115
91 ななしのよっしん
2014/04/17(木) 23:37:10 ID: WWnw7FeP1d
「ひげ.....寝ぼけてるんですか!」
強烈なビンタが頬に飛んでくる
92 ななしのよっしん
2014/04/19(土) 17:16:48 ID: vicb1PCoTE
そこに立っていたのは朝青龍だった。
彼は朝青龍の渾身のビンタを食らったのだ。思い切り吹き飛ばされながらも彼は、かつて世界を救った力士に出会えた喜びを噛みしめていた。
93 ななしのよっしん
2014/04/19(土) 17:25:14 ID: cSYpUsyTsL
94 ななしのよっしん
2014/05/26(月) 23:12:16 ID: zMlj0Hs9U1
朝青龍の祖国モンゴルでは日本のとあるアニメが大流行していた。
彼の目当てはそのアニメのヒロインの同人誌だったのだ。
95 名無し
2015/05/22(金) 08:45:11 ID: 1VVNz9djXk
そのアニメの名は『そば処UDON』。
うどん製造が禁止された近未来の日本で、そば処に偽装した店舗でうどんの提供を行う少女、おつゆの戦いを描いたアニメだ。
現在第1456期が不死テレビ系列で放送中である。
96 ななしのよっしん
2015/07/25(土) 00:35:40 ID: JjwPRx58RH
では何故、このアニメがモンゴルで、いや、世界中で流行しているのか。それは制作側に本物の未来人がいるとの噂がネットを駆け巡ったからだ。その未来人とは紛れもない、世界中で知らない者はいないであろう預言者、サン=デュリオットであった。彼は今まで数々の出来事を預言してきた。そして彼の最も最近の発言が話題となったのだ。
「私は未来から来ました。そしてこれが最後になるでしょう。これから私はアニメを企画します。それは空想ではなく未来に起こる事実です。私はアニメを通じてこの事実を多くの人に伝えたいのです。そう、全ては未来でたった一人で戦う彼女の為に……」
それ以降、彼の預言は無くなり、そしてこのアニメがスタートした。事実、今うどん業界は厄介な問題に頭を抱えていた。
97 ななしのよっしん
2015/08/31(月) 21:02:53 ID: 6056BUxRzf
アニメ第八話。それは、うどん業界のピンチを救うため、一人の男が立ち上がる話であった。そして、事実、ある、一人の男が、うどん業界を救う、画期的な方法を見つけ出していた。しかし、彼は貧乏だった。その上、彼はイタリア出身。パスタのことにしか興味を示さなかった。
98 ななしのよっしん
2015/08/31(月) 21:22:01 ID: Z+UMbip4Vd
その男こそが預言者、サン=デュリオットだったのだ。
確かに彼は結果的にうどん業界を救うため、自ら体を張って立ち上がった。……だがそれは”現時点”での話。
うどん業界への救いの手を持ちながら、パスタにかまけて何もせずただ手をこまねいて見ていたばかりに、うどんばかりか多くの麺類が打撃を受け、結局大好きなパスタをも失ってしまった。
そんな愚かな”未来”を経て、今この時代に彼は現れたのだ。彼のいた未来には、アニメ『そば処UDON』で彼にきっかけを与えたはずの主人公・おつゆは存在しなかったのだ。
その『そば処UDON』で、朝青龍は預言者サン=デュリオット本人役として出演することになったのだ。すなわち、今まで素性が謎に包まれていた預言者の正体が初めて明かされた瞬間でもあった。
99 ななしのよっしん
2015/10/09(金) 23:45:07 ID: Y+rbHv4X82
さて、場面を戻そう。
「ジャックさあああん!」
おつゆは、ビンタで飛ばされたジャックに向かって叫んだ。
既にジャックの姿は見えない。恐らく、数kmは飛ばされた事だろう。
「フフ…。ここまでは計画通りね」
不穏な笑いを零しながら、角と羽の生えた女は言った。
「朝青竜がいると聞けば、必ずアナタはここにやってくる。のこのことやってきた貴方の身柄を確保する…。
実に完璧な作戦だわ」
「っ…!」
おつゆはすぐにその場から逃げだそうとした。
しかし。
「無駄よ」
いつの間にかおつゆの背後にいた朝青竜が、おつゆの腕を乱暴に掴んだ。
「痛いっ!」
「変な真似をしたら、腕をねじ切るわよ」
痛みに顔を歪めながらも、おつゆは途切れ途切れに言った。
「な…何なの…。どうして、こんな事をするの…?」
100 ななしのよっしん
2015/12/02(水) 22:10:05 ID: EQgIWgqZjB
「あなた、黄金のオリーブオイルを持っているわね」
「なぜそれをっ・・・」
おつゆは今思い出した。母に預けられたオリーブオイル。手打ちそばに混ぜたが圧倒的に合わないと、押し付けられたオリーブOIL。
忘れていたわけではない。ただ、今日あった出来事全てが生まれて初めての経験であり刺激的な時間だっただけ。その時だけは普通の女の子でいたかった。
「さあ、どこにあるか今すぐ言えば痛い目には合わないわよ」
角と羽の生えた女(以下「角羽女」といいます)の言葉におつゆは迷うことはなかった。
「それは出来ない!あれは先祖代々の家宝で、私たちの希望なんだから!!」
「あらそう。だったら力ずくね、やりなさい」
角羽女が告げるのと同時に朝青龍が動いた──角羽女に向かって。
101 ななしのよっしん
2016/01/28(木) 05:34:50 ID: b7VftHIxEB
「ふんヌッ!!」『ゴッ゛』
成田山新勝寺の境内に鈍く、重い轟音がとどろく。
頸髄に元横綱級のビンタを入れられブッ飛ばされた角羽女はそのまま石垣に激突し、大の字でめり込んだ。
今日は豆まきを見に来ていたはずの群衆は、この神社に似つかわしくない余りに異様な光景に目を奪われ
その場から動くことすらままならなかった。
「・・・・・・」「・・・・・・」「・・・・・・」
「煌びやかな"黄金のオリーブオイル"には貴女にこそ相応しい―――おつゆ殿」
緊迫した空気を一変させたのは、またその緊迫するキッカケを作った朝青龍でもあった。
肥えた声帯をぬめりと動かし・・・彼は確かにそう言った。
「え、と・・・えっ?」
おつゆは力士らしくない朝青龍の振る舞いに猫耳を震わせ、困惑している。
何を隠そう、彼は今『そば処UDON』の預言者サン=デュリオットに成り切っているのだ。
彼が手下げてる紙袋からはみ出る"おつゆ陵辱同人誌"さえなければ、この情景はさらに見栄えていたことだろう。
「ソウ・バジャック殿を思わずビンタしてしまったことは・・・『エ゛エ゛ィ・・・本当にすまないと思っているゥ゛!』」
「それジャック・バウアーじゃないですか!"ジャック"しか合ってないじゃないですか!うわ面白くない・・・(小声)」
同時刻―――夕に染まる空の上、遥か彼方の大気圏でつい先ほどまでハエのように飛び回っていたはずの
核弾頭ミサイル五万発が「一人の男性」により、一瞬のうちに消滅させられたことは誰にも知る由が無かった。
第三章『イタリアより愛を込めて』 完
102 ななしのよっしん
2016/03/05(土) 00:23:19 ID: 9F5A4YIS0M
「麺のように途切れることなく、永遠に続く平和を。世界の危機をなくそう」
ラグマン・ススルスキーはそう掲げて平和活動家として活動してきたが、自分が何を言っても社会は変わらないと知り、引きこもりがちになっていった。
そんなある日、不思議な夢を見た。自分が、ヤポンのジンジャという所が主催する「ウドン大会」に出場している夢だった。ワンコソバ部門でハシの持ち方に苦戦しつつも、かろうじて優勝すると、ドンブリを模したトロフィーが贈られた。表彰されることも、それをたたえる人もいなかった彼は初めて手にするトロフィーの重さ、たたえてくれる人々に胸が熱くなった。
表彰台で感情に浸っていると、主催者に呼び出された。
「実は優勝者は一つ、願いが叶えられるんですよ」
その言葉を聞いたラグマンは、いろんなことを思い浮かべた。車が欲しい、いや自分を好きになってくれる彼女のほうがいい、そうだ、金さえあれば!能力のほうがいいか!
しかし、ふと考えた。
さっき、自分をたたえてくれた人々が欲まみれの自分を見たら、なんと思うだろうか。
そう考えると、急に恥ずかしくなった。
そして、忘れていた、かつていつも言ってきたことを思い出した。
「決まりましたか」
男は答えた。
「世界の危機をなくしてほしい」
夢の中でそう言った瞬間、目が覚めた。
つけっぱなしのテレビの中で、ニュースキャスターが必死にわめいでいた。
これのせいで起きてしまったのだ。にしても、キャスターの様子はなんだ。まるで世界が消滅するかのような騒ぎ方だ。
テレビを消そうとリモコンに手を伸ばした時だった。キャスターが、泣き始めたのだ。しかし、その表情は恐怖から解放されたようだった。
「すべての核ミサイルが消えました!私たちは助かったのです!」
そうキャスターが叫んだところでラグマンはテレビを消した。ベタな映画のワンシーンだったのだろう。引きこもってテレビの映画ばかり見ていた彼はそう思った。
「腹が減ったな」
ウドン大会が本当はどんなものなのかは知らなかった。が、夢の中で見た
ウドンなるものは、美味しそうなものであった。また人々と交流したくなった。
男は、夢の中で食べたウドンなるものを食べに、外へ出た。
空は晴れ晴れとしていた。
103 ななしのよっしん
2016/03/05(土) 10:27:48 ID: b7VftHIxEB
夢とはつくづく都合の良いものばかりだ。
無意識に抑圧された願望、欲望を如実に表現し、目の前に映し出してくれている。
三大欲求は無論、「暴食」「色欲」「強欲」「憂鬱」「憤怒」「怠惰」「虚飾」「傲慢」何もかも己の思うが侭である。
ここに来るものは大抵、自分の欲に忠実のまま願いを叶えていく。しかし例外が無い訳ではない。
例えば、つい先ほど出て行った奴が該当する。ススルスキーと言ったか、中々したたかそうな男だった。
夢に"魅せられた"男がまた一人、今度は世界を救ったらしい。殊勝なものだ。
そういえば7年ほど前にも、うどんが食べたいが故に何度もこの夢を利用する男がいた。>>20>>35>>51
一部始終を見ていたがダルビッシュ投手が不憫でならないと思った。
例外の考える事は常に予想外であり、面白い。
しかし、うどんの何が彼らを駆り立てたのかは今でも分からない。
チリン♪ ガタン ゴトン
清涼な鈴の音色が、誰でもない夢の中に響き渡る。空間に溶け込む電車の走行音が何処からか聞こえた。
次の瞬間、私の目の前にはあたかも先ほどの疑問に答えるように、出来たてホヤホヤの讃岐うどんが出現する。
疑問を抱きながらも、いつの間にか持っていた箸で私は小慣れた手つきで麺を絡め、口に啜る。
弾力のある麺が舌を叩く。ほのかに香る芳醇な醤油の風味がより一層食欲をそそりたてる。
・・・そうか、これは誰かの夢じゃない。これこそが私自身の羨望だったんだ。
『食べる』って、温かくて幸せで―――――――――――
第四章『そばとうどんとそれから夢オチ』
104 ななしのよっしん
2016/08/12(金) 10:09:54 ID: DbXow0bcfV
~おしまい~
105 ななしのよっしん
2017/05/24(水) 15:40:13 ID: Cuh5r28WDS
だが、おしまいと書いたからと言っても
リレーが終わるわけではない
106 ななしのよっしん
2017/06/22(木) 16:16:27 ID: JHuQnkA1OW
それは新たなる物語が始まる合図でもあった。
107 ななしのよっしん
2017/06/22(木) 16:51:38 ID: YCU4wNki8/
時は西暦2356年。
全世界を標的にした核ミサイルにより文明を失ったユーラシア大陸。
生き残った者は、ウメとドングリとギンナンの遺伝子を掛け合わせた「ウドン」を喰って命を繋ぐ。
賞金稼ぎのスパゲッティ=トムは、アカイキ一族の依頼を受け、伝説の預言者サン=デュリオットの偉業を記した経典、通称「円盤」を捜索する旅に出る。
シルクロードの道すがら出逢ったのは運命の女、オツユ。
凶兆たる伝染病「ソバ・ウイルス」の蔓延。
砂漠に咲く奇跡の花、「キンモクセイ」。
瀕死の世界が紡ぐ新たなる黙示録。
第五章『ジーザス・ウォーキング・オン・ザ・ヌードル』 始動
108 ななしのよっしん
2017/08/11(金) 11:45:26 ID: 3TObIThHWk
「ついに……遂に辿り着いたぞぉぉぉぉぉ!」
思わず両腕を振り上げ、踏みしめる大地に照りつける太陽を見上げながら、スパゲッティ=トムはその喜びを
噛みしめていた。
二年前のこの日、彼はいつものように図書館で伝説の預言者サン=デュリオットの「円盤」に関する古代文明の
資料集めに明け暮れていた。
日も傾き「今日も収穫なし」と終わりの見えない研究に半ば諦めかけた気持ちで資料を閉じようとしたその時、
彼はあることに気づいた。
「伝説の預言者サン=デュリオット」この文字の傍には、大抵一緒に「UDON」なる記号が記されていたのだ。
それから、彼は躍起になってこの「UDON」なる記号を解読するべく、あらゆる手段をもって資料を漁った。
とはいえ古代文明の資料は先の核ミサイル暴発を発端とする第三次世界大戦の戦火で焼き尽くされてしまい、
現存するものは無いに等しい。
そのため解読は容易ではない、それどころか不可能であるとさえ思われた。
しかし、聡明な彼の頭脳と飽くなき探求心が結びついた結果、「UDON」はローマ字という文字であること、読みは「ウドン」であること、この文字が使われていた地域は古代文明において「ニホン」と呼ばれていた場所であることを突き止めた。
そして遂に、彼はアカイキ一族の依頼を果たすため、そして自らの戦いに終止符を打つために、幻の大地「ニホン」へ足を踏み入れたのだった。
喜びに酔いしれる彼であったが、しかし、その後ろにそれをはるかに上回る恐怖が迫っていることに彼は気づいていなかった。
過去と現在進行形で世界に恐怖をもたらす凶気の伝染病「ソバ・ウイルス」
幻の大地「ニホン」はその震源地でもあったのだ。
109 ななしのよっしん
2017/08/15(火) 14:42:10 ID: 5aNshvTLFr
ソバ・ウイルスの脅威…それは顔にそばかすができてしまうものだった
しかしニホンに踏み入れたトムは感染しなぜか背中にぽつぽつができてしまった
痛みを抑えてぽつぽつを治すべく町へと向かおうとする
だが彼の行く手を阻むものがいた
「やーん?」
トム「何だこのピンクのアホ顔の生物は…ん?頭になぜか貝がついて…」
ピカーン!!!
「ヤドキングでござる 貴様…領地に侵入したな?海に帰れ サイコキネシス」
トム「ぎゃああああああああ!!!!!!」
ニホンから追い払われたトム 海に流された彼はどこに行きつくのだろうか…
110 ななしのよっしん
2017/08/20(日) 04:14:48 ID: jrA/Sdm8PK
ヤドキングによって海に沈められ、そのままニホン近海の黒潮に捕まってしまったトム。
しかし、奇跡的に彼は生き延びていた。次に目を覚ました時、彼は緑色の大型漁船の上にいた。
その日はミドリノ族がたまたま遠洋漁業に出ていたため、スパゲッティ=トムが漁網に引っかかっていたのを
ミドリノ族の長 ノドゴシ・タヌキチが助け出してくれたらしい。
「なるほど、アカイキ族の依頼でニホンへ渡ったら…ヤドキングに邪魔されただなもね」
「ああ、まぁ何にせよお前のおかげで助かったよ。ありがとうな」
「おまっ…!?何タヌか貴様は!この御方がミドリノ族の長だと知っての狼藉タヌか!タヌッキー!」
「まあ落ち着くだなも。カキアゲくん…さて、トム。
今アカイキ族とミドリノ族が抗争状態にあることは知っているんだなも?」
トムは何かを感じ取り、少し身構えた。タヌキチのトロンとした目が鋭くなったことに気づいたのだ。
「かの『円盤』を欲しているのはアカイキ族だけではないということを、君には知っておいてほしいんだなも。
サン=デュリオットは万が一の時の為に、うどん業界を救うための手筈を『円盤』に遺している。
もしもアカイヌ族の手に渡ることがあったら、我々ミドリノ族は割を食うことになるんだなも」
タヌキチは淡々と述べるが、その表情は神妙な面持ちだった。しかしスパゲッティ=トムは肩をすくめる。
「おいおい、俺はただの賞金稼ぎだぜ。お前らの勢力争いになんて興味は無いんだよ」
「…………」
場に流れるやけに不快な沈黙の後、タヌキチは続けた。
「……それは良かった。では要点だけを伝えるだなも。
『仮に《円盤》を見つけてもアカイヌ族には渡さないでほしい』……"命の恩人"の頼みなら聞いてくれるだなも?」
111 ななしのよっしん
2017/09/27(水) 02:19:00 ID: AqABDMIBq/
「分かった。その約束は必ず守ろう」
スマゲッティ=トムは、タヌキチと固い握手を交わして、約束した。
その後、トムは、見付けた円盤をアカイヌ族に渡し、数百億もの金を得て、幸せに暮らしましたとさ。
ちゃんちゃん
112 ななしのよっしん
2017/11/26(日) 08:34:22 ID: Cuh5r28WDS
だが幸せは長くは続かなかった
ある日、トムの家にとら、ねずみ、ねこ、とりがやって来て
トムの財産を全て奪い去ってしまったのだ。
しかし、トムの不幸はまた終わらない
裏切り行為により絶滅寸前まで追い詰められたミドリノ族の過激派がトムの家に放火
113 ななしのよっしん
2020/01/30(木) 06:50:26 ID: sRZBdyTDEI
足がやけどで酷く爛れ、満足に歩くことすらできない…!
持っていたハンカチで口を覆いながら、必死に床を這って進む。
煙で目が見えない、自分がどこにいるかもわからない。
もはやここまでーーーそう思った瞬間、脳裏に声が響いた・・・。
『諦めないで!あなたは強い…うどんのコシのように、どんな困難もはじき返す弾力がある!お願い!あなたはまだ使命を果たしていない…!』
どこか懐かしい聞き覚えのある声だった。
絹のように、繊細で、美しいその声の主を、俺は知っている。
『オツユ…なのか…?』
もう声は聞こえない。
俺はその声のした方に手を伸ばした。
俺は己の欲に溺れ、大切な人のことさえ忘れちまっていた。
『オツユ…!オツユ…!どこだ…オツユ!オツユはどこだ!!』
使い物にならなくなった足を引きずりながら、何も見えない煙の中、彼は前に進み続けた。
そして、ついに彼は玄関を発見。
命からがら脱出に成功したトムだったが、
財産を根こそぎ奪われた挙句、家は全焼。
すべてを失った彼は、地を這い、疲れ果てて仰向けに倒れて空を仰ぐ。
そこには、視界いっぱいに広がる満天の星空があったーーー
114 ななしのよっしん
2020/10/04(日) 21:52:21 ID: xqbMZbJUXL
空から蒲鉾板の形をした黒い石板がゆっくり降りてきて、トムの体は星空の向こうへ吸い上げられていった。
するとオーロラのような虹色に輝く光が現れ、やがてそれはサイケデリックな極彩色のトンネルのようなものに変わり彼は凄まじいスピードでトンネルの向こう側へと吸い込まれていった。
極彩色のトンネルを抜けると、乳白色の光が暗闇の中で広がろうとして外側が闇に消えていった。
光に向かって進むと、今度はグランドキャニオンを毒々しい原色に塗ったような
奇妙な地形が見えた。
気がつくとトムは板張りの洋室で寝そべっていた。
洋室の片隅でウェーブのかかった緑髪で縁取り眼鏡をしたメイド服の若い女が
木の椅子に座り木の机の上で羽ペンの先をインク壺に付けつつ紙の上で走らせていた。
何やら事務作業をしているらしい。
ドアの向こうから軽薄な少女たちの話し声がぺちゃくちゃ漏れていたのでそっと開けると、
金髪ロングの頭にティアラを載せ藍色のドレス着た発育の良い少女と、ノースリーブを着た黒髪でスレンダー気味の猫耳少女と、頭に花飾りをした銀白色ボブカットの小柄なエルフ耳少女がテーブルを囲み会合を開いていた。
115 ななしのよっしん
2022/12/11(日) 05:43:31 ID: b7VftHIxEB
トムは自分が置かれている状況に酷く困惑していた。ここがどこかも分からない。自分の身に何が起きたのかも……。
「おや、目覚めたようですね」
エルフ耳の少女がこちらを認めると、自然と他の二人もこちらを見やる。黒髪の猫耳少女は怪訝な顔をしていた。
「ここはどこだ?」
「美食殿のギルドハウス、と言っても多分伝わりませんよねっ。とりあえずご飯食べます?🍙」
そう言うとお姫様のような少女はニッコリと微笑みながらトムに白いものを差し出した。
「……なんだ、これは」
読者諸兄らには何も珍しくない食べ物だ。彼女が差し出したのは所謂おにぎりである。
奇しくも、トムはおにぎりを見たことがない。彼のいた世界では麺類が主食であり、穀物である米はたまに米粉の麺として使われるくらいで、米は本来の形で食べる機会がなかった。
何の変哲もないおにぎりをまじまじと見続けるトムに、お姫様系少女は顔に?を浮かべた。
「遠慮しなくてもいいんですよ? お腹が満たされると幸せな気分になれますからね♪」
少女の笑顔に気押され、トムはおずおずとおにぎりを口に運んだ。
「お゛っ!? おいし、おいしい。美味しいぞ!! なんだこれ!? 中に入っているのは鮭か!? これ!?」
「なにコイツ……初めておにぎり食べてるような反応じゃん」
猫耳少女は引きつった顔でトムを見ていた。
「"おにぎり"か。素晴らしい食べ物だな。ありがとう少女たちよ」
程なく、ひとしきり自らが受けた感動を3人の少女に表現し終えたトムは何かを忘れている気がしつつも、その日の宿は美食殿のギルドハウスとやらで取ることにした。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。