381系 単語

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381系とは国鉄開発した日本初の振り子式車両である。

概要

特急電車スピードアップの為に曲線区間をいかに速く走らせるかを念頭に置いて開発された。

591系試作にて各種試験を行った後に381系を製造し、1973年7月中央西線電化に合わせて準備された。
591系は交直流電車であったが直流電化の亜幹線に導入すること、及び軽量化のためにアルミ合金体となったことから形式名は他形式と区別するために300番台を採用した。
名古屋長野間の特急しなの」にまず投入され、後に紀勢本線の「くろしお」や伯備線やくも」にも投入された。
福知山線山陰本線「北近畿」(現:こうのとり)への投入計画もあったが国鉄末期車両製造の資金確保が困難であった為、出雲から日根野に転属させた381系で485系を置き換え、その485系を「北近畿」に投入することとなった(が、後にその置き換えで381系が入っている)。また、高山本線「ひだ」への投入計画は高山本線電化計画そのものがなくなった為実施されなかった。
これに前後して、1982年大宮エリアで開始した189系ホームライナーが好評だったため、381系の入出庫を兼ねた「ホームライナーいずみ」を天王寺駅日根野駅間で1982年9月1日より運行。1986年11月国鉄最後のダイヤ改正で和歌山駅まで運転区間を延長し「はんわライナー」に改称した。また、同改正にて「やくも17号米子行きを米子駅知井宮駅(現:西出雲駅)間で普通列車として運行。381系で種別:普通として運行されるのはこれが初めてであった。

振り子式を採用した事で曲線区間では国鉄開発標としていた本則+20km/hという速度で走れたが、一方で「列車に酔いやすい」という苦情も出た。これは当時のシステムが「自然振り子式」で体の傾斜が重力任せであった事に由来している(これは後に制御装置を付ける事で改善され、以後の振り子車両はこの制御付が基本となっている。また、運転開始後は列車酔いに対処する為に座席にエチケット袋が用意されていたが、現在は「くろしお・やくも」とも洗面台にのみ用意されている。もっとも、振り子機構ではなく軌が原因の場合もあるが・・・)。
だが、この381系による「振り子=酔いやすい」というイメージが強い為か現在の改良されたJR世代の振り子でも敬遠する人は多い。

また軽量なアルミ合金製の体であり、出120kwと485系183系などに採用されているMT54と同じ定格出ながら高回転に耐えられるMT58モーターを採用し、MTも2:1前提となっているため高速性も高い。1985年に「くろしお」編成を試験用に組成し直した6両編成(クハ381-115+モハ381-47+モハ380-47+モハ381-49+モハ380-49+クハ381-116)を使用して湖西線で行われた高速試験走行において、179.5km/hという日本狭軌鉄道で最高の記録近江中庄駅付近で記録している。なお、この試験編成では制御付き自然振り子試験も行われている。

民営化後はJR東海JR西日本に引き継がれた。

国鉄時代の新製形式と改造履歴は下記の通り。クモハへの改造吹田工場後藤工場、クロへの改造名古屋工場で施行された。

形式名 両数 改造後形式 両数 備考
モハ381 92 クモハ381-0 9 モハ381の先頭改造
モハ380 92
クハ381-0 18
クハ381-100 44
サロ381-0 31 クロ381-0 2 しなの」向け先頭改造

JR東海

JR東海では「しなの」向け編成88両を引き継いだが、この時点で運用開始から14年経過。
このうち、名古屋工場でサロ381-0をクロ381-0への改造(これは国鉄時代から継続)とクハ381-0のクロ381-50への改造を実施した(いずれも1987年)。また、サロ381-0をパノラ先頭クロ381-10への改造も実施。こちらはサロ381アルミ構体前7mの側構体を撤去したうえで、パノラマ展望室を設置したが、そのままでは溶接できないため結合面にシール材塗布を講じたうえでボルト結合している。

運用開始から20年となった1994年には制御付き自然振り子を採用した後継の383系試作編成が登場。1996年までに383系の量産い、381系は定期運用から撤退。1997年度には40両まで減していたが、長野オリンピック終了後には波動用に残されていた編成もが進み、1999年度には16両、2002年度には12両に減少。波動用にパノラマ編成が2本残されていたが、2008年までに全となっている。
その後美濃太田電車区に4両が残されていたが、先頭2両(クロ381-11・クハ381-1)がリニア・鉄道館にて展示された。このうちクロ381-11はパノラマ化改造に起因する体老朽化により維持困難となったため、N700系9000番台展示に伴い玉突きで展示終了。西浜松に移送後解体された。美濃太田に残された残り2両(モハ380-1、モハ381-1)も2013年頃に解体された。

JR東海での改造履歴は下記の通り。全て名古屋工場にて施行。

改造後形式 両数 内容
クロ381-0 5 サロ381-0の先頭改造国鉄時代から継続
クロ381-50 5 クハ381-0をグリーン車格上げ改造
クロ381-10 3 サロ381-0のパノラマ化改造

JR西日本

「くろしお」「やくも」用を継承。
※なお、287系代走で入線した福知山線山陰本線福知山支社管区内)や「くろしお」で走行する東海道本線においては軌強化工事や架線の替えが行われていないため、振り子装置を使用していない(但し、東海道本線では振り子装置は「切」でなく「入」になっている)。そのため、自然振り子の381系で運転される特急も非振り子式特急と同じスピードで走行している(振り子さえあれば高速でカーブ通過できるというのは大間違いであるため、注意が必要。→振り子式車両

くろしお(日根野所属車)

1989年から1990年にかけて「くろしお」編成の一部で「スーパー雷鳥」同様のパノラへクロ380-0が5両吹田工場改造された。JR東海とは逆に後位構体を切断し、先頭構体を接合した。「スーパーくろしお」に投入され(D編成)、地にクリームイエロートリコロールレッドラインという塗装となった。
「くろしお」系統はその後283系オーシャンアローが投入されたが少量配置となった。この際にアコ改造とあわせてオーシャンアローに合わせる形で「くろしお・スーパーくろしお」の塗装地にオーシャンブルーへ変更した(B編成・D編成)。
グリーン車連結していないC編成(6連・24両)は「オーシャンアロー」導入に伴い「くろしお」定期運用を持たなくなり塗装変更されず国鉄色にて残存。「はんわライナー」「やまとじライナー」に充当された他、多客期には「やくも」運用に就くことがあった(C編成には「くろしお」485系置き換え用に出雲から日根野に転属していた車両も組み込まれていた)。

2010年代になると置き換えが開始される。ノーマルの「くろしお」編成(HB編成)は287系2012年3月より投入され、この際置き換えられた「くろしお」用381系が塗装変更のうえ福知山183系を置き換える事となった。既に1編成が吹田工場国鉄色に戻されて福知山回送されており381系「こうのとり」運用がアナウンスされている他、一部ホームには381系乗位置案内が掲示されている)。なお、2011年に入り「はんわライナー」「やまとじライナー」の止で日根野電車区の国鉄塗装6両と後藤総合車両所の保留2両がとなっており、ライナー運用から撤退し287系投入までの代走に充当された381系(国鉄塗装C編成)も287系投入後に後藤総合車両所にて部品取りの上となった。
また、国鉄塗装「まほろば」などの臨時特急に充当される事もあった。
なお、183系引退583系使用列車の終了などで2013年3月以降はJR西日本一の運用持ちの国鉄特急車両となる。

2015年3月14日ダイヤ改正以降、「くろしお」運用に就いているパノラマ編成(HD編成)の置き換えが行われたが、新車両の導入アナウンスがない事から「しらさぎ」用683系2000番台(→289系2000番台)の日根野転属が取り沙汰された(ただし、683系は振り子等の体傾斜装置がない為、所要時間の延長が10分程度発生する)。鉄道ジャーナル別冊では福知山電車区の381系も683系にて置き換えられると記載され、同6月号ではJR中の人が置き換え検討を明言している。2015年4月28日にはJR西日本から正式に「くろしお」「こうのとりきのさき・はしだて」の289系による381系置き換えが発表された。置き換え日は2015年10月31日で、置き換え後の381系運用車両は「やくも」のみとなった。
289系で置き換えられたパノラマ編成の一部(HD604編成6両)は後藤総合車両所に移された。塗装変更は行われず山陰本線での臨時輸送に就いたものの「やくも」運用には就くことなく2018年となった。

「くろしお」向けの改造履歴は下記の通り。全て吹田工場で施行。

改造後形式 両数 内容
クロ380-0 5 サロ380-0のパノラグリーン改造
モハ380-500 3 モハ380-0に自動連解結装置取り付け
クハ381-500 5 クハ381-100に自動連解結装置取り付け
クロ381-100 7 クハ381-100グリーン車格上げ
サハ381-0 7 サロ381-0の普通車格下げ

やくも(後藤所属車)

「やくも」用のパノラ2両は1994年後藤工場改造出場。「くろしお」向けと同様の改造であるが、乗務員専用の冷房装置・先頭台車へのスノープラウ・耐ブレーキの設置が改造メニューに追加された。なお、この編成は「スーパーやくも」として薄ベースとした塗装に変更された。

スーパーやくも」以外のやくも編成も格差是正のため1997年アコ改造により灰色黄色帯の緑やくもへと変更された。その後90年代リニューアルから10年経過した2000年代後半に「やくも」では全編成で大規模リニューアル工事が敢行され「ゆったりやくも」化。これにより向こう10年の活躍が保された。

ちなみに、国鉄時代に事故に遭いながらもにならず新製車両並みの復旧を遂げた(番そのままに新製したとも噂された)クハ381-132は長らくゆったりリニューアル工事を受けずに緑やくも色で米子支社に残存していたが、この度リニューアル工事の為に後藤総合車両所に入線し改造出場している。
一方、2009年車両故障を起こしたクモハ381-4とモハ380-90は復旧せずに2011年された。
また、2015年関西エリア289系投入により余剰となった381系が後藤総合車両所に転属。「ゆったりやくもクモハ381-2と日根野から転属してきた「くろしお」増結用モハ380-69に自動解結装置を取り付けスカートの形状を変更した500番台後藤総合車両所より出場した。

「やくも」向け編成の改造履歴は下記の通り。全て後藤総合車両所で施行。

改造後形式 両数 内容
クロ380-0 2 サロ381-0のパノラグリーン改造
モハ380-200 3 モハ380-0に喫煙室設置
クロ381-100 8 クハ381-100グリーン車に格上げ
サハ381-200 7 サロ381-0を普通車格下げ、喫煙室設置
クモハ381-500 7 自動連解結装置の取り付け
モハ380-500 6 WKE400電気連結器を追加
クハ381-100 2 クハ381-1000の振り子度の復元

そんなこんなで活躍していたが、2022年以降、新特急車両への置き換えが表されていた。[1]当初は2023年振り子式車両273系へ置き換え開始予定であったが、新型コロナに伴う財務状況の関係で2024年4月6日へと変更され、2024年6月15日の「やくも1号」の運行を以てに273系への置き換えは了。当初381系を波動用として残さず全する予定となっていたが、ダイヤ改正のリリースにおいて置き換え了後も当面の間(2024年内)はゆったりやくも色の一部編成が待機することが明らかとなり、8月9日18日の最繁忙期に273系の代走として6両編成1本が定期列車2往復での運用されている。
定期列車置き換え前の最後の活躍は国鉄色編成・スーパーやくも色編成・ゆったりやくも色編成の3種類での運用となっている。なお、2023年11月には緑やくも編成も登場し、パノラマ編成の運用が終了する2024年4月5日までは381系4色体制となった。

273系運行開始後の4月9日サブ編成(G編成)がモハユニットH2編成(380-74・381-74)を増結した状態で回送、翌10日にはJ3編成(クハ381-109・モハ381-73・モハ380-573)がクモ145連結のうえ回送された。以後も編成単位での回送が実施されている。また、ダイヤ改正前の3月4日にはE6編成(クロ381-128クモハ381-506)が回送されている。

なお後藤総合車両所で留置されていた予定の381系車両が所定の位置(車両接触限界)に設定されていなかった為入れ替え途中のサンライズエクスプレス285系に接触される事故が発生した。けが人は居なかった模様。

前述の通り全となる予定であるが、米子市が静態保存を検討していた。ただし、JR西日本鉄道車両として運用に入らない場合の譲渡には乗り気でなかったことと、米子市JR西日本後藤工業と協議したところ体にあるアスベストの除去ができないこと(+除去した場合、原を留められない)が判明したため、静態保存は断念することとなった。

北近畿特急(福知山所属車)

2011年183系置き換えのため国鉄色C編成3本(C602604)が287系の代走に入ったのち、2012年日根野からくろしお編成(ノーマル編成)が転属し編成短縮・組み換え(6連6本・4連1本)と国鉄色に変更のうえFE編成として運行開始。
当初は振り子機構を停止していたが2014年6月以降、振り子度を3°にするため1000番台が順次付加された。当時、この1000番台では振り子度を5°から3°にする事で非対応区間においても振り子を使用可にしているという説と振り子が作動している日根野出雲車両と区別する為に付加したという説とが存在している。前者は某巨大掲示板や某百科事典サイトで広まっており、後者鉄道雑誌に記載されている。なお、JR西日本公式サイトでは「利用客からの(山陰福知山特急用381系の)揺れに対する苦情から台車を調整し振り子機構を作動させる事により揺れを少なくし乗り心地を改善している」としている。該当線区は地上設備の制約があるが、3°に制限する事でクリアしている。
なお、公式サイトexitではやっつけの1000番台化作業写真を見る事が出来る(ちなみに、内の形式表記もに印刷したものが貼られるというやっつけ状態である)。

2015年北陸新幹線金沢延伸で余剰となった683系2000番台により置き換えられ、一部は後藤総合車両所に転属し振り子度を5°に戻したため元番号に復番した(クハ381-109113)。
なお、置き換え前の2014年豪雨に伴う機器浸により4両の(モハ380-1044・1055、モハ381-1044・1055)が発生している。このに伴い増結用として留置されていた6両から4両(モハ380-1032・1039、モハ381-1032・1039)が組み込まれた。

主な運用列車(2024年8月9日現在)

過去の主な運用列車

配置及び廃車回送状況(2024年9月30日時点)

後藤総合車両所出雲支所

廃車回送・除籍済み編成

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関連商品

Nゲージ製品のうち、KATOでは振り子機構が再現されている。なお、2023年以降は「くろしお」「やくも」を中心に製品化(再販含む)が進み、JR西日本とのコラボ製品exitも販売した。KATO京都駅店では1000番台「こうのとり」仕様exitを特製品として販売中。

関連項目

脚注

  1. *衝撃の1行「やくも車両新製」 最後の国鉄型特急(2021年5月24日 産経新聞)
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