ライト文芸 単語

4件

ライトブンゲイ

5.8千文字の記事
  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • LINE

ライト文芸とは、現代のエンターテインメント小説における一分野。

「キャラクター文芸」(角川文庫)、「キャラノベ」(幻冬舎文庫)、「キャラクター小説」(富士見L文庫)などの呼び名もあり呼称が一定しないが、とりあえず本項ではWikipediaと同様に「ライト文芸」で統一する。

概要

一言で言えば、ライトノベルと一般文芸の中間にあるエンターテインメント小説のこと。文庫書き下ろしで刊行され、ライトノベル的なイラストの表だが、書店では漫画の棚に近いところに置かれるライトノベルと違い、ライト文芸作品は一般の文庫の側の棚に並ぶ。

ライトノベル的なキャラクターの魅を売りとしつつも、中高生およびオタク向けのライトノベルとは異なり、20~40代の女性ターゲットとしており、主人公年齢設定も20代ぐらいになっている作品が多い。
ジャンルはお仕事小説ライトミステリー恋愛小説青春小説ファンタジーあたり。特に妖怪八百万神様が登場する和風日常系ファンタジーあやかし」ものは各レーベルで高い人気を誇り、「あやかし系」と呼ばれるジャンルを形成している。

メディアワークス文庫新潮文庫nexなど専門レーベルと、一般文庫レーベル内でライト文芸作品を展開している文庫角川文庫幻冬舎文庫宝島社文庫など)とが混在しており、どこからどこまでがライト文芸かの線引きはわりと曖昧。結局はレーベルや出版社からの扱いで判別するしかないのかもしれない。

この分野の先駆者であるメディアワークス文庫はもともと「ライトノベル卒業した読者」をターゲットとして想定していたが、実際のライト文芸は「狭義のライトノベルは読まないけど、普通の一般文芸より読みやすくてとっつきやすい作品が読みたい読者という層を開拓・獲得することになった。結果的にはライトノベルと一般文芸の中間層という、狙い通りの層に受けたとは言える。基本的に女性層がターゲットだが、講談社タイガのように較的男性向けっぽいライト文芸レーベルも存在する。ライトノベル同様シリーズものが多いが、恋愛小説系は単発ものが多い。

初期はライトノベル作家がそのまま持ち上がりで手掛けていたが、その後はライト文芸でデビューしてライト文芸を書き続ける作家や、一般文芸方面からライト文芸に流れてくる作家も増えている。一般文芸として刊行された作品や、ライトノベルとして出ていた作品がライト文芸レーベルで再刊されることもしくない。

なお、最初から文庫で出る作品のみならず、東川篤哉謎解きはディナーのあとで』や住野よる君の膵臓をたべたい』など、単行本で出ている作品もライト文芸に含まれることがある。

大雑把な歴史

00年代初め頃までは、ライトノベルと一般文芸の間の垣根は厳然と存在し、一般文芸の表漫画的なイラストを配することは(ノベルスの娯楽小説SFなど一部のジャンルを除いて)まずあり得なかった。「漫画絵の表普通読者は手に取りにくい」というのが出版界の共通認識で、そのことは2000年から2001年にかけて『十二国記』が講談社文庫入りした際に、山田章博イラスト削除されたことに徴されている。

ライトノベルに注が集まった00年代半ば、電撃文庫ライトノベルと一般文芸の垣根を崩そうと、「電撃の単行本」というハードカバーレーベルを展開した。その中から登場した有川浩図書館戦争シリーズの大ヒットとその後の有川浩の大ブレイクで、それまで需要の存在自体がほとんど認知されていなかった「ライトノベル的な(少女小説より対年齢が上の)女性向け小説」というジャンルの需要が発掘された。「電撃の単行本」自体は有川浩以外は大成功したとは言い難いものの、従来のライトノベルから「中高生向け」という縛り全に外した作品も出し方次第で受け入れられる、ということが明されたのは大きかった。

またこの頃、コバルト文庫を筆頭とする少女小説読者層の高齢化が進んでおり、中高生が主人公学園ものよりも、雪乃紗衣『彩雲国物語』、瑞恵『伯爵と妖精』、青木祐子『ヴィクトリアン・ローズテーラー』といった、より年齢の高い主人公が何らかの仕事に就いて社会の中で奮闘する、というような作品がヒットするようになっていた。

そういった状況を受けて、ライトノベル的な作でありながら、従来のライトノベルよりも対年齢を高めに設定した作品を送り出すレーベルとして、2009年メディアワークス文庫が創刊される。また同時期から、角川系の出版社を中心に、ライトノベル的なイラストの一般文芸作品が各社から出始める。ただ、この頃はまだ「ライト文芸」という名称はなく、メディアワークス文庫カバー写真や抽的なイラストを使うなど、初期は従来の一般文芸の装丁に寄せていく方針が立っていた。

そんな中で転機になったのは、2009年に出た岩崎もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(単行本)と、2010年に出た東川篤哉謎解きはディナーのあとで』(単行本)の爆発的セールス。続いて2011年からスタートした三上延『ビブリア古書堂の事件手帖』(メディアワークス文庫)がメガヒットしたことにより、狭義のライトノベルではないが、どこかライトノベルっぽい一般文芸作品の需要に大きく注が集まり、2012年あたりからこれらの作品に対する名称として「ライト文芸」「キャラクター文芸」「キャラノベ」などの名称が使われはじめる。

2014年から2015年にかけて、富士見L文庫2014年6月~)、新潮文庫nex2014年8月~)、集英社オレンジ文庫2015年1月~)、講談社タイガ2015年10月~)と各社から専門レーベルが続々と登場。すぐポシャったレーベルも結構あるが、一般文芸レーベルからもライト文芸作品が出ることが当たり前になり、現在に至る。

初期は『ディナー』や『ビブリア』のもあり、お仕事もののライトミステリー盛を誇ったが、その後は浅葉なつ『神様の御用人』や友麻かくりよの宿飯』などのヒットにより「あやかし」ものがジャンルとして確立。また白川子『後宮の烏』や木あくみ『わたしの幸せな結婚』のヒット中華風後宮ファンタジー結婚ものが流行しており、少女小説の後継カテゴリーという性格がいっそう強くなっている。

補足として、今で言うところの「ライトノベルと一般文芸の中間層の小説」そのものはライト文芸以前、遡ればまだライトノベルという概念確立される前の1980年代からも存在した。
それらはノベルス新書判の小説)として刊行されており、赤川次郎山村美紗ユーモアミステリートラルミテリートクノベルズSF系作品(田中芳樹など)、CNOVELSファンタジアファンタジー(茅田胡など)、講談社ノベルス本格ミステリ(いわゆる新本格)、ノン・ノベルの伝奇小説菊地秀行など)といった娯楽小説群が該当する。これらから出ていた作品群のイメージ現在のライト文芸とはだいぶ違うので、現在のライト文芸の歴史とはまた別のものとしておくべきだろうが、00年代にこれらの作品群の戦場であったノベルスという判が衰退していくのと入れ替わるように、ライト文芸がしはじめたのは事実である。

専門レーベル

現役刊行中(2024年2月現在)

メディアワークス文庫KADOKAWA
2009年12月創刊。創刊時のキャッチコピーは「ずっと面小説読み続けたい人たちへ――」。ライト文芸レーベル分け。
富士見L文庫KADOKAWA
2014年6月創刊。キャッチコピーは「大人のためのキャラクター小説」。富士見ということもあってか他のレーベルよりファンタジー色が強い。
新潮文庫nex新潮社
2014年8月創刊。正確には独立レーベルではなく新潮文庫の内部カテゴリ扱い。過去ライトノベルや一般文芸として出た作品の再刊が多め。また講談社タイガと並んで較的ミステリ色が強い。
集英社オレンジ文庫集英社
2015年1月創刊。実質的にコバルト文庫2018年限りで媒体の刊行終了)の後継レーベルとなっており、コバルト出身作家が多く参加している。
コスミック文庫αコスミック出版)
2015年6月創刊。異世界転生ものが多く、公式では「ライトノベルレーベル」を名乗っている。
講談社タイガ講談社
2015年10月創刊。創刊当初は講談社ノベルス兄弟レーベルという扱いだったため、本格ミステリ系の作家・作品が多く、他のライト文芸レーベルとは若干雰囲気が異なる。創刊当初は「全点新作」を謳っていたがいつの間にか再刊も出るようになった。2022年頃からはラインナップの傾向が他のライト文芸レーベルに接近気味。
スターツ出版文庫スターツ出版)
2015年12月創刊。ケータイ小説ブームの火付け役の出版社ということもあり、恋愛小説青春小説が多く、他のライト文芸レーベルべて読者層が若い(中高生が中心)。
ファン文庫マイナビ出版)
2016年3月創刊。2020年6月には泣ける話のアンソロジーを刊行するレーベルファン文庫TearS」を創刊している。
文芸社文庫NEO(文芸社)
2017年1月創刊。奇数のみの隔刊。
小学館文庫キャラブン!(小学館
2018年2月創刊。小学館文庫の内部レーベル扱いで、背表デザインが異なる。
二見サラ文庫二見書房)
2018年7月創刊。奇数のみの隔刊。
光文社キャラクター文庫光文社
2018年9月創刊。創刊時は「光文社キャラ文庫」というレーベル名で、2019年4月から称。光文社文庫の内部レーベル扱いで、背表デザインが異なる。2020年からは奇数のみの隔刊。
一二三文庫一二三書房)
2018年12月創刊。
ことのは文庫マイクロマガジン社
2019年6月創刊。
実業之日本社文庫GROW(実業之日本社
2021年4月創刊。偶数のみの隔刊。

終了した(と思われる)レーベル

すこし不思議文庫インターグロー)
2014年9月創刊。刊行元が出版社ではなくゲームパブリッシャーだったためか、2015年5月までに僅か7冊を出しただけで終了。
朝日エアロ文庫朝日新聞出版
2014年11月創刊。太田織の新シリーズなどを擁してスタートしたが、わざわざレーベルを分ける意味がかったと判断されたのか、2016年2月までに14冊を出しただけで朝日文庫に統合されてしまった。
白泉社招き猫文庫白泉社
2014年11月創刊。ライト時代小説専門レーベル2016年9月までに39冊を出してストップ
MF文庫ダ・ヴィンチMEWKADOKAWA
2015年2月創刊。MF文庫ダ・ヴィンチレーベルだったが、MF文庫ダ・ヴィンチ自体が2014年で終了してしまったため、2016年3月までに僅か7冊出しただけで終了。
SKYHIGH文庫三交社)
2016年9月創刊。2019年からは隔1冊ずつの刊行となり、2022年9月を最後に新刊が出ていない。全67冊。
メゾン文庫一迅社
2018年6月創刊。2020年8月を最後に新刊が出ておらず、公式サイト公式Twitter更新ストップしており、終了したものと思われる。全54冊。
LINE文庫LINE
2019年8月創刊。同時創刊したライトノベルレーベルLINE文庫エッジ」ともども、小説投稿サービスLINEノベル」を体として鳴り物入りで始まり、5冊ペースで快調に出していたと思ったら、2020年2月を最後に僅か半年で終了(全33冊)。LINE文庫エッジ6月で終了し、体のLINEノベル自体が1年しか保たずに2020年8月サービス終了してしまった。泡レーベルは多々あれど、半年で終了というのは記録的な短命レーベルである。
ポルタ文庫(新紀元社)
2019年8月創刊。2021年4月を最後に新刊が出ていない。全24冊。
二見ホラー×ミステリ文庫二見書房)
2021年7月創刊。ライト文芸系ではしいホラーレーベルとして登場したが、2022年6月を最後に新刊が出ていない。全14冊。

大百科に記事のあるライト文芸(と思われる)作品

50音順。前述の通りライト文芸の定義は曖昧なので、文庫オリジナル作品は「上記のライト文芸レーベルから出ている」「一般文庫から文庫書き下ろしor文庫オリジナルイラストで出ている」、単行本で出ている作品は「メディアや出版社、書店においてライト文芸として扱われることが多い」をとりあえずの基準とする。
ライトノベルレーベルから一般文芸レーベルへの移籍作品や、ライト文芸ブーム以前から伝統的にイラスト文庫オリジナルを出していたハヤカワ文庫は除外。

文庫オリジナル作品

単行本作品

関連項目

この記事を編集する
関連記事

親記事

子記事

  • なし

兄弟記事

掲示板

おすすめトレンド

ニコニ広告で宣伝された記事

記事と一緒に動画もおすすめ!
もっと見る

急上昇ワード改

最終更新:2024/04/25(木) 11:00

ほめられた記事

最終更新:2024/04/25(木) 11:00

ウォッチリストに追加しました!

すでにウォッチリストに
入っています。

OK

追加に失敗しました。

OK

追加にはログインが必要です。

           

ほめた!

すでにほめています。

すでにほめています。

ほめるを取消しました。

OK

ほめるに失敗しました。

OK

ほめるの取消しに失敗しました。

OK

ほめるにはログインが必要です。

タグ編集にはログインが必要です。

タグ編集には利用規約の同意が必要です。

TOP