『新約とある魔術の禁書目録』の登場人物。
科学と魔術が融合した組織『グレムリン』の構成員にして主要人物。
人の身から神格となった魔術の神『魔神』と呼ばれている存在。
正体は北欧神話の主神「オーディン」その人。また「オティヌス」でもある。
『このライトノベルがすごい!2015』では、非アニメ化組ながら食蜂やインデックスを抑え、女性キャラ部門5位にランクインしている。
目次 |
初出はとある魔術の禁書目録22巻。オッレルスがアレイスター=クロウリーに敗北した右方のフィアンマを救助した際、自身の素性と共に明かした名前。
「かつて魔神になるはずだった……そして、隻眼のオティヌスにその座を奪われた、惨めな魔術師だよ」
会話のみ既に新約第3巻で出ており、実際に上条達の前に姿を見せたのは新約第4巻からとなる。
グレムリンの構成員は各々、北欧神話の神々の名前を冠している。その中で『主神の槍(グングニル)』に至る事を目的とする彼女はオティヌス、その語源となった北欧神話の主神オーディンに対応すると見られる。
実際に新約3巻では「オーディン」とルビが振られており、新約9巻にてオーディンその人と判明するのだが、これについては追々説明していきたい。
彼女は『魔神』ではあるが、「無限の可能性」という完全さと不完全さを持ち合わせている。
あらゆる物事に対して「正の無限の可能性」と「負の無限の可能性」、すなわち「成功」と「失敗」の確率がコイントスの表裏のように均等に分配されてしまう要素を抱え、得られた結果を今後に活かすことが出来ない状態にあった。
この均等に分けられた可能性を是正するため、オティヌスは正か負の確率(要は成功か失敗の方向)に100%の確率として傾ける事を目的としている。
五分五分を正の確率へ変動させる、というのは大方の想像通りだと思われるが、負に傾く場合でも「選んだ道と常に逆を行く」事でやはり完全な成功を得られるらしい(無論、成功率100%が理想ではあるのだが)。
新約4巻では上条当麻の右腕を握り潰し、アウレオルス戦とフィアンマ(神上)戦で見せた俗に言う「上条の中の人」を潰す事にも成功。「戦乱の剣(ダインスレーヴ)」を破壊した後、現れたオッレルスに「無限の可能性」の弱点を看破され、格下であるはずのオッレルスとフィアンマを相手に撤退してしまった。
オッレルス達はオティヌスの目的を「主神の槍(グングニル)」に至り、正の100%へ傾ける事にあると思っていた。
だが、彼女にとってグングニルはあくまでも「第一希望」に過ぎない。均等な確率を正と負のどちらかに傾ける事が出来るのであれば、そこに至る手段などはどうでも良かった。
故に彼女は保険として『グレムリン』と彼女を阻止する者達の行動を掌握し、利用した。
『黒小人(ドヴェルグ) 』マリアン=スリンゲナイヤーを軸とした『主神の槍(グングニル)』製造計画に関する情報をあえて漏洩させ、阻止する側の者達と『グレムリン』を衝突するように仕向ける。
ハワイの動乱から始まりバゲージシティでの『全体論の超能力』の実験、『不死の存在』フロイライン=クロイトゥーネの争奪戦。 新約8巻までにグレムリンが起こした事件は、オティヌスが用意していた囮、デコイだった。
すなわち新約3巻以降の上条やレイヴィニア達の行動の全てが、彼女の掌の上で踊らされていたという事になる。
オッレルスとフィアンマが彼女を『妖精化』させた事で、均等だった確率は「負の100%」に変動してしまう。こうしてオティヌスは真に『魔神』としての完成を迎えた。
彼女は第一に、自らの最大の障害となっていたオッレルスを倒した。
その後、オティヌスは脅える上条を軽くあしらう様に「世界」を消滅させた(ここまでが新約8巻)。
「ちまちま戦うなんて面倒臭せえな。世界でも終わらせてやるか」
彼女こそが伝承に残る主神「オーディン」である事をまずはっきりさせておかねばならないだろう。
禁書ではオーディンに纏わる神話は編纂者が自ら見て記した、憶測・嘘偽のない純然たる事実である。
本作のオーディンもミミルの泉(ミーミルの泉)に眼を捧げた「隻眼の老人」だし、彼の数々の異名や伝承に残る神話、並びにそれらの異なる解釈も全てが史実として扱われている。
何故いずれも史実となったのかは、全てオティヌスが「世界」を改変した事に起因する。
元々、上条達が生きている世界はまっさらなわけではない。
世界という名の広大な盤上(キャンバス)に、人間には認識不可能な「波長のズレた異なる世界」が幾重にも重なった状態で成立している。
こうした別位相に存在する異世界を総称して「位相」と呼ぶ。
別位相には十字教(キリスト教)、仏教、ケルト神話、インド神話、神道、アステカ神話、インカ神話、ギリシャ神話などをベースとした全く異なる法則の世界が展開されている。
例えば天国や地獄は別位相の世界という扱いで他にも冥府、浄土、黄泉、地底、オリンポスの山、妖精の島、ニライカナイ、アースガルドといった様々な異世界が実体を持って存在する。
魔術師はこの「位相」=「層が異なる重なった世界」の法則を使用し、「魔術」を行使する。
中でも『魔神』は魔術を極めて「神格」を得た現存する最高峰の魔術師。
このレベルにまで達すると世界の法則を超越し、位相=世界を創り、歪め、破壊する事もできる。
ぶっちゃけ「全能」という言葉で表現する方が分かりやすいかもしれない。
例えば「生命の樹(セフィロト)」という神の世界創造の軌跡は、樹を登るたびに人が神の次元に近づいていくというが、まさにそのセフィロトの上昇と同一。現実の魔術結社(の位階)基準で「8=3位階」より上位の存在にあたるらしい。
実際にその域に届いた者が魔神オティヌス、北欧神話の主神オーディンとして伝えられる神格である。
オティヌスが位相を差し替えて世界を創り変えた結果、オーディンの様々な異説が発生したらしく、自身に関する記録を世界改変の際にあえて更新せず残しておいたと語っている。
後述するコラボ小説「とある魔術のヘヴィーな座敷童が簡単な殺人妃の婚活事情」では、かつてアースガルドを束ねる主神オーディンとして君臨していた事が明かされた。
ちなみに魔神に至った者は他にもいるのだが、オティヌスが他の魔神の域に達しているのかは疑問が残る(他の魔神の発言から、オティヌスは魔神としての完成度が低い可能性がある)。
オティヌスも異端なりに魔神が複数いる可能性くらいは考慮していたが、歪んだ別位相「隠世」のことまでは知らなかった。彼女も知らぬ距離も時間も関係ない異世界には「真のグレムリンの構成員である魔神」が存在した(後述)。しかし、隠世には魔神に届いた彼女の力さえ及ばなかった。
彼女のベースは人間。特殊な方法で人の身から『魔神』に至った。
北欧の神オーディンは自身の片眼をミミルの泉に捧げ、世界樹(ユグドラシル)の木で首を吊ることで叡智を手に入れている。
事実、オティヌスはシステム的な「贄」としてそれらの行為をすべて行い、自身を魔術の神へと昇華させたのだという。そのため彼女はオーディンの伝承通り隻眼である。
強制的に位相から現世に顕現させられた神の力(ガブリエル)と異なり、ベースが人間のためか普通に人の言葉を話せるし、人間たちの世界の常識も備えている。
かつて世界を創り変える程の力を手にした少女が居た。
少女がその力を振るうと途端に周囲は黒一色に包まれ、人や建物は消失し、世界は端々から姿を変えていく。彼女はそうやって自分が望んだ世界を創り出していった。
しかし、少女がふと考えて創り出した「誰もが不幸ではなく笑い合っている世界」に、唯一不変である少女の居場所はなかった。その世界では自分のよく知る人々が笑顔になり、自分の知らない人達と手を取り合ったが、そこに少女の居場所はなく、自分が作り出した無数の世界から疎外されてしまう。
それでも居場所を求めて何度も世界を創り変え続けたが、頭にある風景をもとに世界を創り変えて「元の世界」への帰還を試みても、本来あるべき世界の本質が見えてこない。
少女は無限に続く漆黒の迷宮に囚われてしまった事に気付き、自らの絶大な力を恐れて手放した。
つまり現時点での「とあるシリーズ」の世界は、魔神の少女「オティヌス」が創り変えた末の世界。
ここまでの新約禁書の物語も、オティヌス(オーディン)がかつて手放した「魔神としての力」を取り戻すために動き始めたという事が騒動の根幹となっている。
オティヌスは『自身の望んだ世界』を得る為に行動を起こしたのだが、『幻想殺し』の存在は彼女の計画を成就させる手段を二つに分岐させた。
一つ目は、自身の「主神の槍(グングニル)」を利用し、世界を重ねる事で「次の世界」へ移行する方法。
二つ目は、あらゆる異能の影響を受けない「幻想殺し」でナイフのように世界を削り落したり基準点として利用して、彼女の知る「元の世界」に帰還する方法。
後者の幻想殺しの用途は、新約5巻にてオッレルスが語った幻想殺しの存在理由と同じである。
オティヌスは全能の神オーディンである。
北欧神話は「武器の神話」とも称され、彼女の神としての力は武器の力として出力される。
彼女は文字通り何でも出来るし、その力も人の言葉では表現不可能なスケールを誇る。
作中ではエインヘルヤル、そして彼女の槍として名高い『グングニル』、『弩』、『骨船』が使われた。
オティヌスが放ったグングニルでは時間は止まり、空間は圧搾され、世界は粉々に砕かれた。
グングニルの真骨頂はシグムンドの魔剣「グラム」を叩き折ったことに由来し、その伝承の通りに人間の権威の象徴を打ち砕き、対象に死すら予期させる。ひとえに「人は神に勝てない」と思わせるには充分なのだろう。
文献には10本の矢を番える事と、あらゆる軍勢を殲滅させる程の破壊力が記されている。
上条に放った10本の矢は、1本1本が惑星の一つや二つを削り取る事は容易い威力だった。矢が世界を席巻するかのように巨大な谷を築き上げ、上条を追う矢は三次元上の制約を無視してまで空間に割り込み、数の概念すら無視して「天を覆う星の海」のように無数に分裂した。
禁書では「生者」と「死者」二つの設定ソフトを用意して区分し「生」と「死」を自由に操る。まさに神として完璧な力なのだが、生と死の枠から外れた「ミサカネットワーク総体」は能力の影響を受けていなかった(…と言えば少し語弊が残るのだが)。
グングニルで魔神の力を整えていない時には死体の要所に黄金を組み込んで死者の腐敗を防ぎ、オティヌスの操り人形とする魔術であった。しかし生前のベルシ(木原加群)は半導体チップを自身の首に埋め込んでおり、彼らしくない行動を強制させられた場合にも「人命救助」を優先する事が出来た。
元ネタでは戦士として最高の誉れという話もあるほどだが、彼を知る人物からは死者の軍勢入りは歓迎されていないようだ。既にベルシ、木原加群の意思はないのだから。
位相の操作だけでも色々な事が出来る為、ここで挙げた例もあくまでもその力の一端に過ぎないだろう。
そもそも人が神のスペックを語ろうなどと出来る筈も無い。作中でも言われている事だが、人では神に勝てないし、そのスペックを推し量ることなど不可能である。彼女にとって幻想殺しや超能力者・魔術師、実力者が束になろうがそんな些細な事は児戯に等しいのかもしれない。
インデックス、及び彼女の頭の中にある「10万3000冊もの魔道書の原典(オリジン)」を利用した者が到達し得る“世界の理を歪める存在”として原作の第1巻から触れられていたカテゴリー。実際に到達したのがオティヌスである。
新約10巻のラストで複数存在する事が判明したが、オティヌスは魔神が参画する「真のグレムリン」と「歪んだ位相」の存在を知らず、他の魔神は彼女を“失敗”と断じていた。
魔神の人数は不明だが、僧正、娘々、ネフテュス、ゾンビ少女、キメラ、ヌアダ、テスカトリポカ、プロセルピナ、忘れられた神などあらゆる宗教・神話の魔神が確認されている。
娘々:でもさー「僧正」。「ゾンビちゃん」が持ってきた理屈って、要は合わせ鏡でしょ?わたし達の「力」を無限に分割する事で意図して弱体化を促し、手足を振り回しても世界ってヤツが壊れないようにする。
娘々:いやあ、∞って記号をいくつ分割しようが本当にきちんと弱体化出来るのかねってハナシ。やだよー、一歩踏み出した途端にステンドグラスみたいに世界が粉々になるだなんて。わたし達はさ、「オティヌス」なんかとは違うんだから。
娘々:無限と呼べるわたし達の力を無限に等分する事で、この世界で許容可能なギリギリのレベルに自己を留める。 ……でもこれ、見方によっては最悪の変容じゃないかなあ? 何しろこれ、殺しても殺してもキリがない。 マトリョーシカやタマネギみたいに、わたし達を完全に殺すには永遠に等しい戦闘を繰り返さなくちゃならなくなったんだから
新約とある魔術の禁書目録12巻より一部抜粋
先述通り、薄氷のような世界を渡り歩くには、あまりにも魔神は強大過ぎた。世界の許容量(キャパシティ)では、無限という言葉で表すしかない魔術の神を受け入れられなかったのである。
この『鏡合わせの分割』はブードゥー教の魔神「ゾンビ少女」が開発した、自身を無限に分割して自己と重ね合わせ、魔神の膨大な容量を騙す術式である。
言葉を借りれば「この世界で説明できる程度の力」に抑えられているらしい。
そもそも「無限」の容量とやらを持たないオティヌスは、他の魔神の言う通り失敗だった事になるが…。
→魔神(とある魔術の禁書目録)
→僧正(とある魔術の禁書目録)
→娘々(とある魔術の禁書目録)
→ネフテュス
▼セーブ
彼女は世界そのものを消滅させた。
付き添っていたインデックスも御坂美琴も、レイヴィニアもレッサーも存在しない周囲一面が黒一色に包まれた世界でオティヌスと上条当麻の二人だけが存在していた。
漆黒の世界で一度は絶望に追い込まれた上条だが、一片の希望を持ってオティヌスに縋り、戦いを求める。だが『幻想殺し』は異能を「打ち消す」力であり、一度壊れたものを「直す」力は備わっていない。そして万が一、オティヌスを倒せたとしても、もうそんな世界はどこにもないのだ。オティヌスから見ればとんだ妄想である。
しかしこの時点で上条の精神は完全に折れてはいないと判断したオティヌスは、上条の精神をへし折るために上条という人間を根底から否定する新たな世界を創造した。
「正直に言って、私も最後の関門はお前だと思っていた」
オティヌスが創造したのは、上条への『見方』が変わった世界。
敵を倒して他人を救い、第三次世界大戦を戦い抜いた上条も少し『見方』を変えると 「気に喰わない者に片っ端から牙を剥き、目についた女は横から奪い取り、抵抗する者には容赦なく拳を振るって納得させた」 とも取れる。
その上条が世界の脅威として認知され、食料供給の断絶に学生への空爆、核地雷設置など、学園都市はかつての第二次世界大戦を彷彿とさせる状況に置かれていた。上条は小萌や青髪ピアス、吹寄に殺害されかけた。上条を産み落としてしまった罪で法廷に召喚された両親に「恥」「絶対悪」と蔑まれてしまう。
この世界も起こり得た可能性、『if』なのである。
しかし、こんな世界でも上条は折れなかった。そこでオティヌスは趣向を変えて新たな世界を創り上げた。
「『右手』の不変性が最大の敵だと思っていたが、どうやら、それ以外にも障壁はあったらしい」
この世界の上条は、築き上げた人脈は同じだが、上条と容姿が全く違っていた。
ようは、上条を取り巻く環境は彼に助けて貰ったことで作られたが、それは我々の知る上条でなくても良かった。脂ぎった親父だろうが、枯れた老人だろうが簡単に上条になれるという事。
だが上条は折れず立ち直る。そこでオティヌスは、追い撃ちをかけるように上条に問いただし、集合写真を見せて上条という存在を問うが、上条は自身を信じて「俺は上条当麻だ」と断言、やはり折れなかった。
「悩まないというのもある種の才能だな。そんな自分に不安を覚えないところだけは素直に感心してやる」
そこから正確な数は不明だが、オティヌスは数えきれない程の世界を創り、上条はそれを体験する事となった。
しかし上条は心が折れそうなところを既に朦朧とした意識を積み重ね、繋ぎ止めていた。ここまで来ると彼のメンタルが如何に常人を超越しているかが伺えてしまうのだが。
「望みがある事が、勝算を知ってしまった事が、決定的な致命傷になる事だってある」
だが次にオティヌスが創造した世界は、上条にとって最も過酷な世界となった。
オティヌスは誰もが不幸ではない、幸福な世界を創る。しかしこの世界は『上条当麻がいない事を大前提に計算した黄金比』によって成り立つ世界であり、世界が上条を認識した瞬間に崩壊してしまう。
以下に記すのが、「誰も不幸ではない世界」の一端である。
他にも鳴護アリサがシャットアウラと共存していたり(佐天涙子いわく、二人で一つのパーフェクトモード)、ベルシや天井、左方のテッラ、駒場利徳が生存していたりする。
幸福な生活を送っていたインデックスと出会ったところで、オティヌスは上条に対して「自殺」という選択肢を与え、半ば強要に近い形で選択を迫った。ここで初めて上条の心は折れ、自殺を選ぶ。
ここから上条は死に場を探す為に徘徊する事になるが、ミサカ10031号の体を借りた「ミサカネットワーク総体」が制止に入って結果的に助けられる。このミサカ総体の存在はオティヌスにとっても想定外であった。
総体の言葉で決意が固まり、再起した上条は利害を求める戦いを捨て、オティヌスとの戦いに臨んだ。
オティヌスと上条の戦闘は1度だけでは終わらなかった。
上条は数千億回以上も繰り返された世界の末に、少なくとも1万回程度は殺されている。
ループのギミックに関しては「セーブ&ロード」という例えが最も分かり易いだろうか。オティヌスは、上条が直接対決で敗北する度に自身の能力で世界をリセットし、幾度となく繰り返してきたのである。
(※後で改めて触れるが、上条が体験した世界の数が数千億回以上。1万回はオティヌスとの直接戦闘で上条が殺された回数。小説中では上記3つの世界以外は詳しく触れられていない)。
オティヌスは上条の精神をへし折る為に、何度もゲームをロードする。一方の上条は何度も殺され、その都度セーブ地点に戻される。セーブ地点は新約9巻序盤の「漆黒の世界」。
上条は記憶や肉体の断片的な情報を継続しており、僅かな情報から殺されるたびに少しずつ攻略していきながら、圧倒的実力差があるオティヌスとの「戦闘」を構成していった。
例えるならば「STG」というものがある。要領としてはあれと同じでまさに「死にゲー」そのもの。
攻略出来ない弾幕に何度もチャレンジすることで、プレイヤーは蓄積した経験と知識からやがてクリアー出来る程に上達し、次のステージに挑むわけである。 上条はそれと同じ事を繰り返していた。
その世界で何度殺されても次の世界では殺された経験に基づいて対策し、何とか戦闘という行為を形作った。
ただし全能神と人ではどう足掻いても勝てないとわかっているため、上条はオティヌスの精神の摩耗を狙い、負けの積み重ねによって勝利の可能性を少しでも高めていた。
「闘争を繰り返した事による精神的摩耗だと……?」
数えきれない程の世界・戦闘を繰り返し、共に精神的摩耗を積み重ねていたが、上条より先にオティヌスの方が限界に近付いていた。上条いわく、圧倒的実力者と雑魚キャラが戦うのは退屈で集中力がもたない。さらに、弱い上条からすれば攻略していく楽しみというものがあった。
そのため如何にスペックに差があれど、精神が摩耗する速度ではオティヌスの方が早く、先述したように死にゲー的な経験の蓄積、積み重ねがあるため、オティヌスの猛攻を避けることも出来た。
死に死を重ねた上条とオティヌスの決戦、そして上条が校庭での直接戦闘で敗北した回数は1万回以上にも及び、さらに天文学的数値もの敗北を重ねた末に戦いで遂に上条はオティヌスの攻撃を見切り、その手でグングニルを破壊するまでに至った。
とうとう魔神を打ち破ったかと思われた矢先、オティヌスは前述の『弩』を展開し、初めて「負の可能性」を応用した攻撃を上条に向ける。この攻撃にはさすがの上条も完璧な応戦が出来ず完敗。上条は体の大半を失ってオティヌスに幻想殺しを残し、世界の選択を委ねた。
詳しく明かされていないが、オティヌスが上条に見せた世界は、彼女が体験した事だったらしい。
また、オティヌスが『理解者』を求めていたのは確かである。元の世界に戻るのは手段であって目的ではなく、彼女がただ孤独な存在だったことも示唆されている。そもそも元より神の身であったオティヌスに、対等な人の身の『理解者』などいるはずもなく、また戦いの過程で唯一の『理解者』となった上条を、皮肉にも自らの手で殺めてしまった事を、この時初めて痛感する。
葛藤の中でオティヌスは、上条の世界か、自身が望む世界かを選ぶことになる。
幾千億もの世界を繰り返して渡り歩いた末に、オティヌスが選択したのは上条の世界だった。
目を覚ました上条は、オティヌスが自身の仲間からかつてない程の敵意を向けられている事に気付く。 オティヌスはインデックスや御坂美琴、レイヴィニア、レッサー、さらにはイギリスやロシア、ローマの魔術サイドから攻撃を受ける。
当然と言えば当然の話なのだが、幾千億の世界をオティヌスと渡り歩き、遂に魔神を理解する域にまで到達したのは上条だけであり、他の面々にとってオティヌスは「世界を我が物にしようと目論む魔神」に他ならない。
実は、槍の力とオッレルス達が放った『妖精化』は併用出来ないもので、徐々に体の内側から崩壊を起こしていた。
世界の記憶を引き継いだ上条はそんなオティヌスを放っておかず、彼女を守るために戦う事を決意する。
ついにデレた。会話においてツッコミもボケも凡百なネタも使いこなせる万能魔神様であることが判明。あと時々規模が物凄く大きい。世界の法則が乱れる。
「待って待ってオティちゃん馬乗りは待って!!自分がどんな派手な格好しているか自覚がないのか!?」
「オティちゃんじゃねえよ!!いくら『理解者』だからってその呼び名は気安すぎるぞ人間!!」
上条が言うにはインデックスらと同様に説明(解説)好きらしいが、トールによると『グレムリン』でもやはり上から目線の説明好きだった様子。そのため、上条が疑問を呈すると自然と饒舌になっていた。
(立場上、この時点でオティヌスと対等に"お喋り"が出来たのは上条だけだったので無理もないのだが)
デンマークの『ミミルの泉』に沈んだ彼女の右眼を回収して再び眼窩に収め、魔神から人の身に戻り、正しく罪を償わせるために上条と北欧を旅していた。途中上条が学園都市の第一位と第三位、イギリス・ロシア、ローマ・アメリカなどの刺客(主に彼の知り合い)を退けたのだが、妖精化で弱ったオティヌスはあまり関われなかった。
道中、上条は壮絶かつ悲惨な目にあっていた。
もう少し具体的に言うと、白い翼を携えた第一位(手加減状態)に襲われ、実質20億もの敬虔な信徒や冗談も通じなさそうな怖いシスターさん達を相手に逃げ惑い、イギリス組(第2王女+元含む聖人2名+騎士団長)に追い詰められ、オティヌスに裏切られた褐色少女に殺されかけ、銃を突きつけられながらも無線越しに米国の大統領を何とか説得に持ち込み…。
ある時には第三位のビリビリ中学生(+ハッキング済み科学の尖兵)から手痛いお説教を受けたり、黄金系の魔術結社のボスと10万3000冊の魔道図書館のペアからボコボコにされかけ…。
またある時には『聖人』2人がかりで挽き肉にされそうなところを『魔神』になるはずだったもう1人の男の介入で難を逃れ、世界を好き放題動かす『グレムリン』のナンバー2たる全能神に貨物列車をぶつけて半死半生の目に遭わせたり…。
過程でオティヌスは本来関係ない上条だけが傷ついていく事に心を痛めていた。
やがて「オティヌスという世界の脅威である咎人を救う罪」を背負わなくてはならない上条の事を想い、自身への救いを拒むようになっていく。
オティヌスは自身の限界を厭わず、むしろその訪れを望んで『弩』を解放し、上条を拒絶する。
そんなオティヌスに対して上条は「逃げるな」と声を上げた。
そしてトール曰く、輝いてない上条当麻が(約10冊分)続いた中で、久々にこう宣言した。
「もしも、あいつが自分が死んだ方が良いなんて思っているなら。
そんなくだらない考えで辛い道から逃げて、
上条当麻を救えるなんてとんだ勘違いをしているっていうなら」
「まずは、その幻想をぶち殺す!!!!!!」
最終決戦において10032回目の死を思い出した上条は、『弩』から放たれた矢の最後の1本を『幻想殺し』で強引に逸らし、遂にオティヌスのもとに辿り着いて『妖精化』を解除する。
しかし、既にオティヌスの身体は限界を迎えていた。
「もう、逃さないぞ」
「約束しただろ……世界の全てと戦ってでも、俺がお前を助けてやるって……」
「そう、だな」
「でも、それなら、大丈夫だ……」
「私はさ」
「その言葉を受けた時にはさ、もう、きちんと救われていたんだよ」
消滅したはずだったが、上条が妖精化を『幻想殺し』で破壊していたらしく、また彼女が五体を引きちぎられようが死なない魔神であったため、残った身体のほんの一部から“自動的に(※)”肉体の再構成が行われた。そのサイズは上条よりはるかに小さい、15cm程の掌サイズであった。
※実際には、先述した別の位相に存在する「真のグレムリン」の魔神が再生させた(その内の一柱、僧正がオティヌスを失った上条の性質の変化を懸念して介入した様子)。
世界からオティヌスに突き付けられた罪状は、『自身が自殺してでも目を背けようとした世界を、一番近い場所で永劫に眺めていくこと』。
実はアメリカ大統領達の計らいで、全世界に上条との戦闘が中継されていたりする。大統領は世界にオティヌスの罪を問いかけ、全人類の強さを試した。
結果、オティヌスはひとまずこの世界で生きる事を許されたようだ。
どうでもいいが小さくなった彼女の前に立ちふさがった最大の敵は上条家の三毛猫(スフィンクス)だった。つまり新約10巻の真のラスボスは(ry
ヒロインとしてのオティヌスは登場が遅かったのだが、それに反して上条と過ごした時間では一番長い。上条と共に億以上もの世界を繰り返していた為である。
新約9巻あとがきによると、上条がオティヌスの理解者となるまでに上条を「爺」「永遠の時を生きる幼女ポジ」に置けるほどの長い時間を要しているらしく、全登場キャラで上条と共に過ごした時間ならトップクラスとなる。
余談だが、しばしば勘違いされる事柄として「上条とオティヌスは10032の世界を渡り歩いた」というものがある。実際はこれは大きな誤りであり、10032という数字は「上条とオティヌスが校庭で直接対決をした」回数に過ぎない。実際にはさらに桁違いな数のループを繰り返している。
そして、そのループ中にもオティヌスは「上条を追い詰める為の世界(位相)」を数千億回以上も組み替えており、その度に上条は
…という地獄のループを繰り返しており、「上条と過ごした時間が一番長い」とされている最大の理由がここにある(少なくとも、オティヌスにとって腐れ縁たるオッレルスを上回るほどの時間を共にしたと作中で言われている)。
インデックスと共に上条家に居候中。
魔神の力を失ったオティヌスは小さな妖精さんとなり、縮んだままの日々を過ごしている。
新約11巻で相変わらず突っ走る上条に対してインデックスが責め立てる中、『理解者』たるオティヌスは逆に構ったら味を占めると見て放置プレイを決め込んだ。なお、やはり本人も構いたいのか或は心配だったのか、結局インデックスと共に上条を脅していた。馴染んでいるようで何より。
生活に関して、ある意味でいつも以上に油断のならない日々を過ごしている様子。いくら神と言えど小人サイズにまで小さくなってしまった彼女にとって、ありとあらゆるものが天敵である事は想像に難くない。
最近は上条家の猫(スフィンクス)の襲撃に怯えているようだ。猫はその親心から、良かれと思って飼い主のもとへ望まないものを運んでくる習性があるのだが、その中になんとオティヌスも含まれてしまっていた。作中でインデックスのもとへ運ばれてきた彼女は、もはや餌だのゴ●ブリだのネ●ミだのと同等の扱いである。不憫…。
わずか15cmのオティヌスのスケールにとって見れば、スフィンクスに追い回されるのは3メートル大、200kg台のシベリア虎に飛びかかられているに等しい。
一応、上条の手で段ボール製の待避所(?)を作ってもらったものの、わずか5分で破られていた。
食事は細切りにした小さい物を食べさせているシーンがあり、常に上条家の家計を圧迫する暴食シスターよりは金銭面での負担は少ないと思われる。
その様子はペットボトルの蓋に盛り付けた野菜炒めを爪楊枝で突き刺して頬張るというなんとも可愛らしいもので、その他の描写に関しても総じて「体長15cm」というオティヌスのスケールに則ったものとなっている。
最近ではもっぱら上条の肩に乗って行動を共にする場面が増えているが、何も事情を知らない他人から見れば上条が喋る半裸の美少女フィギュアを肩に乗せて出歩いているようにしか見えないため、同じ学校に通っていた科学サイドの知り合いからは驚くほどに理解を得られていない。
(オティヌス自身の声も吹寄とかからは上条による腹話術だと思われている)
だが如何に力を失い、体躯が小さくなったとしても、元々が魔術を極めた『魔神』であったことに変わりはない。
知識面での魔術の考察、小さな体を活かした抜け道の利用など、インデックスのように魔術の面から上条をサポートしている。事実アドバイザーとしての役割もオティヌスが担当することが多くなった。
また、幾億の世界を共に歩いた『理解者』の名は伊達ではなく、悩める上条に対し(主に上条の肩の上から)様々な助言をすることで彼の心の支えにもなっている。
上条「……お前は本当に、俺の『理解者』なんだな」
オティ「今さら何を言っている。定義の確認でもしたいのか?」
最近では上条に別の意味でも心を許しているのか、頭を撫でられても「こんな大勢の前でじゃれつくんじゃない。そういうのは時と場所を考えろっ!!」と満更でもない様子を見せる。
鎌池の他シリーズ『未踏召喚://ブラッドサイン』では、●巻(ネタバレ配慮)に新時代の「喚起魔術」により喚起された「神格級」の中に、オティヌスと青行燈の名前が挙げられた。
以前にも下記の複数の公式コラボ作品において、禁書のオティヌス本人が登場・未ブラ勢と共演しており、その際に禁書版が公式に「神格級」と明言され、さらに上の法則の「未踏級」の実力には及ばない事が示唆されていた。
ちなみに同じ神格級として「オーディン」も別に存在し、「ヴァルトラウテ」も某婚活事情に似たデザインのキャラが本編で召喚されている。ただし、完全に同一人物かどうかは不明。
『とある魔術の禁書目録VSデュラララ!!』では、2作品の当時最新巻の騒動、つまりオティヌスやアレイスター、首なしライダー関係が互いに災いして「異世界とのトンネル」が繋がってしまったようだ。
セルティ・ストゥルルソン(デュラハン)とオティヌス(或はオーディン)、北欧組同士のコラボでもある。
『とある魔術のへヴィーな座敷童が簡単な殺人妃の婚活事情』では、終盤に『未踏召喚://ブラッドサイン』勢に次いで遅れて参戦。コラボ小説における大ボス、フリズスキャルヴに座す主神「オーディン」の存在に不完全ながら短時間介入し、神槍「グングニル」の投擲を遅らせた。
実はオティヌスは、一度オーディンとして『ヴァルトラウテさんの婚活事情』世界のアースガルドまで統治していたらしい事が暗示されている。実際、彼女は登場時に「今さら」世界に干渉する気はないと発言していたり、髭オーディンの妻・フリッグも彼女を知っていた。
禁書設定では主神オーディンはオティヌスから派生した同一の存在のため、コラボ小説におけるヴァルトラウテさん世界のオーディンに干渉できたのかもしれない。
禁書の設定では異世界の根源は神話、老オーディンは幾多の世界改変の末に残った情報である。アースガルドの筋骨隆々のヒゲ主神は、オティヌスを示す情報としては不適切なのだが、金髪美少女もヒゲ主神も過去同一の存在であった事に違いは無い。
また、再び無間地獄に囚われて帰還出来なくなりそうな上条を現世に連れ帰したりと、残り100頁足らずで出た割に印象に残る活躍を見せている。妖精サイズのオティヌスとしてはこれが初の活躍となる。
『合コンやってみました。 ただしオールスターで世界の危機ではあるけども。』では、人間サイズの彼女が登場。こんな美少女でもオーディンと同一存在なのでヴァルトラウテからヒゲ呼ばわり、上条からは頼れる理解者という意味でオティえもん呼ばわりされている。
「(……知るか馬鹿者。私というものがありながらのこのことこのように不埒な会合に参加しおって。この人間は少し痛い目を見て教訓を得れば良い)」と上条に対する恋愛感情っぽい心理描写も…。
また、電脳戦機バーチャロンとのコラボ作品『とある魔術の電脳戦機』のゲーム版にボイス付きで登場する事となった。どうやら開発チームから、彼女が今の禁書に欠かせないキャラと認識されているらしい。
新約10巻以降の時系列だが、「肉の器」と「魔神としての力」をどこかの誰かに押し付けられているため、妖精サイズではなく人間サイズの彼女が登場する。
公式サイトにも記載されている通り、ゲームではNPC扱いながら一定のストーリーが終わる度に本作の根幹部分である存在との会話があるため、ゲーム進行上はかなり重要な立ち位置。
鎌池和馬10周年企画の第9弾として製作されたアニメPV(製作:J.C.STAFF)にグレムリンからオティヌス、雷神トール、マリアンの三人が出演している。
また、『禁書VO』のPV2弾で瀬戸麻沙美のボイスが初公開された。どちらもファンは必見。
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最終更新:2024/03/29(金) 21:00
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