EVモーターズ・ジャパン

EVモーターズ・ジャパンとは、日本で電動商用車の設計・販売を行う自動車メーカー、メガベンチャーである。

概要

2019年4月に設立。福岡県北九州市若松区に本社を構える。当時、ディーゼル車からの改造や海外輸入の電気バスは極少数存在していたが、純然たる国内設計・国内販売・新造の電気バスメーカーは国内初だった。

国内で設計を行い、中国のメーカーが受託生産するファブレス企業である。なお、若松区の港湾地帯に最終組み立て工場を中心とする複合施設「ゼロエミッション e-PARK」を建設中。2023年に工場を稼働し、将来的に年15000台以上の出荷を目指している。

設立当初は中国勢に押され知名度が低かったが、大阪・関西万博輸送を担う大阪シティバスから200台近い大型発注を受けたことで一気に注目を集めた。その後も名立たる大企業や鉄道・バス会社から次々と出資を受け、全国の事業者へ納入が続いている。
2022年4月に那覇バスで小型路線バスの営業運転を開始した。大型車の導入は2023年1月の伊予鉄バスが初となる。

更に活動は自動車業界に留まらず、2025年からは関東鉄道の車両を使用したレトロフィット蓄電池電車の実証実験にも参画する。

特徴

• ファブレス企業
  海外を含め自社工場を持っていない。国内で設計し、威馳騰汽車(Wisdom Motor)・南京恒天嶺鋭汽車(YANCHENG)・愛中和汽車(VAMO)など、複数の中国メーカーに製造を委託している。国産電気バスは2025年に営業運転を開始したいすゞ・エルガEVが初となる。
  これはコストダウンは勿論のこと、ベンチャー企業であるが故莫大な初期投資は難しかったものと思われる。また、2020年に中国政府がEVへの補助金をカットしたことも影響したとされている。国外に活路を求めたメーカーにとって日本は先進的にして魅力的な市場であり、好条件で契約することができた。
• 独自のインバータ制御技術
  社長がバッテリーやインバータのエンジニアだったこともあり強みにしている。これによりバッテリーの劣化を抑え、航続距離を延ばすことにも繋がる。
• 軽量化
  ステンレス製シャシーを中心に、CFRPやアルミハニカムの床材を採用している。
• バイ・ワイヤ制御
  将来の自動運転を見据え、運転手の操作は電気信号に変換され制御される。

車種

営業運転に投入されたバス・トラックに限り記載。

• F8 Series2-City Bus 10.5m
  全長10.5m級の大型路線バス。国内工場でモデルチェンジ車の生産を予定している。国土交通省標準仕様ノンステップバス認定取得車。
  ライバルはいすゞ・エルガEV/日野・ブルーリボン Z EV、BYD・K8、アルファバス・E-CITY L10など多数。
• F8 Series2-City Bus 8.8m
  全長9m級の中型路線バス。地方都市への導入を想定している。国土交通省標準仕様ノンステップバス認定取得車。
  ライバルはBYD・J7、アルファバス・E-CITY L9、ヒョンデ・ELEC CITY TOWNなど多数。
• F8 Series4-Mini Bus 6.99m
  全長7m級の小型コミュニティバス。大阪・関西万博では一部の車両が走行中ワイヤレス給電車に改造され、「e-Mover」で使用された。国土交通省標準仕様ノンステップバス認定取得車。
  ライバルはBYD・J6。
• V8-Micro Bus 5.99m/6.99m
  国内初のEVマイクロバス。ノンステップ仕様も用意されている。送迎バスを想定。
• E1乗合 エアサス仕様
  販売予定の小型トラック「E1」と共通設計で、荷台をノンステップバス仕様に変更した。オンデマンド交通への投入を想定し、普通免許で運転できる。
  ライバルはアルファバス・E-CITY L6、カルサン・e-JEST。
• F8 Series6-Coach
  全長9m級、国内初の中型EV貸切バス。観光バスや送迎バスを想定している。大阪・関西万博では自動運転車にも抜擢されたが...
  
• V8-Coach Bus
  全長12m級、国内初の大型EV高速バス。伊予鉄バスが松山空港リムジンバスに投入した以外での導入例はない。

その他、アルファバス・E-CITY L6を改造して伊予鉄バスの自動運転レベル4対応松山観光港連絡バスに投入した。更に電動バイクや急速充電器も販売している。

問題点

品質問題

早期に導入し少数株主でもある伊予鉄バスでは導入直後から故障が頻発しており、運行に支障を来していた。営業運転中にシステムが落ち立ち往生するという致命的なトラブル^[1]もあったようである。
大阪・関西万博の開幕と共にEVMJ製バスが一斉に営業入りすると、問題は全国に拡大。運行停止や返品・事故が相次ぎ^[2]、9月にはとうとう国土交通省より全車一斉点検の命令が下った。結果は3割以上・100台超に不具合が見つかるという衝撃的なもので翌月には本社に立ち入り検査が入る^[3]など、会社を取り巻く情勢は急速に悪化している。ちなみに、前述のF8 Series6-Coachによる自動運転車(阪急観光バス)も6月に故障し、復帰することなく閉幕を迎えた。

これについては中国工場での品質管理はおろか、意思疎通すら取れていないとの報道がある^[4]。もし本当なら勝手に設計変更された低品質な車が次々と輸入され、対応も儘ならぬまま納入している可能性がある。もっとも、発注元であるEVMJも監督責任は免れない。
更に、委託先の主力であるWisdomはEVMJ設立の直後に設立されており、こちらも実績のあるメーカーとは言い難い。にもかかわらず万博で大量採用に至った背景として、政治介入を指摘する報道もある。トラブルは車両だけに留まらず充電器でも発生しており、立ち入り検査後は出荷を停止しているとされる。

一連の問題に対し、11月28日付でリコールを発表した。EVMJは自社生産でなければ輸入代理店でもない並行輸入車のためリコールの対象外だが、ブレーキ関連の重大な欠陥は本来リコールの対象になるとして国交省から行政指導を受けていた。

事業計画の遅れ

最終組み立て工場は2023年末に工場の一部を含む第一期工事・2024年末にオフィスなどを含む第二期工事が完了したものの、サプライチェーンの乱れや資金不足の影響で最終組み立ては未だに実現していない。この影響で2025年度より生産開始予定だった新型10.5m級路線バスもまだ登場していない。

カタログ上でこそラインナップは充実しているが、その中には極少数の受注に留まっている車種が複数ある。更に、販売予定とされたトラックは1台も生産できていないのが現状である。

関連動画

関連静画

募集中

関連項目

• 電気自動車
• 自動車製造会社一覧
• 路線バス

関連リンク

EVモーターズ・ジャパンHP

脚注

1. *ソース元(アーカイブ版)
2. *ソース元(アーカイブ版)
3. *ソース元(アーカイブ版)
4. *ソース元(アーカイブ版)