスルーパスを通す。このチャンスカニーヒアが決め、終始劣勢だったアルゼンチン勝利をもたらす。マラドーナにとっては8年前のリベンジを果たすこととなった。

再三のチャンスを決めきれず、期敗退となったブラジルは、ラザロ監督の守備的な采配と中盤のドゥンガに批判が集中した。

欧州王者オランダ、最後まで本来の強さを取り戻せず、ライバル西ドイツの前に散る

対照的な歩みで決勝トーナメントまで進んできた両者の直接対決くも実現。会場はサンシーロ西ドイツにはインテルの選手が3人、オランダにはミランの選手が3人ということで、さながらミラノ・ダービーの様相を呈していた。

前半21分小競り合いを起こした西ドイツフェラーとオランダライカルトが共に退場となる。このハプニングで打撃を受けたのはチーム心臓を失ったオランダのほうだった。ここから試合の流れは西ドイツへ傾く。

後半6分クリンスマンの技ありのボレーシュート西ドイツが先制すれば、37分には左45度の位置からブレーメが強シュートを決める。その後オランダクーマンのPKで1点を返すが、反撃はこれだけだった。

オランダは1勝もできないまま敗退。世界最高のFWファンバステンの調子が最後まで上がらず、まさかのノーゴールに終わったことが大きな誤算となった。

初出場アイルランド、未勝利のままベスト8進出。

3引き分けのままくじ引きで2位になった初出場のアイルランド東欧マラドーナ異名を持つ名手ハジを擁するルーマニア欧州勢同士の対戦。

試合は両チームともに決め手を欠き、アイルランドの術中にルーマニアが嵌った形のまま0-0で決着が付かず、試合はPK戦へ。5人全員が成功させたアイルランドに対し、ルーマニアは5人ティモフテが失敗。

この結果、1勝もしないままにアイルランドが初出場ながらベスト8へ駒を進める。

開催イタリア、4試合連続クリーンシートで順調にベスト8へ進む。

ワールドカップ優勝経験のある両チームの対戦は、GL3試合を失点で勝ち上がってきたイタリアペースで進んでいく。両チームゴールのないまま迎えた後半20分スキラッチのゴールイタリアが先制。スキラッチはストライカー不在というイタリアの問題を解決する"救世主"となっていた。さらにイタリアは、後半40分にセレーナがダメ押しの追加点を決め、ベスト8進出。

ダークホースと見られたウルグアイだが、フランチェスコリ、ソサといったタレントが最後まで仕事をさせてもらえなかった。

妖精ピクシーが躍動したユーゴスラビアスペインを破り、ベスト8進出。

ユーゴスラビアは、GLで鳴りを潜めていたエースストイコビッチ本領発揮。抜群のテクニックゲームメイクタレント軍団リードする。後半32分に山なりのボール芸術的トラップでDFを外したストイコビッチゴールユーゴが先制。

守勢に回る時間が長くなっていたスペインだったが、後半37分にフリオサリナスが同点ゴールを決め、延長戦へ持ち込む。

延長前半2分今度もストイコビッチ芸術的なFKを決める。ストイコビッチの極上のきで延長戦の末にスペインを下したユーゴスラビアベスト8進出。

延長の末にイングランドベスト8へ。

GLを離で戦ったいたイングランドが勝ち上がってイタリア本土へと上陸。これに伴い、フーリガン対策がより厳重に警された状況となる。

イングランドは、ゲームメーカーガスコインを軸に攻撃を進めるが、ベルギーり、延長戦に入っても0-0が続いていた。

だが、試合終了間際の延長後半14分ガスコインのFKに反応したプラットが振り向きざまのボレーシュートで合わせ、土壇場でゴールネットを揺らしたイングランドが2大会連続でベスト8進出。

準々決勝

控えGKゴイコチェアPK戦で大活躍のアルゼンチンが苦しみながらベスト4へ。

いい流れで試合に入っていたユーゴスラビアだったが、前半31分にマラドーナマークしていたサバナソビッチが退場となる。

窮地に立たされたユーゴスラビアストイコビッチボールキープチャンスメイクで対抗し、個々の選手の柔軟な守備によって大半の時間を10人で戦いながら互の勝負を演じ、試合はPK戦にもつれ込む。

PK戦ではストイコビッチマラドーナという両チームエースが失敗する波乱の展開となる。だが、アルゼンチンは大会途中から守護に定着したゴイコチェアが4人と5人を立て続けにセーブする活躍を見せ、アルゼンチンを準決勝進出に導く。

この試合でよりもきを放ちながら敗れたストイコビッチに対し、マラドーナは「泣かないで欲しい。君には明るい未来しかない」とをかけたという。

アイルランドの快進撃を「救世主」スキラッチが食い止める。

ここまで4引き分けで勝ち残ってきたアイルランドに対し、地元での優勝を狙うイタリアは立ち上がりから攻勢をかける。すると、前半38分ドナドーニのミドルシュートのこぼれ球に反応したスキラッチがまたしてもゴールを決め、イタリアが先制。

後半アイルランドは得意のロングボール体の放り込みサッカーで攻勢をかけるが、イタリア伝統のカテナチオの前にゴールは遠かった。スキラッチの1点を守り切ったイタリアが5試合連続の完封勝利で2大会ぶりのベスト4進出。

ジャッキー・チャールト監督に率いられ、初出場ながら奮闘したアイルランドだったが、快進撃はここで終焉となった。

安定感抜群の西ドイツが進撃のチェコスロバキアを倒す。

試合巧者同士の対戦は、将マテウスを中心に統率の取れた西ドイツチェコスロバキアを押し込む展開となる。前半24分クリンスマンPA内で倒されて得たPKをマテウスが決め、西ドイツが先制。

チェコスロバキアは、ラウンド16でハットトリックを決めたスクラヴィーが西ドイツ守備の厳しいマークによって沈黙させられる。安定した戦いぶりで1点を守り切った西ドイツが虎視々と優勝を射程距離にする。

”不屈のライオンカメルーンを”"イングランドが壮絶な死闘の末に撃退。カメルーンベスト8で終焉

前半25分プラットの2試合連続ゴールイングランドが先制。しかし、後半開始から切り札のミラを投入したカメルーンも反撃に出る。後半18分にPKで同点に追いつくと、そのわずか2分後にミラアシストからエケケがゴールを決め、逆転。ベスト4が視界に入ってくる。

敗色濃厚となったイングランドを救ったのは前回大会得点王のリネカーだった。後半38分自らが得たPKを決め、同点に追いつくと、延長戦でもPKを誘ったリネカーが逆転ゴールを決める。死闘を制したのは伝統の意地を見せたイングランドだった。

あと一歩でベスト4を逃したカメルーンだったが、今大会の快進撃が新アフリカの台頭を世界中に認識させるものとなった。

準決勝

またもゴイコチェアに救われたアルゼンチンが連覇へ向けて王手をかける。

ホストと前回優勝の対戦。試合がおこなわれたサン・パオロは、ナポリプレーするマラドーナにとってのホームスタジアムだったが、マラドーナは大ブーイングを浴びることになる。

前半17分こぼれ球に反応したスキラッチがまたもゴールを決め、地元イタリアが先制。ここまで5試合連続失点のイタリアは得意の逃げ切りパターンに持ち込もうとする。しかし、後半23分カニーヒアがヘディングで今大会初めてイタリアからゴールを奪い、アルゼンチンが同点に追いつく。GKゼンガの連続失点記録は517分でストップする。

延長戦に入りジュスティが退場となったアルゼンチンだったが、イタリアの攻撃を耐えしのぎ、決着はPK戦へ。すると、アルゼンチンはゴイコチェアがドナドーニとセレーナのPKを立て続けにストップ。準々決勝に続いてゴイコチェアヒーローになったアルゼンチンイタリアを打ち砕き、念願の連覇へあと一歩のところまで進む。

フットボールというのは本当に単純なスポーツだ。22人の選手たちが90分間ボールを追いかける。そして、最後にはドイツが勝つんだ」

1966年大会決勝以来の因縁がある両チームの対戦は、前半ガスコインを軸に攻撃を作るイングランドペースを握る。押されていた西ドイツだったが、後半14分絶好の位置で得たFKからブレーメが直接ゴールを狙うと、40歳の大ベテランGKルトンが測を誤るミスを犯し、先制する。

その後、守備固めに入った西ドイツを攻めあぐねるイングランドだったが、後半37分守備のミスを突いたリネカーが同点ゴールを決め、こちらも1-1のままPK戦で決着を付けることになる。全員が成功させた西ドイツに対し、イングランドはピアースとワドルが失敗。西ドイツが3大会連続で決勝へ進む。

試合後、悔しを流すガスコインの姿は今大会を徴するシーンとなった。天敵西ドイツに敗れたリネカーは冒頭で紹介した名言を残すことになる。

3位決定戦

共にPK戦優勝を打ち砕かれた両チームの対戦は、ホストの意地を見せたいイタリア導権を握る。また、イタリアにはスキラッチの単独得点王獲得という標があった。

イングランドは、ガスコインが累積警告で出場停止となり、攻撃が単調になっていた。後半25分アルゼンチン戦でまさかのスタメン落ちとなったバッジョGKルトンのミスを突いてイタリアの先制ゴールを決める。一方、イングランドもプラットが同点ゴールを決め、食い下がる。

そして、後半40分スキラッチが大会得点王を決定づける今大会6ゴールを決め、イタリアが勝ち越し。スキラッチはこれで5試合連続のゴールとなった。結局イタリアが3位入賞を果たし、ホストの面を保つ。

決勝

前回の86年大会と同じ顔合わせとなった決勝は、今大会を徴するような守備的な世紀の大戦となった。

カニーヒアら4人を出場停止で欠いたアルゼンチンは、守備的な戦術を採用。攻撃をマラドーナ一人に任せるような戦い方となっていた。マテウス中心に中盤を支配する西ドイツだったが、こちらもリスクをかけて攻めようとせず、試合は着状態が続く。

マラドーナはこの試合でもしいマークに遭い、満足プレーさせてもらえない。西ドイツマンマーク気味に対応していたブッフバルトマラドーナを試合から閉め出していた。

苛立ちを隠せなくなったアルゼンチンは次第にコントロールを失い、後半23分にモンソンが退場となる。何とか耐えていたアルゼンチンだったが、後半40分センシーニがPA内でフェラーを倒し、西ドイツにPKを与えてしまう。これをブレーメがきっちり決め、西ドイツが均衡を破る。これで切れてしまったアルゼンチンはその後デソッティも退場となり、戦となった決勝を制した西ドイツ1974年以来3回優勝を飾る。

この試合アルゼンチンが放ったシュートマラドーナを外したFK1本だったことがこの試合の全てを物語っている。

大会まとめ

1990 FIFAワールドカップ 大会結果
優勝 ドイツ西ドイツ(3回)
優勝 アルゼンチンアルゼンチン
3位 イタリアイタリア
4位 イングランドイングランド
個人表
大会MVP イタリアサルバトーレ・スキラッ
得点 イタリアサルバトーレ・スキラッ

カルチョで開催された今大会を制したのは、過去2大会連続で準優勝に終わり、3度目の正直ファイナルを制した西ドイツだった。中盤で試合をコントロールするローター・マテウスを中心に攻守にバランスの取れた安定感のあるチームとなり、マテウス、ブレーメ、クリンスマンインテルに所属する3人が本拠地とするサンシーロで5試合を戦えた地の利も勝因となった。監督を務めたフランツ・ベッケンバウアーはこれで史上2人となる選手・監督の両方でワールドカップ優勝を達成したことになる。

カメルーンの躍進による将来的なアフリカ勢の台頭を期待するなど明るい話題もあるが、全体的には大会総得点115ワールドカップ史上最低数字となり、「守備的サッカーが横行したワールドカップ史上最低の大会」とまで酷評された。決勝戦のように退場者を出した荒れた試合も多く、その後FIFAオフサイド基準の変更、バックパスをGKが手で扱うことの禁止といったルール正に動くこととなる。

最終順位

順位 チーム
1 西ドイツ西ドイツ
2 アルゼンチンアルゼンチン
3 イタリアイタリア
4 イングランドイングランド
5 ユーゴスラビアユーゴスラビア
6 チェコスロバキアチェコスロバキア
7 カメルーンカメルーン
8 アイルランドアイルランド
9 ブラジルブラジル
10 スペインスペイン
11 ベルギーベルギー
12 ルーマニアルーマニア
13 コスタリカコスタリカ
14 コロンビアコロンビア
15 オランダオランダ
16 ウルグアイウルグアイ
17 ソビエト連邦ソビエト連邦
18 オーストリアオーストリア
スコットランドスコットランド
20 エジプトエジプト
21 スウェーデンスウェーデン
22 韓国韓国
23 アメリカ合衆国アメリカ合衆国
24 アラブ首長国連邦アラブ首長国連邦

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