VXガス単語

ブイエックスガス

1.6千文字の記事
  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • LINE
医学記事 ニコニコ大百科:医学記事
※ご自身の健康問題に関しては、専門の医療機関に相談してください。

VXとは、猛神経剤である。人類が開発した化学物質のうち、最も性の強い物質とされる。

概要

有機化合物
VX
VX
基本情報
英名 VX
化学 C11H26NO2PS
分子量 267.37
化合物テンプレート

VXは、有機リン化合物の一つで、化学兵器V剤[1]の一種。VXガスとも呼ばれるが、常温では液体で、揮発性も低く、残留性が高い。臭で、噴や接触によって呼吸器や皮膚から吸収される。コリンエステラーゼを阻して神経奮させる作用をもつ(後述)。作用機序が同じ化学兵器としてサリンが知られているが、VXはそれと較してなお性が強く、殺傷が高い。

1952年イギリス合成された。のちにアメリカ情報提供されると、兵器として大量に生産されたが、実際に使用されることはなかった。1997年化学兵器禁止条約発効により、現在は保有していないと考えられる。

1994年日本宗教団体オウム真理教合成。同年10月弁護士滝本太郎氏の殺的に使用された(殺人未遂)。さらに同年12月駐車場経営者VX襲撃事件(殺人未遂)、会社員VX殺事件(既遂)、翌年1月オウム真理教被害者の会会長VX襲撃事件(殺人未遂)で使用された。会社員VX殺事件で犠牲となった大阪府会社員は、VXによる初の犠牲者とされる。

2017年2月朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮)の政治家金正男氏が、マレーシアクアラルンプール空港で暗殺された。マレーシア警察は、同氏殺にVXが用いられたと表した。ちなみに、化学兵器禁止条約により、現在192かでVXを含めた化学兵器開発、製造、保有そして使用が禁止されているが、北朝鮮はこれを締結していない。

なお、地下鉄サリン事件などの報道のなかで、有機リン系の化学兵器が容易に合成できるという誤解が生まれたようだが、実際には高度な知識、専門技術を必要とする。

毒性

VXは、非可逆性コリンエステラーゼ阻に分類される。副交感神経系や運動神経終末などにあるコリンエステラーゼ(神経伝達物質のアセチルコリンを加分解する酵素)のエステル部をリン化する。これにより酵素活性が失われアセチルコリン分解されなくなると、神経終末アセチルコリンが充溢してムスカリン受容体やニコチン受容体が持続的に刺される。結果として、縮瞳、頭痛、流、嘔吐、腹痛下痢、視覚障害、呼吸困難、徐脈、失禁、意識障害、全身痙攣などの症状を呈し、死に至る。

こうした有機リン化合物による中の治療には、プラリドキシムヨウ化メチルPAM:パム)とアトロピンの2剤を投与する。PAMは、コリンエステラーゼを再賦活化(酵素の活性を回復)し、アセチルコリン分解できるようにする。アトロピンは、アセチルコリンムスカリン受容体への結合を競合的に阻することで、各症状を緩和する。ただし、有機リン化合物曝露後は、時間の経過とともにエイジング(経時的な不可逆変化)が起き、PAMが徐々に効かなくなる。神経障害が残ることを避ける意味でも、できるだけ期に投与することが望ましい。なお、映画ザ・ロック』にはアトロピンを心臓注射するシーンがあるが、実際は心臓注射する必要はない。

関連動画

関連項目

脚注

  1. *V剤はほかにVE、VG、VMなどがある。なお、VはVenomous(有な)に由来するとされる。
この記事を編集する
関連記事

親記事

子記事

  • なし

兄弟記事

掲示板

おすすめトレンド

急上昇ワード改

最終更新:2024/03/29(金) 10:00

ほめられた記事

最終更新:2024/03/29(金) 10:00

ウォッチリストに追加しました!

すでにウォッチリストに
入っています。

OK

追加に失敗しました。

OK

追加にはログインが必要です。

           

ほめた!

すでにほめています。

すでにほめています。

ほめるを取消しました。

OK

ほめるに失敗しました。

OK

ほめるの取消しに失敗しました。

OK

ほめるにはログインが必要です。

タグ編集にはログインが必要です。

タグ編集には利用規約の同意が必要です。

TOP