IS(戦車) とは、第二次世界大戦で活躍したソ連軍の重戦車である。命名はヨシフ・スターリン書記長のイニシャルから。JSとも表記される。
ソ連は戦争序盤にもKVやT-34などの優秀な戦車を配備していたが重戦車のKVは重装甲なのはともかくあまりにも鈍重であることが指摘されていた。さらにドイツ軍がV号戦車,VI号戦車などより優秀な戦車を投入するようになるとその装甲も頼りなくなりソ連でもこれらに匹敵する優秀な重戦車を開発することが求められた。その基本要求を単純にいうと以下の通り。
この無茶振りに対しソ連の戦車設計陣は車体そのものを全体的にコンパクトにまとめ体積を減らし曲面装甲を多用することで単純な装甲厚以上の防御性能を確保することで装甲と機動性をある程度両立させることに成功。さらに中戦車としてつくりまくっているT-34の76mm砲より強力な85mm砲を搭載することでより高い火力を有することになった。これがIS-1(イーエース・アジーン)である。
しかしIS-1には重大な問題が発生した。それはT-34も同じく85mm砲を搭載したT-34/85として量産されることが決定し中戦車と同程度の火力しか持たないことになってしまったのである。さらに敵のVI号戦車がつかう88mm砲に対して射程で劣り勝利を得ることは難しいとされてしまった。というわけでさらに強力な122mm砲を搭載し機動性はそのままに大口径砲の巨大な火力で圧倒するよう生まれ変わることとなった。これがIS-2(イーエース・ドヴァー)である。しかし元々85mm砲を搭載する予定の砲塔に無理やり122mm砲を搭載したためわずか28発の砲弾しか搭載できなくなってしまった。だがそれを補って余りある大火力は直撃すればドイツ軍の誇るVI号戦車を粉砕し対歩兵戦闘でも絶大な威力を発揮した。それに物量で圧倒するソ連軍にとって弾丸を使い果たすころには2両目3両目が来てくれるのである。
IS-2は優秀な戦車であったが前述の問題点や車体の曲面化の不徹底を指摘されるようになった。そこで、コンパクトで優れた傾斜装甲を有する重戦車というコンセプトをさらに徹底化した車両を開発することとなった。それがIS-3(イーエース・トゥリー)である。122mm砲の大火力とVI号戦車をも凌ぐ重装甲に優秀な傾斜にもかかわらずドイツ軍の中戦車であるV号戦車と同程度の重量しかないという化け物であり実物は1944年末に完成。戦闘には参加しなかったものの戦後のパレードでその姿を見た西側諸国に衝撃を与えその戦車開発に大きな影響を与えるほどであった。
IS-2の成功は小型化による軽量化と大きな機動性にあったがせっかくの重戦車なのでそのままさらに大型化・重装甲化できないかという要望も出るようになった。というわけで重量制限を取り払ってできる限り強力な戦車にしてみようというコンセプトで開発されたのがIS-4(イーエース・チティーリ)である。これにより目論見どおり強力な装甲と大型化により設計に余裕ができソ連戦車共通の弱点であった居住性の悪さも改善された。だがその重量が仇となり扱いづらくコストもIS-2,IS-3にくらべ数倍するという問題から早々に退役した。
IS-2,IS-3は成功した戦車であったが無理な小型化は居住性の極端な悪さや砲弾搭載数の制限に仰俯角の不足などの問題を生じさせていた。またそれを改善しようと現実的に可能な限り大型化したIS-4は欠点は解消されたものの大型化による弊害が大きく成功とはいいがたかった。そこで、両者のよいところどりを目指しIS-3を元にほどほどの大型化を目指したのがIS-8である。開発途中でスターリンが死亡しフルシチョフ時代となったためT-10と改名されたが、これは大きな成功を収め8000輌も生産される世界で最も生産された重戦車という記録を打ち立てることになった。しかし対戦車ミサイルの発達により重戦車というジャンルそのものがオワコン化したため後継は生まれなかった。しかしソ連軍は1993年までこの戦車を配備していたというのだから驚きである。
IS-3Mに至っては第三次中東戦争でエジプト軍が使用し、イスラエル軍のM48パットンA2と一戦を交える事となった。M48パットンA2の90mm砲を弾き返す事は出来たのだが、未熟なエジプト戦車兵は後部の燃料タンクを付けたままで戦闘してしまった為に、逆に返り討ちに遭いパニックになってしまう事態に陥る。僅かながらイスラエル軍を苦戦させる事は出来たが、結局鹵獲される始末。が、鹵獲した方のイスラエル軍も部品供与の問題からトーチカ代わりにとしてヨルダン河に埋められた。
IS-3は最終的に北方領土の国境付近にトーチカとして埋められると言う余生を送った・・・のだが、これだけでは終わりでない。なんと2014年のウクライナ内戦で親ロシア派の民兵が野外展示されたものを修理して無理やり動かして投入すると言う暴挙(?)に。もう古い戦車だから砲弾は使えないだろう・・・と思ったら、使える砲弾があったのだ。第二次世界大戦後に配備されていたD-30榴弾砲の砲弾が流用出来る・・・この戦車の余生はまだ終わりそうにないのかもしれない。
第二次世界大戦時のソ連軍の戦車 | |
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軽戦車・快速戦車 | BT(戦車) / T-26 |
中戦車 | T-28中戦車 / T-34 |
重戦車 | T-35重戦車 / KV-1 / KV-2 / IS(戦車) |
掲示板
73 ななしのよっしん
2022/07/20(水) 20:58:57 ID: 4MpActS8SA
結局どっか尖らせると、リソースのしわ寄せは他の場所にいくわけね。
虎は速力。蛍は装甲。スターリンは…弾数と居住性、そしてサバイビリティか…?
ソ連の兵器は、脱出やダメコンへの配慮がいい加減で戦死者増加の一因となった。
後、でかさに比してエンジンと足周りが貧弱で、泥道や山あいでは不利だったことも。
うまくいかないもんだね。
74 ななしのよっしん
2022/07/20(水) 21:03:36 ID: VUEM4aw+L3
>あとソ連のプロパガンダと言うけれど我々の「真実」はドイツ軍の証言をもとに造り上げられた西側にとって都合のいいものということをお忘れ亡く
ナチス神話の多くがプロパガンダだったことが戦後明らかになって、最近も戦車エースの捏造エピソードとかが否定されてるからな…
あと日本が枢軸側で連合国に対抗意識持ってたこともあるんだろうけど、この手の神話は日本にしか流布してないローカルなものも結構あるし
75 ななしのよっしん
2023/08/27(日) 11:05:21 ID: Amv+wEtoab
ロシア軍、ウクライナ戦争でこの戦車まで引っ張り出してきたとか…
さすがにトーチカ用かもしれんが
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最終更新:2024/03/29(金) 09:00
最終更新:2024/03/29(金) 09:00
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