APT(イギリス国鉄)単語

アンポンタン

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 APTとは、旧イギリス国鉄開発した振り子式高速列車である。

概要

 第二次世界大戦も終わり、ヨーロッパでは列車の高速化が進み、TEEを始めとする新しい列車網が作られる等、各鉄道は進歩を続けていたが、イギリスではなかなか鉄道善が進まず、戦後蒸気機関車が頻繁に走り回る状況が続いていた。しかし、戦争から立ち直った日本新幹線を走らせ、それを見たヨーロッパの各が更なる鉄道の高速化に着手し始めた。流石イギリスもこのままではまずいと判断し、新しい高速鉄道車両開発に乗り出した。そこで開発されたのがこのAPTである。ちなみにAPTとは、「Advanced Passenger Trainアドバンスド パッセンジャー トレイン)」の略で、「先進列車」と言う意味を持つ。そしてこの列車開発の為に、二つのタイプの試作車両が作られた。最初はガスタービンエンジンを使用した電気車両APT-E)を開発したが、ガスタービンエンジンの為燃費が非常に悪く、その上オイルショックも重なり計画中止となった。その後電気機関車による動集中方式の車両APT-P)を開発するも、こちらは実験的要素が多すぎ、当時の技術レベルでは難易度が高く、満足の行く結果を出す事が出来なかった。また、これらの車両には体傾斜機構(振り子機構)を搭載し、曲線通過時の速度も向上させようとしたが、これもいい結果を出せなかった。これらの失敗が続き、最終的には計画破棄と言う結果となっている。ちなみに、APT-Pの開発が成功した場合、APT-Sという量産型を製造する計画があったが、開発失敗したためこの話は立ち消えとなっている。

 計画破棄となったAPTだが、体傾斜機構やライセンスイタリアフィアット社に売却された。当時、振り子列車開発をしていたフィアット社の鉄道部門は、APTの技術を取り入れ新しい振り子式列車開発に成功、1988年イタリア初の振り子式高速列車ETR450が運行開始、以降「ペンドリーノ」と呼ばれるイタリア式振り子列車として大成功を収める結果となった。特に第2世代のペンドリーノであるETR460以降の車両APT由来の機構が色濃く反映されている(ちなみに、APTの技術を買い取った時点で、フィアットオリジナル体傾斜機構はある程度完成していた為、初代ペンドリーノであるETR450にはAPT由来の技術はそれほど入っていない)。そしてこのペンドリーノ車両イギリス逆輸入され、「ペンドリーノ・ブリニコClass390)」と呼ばれ運行している。この結果から、少なくとも発想は間違ってはいなかったと思われる。

 ちなみに、イギリスでは同時期にもう一つの新しい高速鉄道車両HSTHigh Speed Train)」も開発していたが、こちらは特に立つ問題もく実用化に成功、現在イギリス内の優等列車として活躍している。

APT-E

 最初に開発されたAPTの試作車両で、ガスタービンエンジンで発電を行う電気式気動車として作られた。編成は中間に2両の客を、両端に動を繋げた4両編成で構成されている。体傾斜機構を持ち、体は軽量化の為アルミニウム製、台車には連接台車を使用している。駆動方式は何故かつり掛け駆動。試運転では当時のイギリス内の鉄道車両最高速記録更新、152.3mph(約245km/h)を記録した。しかし、ガスタービンエンジンを使用した事により燃費が非常に悪く、更にオイルショックが追い討ちをかけた事もあり、実用化される事はかった。

 現在、試験車両イギリス国立鉄道博物館(分館・シルドン)にて保管されている。

APT-P(Class370)

 ガスタービンの失敗を教訓に、電車による運行を標に作られた。編成はAPT-Eとは逆に中間に動を配置、両端に客を配置しているが、1編成の長さが14両編成と長くなっており、客部分は連接台車、動はボギー台車と言う構造に変更されている。体傾斜機構は健在で、電車方式になった事から、パンタグラフ台車で支える機構が開発されたほか、体に設置されたモーター台車シャフトで繋ぐ方式等がこの時に開発されている。こちらは14両編成3本と予備の制御1両が製造された。編成は1等、2等食堂車がそれぞれ1組あり、丁度ん中に来る2両の動に、2つの列車を組み合わせたような編成となっている(JR東日本E331系に近い編成構造)。その為、営業としても運行可であり、一部はイギリス内のインターシティーの運行に入ったりもした。しかし、こちらも振り子機構や、新しいブレーキシステムの不具合などにより運行中止になった。

 現在、同どが解体されてしまったが、一部は各種試験に使用された後、クルー鉄道博物館に制御・動を含む6両が、イギリス国立鉄道博物館(分館・シルドン)に動が1両保存されている。

APT-S(計画のみ)

 APT-Pの開発が成功した場合、量産されるはずだったのがこの車両APT-Pの量産型である。
残念ながら開発が失敗に終わっている為、1両も製造される事はなかった。

APT-U(計画のみ)

 APT-S同様、開発が成功した場合、製造を計画されていた車両。それまでの車両が連接台車を使用していたのに対し、こちらでは機関車も客も全てボギー台車フルサイズ体で計画されていた。APT-S同様、開発が失敗に終わっている為、1両も製造される事はなかった。

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最終更新:2024/03/29(金) 21:00

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