C・ウッドとは (ウッドとは) [単語記事]

C・ウッド（C Wood）とは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。

概要

銀河連邦、宇宙暦 2世紀初頭ごろの軍人・政治家。毒舌家として知られた硬骨漢で、M・シュフランらとともに歴史に名を残した。

作中では「C・ウッド」とあるのみで、ファーストネームは記載されていないか、あるいは「C」一文字のファーストネームであると考えられるが、石黒監督版OVAではクリストファー・ウッド（Christpher Wood）という名前で言及された。なお、M・シュフラン（M Chuff rin）も同様にミシェール・シュフラン（Michel Cuff ren）として言及されている。

経歴

宇宙暦初頭、銀河連邦のもとでの人類の版図の爆発的拡大とともに、その阻害要因としての宇宙海賊が問題となった。西暦末期の地球＝シリウス抗争における私掠船戦術の名残だった彼ら宇宙海賊が辺境航路に跋扈したため、航路の忌避による物資輸送量の減少と安全保障費用による輸送経費の高騰が発生し、いずれは銀河連邦への不信と開拓意欲の減退につながるであろうと考えられたのである。

宇宙暦 2世紀初頭、銀河連邦はついに大々的に宇宙海賊を討伐することとし、ウッドは宇宙暦 106年から2年の月日をかけて実施されたこの討伐戦でM・シュフランら諸提督のひとりとして活躍した。その戦いの詳細は語られていないが、少なくとも華々しいというよりも悪戦苦闘と呼ぶほうがずっとふさわしいものだったらしく、彼の回顧録には以下のように記されている。

……私は前面の有能な敵、後背の無能な味方、この両者と同時に戦わなくてはならなかった。しかも私自身ですら全面的にはあてにならなかった

後には政界入りしているが、そちらでも海賊討伐同様、汚職政治家や企業家を相手に困難な戦いを繰り広げる“ものわかりの悪い頑固おやじ”だったという。

後世の評価

その名声が彼のいかなる戦いぶりによるものかは語られていないが、銀河連邦の軍人として宇宙海賊の討伐に活躍した「ウッド提督」は、その後も数百年にわたって著名な存在だった。

宇宙暦3世紀末、人心が閉塞した銀河連邦で少壮の軍人として活動したルドルフ・フォン・ゴールデンバウムは、“宇宙海賊たちのメイン・ストリート”と呼ばれる危険地帯だったペテルギウス方面において、巧妙な攻撃と降伏すら許さず殺戮する苛烈さによって海賊を滅ぼしつくした辣腕ぶりから“ウッド提督の再来”と賞賛され、のちにゴールデンバウム朝銀河帝国を開闢する基礎となる名声を得た。

その後の時代、ウッドの海賊討伐から700年近く経た宇宙暦8世紀末に至っても、帝国軍のなかで彼の名声は残っていた。宇宙暦796年のアスターテ会戦中、ラインハルト・フォン・ローエングラムが兵士たちから“大昔のウッド提督以来”の戦略家と賞賛されており、ウッドは名将・名戦略家の代名詞ともいうべき存在に昇華していたようである。

宇宙暦8世紀末のこの用法は、ウッドの相手が正規軍ではなく犯罪者である宇宙海賊だった（治安維持であって戦争ではなかった）ことや、ルドルフに対する用法も海賊討伐の辣腕を賞したものだったことを考えると、若干奇妙ではある。自由惑星同盟軍が自らリン・パオとユースフ・トパロウル、ブルース・アッシュビーといった英雄たちを輩出して名将の代名詞としたのに比し、ラインハルト以前の帝国軍がその歴史上にそれを担いうる存在を持っていなかった、ということの証左といえるかもしれない。