かんなぎ騒動とは、
漫画『かんなぎ』のヒロイン・ナギが非処女であるとして処女厨が激怒し、ネット上を荒らしたり、ビリビリに破いた単行本を作者の実家に送りつけたりした為に、作者が倒れ連載休止に追い込まれたとされる騒動であるが、
基本的にデマである。
騒動の概要
騒ぎが大きくなった原因は、処女厨が暴れたからではない。
- 2ちゃんねるコピペブログがクリックさせたい為に捏造を抽出して騒動を煽ったこと
- タイミング悪く作者が急病で倒れたこと
- 多くの大手ニュースサイトが「2chの誹謗中傷により休載に追い込まれた」と記事を書いたこと
- 信頼ある情報ソース(原作、公式発表)を踏まえずに騒動についての所感を述べるネットユーザーが大量に発生したこと
が、騒動の主原因である。
2ちゃんねるコピペブログや伝聞、捏造コピペ、捏造コラのみを情報ソースとして「最近のけしからんキモオタ」について語った結果、肝心の原作の解釈は二の次になってしまい、結果根拠の無い情報を拡散させ、それを読んだ通りすがりが信じてしまう状況となった。
つまり、デマに騙された人がさらにデマを拡散させる事態になったのである。
かんなぎ騒動は「自覚的に誤情報を発信した者」と「自覚無しに誤情報を発信した者」の両者が居て引き起こされたものである。
ネット上で混乱が起きた場合、早急に訂正する事実を発表する必要がある。しかし、作者はくも膜下出血という大病であった為、早急に詳細な休載原因を発表することが出来なかった。原作は病気により中断してしまった為、騒ぎとなった第三十六幕はコミックス化出来ない状況が続いていたのも騒動が長く続くこととなった大きな原因の一つである。
デマ
- ナギは非処女?
- 原作を常識的な読み方をすればそのような解釈には至らない。明確に非処女と描写する場面も一切無い。
第三十六幕において「ナギに恋人がいた?という描写があった」ことが騒動のきっかけではあるが、それも「ざんげちゃんの言い分」にとどまっているので、先を読まないと何とも言えない。主人公とヒロインの恋の行方を描くストーリーにおいて、恋の障害が発生する展開はありふれたものである。
- 処女厨がネットを荒らした?
- (全年齢向けのアニメや漫画に対する)処女厨とは、「ストーリーの流れとは関係無く、ヒロインと恋仲と思われる異性が存在すると非処女と断定する人々」。主に2ちゃんねる内に生息。彼らの言い分は嫉妬心を言い換えたものであるだろうから、言葉通りに受け取ると余計な混乱を招くことになる。同族嫌悪からか、同じオタク内で嫌われる事も多い。「現実の女性に対する処女厨」と、「エロゲーに対する処女厨」と同列に語ると齟齬が生じる。
但し、この騒動に関しては処女厨=荒らしと断定するのは早急である。
騒動の原因となった2ちゃんねるの書き込みの内容であるが、「非処女の大合唱」、あるいは「原作を極端に解釈した感想を大量にコピペ投下」、「ナギが非処女に見えるように原作を滅茶苦茶な順番でコラージュしたものを投下」「原作を破いた画像をアップ」等といったものが含まれていた。匿名掲示板の特性上、彼らがどんな思惑で書き込んだかはそれこそ一人一人に直に聞かない限り分からない。が、書き込みの内容から察するに、「誰かを怒らせたいだけ」「感情を発露させたいだけ」であることが想像できる。
- つまり、おそらく釣り、あるいは釣られて脊髄反射的に書き込んだ者、ネットイナゴが大半であると考えられる。
- 一番の原因は2ちゃんねるコピペブログが「ナギが非処女なので処女厨が発狂」という記事を乱立させ、上記の荒れた書き込みを大量拡散させたせいである。
- これに反応した者が、信頼ある情報ソースを二の次にして「オタクの貞操観念」「ナギが非処女であることの可否」「原作者はキモオタに負けて連載を止めるべきではない」「俺はナギが非処女でも気にしないよ(キリッ)」等の論を展開し始めた為、収拾がつかなくなって行った。
2ちゃんねるのヤマカンスレの住人がこの騒動に便乗して活気立った事と、2ちゃんねるコピペブログ「今日もやられやく」管理人が(ヤマカンの粘着である)が捏造記事を書いて煽った事実を見ると、騒動を扇動したのはヤマカンアンチとの見方も出来る。
- 単行本を破いて作者の実家に送りつけた?
- DVDを割る、本を破るといった行為は2ちゃんねるにおいては注目を集める手段として使われることも多い。
投稿者によれば「作者の実家に送った」とのことだが、作者の実家の住所は公にはなっていない。ファンの仕業と決め付けるのは早急であるし、送った事を事実として扱うのも混乱を招くだけである。
- 作者が心労で倒れた?
- ネットで騒動が起こっている最中、タイミング悪く作者が手術と入院が必要な急病で倒れてしまった。
時期としては2008年11月、話題となった三十六幕を仕上げた後である。ネット上では「騒動と関係があるに違いない」と、数多くのニュースサイトに取り上げられ、夕刊フジに記事が掲載される事態となった。
同年12月には出版社によってネット上の誹謗中傷とは無関係であり、手術と入院が必要な急病であることが発表された。しかし、漫画ファンの間では「編集者の言う“作者体調不良の為”は方便」という伝説がある為、なかなか素直に信用されない。基本的に「作家に対するネット上の誹謗中傷に関して編集側が公式発表をする」事が異例な為、この発表は信頼の置ける情報と判断するのが妥当である。翌年4月以降更新された作者のHPには「リハビリ」「最低でも1年の休養が必要」とある為、重病であったことが伺い知れる。病名に関しては、「つつみ隠さずお話して余計にご心配をかけるのもアレですので「無理がたたった末の大病」とだけ今のところはお知らせさせて下さい」と語っている。
担当編集はコミックナタリーのインタビュー上で「これは単純な事実として、ネットで騒動が起きたときには、もうすでに武梨先生はご病気で入院されていたんですよ。だから騒動が休載の原因ということはありません。」と説明している。
現在は不定期連載ではあるが、執筆を再開している。
- 2012年4月27日に発売された7巻の巻末と作者HPにて、病名はくも膜下出血であったことが発表された。HPの発表では「命に関わる大きな病気であったことと、回復に時間がかかったことで、すぐに病名をお伝え出来なかった」と語っている。
アニメから入ったファンと原作ファンの情報格差
騒動が起こった時期はアニメ放映中であった。2ちゃんねるのかんなぎ関係スレを比較してみると、
かんなぎアニメスレは「阿鼻叫喚」で、原作スレは「何その反応?( ´_ゝ`)アンチでもまぎれてんのかな…」といったかなりの温度差があった。
かんなぎのアニメは元々「原作に忠実」と評価されており、原作とアニメで内容が大きく違う訳ではない。騒動を盛り立てたのは釣り師と原作未読者であることが想像される。
ちなみに原作3巻までの内容でアニメは最終回を迎えている。2期の制作を待ち望む声が多い。
2ちゃんねる文化の侵食とメディアリテラシーの低下
かんなぎ騒動は2ちゃんねるコピペブログが台頭して来た時期と重なる。騒動から3年経った2012年現在においてはそれらを批判する言論もあるが、当時はまだ警戒心を抱くものは少なかった。当時多くクリックされていた2ちゃんねるコピペブログ「今日もやられやく」は捏造コラを抽出しまとめと称して記事にしたが、デマであることを指摘する声はほとんど見られなかった。さらに、J-CASTニュースやITmediaやZAKZAKなどにも記事が掲載されたが、これらのニュースサイトは2ちゃんねるを情報ソースとして扱うことが常である。
2ちゃんねるは根拠の無い誹謗中傷や差別、不謹慎、卑猥、暴言を投げつける快楽の連鎖といった発言が溢れる匿名掲示板であり、事実を示すソースとしては不適切である。
…とはネットを閲覧する上での常識だと考えられるが、騒動が大きくなった事実を見るにオタク界のメディアリテラシーの低さが露呈したと言えるだろう。
まとめ
情報の出所を確認しないと、かえって迷惑がかかるよ、という話。
アニメから入ったファンだが原作を読む気はない、しかし騒ぎには一言言いたい。そんな層が騒動の主役であった。
大量の憶測が事実を塗り潰してしまったという事例。
関連項目
- ネットペニス
- コピペブログ
- コピペブログの対策方法
- ステルスマーケティング
- 第二次ブログ連戦争