AH-1 単語

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AH-1とは、ベル・ヘリコプター社が開発した攻撃ヘリコプターである。

概要

ベル社のUH-1を再設計したもので、ベトナム戦争における米軍ヘリボーン(ヘリコプターによる中機動作戦)を支援する兵器として開発された。陸軍海兵隊で採用され、日本台湾韓国でも運用している。

攻撃ヘリとしてはAH-64につぐ知名度があり、米軍が出てくるゲーム映画などによく登場している。称は基本的に「コブラ」だが、一部違う称のタイプも存在する。

西側諸国の標準的な戦闘ヘリコプターとなったAH-1は設計から半世紀が経過しているが、現在でも開発元の米軍を含む11ヵで運用されている。

陸軍では後継機としてAH-64を採用し、AH-1は全て退役しているが、海兵隊では(中身はまったくの別物であるものの)の AH-1Z を現在でも運用しており、今後も良を加えながら末永く大切に運用していくと思われる。

開発・採用までの経緯

時はベトナム戦争のまっただ中の1960年代初頭。アメリカ陸軍はある問題に頭を悩ませていた。 当時、ベトナム陸軍は輸送ヘリコプターによるヘリボーン作戦を多用していた。大規模なヘリボーン作戦に、敵対勢であった南ベトナム解放民族戦線(通称:ベトコン)側は当初、しい反撃を行う事はなかったが、それでも着陸進入時等に機関銃突撃銃などによる反撃を受け、少なからず被害を受けていた。

輸送ヘリ支援するエスコートヘリの必要性を迫られた陸軍部は、輸送ヘリコプター支援する攻撃ヘリコプター開発を検討した。しかし、自分のを荒らされる事を嫌った空軍の強い反対に合ったため、しかたなく既存の輸送ヘリ UH-1 などに武装を搭載した武装ヘリ (ガンシップ) を配備することでお茶を濁す事にした。

しかし、いざ運用してみたところ 機ロケットポッドを装備したことで重量が増加し機動が低下 ⇒ 被弾率が増加し生存性が低下 ⇒ 防弾版 を搭載して防御を向上 ⇒ 重量がさらに増加し機動が低下 という悪循環に陥ってしまう。

さらに重量増加ので巡航速度・航続距離が低下し、護衛すべき輸送ヘリ部隊について行けなくなってしまうという、なんとも本末転倒な事態に。搭載するエンジンを換装してみたりといろいろ手を打ってはみるものの、元が輸送ヘリなだけに根本的な解決にはならなかった。

さらに、1963年ヘリボーン作戦を行った第93輸送中隊が離発着時を待ちせされ、CH-21 強襲ヘリコプター4機と護衛についていた UH-1 ヒューイ 1機の計5機のヘリベトコンの重機関銃迫撃砲によって撃墜されるという大損が発生。この時はアメリカ空軍による支援で事なきを得たものの、アメリカ空軍は武装ヘリガンシップへの過度な依存は危険であると強く摘した。 いや、元はと言えば開発に反対したお前らが悪いんじゃ・・・

そこで陸軍1964年、新火力支援システムAAFSS)計画を立案し、この要仕様内の各メーカーに提示した。内のほとんどのメーカーが参加したこの計画は、翌1965年ロッキード社の案が採用され、AH-56Aシャイアンとして開発が開始された。

AH-56の実用化には長期間を要することはわかっていたので、陸軍はそれまでのつなぎとしての暫定的AAFSSを装備する計画をたて、1965年8月に機体の選定作業に着手した。ベル社は「スースカウト」(モデル207スースカウト。ベル47を基にした実験機で、タンデム座席に小、機首下に旋回式を付けており、1963年に初飛行)の前部胴体とUH-1Cイロコイ・ウォーリアの動システムを組み合わせた「ヒューイコブラ」を開発、暫定AAFSS計画開始後のわずか1ヶ後である1965年9月に初飛行させた。陸軍スースカウトでの実績、UH-1が既に広く使われていること、そして何よりも、化しているベトナム戦争に少しでも攻撃ヘリコプターを送る必要性を鑑みてヒューイコブラを選定、1966年4月、AH-1Gコブラとして110機を発注した。[1]

結局本命のAAFSSであるAH-56は技術的な問題を解決できずに生産がキャンセルされたため、AH-1は暫定攻撃ヘリコプターという名称を外され、名実ともに米軍攻撃ヘリコプターとなっている。(余談だが、AH-56 シャイアン 自体は当時としては革新的な機体であり、当時最先端のコンピュータによる飛行制御、熱線暗視装置や、タンデム複座式の操縦席、被弾率を抑えるために正面投影面積を減らした細長いフォルム、武装をつるためのスタブウイングなど後に登場する攻撃ヘリコプターで標準なるような数多くの要素を数多く持っていた。ある意味過ぎた登場で時代が追い付くことが出来なかった、不遇の名機なのかもしれない。)

AH-1 コブラの特徴

AH-1 は汎用輸送ヘリであったUH-1ベース開発されているが、ベースUH-1 の面ど残っていない。

AH-1 の最大の特徴とも言えるのは、その正面投影面積の少なさである。ベースである UH-1 の全幅が3m弱あったのに対し、AH-1はほぼ3分の1の99cmと非常に短くなっている。これは従来のヘリで並列に配置されていた操縦席を、戦闘機などのように直列で縦に操縦席を置き、前席にガナー(射撃手)、後席にパイロットが載るタンデム複座方式を採用した事によるもので、これにより速度が大幅に上昇し発見率・被弾率も低下した(実際に AH-1 を見てみるとその薄さに驚く)。

ただし、巡航速度は向上したもののメインローターは UH-1 と同くブレードが2枚のシーソー式なので、マイナスG制限による機動制限があり、機動性はあまり高くない。これは、特定の強い マイナスG がかかる機動を行うとローターが破損してしまうというものである。これを受けてか後継機であるAH-64 アパッチや本機バリエーションの最新であ るAH-1Z ヴァイパーブレードを4枚に増やし、より強度が高い全関節方式に変更されており、高い機動性を発揮できるようになっている。

また、武装の面では機首下面のターレットに固定武装として M134 7.62mmミニガン、または M129 グレネードランチャーを搭載出来る。また、現在配備されているAH-1の多くは M197 3身20mm ガトリング砲搭載している。これらターレットに搭載された火器はガナーのヘルメットに同調しており、ガナーが向いた方向に身も連動して向くようになっている。

また、胴体中央左右には4ヵ所のパイロンをもったスタブウイングがありミニガンポッドロケットポッドTOW対戦車ミサイルなどを組み合わせて搭載することができる。
これらの武装は搭載された高度な火器管制システムにより運用されており、従来のガンシップより効果的に運用することが可となった。

日本での運用

日本では陸上自衛隊対戦車ヘリコプターとして1981年から1998年までに90機の AH-1S を調達・配備し、現在攻撃ヘリとして運用している。ちなみに、日本では富士重工業ライセンス生産している。

尚、呼称は AH-1S であるが採用前に研究用として購入した1機以降は、近代修を施した AH-1F に相当する。 1993年以降に引き渡された機体からは "C-NITE" と呼ばれる向上となり、機首の照準器に前方監視赤外線装置(FLIR)が搭載され、戦闘が向上している。また、1997年以前の機体にも少数が修を受けている。

2001年にはAH-1Sの後継としてAH-64Dを選定していたが、諸般の事情により生産は13機で打ち切られ、AH-Xも白紙化されてしまった。(詳しくはAH-64の項を参照。)

AH-1Sは初期に導入されたものから順次退役が進んでおり、2012年時点で既に17機のAH-1Sが用途止され、陸上自衛隊の保有機数は73機にまで減少している。

2022年12月に閣議決定された防衛整備計画では、攻撃ヘリの機無人機に移管し、攻撃ヘリは用途止を進めることが明記されている。[2]

AH-1の系譜

モデル209「ヒューイ・コブラ」

汎用ヘリコプターUH-1ベース開発されたAH-1Gの試作機。
また、AH-1の非武装も「モデル209」の名で販売されており、アメリカ森林警備隊が採用している。

AH-1G

AH-1の最初期生産で、1966年アメリカ陸軍に採用され、ベトナム戦争には1967年に投入、当初の予定通りヘリボーン部隊火力支援においてその効果遺憾なく発揮した。

機首下部にM123 ミニガン2挺か、M129グレネードランチャー2挺、またはそれぞれ1挺ずつを装備でき、胴体のスタブウイングロケットポッドミニガンポッドを搭載することが出来る。

AH-1J

AH-1Gを海兵隊仕様修した機体で、Jと付いているが日本は関係ない。称は「シーコブラ(Sea Cobra)」で、1968年に採用、1970年中頃から配備が行われた。

機体に防加工を施し、エンジンを双発化して出の向上を図ると共に、機首下部の固定兵装が空軍のM61バルカンヘリ用に改造したM197 20mm機関に変更されている。

AH-1Q

AH-1Gの武装(7.62mm ミニガンスタブウイングロケットポッド等)は、歩兵などの非装甲標には十分効果を発揮したが戦車などの装甲標への火力としては不十分だった。そこで陸軍ベトナム戦争後の1973年、AH-1Gに当時最新の対戦車ミサイルであるTOWの運用を可とする修を施したAH-1Qを採用、同時に既存のGにQへの良を行った。

機首下部の武装はターレットを設けて兵装を接続する形に変更された。また、火器管制システムにも手が加えられており、機首にTSU(回転式機首センサー)が追加され、ガンナーのヘルメットに連動してターレットが可動する「ヘルメット照準システム」が搭載されている。

AH-1T

陸軍がGをQ更新したのと同様に、海兵隊1975年にJ対戦車ミサイルTOWの運用を付加するなどの良を加えた。

こちらもAH-1Qと同様にTSU(回転式機首センサー)の追加、ヘルメット照準システムが搭載されている。
また、機体面でもエンジンの強化やローターブレードの大化、搭載燃料の増加、後部胴体の延長などの修が施されている。

海兵隊はAH-1により高い作戦め、後にさらなる発展としてAH-1Wを開発する。

AH-1S

AH-1Qは良が加えられ重量が増加したにも関わらずエンジンは強化されなかった為、機動性が悪化した。そこで1975年にはエンジンの換装など各部に修を加えた AH-1Sを採用、既存のQへの良も行った。

エンジンを強化に換装し、キャノピーをの反射を防ぐためにった形状に変更、計器や航法装置のなど搭載機器の強化を行い、匍匐飛行(NOE)が可となった。

現在西側諸国の多くではこのS以降のバージョンが配備されている。

AH-1E

AH-1Sの武装を強化した機体。機首にターレットを搭載し、M197 20mmガトリング砲を搭載、火器管制システム善などが行われている。

陸上自衛隊も採用試験用に2機購入しており、その1機が陸自広報センターに飾られている。

AH-1F

AH-1S/Eに近代修を加えた陸軍AH-1の最終で、陸上自衛隊はこのタイプを採用している。

FCS、レーザー測遠器、「AN/ASN-128ドップラー航法装置」、IFF(敵味方識別装置)、「AN/ALQ-144赤外線ジャマー」、赤外線抑制装置、新給油システム、新通信装置、HUDの搭載など様々な近代修が行われている。後にC-Niteと呼ばれる修により「FLIR(赤外線前方監視装置)」が搭載され戦闘も可となった。

AH-1W

海兵隊はAH-1Tの性には満足せず、さらなる発展として開発したのがAH-1W「スーパーコブラ(Super Cobra)」である。

エンジンの強化、搭載機器のデジタル化、新対戦車ミサイルAGM-114 ヘルファイア」運用の付与、レーザー測距儀やFLIRを統合した「AN/AWS-1(V)1間照準システム」の搭載など大幅な良が加えられており、これによってAH-1としては初めて全下での作戦行動が可となった。また、AH-1Wは「AIM-9 サイドワインダー距離対空ミサイル」や「FIM-92 スティンガー携帯地対空ミサイル」を搭載することができ、西側の攻撃ヘリとしては初めて戦闘が可となったヘリでもある。

また、機首ターレットに陸軍のEと同じM197 3ガトリング砲を装備している。

その高い湾岸戦争においても発揮され、イラクの悪条件下でも性を遺憾なく発揮し、97台の戦車を破壊、その他104台の車両、16の掩蔽壕、2基の高射砲地を破壊した。

AH-1Z

海兵隊がAH-1Wにさらなる魔改造近代修を施した機体。称は「ヴァイパー(Viper)」。

外見はローターブレードが4枚になったくらいしか変わっていないように見えるが、実際は機体の約95が新規開発あるいは修がなされており、AH-1Wのものをそのまま使っているのはコックピット周辺くらいだけである。

そのためAH-1Zは「今までの AH-1 とはまったくの別物」と言われており、実際ミリレーダーが搭載されていないことを除けば、あらゆる点で AH-64駕する性を有している。なお、ミリレーダー自体は開発されておりオプションで後から載せることも可である。

修内容としては、新第3世代TSUの搭載、コックピット搭載機器の新への換装、新HMDシステムの採用、エンジンの強化、ローターブレードを4枚に変更、新ローターヘッドへの換装、各種防御システムの搭載など非常に多岐にわたっている。

AH-1Zの特筆すべき点は、その搭載する新TSUである。これは従来のTSU(回転式機首センサー)をさらに進化させたもので、最大探知距離35km、識別距離10km(AH-64Dのレーダー探知距離と同等!)を誇るロッキーマーチン社製「AN/AAQ-30ホークアイTSS(標照準システム)」が搭載されている。TSSは第3世代FLIR、低カラーTVカメラレーザー測距器、レーザー照準装置などで構成されている。

FLIRは高解像度の4段階ズームが可で、中~長波赤外線を併用することで砂嵐などの様々な状況下で高い捕捉を発揮することができる。低カラーTVカメラは5軸安定装置によって安定化されており、段階18倍ズームが可である。これらにより標の探知、分類だけでなくAH-64Dでは不可能だった遠距離での標の識別、認識も可となっている。さらに複数標の自動追尾も可であり、動標で3標、静止標で10標の追尾が可となっている。AH-64Dに搭載されているミリレーダーは進歩がく値がるため、AH-1Zではあえてミリレーダーを搭載しなかったのだが、これらの第3世代TSSによりレーダーしでもAH-64D並みの高い捕捉を得ることに成功した(ちなみにAH-1Zもオプションミリレーダーを搭載する事が可である)。

このAH-64D並みの性を誇るAH-1Zであるが、同時に低ライフサイクルコストも重視されている。

例えば、AH-64ローターは1250時間ごとにオーバーホールが必要で4200時間で寿命が来るが、AH-1Zの複合材ローターは定期修理が不要で、尚且つその寿命は約10000時間にも及ぶという。また、燃費もよく、運用費用はAH-64Aと較して約40%ほどに抑えられている。

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関連項目

脚注

  1. *メカニックブックス6 攻撃ヘリコプターのすべて」 江謙介 1985 原書房 pp.27-29
  2. *国家安全保障戦略についてexit 2022.12.16
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