CD-iとは、
1.オランダの家電メーカー・フィリップス社(Koninklijke Philips N.V)が提唱したCDの規格
2.1の規格を採用したプレーヤー、もといゲーム機(マルチメディア機)
本項では2をメインに説明する。
元々CD自体はフィリップスと日本のソニーが共同で開発したものだが、CDに映像や音楽、文字など様々なものを搭載しようと「CD-ROM」や「ビデオCD」など派生規格が次々と生まれていた。CD-iもその一種で、利用者の操作内容に応じて『対話的(Intacrative)』に対応可能な規格として生み出された。
これだけだと曖昧かもしれないが、要は再生機器にコンピューターを内蔵することで、ゲームソフトなどが遊べるというものだ。
フィリップスがこの規格を提唱した背景として、80年代後半から様々なメディア(ゲーム・音楽・映画・教育等)を1つの機器に集約する「マルチメディア機」という構想が世界中で練られていた点にある。パソコンよりも安価でゲーム機よりも多機能な機器が将来的に家庭に普及すると見込んでいたからだ。
1991年9月、北米でCD-iがマルチメディア機として登場。後に日本国内でも1992年に登場し、飛ぶように売れ……なかった。
そもそもマルチメディア機としての理想像は「パソコンよりも安価でゲーム機よりも多機能」なのだが、裏を返せば「ゲーム機よりも高価でパソコンよりも性能が中途半端」という解釈にもなってしまう。
ゲームを遊びたければカセットやCD-ROMで動かせるゲーム機を買えばいいし、音楽が聴きたければCD、映像ならVHS(DVDの規格化は1996年)対応の機器で十分だった。
後に登場したPlayStation2はCD・DVDの再生が可能な上、実績のあるPlayStationのソフトも使用可能。更に初期価格は39,800円はゲーム機としては初代PSと同じの上、DVDプレーヤーとしては破格の安さであったため、PS2は発売直後から飛ぶように売れた。このことから、「ゲーム機相応の値段かつ多機能」というのがマルチメディア機として1つの正解だったのかもしれない。
対して、CD-iは700ドル(約87,000円)と高価。同じ高価格帯のゲーム機でも、PCエンジンの方が安価(本体+CD-ROM²で約60,000円)かつ豊富なソフトが遊べることを考えればCD-iが普及しなかったのも頷ける。
しかし、当時のフィリップスには切り札があった。そう、任天堂との共同開発だ。
1991年6月、ロサンゼルスの展示会で任天堂は突如、フィリップスとCD-iの互換性を持つゲーム機(スーパーファミコンの周辺機器)の共同開発を発表した。
スーファミの周辺機器は元々、任天堂とソニーの間で共同開発することが半年前に発表されていた。しかし、この展示会で任天堂がスーパーファミコンの周辺機器のメーカーとしてフィリップスを指名、ソニーは梯子を外される形となった。
フィリップスはCD-iの普及が出来、任天堂も自社のコントロールの下で周辺機器の開発出来るためウィンウィンの関係に見えた。しかし、結局任天堂とフィリップスの共同開発は頓挫。スーファミの周辺機器としてCD-iのゲーム機が表に出ることは無かった。
これでCD-iは終わり……と言いたいところだが、任天堂とフィリップスにはもう一つの契約があった。
任天堂とフィリップスのもう一つの契約、それが版権の貸与だ。
任天堂にはマリオやゼルダの伝説などソフトに関して豊富な版権を抱えている。フィリップスは任天堂とライセンス契約をすることで、任天堂の版権を利用したゲームの発売が認められていた。即ち、「マリオやリンクが登場するゲームをCD-iでプレイする」ことが可能なのだ。
この契約を活かしてフィリップスは4本のソフトをCD-i向けに発売したのだが、ここで注意して欲しいのが「開発・販売に任天堂は一切関わっていない」という点である。
結果、登場したソフトはいずれもクソゲーと呼んでも差し支えないソフト達であり、特にゼルダの3本はスーファミの名作になぞらえて『糞々のトライフォース』と呼ばれる始末である。
4本共に任天堂公式が取り上げた記録が存在しないため、黒歴史と化している。
道中の敵を踏むなどして回避する必要があるのだが、ジャンプした際に上の階の敵に当たってダメージを受けたり、扉から突如敵が出てきてダメージを受けたりと、通常プレイの段階でゲームとしての欠陥が散見している。他のゲームで許される仕様だとしても、マリオのゲームとして許されるかは疑問である。
この2本は姉妹作であり、それぞれゼルダとリンクを主人公とした横スクロールアクションである。
使うボタンは十字キー↑、1・2ボタンだけであるが、ドアの侵入やアイテムの使用などあらゆる動作を2ボタンに組み込んだ結果、ドアの前でアイテムが使えないなど、基本的な動作で問題点を抱えている。
更に、曖昧なグラフィックで足場がわかりずらかったり、敵を倒すとドロップするルピーが自動で手に入らない(1ボタンで剣を振って入手)などステージの配置やシステムにも難が見られる。
そしてホテルマリオにも言えることだが、道中で流れるアニメのクオリティが低い。
こちらはルピーを触れただけで回収出来るなど上2作よりマシな点もあるが、初代ゼルダ以上にマップの切り替えのタイムラグが長く、アイテムの使用や買い物のテンポも初代より悪化している。
その後も1994年までフィリップスは日本国内でCD-iの展開を続けてきたのだが、94年といえば次世代機のセガサターンやPlayStationが日本で発売された年でもある。当然ながらゲームの質・量共に次世代機に敵うわけがなかった。
96年には大容量のDVDが規格化されたことで、映画をはじめとした映像コンテンツはDVDに以降し始め、CD-iは規格としても時代遅れになってしまった。
結果、フィリップスは1998年にCD-iプレーヤーから撤退。販売台数は全世界で57万台であった。
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最終更新:2024/03/29(金) 09:00
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