この記事は、失踪した記事作成者のPCの隠し属性フォルダから発見された手記である。
当局は、記事作成者の情報提供を呼びかけるため、「クトゥルフ神話」「ラヴクラフト」と題された手記を公開したが、現在に至るも有力な情報は得られておらず、記事作成者に纏わるあられもない噂だけが、寄せられるに止まっている。
オーガスト・ダーレスとは、米国の怪奇小説家であり、編集者であり、著名なシャーロキアンでもある。
その最大の功績は、出版社アーカムハウスを創設し、コズミックホラーと呼ばれるジャンルを確立。
同社から、多くのホラー小説家を輩出し、師事したラヴクラフトの作品を世に知らしめた事にある。
その中で、クトゥルフ神話を現在のような形に定着させていった。
クトゥルフ神話を題材としたものとしては、多くの小品と、連作『永劫の探求』シリーズが挙げられる。
また、ラヴクラフトが遺したメモや作品を元に、ラヴクラフト&ダーレス名義で出版された作品も複数ある。
シャーロック・ホームズのファンとしても有名であり、そのパロディであり、オマージュである作品『ソーラー・ポンズ』は、高い評価を得ている。
彼の師であるラヴクラフトは、旧支配者の末裔を自称したが、ダーレスも、それに倣った。
祖先であるダレット伯爵に『屍食教典儀』なる魔導書を記させ、自著に登場させている。
彼自身の生年は1909年で、アメリカ北部ウィスコンシン州のソーク・シティで生まれた。
デビュー作は『蝙蝠鐘楼』で、ラヴクラフトが寄稿していた『ウィアード。テイルズ』誌上で発表された。
後に、生前に相応の評価を得られなかった(と、少なくともダーレスは考えた)師、ラヴクラフトの作品を世に出し、相応の評価を与えようと、出版社アーカムハウスを創設した。
現在、ラヴクラフトの遺した影響を考えれば、ダーレスの考えは間違っていなかったと言っていいだろう。
1971年に没するが、その翌年、彼の功績を評価する形で英国幻想文学協会が、オーガスト・ダーレス賞を制定。
但し、これは怪奇小説家としての評価ではなく、シャーロキアンとしての活動が評価されたものである。
個人的な評価をさせて戴ければ、編集、企画者として非常に有能である。
ニーズをよく理解し、それに見合ったものを提供するという商業作家としては非常に高い能力を持っていたようだ。
さらに、二次創作における創造力は非凡なものであり、良くも悪くも、ラヴクラフトや、シャーロック・ホームズの熱烈なファンで、その作品を愛していた事は疑いようもない。
彼に見出されたり、彼の元で修行を積んでホラー作家として大成した作家もおり、その人柄や熱意を高く評価する著名人も多かったという。
クトゥルフ神話に関する限り、彼の評価は真っ二つに割れる事が珍しくない。
その功績は、前述の通り埋もれてしまう可能性のあったラヴクラフトの作品を世に知らしめた事。
罪は、ラヴクラフトの解釈に独自の理論、単純な善悪二元論や四元素説を取り入れた事、及び、アーカムハウスの設立によってクトゥルフ神話を自己の管理化に収めようとした事である。
ただ、この二つに関しては誤解も大きいといわざるを得ない。
善悪二元論はダーレスのみならず、ラブクラフトも関わっていた内容であるし、その他の設定群もクトゥルフ作品を書いた作家達の影響力も大きい。
そもそも、クトゥルフ神話はラヴクラフトだけではじめた物ではなく、作家仲間や友人たちとあれやこれやとお互いの作品を批評しながら面白そうな要素を共有して描かれた作品であり、実際にクトゥルフ作品群には単純なコズミックホラーとは趣の違う作品も多い。
アーカムハウスに関しては、当時ラヴクラフトの死と共に消え行く運命だったクトゥルフ作品を盛り上げる為の出版社である。
この為、ダーレスはクトゥルフ作品に関して公平に接した。
例え自分の作品に対する批判であろうと、訳隔てなく出版していたのだ。
自己の管理下に治めようとしたなんて事は無く、「クトゥルフ作品を書くならアーカムハウスに話を通してね」程度であったし、アーカムハウス以外の作家が書いた作品を見つけても「別に一度ぐらいいいじゃない」と静観してた。
彼個人への評価は様々にあるだろうが、今日、日本のみならず海外でも自由な作風のクトゥルフ作品が生み出される土壌を作った、偉大な人物であるのは疑いようも無い。
わざわざ隠し属性とした、このファイルを開くとは愚かとしか言いようがない。
これを読んでいる貴殿もまた、私同様、後戻りはできないものと覚悟したまえ。
用意するものは解っているな?
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最終更新:2024/04/20(土) 05:00
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