F-104とは、ロッキード社の開発した超音速戦闘機である。愛称は『スターファイター』。
第二世代戦闘機であり、アメリカ空軍や航空自衛隊、ドイツ空軍、ギリシャ空軍、イタリア空軍など西側各国に広く配備されていた。現在、軍用機としては全機退役しているが、少数機が民間アクロバットチームのスターファイターズで運用されている。
朝鮮戦争開戦直後、アメリカ軍はF6FやF4U、F-51と言った従来のレシプロ戦闘機に加え、直線翼ジェット戦闘機であるF-80シューティングスターおよびF-84サンダージェットを投入し、レシプロ戦闘機しかなかった北朝鮮空軍を効果的に抑え込んでいた。
しかし1950年10月に参戦した中国がMiG-15戦闘機を投入してきたことをことにより、アメリカの制空権確保は雲行きが怪しくなってきた。初の遭遇戦ではパイロットの練度が高く、統制のとれていたF-80が返り討ちにすることに成功したものの、速力や加速力で圧倒的に劣るF-80やF-84では対抗できないことが予想された。
この危機を乗り切るため最新鋭のF-86を投入し、MiG-15に対抗することになったが、F-86と比較してもMiG-15は加速力や上昇力、スピードで上回る性能を持っており、これに対抗するためF-86もE型の全遊動水平尾翼やF型のエンジン強化を初めとする改良を重ねていったが、パイロットはそれらの点を羨ましがっていた。
ロッキード社の設計士であるケリー・ジョンソンは前線で戦うパイロットの話を聞き、小型軽量な機体に大出力エンジンを搭載した白昼制空戦闘機を設計してみようと考えたことによりプロジェクトがスタートした。
エンジンはアフターバーナー付きのJ-79ターボジェットエンジンを一基搭載する。マッハ2級の高速性能を重視するため、後退翼を採用せず、主翼には幅の短い直線翼を採用している。
主翼は翼厚比わずか3.36%の薄翼で、前縁先端の厚みは0.25~0.13mmと刃物なみなので、地上では危険を避けるためにゴム製のカバーをかける。[1]
空気取入口には固定式のショックコーンが設置されており、これによってマッハ2付近における気流の乱れによる吸気効率の低下を最小限におさえることができ、音速の2倍以上の速度性能を発揮できるようになった。公開当初はこの構造は機密扱いで、見えないようにカバーが取り付けられていた。
機体の重量が軽く、その割に推力の大きなエンジンを搭載するため、加速性能や上昇力は当時としては群を抜いており現在ですらある程度通用するレベルにある。反面翼の面積が小さいため翼面荷重が大きく旋回性はかなり悪い。航空自衛隊はフラップを空戦フラップとして使用するなどの対策を施し格闘戦能力を向上させている。
また、垂直尾翼にT字配置された水平尾翼が急旋回時に主翼の後流に干渉して操縦不能となる事態を防ぐ為、一定の迎え角をとると強制的に機首を引き戻すキッカーという機構が装備されている。このことをきちんと把握していないと、低空飛行時に機首の引き起こしができずに地面に激突する危険性があり、何人かのパイロットがそれによって命を落としている。
機首にM61バルカン砲を1門装備し、AIM-9サイドワインダー空対空ミサイルやロケット弾などを搭載可能。バルカン砲は、F-104の開発当初から搭載することが決定されていたが、アメリカ空軍が実戦配備を急がせたため、機材としての熟成が進んでおらず故障が多発したためF-104Aでは搭載が見送られたほか、航空自衛隊向けの機体では、沖縄返還による追加調達機以外は燃料タンクを設置し、機銃を換装キット形式で調達していたが、予算の問題で全ての機体の分は調達できなかった。また、イタリア空軍向けの機体ではAIM-7スパロー中距離空対空ミサイルを搭載するためレーダーを改造しており、イルミネーターを載せるため撤去されている。後に延命工事を受けた際に機器の小型化によってバルカン砲の装備が復活したが、その後のアップデートにより再び撤去することになった。
開発元であるアメリカ空軍では、当初の発注元である戦術航空軍団(TAC)では戦術転換によって、F-104への興味を失っていたが、F-102の後継機として開発していたF-106の開発が遅れたため、F-106が配備されるためのつなぎとして採用されたが、公式に明言されているSAGEシステム対応機材が搭載できないことや航続距離が短く空中給油に対応していなかった事で防空軍団(ADC)からは短期間で退役させられた。
戦術航空軍団ではF-104Cをベトナム戦争などに派遣したものの、北ベトナム空軍はF-104との交戦を避けたため空中戦の機会はほぼなく、逆に地対空ミサイルの餌食になったり、中国の領空にうっかり侵入した機体が撃墜されたり、撃墜されたF-104の捜索に出動した機体が空中給油機と接触事故を起こして墜落など、さんざんな目にあった。
しかしながらアメリカ空軍での不遇をよそに、NATOでは主力戦闘機として各国に大量に配備され、ワルシャワ条約機構軍の侵攻に備えることになった。
ドイツ空軍では、本来は高高度高速迎撃戦闘機であるこの機体を低空で近接航空支援を行う戦闘爆撃機として運用することになったが、ヨーロッパ特有の悪天候に不慣れなパイロットが多かったこともあり、大量の事故損失機を出す結果となってしまった。このため、「未亡人製造機」などと不名誉な渾名を付けられるにいたった。また、滑走路を破壊された時でも発進できるよう、ロケットエンジンを装備してゼロ距離射出する試験も行われていた(下記動画参照)。
イタリア空軍では、発展型であるCL-1200への搭載を目的に開発された新型レーダーを装備したF-104Sを運用していたため、AIM-7スパロー空対空ミサイルが運用可能であり最高の空戦性能を有するにいたったが、ユーロファイターの開発が遅れたことや、繋ぎであったトーネードF3の運用コストが、当初の予算でまかないきれない額に高騰したことなどで退役が遅くなり、繋ぎの繋ぎであるF-16ADFと入れ替わる2005年まで運用されていた。
そのほかパキスタン空軍にも配備され、インドとの二度の紛争(印パ戦争)ではインドもF-104との空中戦を避けたほか、パキスタン側もF-104とMig-21の対戦を避けていた。
航空自衛隊では上述の通りフラップを空戦フラップとして扱うことにより、強引に旋回性をあげ、僚機と連携することで、訓練でF-15を落とした猛者も現れた。
1986年にF-15Jと入れ替わるかたちで航空自衛隊からは退役したが、一部の機体は米国からの無償供与であったので米国に返却、そこから台湾空軍に再配備されるという運命をたどった。また、そのほかの状態のよかった機体はドローンターゲット(無人標的機)として改造され、UF-104Jのコードを与えられてミサイルターゲットなどとして全機「撃墜」された。
掲示板
37 ななしのよっしん
2020/11/27(金) 09:10:13 ID: cP1Pz8cVWl
自動要撃管制システムとのデータリンクが積めなかったために迎撃機としても失格だったとは言われるけど、後に日本ではBADGEシステムとの連携が実現してるしイタリアでもF-16以上のダッシュ力と高い上昇率は運用末期まで評価されてたはず
低空侵攻による阻止攻撃がしたかったドイツはご愁傷様だけど後のトーネードにバトンを渡すまでの間、高い事故率と引き換えに冷戦期における重要な任務を果たした形になるのかな
38 ななしのよっしん
2022/04/09(土) 18:36:33 ID: owf6+Y63UY
迎撃機は「狭い防空エリアを守る場合」と「広い防空エリアを守る場合」の二つの方向性があるけど「当時のアメリカの」迎撃機に求められたのは後者
その為にはF-101のような複座の大型機にするか、F-106のように当時の真空管を使った重く複雑なシステムを載せてSAGEに繋ぐかだったのだと思う
電子装備は時代が下れば小型化できたと思うけどそれ以前にICBMの発達で長距離爆撃機対策だったアメリカ本土迎撃機の需要自体が大幅に減って次世代機すら作られなかった
SAGEがなくとも航続距離の問題や遠方からレーザー誘導ミサイルや空対空核ロケットを撃つような空戦に着いていけたかという問題もある
一方で海外同盟国の防空エリアは北極海沿岸ほど広くはないしSAGEのようなシステムは次の世代まで存在しないし経済的にも簡素な機体は歓迎される物だったのだろう
39 ななしのよっしん
2023/08/03(木) 20:21:48 ID: ljpsFl+rr3
f-35やv-22が欠陥とか呼ばれるけどこいつほどじゃ無いしこいつはマジモンの欠陥機だと思う
戦時下なら許容されるんだろうけど平時で使っていい飛行機じゃない
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最終更新:2024/04/24(水) 11:00
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