1994 FIFAワールドカップとは、アメリカ合衆国で開催されたFIFA ワールドカップである。
1994 FIFAワールドカップ | |
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期間 | 1994年6月17日~7月17日 |
場所 | ![]() |
出場国 | 24ヶ国 |
公式球 | クエストラ(アディダス) |
マスコット | ストライカー |
アメリカ合衆国での初開催となった。メキシコ以外の北中米カリブ諸国での開催も初であり、同協会地域では1986年メキシコ大会以来の開催である。北米地域初の大会でもある。
アメリカ合衆国という土地柄からサッカー用の競技場が少なく、アメリカンフットボールの競技場が転用された例がある。アメリカにおいてはサッカーはメジャースポーツというわけではなく、いわば「サッカー不毛の地」での開催ということで大会自体の盛り上がりを危惧する声も多かった。
今大会ではギリシャ、ナイジェリア、サウジアラビアが初出場となった。一方、欧州予選では波乱が多発し、エリック・カントナらスター選手を擁した強豪フランスは試合終了間際にブルガリアに決勝ゴールを奪われるショッキングな結末によって2大会連続で出場を逃している。また、前回ベスト4のイングランド、EURO92優勝のデンマークも予選で敗退。前回ベスト8のユーゴスラビアは内戦の影響で国際舞台から閉め出されることとなった。
また、今大会から選手のユニフォームの背番号の上に選手名が入れられるように改められた。ルール面では、勝ち点が「勝利2・引き分け1・敗戦0」から「勝利3・引き分け1・敗戦0」に変更された。オフサイドの解釈が緩和され、「攻撃側の選手がオフサイドポジションに残っていても、その選手がプレーに直接関与しなければ、オフサイドをとられない」という改正が施された。
1994ワールドカップ予選において、日本代表がFIFAワールドカップ初出場を逃した「ドーハの悲劇」が有名である。当時の日本代表は、1993年のJリーグ発足に伴いこれまで以上に強化に力を入れ、空前のサッカーブームが起きたことで国民のサッカー熱はこれまでにないほど盛り上がり、アジア最終予選においてFIFAワールドカップ初出場に近づいていた。しかし、カタール国ドーハで行われた日本代表対イラク代表戦において、ロスタイム間際にイラクの同点ゴールが入り日本は予選敗退、初出場を逃すこととなった。
※各グループ上位2チームと各組3位になったチームのうち上位4チームが決勝トーナメントに進出。
順位は1994年5月17日発表のFIFAランキング
グループA | グループB | グループC | グループD | グループE | グループF |
---|---|---|---|---|---|
![]() アメリカ (23位) |
![]() ブラジル (1位) |
![]() ドイツ (2位) |
![]() アルゼンチン (6位) |
![]() イタリア (16位) |
![]() ベルギー (34位) |
![]() スイス (8位) |
![]() ロシア (20位) |
![]() ボリビア (43位) |
![]() ギリシャ (32位) |
![]() アイルランド (12位) |
![]() モロッコ (30位) |
![]() コロンビア (18位) |
![]() カメルーン (24位) |
![]() スペイン (9位) |
![]() ナイジェリア (7位) |
![]() ノルウェー (4位) |
![]() オランダ (11位) |
![]() ルーマニア (10位) |
![]() スウェーデン (3位) |
![]() 韓国 (37位) |
![]() ブルガリア (29位) |
![]() メキシコ (13位) |
![]() サウジアラビア (35位) |
順 位 |
国名 | ![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ![]() ルーマニア |
― | ● 1-4 |
○ 3-1 |
○ 1-0 |
6 | 0 | 5 | 5 |
2 | ![]() スイス |
○ 4-1 |
― | △ 1-1 |
● 0-2 |
4 | +1 | 5 | 4 |
3 | ![]() アメリカ |
● 0-1 |
△ 1-1 |
― | ○ 2-1 |
4 | 0 | 3 | 3 |
4 | ![]() コロンビア |
● 1-3 |
○ 2-0 |
● 1-2 |
― | 3 | -1 | 4 | 5 |
86年大会のメキシコ、90年大会のコスタリカをベスト16進出に導いた名将ボラ・ミルティノビッチを招へいした開催国アメリカだったが、前回ベスト16のコロンビア、ルーマニア、FIFAランク8位のスイスと同居し、グループリーグ突破は厳しいと見られていた。
初戦のスイス戦を引き分けで乗り切ったアメリカは、続くコロンビア戦では相手のオウンゴールによる幸運な形で先制すると、後半にもスチュアートが追加点を奪う。完全にリズムが狂ったコロンビアをアメリカが押し込む展開が続き、優勝候補にも挙げられた強豪相手に金星を奪う。この歴史的な勝利が追い風となり、1勝1分1敗で3位となりながら決勝トーナメント進出を果たす。
1989年のルーマニア革命による民主化により、多くの選手が国外のトップリーグでプレーするようになったルーマニアは4年前よりも実力を付けていた。強豪コロンビアと対戦することとなった初戦ではハジ、ラドチョウの両エースが活躍し、3-1の快勝。その後、アメリカ戦にも勝利し首位でグループリーグを突破。そのルーマニア相手に4-1で勝利したスイスも2位でグループリーグを突破する。
大きく期待を裏切ったのがコロンビアだった。バルデラマ、アスプリージャら優れた個人技を持つ選手が揃い、大会前はペレが優勝候補に挙げるほど前評判の高いチームだったが、ルーマニア戦の敗北で大きく歯車が狂い、最初の2試合を連敗したことでグループリーグ敗退が決まる。だが、コロンビアにとっての本当の悲劇は大会後だった。アメリカ戦で致命的なオウンゴールを犯したエスコバルが帰国後に射殺されるという痛ましい事件が起きてしまう・・・。
順 位 |
国名 | ![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ![]() ブラジル |
― | △ 1-1 |
○ 2-0 |
○ 3-0 |
7 | +5 | 6 | 1 |
2 | ![]() スウェーデン |
△ 1-1 |
― | ○ 3-1 |
△ 2-2 |
5 | +2 | 6 | 4 |
3 | ![]() ロシア |
● 0-2 |
● 1-3 |
― | ○ 6-1 |
3 | +1 | 7 | 6 |
4 | ![]() カメルーン |
● 0-3 |
△ 2-2 |
● 1-6 |
― | 0 | -8 | 3 | 11 |
優勝候補のブラジル、前回大躍進を遂げたカメルーン、北欧の雄スウェーデン、ソ連崩壊後初の大舞台となるロシアが揃ったグループは、大会前もっとも厳しい「死のグループ」と予想されていた。
本命と見られたブラジルはロマーリオとベベットの強力な2トップが期待通りの働きを見せる。特にエースのロマーリオは驚異的な得点感覚を発揮し、グループリーグ3試合連続ゴールで首位での突破に大きく貢献。実は不仲だと言われていたロマーリオ&ベベットのコンビだが、ピッチに立つと息の合った連携を見せ、24年ぶりの優勝へ期待を膨らませる。ブラジルに続いたのは、こちらもダーリンとケネット・アンデションの強力2トップを筆頭に随所にタレントを擁するスウェーデンだった。
第3戦のロシアとカメルーンの試合は記録が次々と飛び出した試合となった。ロシアのサレンコはこの試合でワールドカップ史上初となる1試合5ゴールという記録を打ち立てる。また、前回大会で時の人となったカメルーンのロジェ・ミラは42歳となった今大会にも出場し、ワールドカップ最年長ゴールを記録する。もっともこの2チームはいずれもブラジル、スウェーデンのレベルに達しておらず、グループリーグで敗退となった。
順 位 |
国名 | ![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ![]() ドイツ |
― | △ 1-1 |
○ 3-2 |
○ 1-0 |
7 | +2 | 5 | 3 |
2 | ![]() スペイン |
△ 1-1 |
― | △ 2-2 |
○ 3-1 |
7 | +2 | 6 | 4 |
3 | ![]() 韓国 |
● 2-3 |
△ 2-2 |
― | △ 0-0 |
2 | -1 | 4 | 5 |
4 | ![]() ボリビア |
● 0-1 |
● 1-3 |
△ 0-0 |
― | 1 | -3 | 1 | 4 |
前回優勝のドイツ、2年前のバルセロナ五輪優勝のスペインが優位な2強2弱のグループと見られたが、実際その通りの結果となった。ただし、ドイツとスペインも思ったより楽な戦いぶりでもなかった。
今回が南北統一後初のワールドカップとなるドイツは、大会開幕戦でボリビアと対戦。前回の優勝を経験したメンバーが大半を占めるドイツだったが、南米特有の足技を持つボリビア相手に予想以上に手こずる。それでも、クリンスマンのゴールで辛くも勝利。第3戦の韓国戦でもクリンスマンの2ゴールなど前半で3点をリードしながら後半に2点を取り返され追い上げられるなど、安定感を欠きながらも首位で突破する。
スペインは初戦の韓国戦で2点をリードしながら、終盤にホン・ミョンボとソ・ジョンウォンのゴールを許し、まさかのドロー発進。続くドイツ戦でもリードを守り切れず、2引き分けという状況に陥る。それでもボリビア戦ではFCバルセロナの黄金期を支えたメンバーを中心にボリビアを圧倒。2位でグループを突破し、下馬評通りの結果となる。
3大会連続の出場となった韓国は、スペインとドイツという強豪を相手に驚異的な粘りで立ち向かうなど、前回よりも格段に進歩したが、やはり1勝の壁は厚く、3位に入ったもののグループリーグ敗退となった。南米予選でブラジル相手に勝利したボリビアも奮闘はしたが、やはり本拠地ラパスの神通力無しで強豪相手に勝利することは難しかった。
順 位 |
国名 | ![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ![]() ナイジェリア |
― | ○ 3-0 |
● 1-2 |
○ 2-0 |
6 | +4 | 6 | 2 |
2 | ![]() ブルガリア |
● 0-3 |
― | ○ 2-0 |
○ 4-0 |
6 | +3 | 6 | 3 |
3 | ![]() アルゼンチン |
○ 2-1 |
● 0-2 |
― | ○ 4-0 |
6 | +3 | 6 | 3 |
4 | ![]() ギリシャ |
● 0-2 |
● 0-4 |
● 0-4 |
― | 0 | -10 | 0 | 10 |
やはり大本命はアルゼンチンだった。コカイン使用など様々なドラブルを引き起こし、一時は大会出場が危ぶまれたアルゼンチンの英雄マラドーナだったが、大会の1年前から代表に復帰。33歳となっても彼の出来がチームを左右することに変わりはなかった。初戦のギリシャ戦ではバティストゥータがハットトリックの大活躍。マラドーナにもゴールが生まれ、最高のスタートを切る。続くナイジェリア戦でもカニーヒアの2ゴールによって連勝。
ところが、ナイジェリア戦の後、マラドーナが禁止薬物を使用していたことが発覚。事態を重く見たFIFAは事実上マラドーナを大会から追放する。動揺を隠せないアルゼンチンは、ブルガリア戦に完敗。グループを大混戦にしてしまう。
初出場ながらダークホースとして注目されていたナイジェリアは、前評判通りの実力を見せる。初戦のブルガリア戦でアフリカ最優秀選手イエキニのゴールを皮切りにアモカチ、アムニケが追加点を挙げ、衝撃的なワールドカップデビューを果たす。第3戦でも弱小ギリシャに快勝したナイジェリアは、高い身体能力と個人技でインパクトを残し、首位でグループを勝ち抜ける。
初戦でナイジェリアに完敗したブルガリアだったが、続くギリシャ戦、アルゼンチン戦をストイチコフの活躍によって快勝。結果、ブルガリアとアルゼンチンが勝ち点、得失点差で並ぶが、当該チームの直接対決の結果によりブルガリアが2位、アルゼンチンが3位で決勝トーナメントに進出。
こちらも初出場のギリシャだったが、3連敗、しかも0得点10失点というぐうの音が出ないほどの完敗となった。他の3チームとのレベルの差がありすぎた。
順 位 |
国名 | ![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ![]() メキシコ |
― | ○ 2-1 |
△ 1-1 |
● 0-1 |
4 | 0 | 3 | 3 |
2 | ![]() アイルランド |
● 1-2 |
― | ○ 1-0 |
△ 0-0 |
4 | 0 | 2 | 2 |
3 | ![]() イタリア |
● 0-1 |
△ 1-1 |
― | ○ 2-1 |
4 | 0 | 2 | 2 |
4 | ![]() ノルウェー |
○ 1-0 |
● 0-1 |
△ 0-0 |
― | 4 | 0 | 1 | 1 |
93年のバロンドールとFIFA世界最優秀選手を受賞したロベルト・バッジョを擁するイタリアだったが、イタリアとR・バッジョにとって受難のグループとなる。メキシコ、アイルランド、ノルウェーという実力者が揃ったこのグループはグループDどころではない歴史に名を残す大混戦となる。
初戦で前回の準々決勝で戦ったアイルランドと顔を合わせたイタリアだったが、アイルランドに敗れてリベンジを許してしまう。続くノルウェー戦は苦難続きの試合となった。前半21分にGKパリューカが退場となり、残り時間を10人で戦うことに。アリーゴ・サッキ監督は、控えGKを投入するためになんとエースのR・バッジョを交代させるという驚きの決断を下す。さらに後半3分守備の要であるバレージが膝を負傷し戦線離脱となる。攻守両方の中心を失ったイタリアだったが、後半24分にディノ・バッジョがゴールを決め、満身創痍ながらも辛うじて勝ち点3を手にする。
イタリアが予想以上に低調だったこともあり、最終的にグループEはなんと4チーム全てが1勝1分1敗の勝ち点4で並び、得失点差も0で並ぶという前代未聞の大混戦となった。最終順位は総得点で上回るメキシコが1位、次に総得点で並んでいる2チームを直接対決の結果で決めるため、2位アイルランド、3位イタリアの3チームが決勝トーナメントに進出。
4チーム中総得点がもっとも劣っていたノルウェーは最下位となり、グループリーグ敗退となった。持ち前の堅守でイタリア戦以外は無失点で抑えていただけに残酷な結末となった。
順 位 |
国名 | ![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ![]() オランダ |
― | ○ 2-1 |
● 0-1 |
○ 2-1 |
6 | +1 | 4 | 3 |
2 | ![]() サウジアラビア |
● 1-2 |
― | ○ 1-0 |
○ 2-1 |
6 | +1 | 4 | 3 |
3 | ![]() ベルギー |
○ 1-0 |
● 0-1 |
― | ○ 2-1 |
6 | +1 | 3 | 2 |
4 | ![]() モロッコ |
● 1-2 |
● 0-1 |
● 1-2 |
― | 0 | -3 | 2 | 5 |
フリットがアドフォカート監督との対立で大会直前に代表入りを拒否するという内紛が起こり、不安を抱えたまま大会に入ったオランダは、初戦でサウジアラビアを下し順調にスタートを切るが、続く隣国ベルギーとのライバル対決ではベルギーの守護神プロドームの壁を崩せずに敗戦。それでも、モロッコ戦では新たに10番を背負ったベルカンプに初ゴールが生まれ、勝ち点6とする。
オランダ、ベルギーの欧州勢が楽に突破するという戦前の予想だったが、それを覆したのが初出場のサウジアラビアだった。第2戦のモロッコ戦でワールドカップ初勝利を飾ると、第3戦のベルギー戦で世界を驚かせることになる。前半5分オワイランがドリブルで30mほどを単独突破すると、最後は大会NO.1GKの呼び声が高いプロドームからゴールを奪う。その後、シーフォにボールを集め攻勢に出るベルギーだったが、サウジアラビアはGKデアイエを中心に鉄壁の守備で応戦。虎の子の1点を守り切り、金星を挙げる。
この結果、ここでも勝ち点と得失点差で3チームが並ぶという事態が起こり、総得点で下回るベルギーが3位となり、直接対決の結果によって首位オランダ、2位サウジアラビアという結果となる。サウジアラビアはアジア勢として1966年大会の北朝鮮以来28年ぶりとなる決勝トーナメント進出という快挙を成し遂げた。3戦全敗で敗退となったモロッコだが、全て1点差の接戦であり、ギリシャと比べるとだいぶ救いのある結果となった。
1つ目はグループリーグ第2戦のアメリカ戦でチームの敗退の原因となるオウンゴールを犯したコロンビア代表のアンドレス・エスコバルが帰国後に射殺された事件。1994年7月2日の深夜3時半頃、エスコバルは母国コロンビアのメデジン郊外のバーで友人と歓談した後、店から出たところを暴漢に銃撃され死亡した。享年27歳。
2つ目はアルゼンチンの英雄ディエゴ・マラドーナの追放事件。グループリーグ第2戦のナイジェリア戦後のドーピング検査において尿から禁止薬物であるエフェドリンが検出。マラドーナは「2人目の娘に誓って違反するようなことはしていない」と訴えたが、判定は覆らず。マラドーナには1991年にコカイン所持で逮捕され、出場停止処分を受けた前科もあるため、FIFAは大会からの追放と15カ月の出場停止処分という重い処分を下している。
スタメン起用に応えたベテラン・フェラーがNO.1GKを攻略。
GKプロドームを擁するベルギーを相手に、ドイツはリードレに代えて34歳のベテランFWフェラーを今大会初めてスタメンに起用。この采配が吉と出る。開始早々にフェラーがプロドームからゴールを奪う。すぐにベルギーが同点とするが、前半11分にクリンスマンが勝ち越しのゴールを決める。
守備を固めてカウンターを狙うスタイルにシフトしたドイツは前半終了間際にもフェラーがゴールを決め、リードを2点差に広げる。その後のベルギーの反撃を抑え逃げ切ったドイツが連覇へ向け一歩駒を進める。
ベルギーはこの試合でもプロドームが好セーブを連発し、終盤にはゴール前に攻めあがる執念を見せた。しかし、シーフォがドイツのザマーに封じられ、ゲームメイクがうまくいかなかったのが響いた。
前半15分この試合、グアルディオラに代わってスタメンに起用されたイエロが先制ゴールを決め、スペインが先制。その後もスペインがボールを支配し、スイスを圧倒する流れが続く。また、イエロはスイスの司令塔スフォルツァを監視し、シャプイザへのパスを遮断することでスイスの攻撃を流れを断ち切っていた。
疲れの見えたスイスに対し、スペインは後半29分にルイス・エンリケが追加点を奪えば、41分に得たPKをベギリスタインが決め、終わってみれば3-0の快勝。
この勝利に地元スペインでは、歓喜のあまり興奮したサポーターによってマドリードの噴水広場の銅像が壊されるという珍事が起きている。
前半6分ダーリンの高い打点のヘディングシュートでスウェーデンがリードし、堅守速攻が売りのサウジアラビアのリズムを狂わせる。スウェーデンはサウジの堅守を上回るパワーとフィジカルで圧倒していた。
後半6分にはK・アンデションのミドルシュートでスウェーデンが追加点を奪う。終盤にサウジも1点を返すが、後半43分にもK・アンデションがダメ押しの3点目を決めて万事休す。
「東欧のマラドーナ」を擁するルーマニアが「本家マラドーナ」を失ったアルゼンチンを打ち砕く。
マラドーナショックを払拭したいアルゼンチンだったが、前半11分ドミトレスクにFKを決められ、出鼻を挫かれる。それでも、15分に強引な突破で自らが得たPKをバティストゥータが決め、すぐに追いつく。ところが、そのわずか2分後ハジの芸術的なパスからドミトレスクが決め、ルーマニアがまたもリードを奪う。
焦るアルゼンチンは前がかりになった背後のスペースをカウンターで狙われる悪循環に陥っていた。後半13分にはカウンターからハジが決め、ルーマニアがリードを広げる。その後、1点を返したアルゼンチンだったが、マラドーナを欠いた攻撃陣では守りを固めたルーマニアを攻略することは難しかった。
守護神ボナーがまさかのキャッチミス、オランダが余裕を残してのベスト8進出。
アイルランドの堅守にオランダの攻撃陣がどう挑むかという試合だったが、前半11分カウンターからベルカンプが2試合連続ゴールを決め、オランダがあっさりと先制する。
前半41分にはヨンクが放ったロングシュートをGKボナーがまさかのキャッチミス。手の間をすり抜けたボールはゴールに吸い込まれる。前回、今回と躍進の立役者となっていたボナーにとってはあまりにも残酷な瞬間であった。
後半流し気味にプレーするオランダに対し、アイルランドはチャンスらしいチャンスを作れず。オランダが余力を残しながらベスト8へと進出する。
7月4日独立記念日に王国ブラジルに挑戦することとなったホスト国・アメリカ。多くのアメリカ国民が見守ることとなった最高の舞台でアメリカはGKメオラ、DFララスを中心とした気迫の守備でゴールに鍵をかける。
そして前半43分執拗なマークに苛立ったブラジルのレオナルドが相手の顔面に肘打ちをしてしまい退場となる。
10人になったブラジルだが、それでも地力の差によりアメリカを攻め立てるが、ゴールが遠い。だが、後半27分ベベットがようやくアメリカゴールをこじ開ける。その後はブラジルが逃げ切り、予想以上に苦しみながらもアメリカの挑戦を退けた。
「ようやく男になりました、R・バッジョ」
GLをわずか2ゴールに終わり、辛うじて3位で這い上がってきたイタリアだったが、ナイジェリアの規格外のパワーとスピードに苦戦。前半25分セットプレーからアムニケが決め、ナイジェリアが先制する。
試合の主導権が握れず苦しむイタリアにさらに悪夢が待ち受ける。後半34分途中出場のゾラが不可解な判定によって一発退場となる。GLで低調だったR・バッジョは批判を浴び、この試合でも沈黙したままだった。
「R・バッジョの94年というのはこのまま終わってしまうんでしょうかね?」「そうでしょうね」と誰もが思った後半42分R・バッジョが起死回生の同点ゴールを決め、土壇場でイタリアが追いつく。
エースの覚醒で息を吹き返したイタリアは、延長前半10分PKを得る。これをR・バッジョが決め、絶体絶命のピンチを英雄に救われたイタリアが勝利を掴む。
前半6分エースのストイチコフがゴールを決め、ブルガリアが早々と先制。対するメキシコも前半18分に得たPKをガルシア・アスペが決め、譲らない。
ストイチコフ、バラコフを中心としたブルガリアの攻撃陣に対し、メキシコは派手な動きとユニフォームで話題となっていたGKカンポスが立ちはだかる。激闘は延長戦でも決着が付かず、今大会初のPK戦へ突入。
ブルガリアの1人目を止めたカンポスだったが、メキシコは3人目までが立て続けに失敗。逆に2人目以降は全員が決めたブルガリアが勝利し、初のベスト8進出を果たす。
またもR・バッジョがアズーリを救う。
前半25分D・バッジョがミドルシュートを叩き込み、イタリアが先制。今大会イタリアが前半にゴールを決めたのはこれが初めてだった。強豪スペインも流石にここで引きさがらず、反撃に出る。後半13分鮮やかな連携からカミネロが同点ゴールを決める。
勢いづいたスペインは猛攻を見せるが、なかなかゴールを割ることができない。スペインはルイス・エンリケがタソッティに顔面を肘打ちをされ、鼻骨骨折を負わされる。しかし主審はこれを見逃してしまい、カードすら出されなかった。
劣勢の続いたイタリアだったが、またもあの男がイタリアを救う。後半42分華麗なテクニックでGKスビサレッタをかわしたR・バッジョがゴールを決め、イタリアが2大会連続のベスト4進出を果たす。
個人技のブラジルと組織力のオランダという好カードは、前半は互いに激しく潰し合う膠着状態が続き、後半まずブラジル自慢の2トップが牙を剥く。後半8分カウンターからロマーリオが先制ゴールを決めれば、後半18分にはオフサイドの新ルールをうまく利用したベベットが抜け出し、追加点を奪う。ちなみに有名なゆりかごダンスはこの時生まれている。
だが、追加点のわずか1分後、ブラジルDF陣が気を抜いた隙を突いたベルカンプがゴールを決め、オランダが反撃を開始。31分にはCKからヴィンターが決め、オランダが同点に追いつく。
2点のリードを失い焦るブラジルを救ったのは出場停止のレオナルドの代役として起用されたベテランのブランコだった。自らが得たFKを直接ゴールに決め、ブラジルが勝ち越し。伏兵が試合を決め、底力を見せたブラジルがオランダとの死闘を制し、1978年以来となるベスト4進出を果たす。
下馬評では圧倒的に優位と見られたドイツは前半からブルガリアを攻め立てる。後半2分にはクリンスマンが得たPKを主将のマテウスが決め、ドイツが先制。誰もがいつも通りドイツが勝つと思っていた。
ところが、後半30分ストイチコフの左足によって魔法がかかったかのような完璧なFKが決まり、ブルガリアが同点に追いつく。疲れで足が止まっていたドイツに対し、ブルガリアは33分にレチコフが逆転のヘディングシュートを決める。
最後まで1点を追いかけたドイツだったが、ゴールは遠く、大会前ノーマークだったブルガリアがベスト4進出。試合後、ストイチコフは「これはブルガリアの歴史に残る勝利だ」とコメントしている。
初のベスト8で国民の期待は膨らみ、「ハジを大統領に」という声さえあがったルーマニア。スウェーデンはキーマンであるハジを徹底的にマークし、拮抗した試合展開となる。
後半33分セットプレーからブローリンが決め、スウェーデンが先制。しかし、ルーマニアも後半43分こちらもセットプレーからラドチョウが決め、試合は延長戦に突入。
延長戦に入り、またもラドチョウが決めルーマニアがリードするが、スウェーデンも終了5分前にK・アンデションが決め、両者譲らず決着はPK戦へ。PK戦でもサドンデスに突入する死闘となるが、スウェーデンはGKラベリがベロデディチのシュートを止め、36年ぶりにベスト4へ進出。
R・バッジョの2ゴールを守り切った満身創痍のイタリアがブルガリアを撃破。
ここまでイタリアを勝利に導いてきたエースがこの試合でも躍動する。前半20分個人技からR・バッジョが先制ゴールを決めると、前半25分にはアルベルティーニの浮き球パスに反応したR・バッジョが右足ダイレクトでのシュートを決める。
2点のリードを失ったブルガリアも前半終了間際の44分にPKを得ると、ストイチコフが決め、1点を返す。ストイチコフは大会6ゴール目となり、サレンコと並んで大会得点ランクトップに立つ。
後半イタリアに受難が襲い掛かる。後半25分右太ももの肉離れを起こしたR・バッジョがピッチを後にする。エースを失ったイタリアは防戦一方となるが、守備陣が踏ん張り、ブルガリアのその後の反撃を許さなかった。
GLでも対戦している両チームの対戦は、高い個人技を駆使してほぼ一方的に攻めるブラジルに対し、パワーと運動量で対抗するスウェーデンが耐えるという前回と同じ試合展開となる。
守りを固めるスウェーデンに対し、何度も決定機を作り出すブラジルだったが、なかなかゴールを決めることができない。一方のスウェーデンも守るだけで手一杯となり、後半25分にはドゥンガを削った主将のテルンが一発退場となる。
1点が遠いブラジルだったが、後半35分ジョルジーニョの右からのクロスをロマーリオが頭で合わせ、ようやくゴールをこじ開ける。
イタリア戦ですでに力を使い果たしたブルガリアに対し、スウェーデンは前半8分ブローリンのゴールで先制すると、30分ミルドが追加点。前半終了間際にはダーリン、K・アンデションの2トップがそれぞれゴールを決め、スウェーデンが前半だけで4点をリードするワンサイドゲームとなった。
準決勝で敗れたことで魔法が解けたかのようなブルガリアは、もはや抜け殻と化していた。単独得点王のかかったストイチコフにもゴールは生まれず。
共に最多の3回の優勝経験を持つ両強豪国の対戦は、昼間の開催となったため真夏の炎天下での死闘となった。イタリアは、戦線を離脱していた主将のバレージが奇跡の復帰。ブルガリア戦で肉離れを起こし出場が危ぶまれたR・バッジョもスタメンに名を連ねた。
試合はコンディション面で優位に立つブラジルがロマーリオとベベットの2トップを中心に攻め込む展開となるが、バレージ復帰で統率が取れたイタリアの守備を崩すことができない。一方のイタリアは頼みのR・バッジョが本来のコンディションとは程遠く、攻撃になかなかリズムが生まれない。
お互いに決め手を欠いたまま時間が進んだ試合は、次第に暑さと疲労で選手たちの動きが重くなり、延長戦になると足に不安を抱えるR・バッジョとバレージが足を攣るなど、特にイタリアは極限を超えていた。結局120分間でゴールは生まれず、ワールドカップ史上初めてPK戦で優勝を決めることになる。
両チームの1人目が失敗した後、3人が立て続けに成功したブラジルに対し、イタリアは4人目のマッサーロがGKタファレルに止められる。後がなくなったイタリアの5人目のキッカーはR・バッジョだった。しかし、R・バッジョが蹴ったボールは大きく枠を外れてしまい、ブラジルが1970年以来24年ぶりとなる史上最多4度目の優勝を飾る。
1994 FIFAワールドカップ 大会結果 | |
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優勝 | ![]() |
準優勝 | ![]() |
3位 | ![]() |
4位 | ![]() |
個人表彰 | |
大会MVP | ![]() |
得点王 | ![]() ![]() |
最優秀GK | ![]() |
「サッカー不毛の地」での開催というこれまでにないチャレンジをした15回目のワールドカップだったが、蓋を開けてみると地元アメリカ代表の奮闘もあって大会は盛り上がりを見せ、観客動員数は約359万人、1試合あたり約6.9万人を記録。決勝には9万人を動員。いずれも大会の歴代最高記録を叩き出した。この大会の大成功を受けて、アメリカでは1996年にプロリーグであるMLSがスタートしている。
優勝したのはブラジルだったが、大会後もっとも話題となったのは決勝でイタリア敗退となるPK失敗をし、悲劇のヒーローとなったロベルト・バッジョだった。特に、PKを外した直後のR・バッジョの哀愁を漂わせる後姿は、今大会のハイライトシーンとなり、サッカー史に残るシーンとして語り継がれることになる。また、ブルガリア、ルーマニアといった東欧勢、新興勢力アフリカで脅威となったナイジェリア、アジア勢28年ぶりの決勝トーナメント進出を果たしたサウジアラビアなど、これまでワールドカップで活躍したことのない国の躍進が目立った大会でもあった。
クラブレベルで見ると、準優勝したイタリアは大半がACミランの主力であり、活躍が目立ったロマーリオ、ストイチコフ、ハジはいずれもFCバルセロナの所属と当時黄金期を迎えていた2チームの選手が活躍した。また、これまで以上にGKがクローズアップされた大会でもあり、堅実な守備が光ったミシェル・プロドーム、開催国アメリカの躍進を支えたトニー・メオラ、GKとしては小柄ながら俊敏なセービングと派手なユニフォームが目立ったメキシコのホルヘ・カンポスが話題となった。
大会の得点数は総得点141点、1試合平均2.71得点を記録し、史上最低記録となった前回大会から大きく改善され、FIFAが施したルールの改正は成功したと言えるだろう。一方で、アメリカの広大な大陸を舞台にするため、各会場間の長距離移動、時差、気温・湿度の変化といったコンディションの厳しさが問題となり、加えてヨーロッパ諸国のゴールデンアワーのテレビ中継に合うようスケジュールが組まれたため、真夏の炎天下でのデーゲームが多くなり、ベテラン勢の多かったドイツの早期敗退、決勝に残った2チームの疲弊ぶりなど悪影響を与えている。
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最終更新:2023/03/25(土) 04:00
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