HTML Living Standardとは、常に最新のHTML標準仕様である。管理団体はWHATWG。
HTML Living Standardは2019年から統一されたHTML標準となった。それまでは老舗的存在であったW3Cが管理するHTML5と分裂した状態が続いていた。
初期のHTML規格は1990年にCERNから公開された。その後1993年にIETFからHTMLバージョン1.0の仕様書が公開される。
1995年からHTML標準の管理はW3Cに移った。HTML3.0の策定が行われたが破棄され、1997年1月14日にHTML3.2がW3C勧告として発表された。1997年12月18日にはHTML4.0が、1999年12月24日にはHTML4.1がW3C勧告となった。
その後、(2000年から2009年までW3CはXHTML推しだったためか)W3CがHTML標準の改訂に消極的になりHTML標準の改訂は停滞。不満を持ったWeb開発者たちが2004年にWHATWGを結成し、HTML5の策定を開始した。WHATWGが策定を始めたこのHTML標準が後のHTML Living Standardである。
W3C側も2007年にHTML5の策定を開始しWHATWGと共同で作業をしていたが、手続きや組織の枠組みなどについて主導権争い対立が発生。2011年10月にWHATWG側はHTML5からHTML Living Standardに改称し、2012年からは別々に作業するところとなった。しかし、実際にW3Cが勧告として発表したHTML5(2014年10月28日), HTML5.1(2016年11月1日), HTML5.2(2017年12月14日)は、いずれもHTML Living StandardにW3C側で変更を加えたものに過ぎなかった。
W3CのHTML5に準拠していたのがInternet Explorerだけだったのに対し、HTML Living Standard対応ブラウザには(WHATWGの設立に関わったMozilla, Apple, Operaのブラウザである)Firefox, Safari, Operaに加えて2010年代の当時シェアを急増させトップに躍り出たChromeが名を連ねていた。さらには2015年に登場したMicrosoft Edgeも(Chromeと同じBlinkエンジンになる前から)HTML Living Standardを参照していた。
そのためWHATWG側の影響力が強まっていき、最終的に2019年5月28日にW3CとWHATWGが標準をHTML Living Standardに統一することに合意した。この合意に従ってW3C側はHTML5.3の策定を中止した。
上記合意でHTMLだけでなくDOMの標準化(DOM Living Standard)もWHATWG側が行うことになったが、CSSはW3Cの管轄のままである。
2021年1月28日付のW3Cの発表で、WHATWGの2021年1月29日版HTML Review DraftをW3Cの勧告として支持することが示され、名実ともにHTML標準は一本化された。同時にHTML5.2や5.3はW3C勧告から外れ
、今後もHTML5の改訂版が出ることはない。
明示的には書かれていないが、HTML Living Standardが後述のように日々改訂されるローリングリリース方式(動的)であるのに対し、W3CはWHATWG Review Drafts of HTML and DOMから年1回特定の版を勧告に決めるというLTS的(静的)な立場を取るということで差別化して、辛うじてW3Cの体面を保った形となっている。
HTML Living Standardはバージョンの概念を持たない。日々改訂され、改訂された時点からその内容が標準となる。
HTML5に限らないが標準規格の策定は参加企業の綱引きで話が進まないことが多く、リリース延期が続いたあげく時代遅れになってお蔵入りしたものも少なくないので、そういった過去に対する反省もあるのかもしれない。
以前からHTML/CSSについては、公式勧告が出ても実際にブラウザが対応するまでにはタイムラグが存在していた。実際、ブラウザが完全対応する前に次の勧告が出るということは珍しくなかった。
ましてやHTML Living Standardは上述の様にローリングリリースである。更新されたその日にブラウザ側で対応するということはありえないし、実際反映されるまでには月単位以上の時間がかかることは想像に難くない。
結局の所、各項目について各ブラウザの対応状況を調べるという作業が必要であることには違いがないのである。
ローリングリリースなので書いた先から時代遅れになってしまうが、2020年8月現在ということで参考リンクを提示しておく。
HTML標準化に関わるメンバーはW3C側とWHATWG側に共通する人員は多く、W3CがリリースしたHTML5(およびそのマイナーアップデート)も実質的にはHTML Living Standardに準拠したものであった。つまり両者にそれほど差はなかったことになる。
両者にどうしようもない非互換性があったというならともかく、内容に大した違いがないのにどうして2012年から2019年の7年もの間分裂状態を続けなければならなかったのか。そもそも改訂に消極的であったW3Cが2007年に3年遅れで規格策定を始めなければならなかったのか。そのままWHATWGに任せてしまえば良かったのではないか。
W3C側は2000年以降XMLベースのXHTMLに移行させたかったという思惑があったのでHTML5の策定に消極的であったことは理解できるとしても、XHTML2.0の策定は2009年に打ち切られており2012年に分裂することの理由にはならない。
文献などに明確に書かれているわけではないが、おそらくはお金の問題だったのだろうと思われる。
W3CにせよWHATWGにせよHTML標準の策定に関わるにはそれぞれの会員にならなければならないが、WHATWGの会費は無料であるのに対し、W3Cは高額な会費が必要である。
*会費額の決定につきましては、年間の売上額 (年商) を基準に:
営利企業で年商57億5000万円以上 (税込) であれば,会費額は年間 740 万円(税込)
営利企業で年商57億5000万円未満 (税込) であれば,会費額は年間 85 万円(税込)
非営利組織や教育機関,行政組織等,その他の場合も,会費額は年間 85 万円(税込)
といった取り扱いになります。
HTML5の仕様書に公式の和訳がないのに、会費の説明はばっちり公式日本語ページがあるとかどういうことなの?
インターネットの黎明期である1995年から一貫してHTML標準を管理してきたW3Cには相当数の企業から会費が集まっていたと思われる。XHTMLが思ったように普及しない中、人気がWHATWGのHTML標準に移っていき、HTML標準化の利権を奪われそうになったから、分裂によりユーザーにもたらされる混乱を顧みず対抗したと考えると腑に落ちるものがある。上記のような高額な会費を徴収しておいてHTML標準策定やめましたでは、退会だけでなく「過去に払った会費を返せ!」と訴えられかねないともいえる。
W3Cが「ご立派な W3C 標準化プロセス」にこだわっていたことも、プロセスへの参加権が「主力商品」であったと考えると自然なこととして理解できる。
2020年現在でこそ様々なものがオープンソース化されて無料で入手できるようになっているが、現在オープンソースになっているものも、遡れば有償ソフトウェアからの資本や人的知的資源が元になっているものが多い。W3CがHTML標準化を始めた1995年の時点では無料で手に入るものなどほとんど何もなかったことを考えれば、W3Cが上記のような体質になったことはW3C自体の問題ではないともいえる。
と、フォローを入れておく。
掲示板
1 ななしのよっしん
2021/02/28(日) 17:30:42 ID: bW1il+/Qw/
W3C発行のHTMLがすべて廃止された日
https://
2021年1月28日に、WHATWGのHTML Review DraftがW3C勧告となりそれと入れ替わるタイミングでHTML 5.1とHTML 5.2が同時に廃止されたとのこと
HTML5とそれよりも前に策定されたHTML/XHTML仕様は2018年3月に一斉廃止されているので、これを以てHTML Living Standardへの統一が果たされたことになる
2 ななしのよっしん
2021/06/21(月) 13:46:03 ID: QjGWJLEtCn
これからのW3Cの役割って何なの?使われるのかわからない決済規格とかIoT規格作ってくの?
3 ななしのよっしん
2021/07/28(水) 16:06:03 ID: bW1il+/Qw/
WebAssembly、WebAuthn、WebRTC、WebTransport、WebCodecs、WebGPU、WebXR
こういう有望そうな技術を煮詰めて規格策定に勤しんでるぞ>W3C
提供: 神楽
提供: 黄身丸
提供: 核砂糖入り紅茶
提供: color=red(無気力P)
提供: Pyun Pyun
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最終更新:2025/04/14(月) 07:00
最終更新:2025/04/14(月) 07:00
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