アンスバッハの放った砲弾は、ラインハルトの半身を打ち砕いた。
人は、失ってはならぬものを失った時、どう変わってゆくのか。
次回、「銀河英雄伝説」第26話、「さらば、遠き日」。
銀河の歴史が、また1ページ。
「さらば、遠き日」とは、『銀河英雄伝説』ファン最初のトラウマである。
小説『銀河英雄伝説』第2巻野望篇最終章、およびOVA『銀河英雄伝説』第26話(本伝第1期最終話)の題名。
前話「運命の前日」において、捕虜引見式に引き出されたアンスバッハ准将が主君オットー・フォン・ブラウンシュヴァイクの死体からハンドキャノンを取り出しラインハルトに狙いを定め、主君の仇討ちを宣言する、という衝撃的なシーンに続く、「ローエングラム侯ラインハルト暗殺未遂事件」の顛末を描く。
後の「魔術師、還らず」ほどではないにせよ、油断していると次回予告の時点で壮絶なネタバレを食らう回。
「ローエングラム公!我が主君の讐、とらせていただく!」
アンスバッハがハンドキャノンの引き金を引いたとき、諸将の中で反応できたのは二人。
一人はゴールデンバウム朝の滅亡という目的を守るために身を挺したパウル・フォン・オーベルシュタイン、そしてもう一人は、アンスバッハに躍りかかってハンドキャノンの射線を逸らせたジークフリード・キルヒアイス。
キルヒアイスはそのままアンスバッハを喰い止めんとするが、その左手の指輪から放たれた一閃の光条がキルヒアイスの頸動脈を撃ちぬく。それでも尚アンスバッハの手を離さず、もつれ合って床に倒れ込んだキルヒアイスとアンスバッハの元に、我を取り戻した諸将が駆けつける。しかし、全ては手遅れだった。
呆然としたまま、燃えるようなその赤い髪と同じ色に染まった親友に歩み寄るラインハルト。
横たわるその身体の側に跪きその名前を呼ぶが、帰ってきた言葉はあまりにも弱々しかった。
「ラインハルトさま……宇宙を手にお入れ下さい」
「それと、アンネローゼさまにお伝え下さい。ジークは昔の誓いをまもったと……」
「いやだ、おれはそんなことは伝えない。お前の口から伝えるんだ。お前自身で。
おれは伝えたりしないぞ。いいか、一緒に姉さんのところへ行くんだ。キルヒアイス!」
ラインハルトは、自らの半身の言葉を受け入れられずにただ反発する。
しかし、キルヒアイスはかすかにほほえんだだけで、静かに息を引き取った。
宇宙暦797年、帝国暦488年。人々の営みにかかわりなく、銀河は永遠の時を刻んでいる。
主人公ラインハルトのいわば半身であり、ファンからもっとも愛されているキャラクターの一人でもあるジークフリード・キルヒアイスがこの時点、つまり原作で言えば10巻構成の第2巻巻末、OVAでは4期全110話に及ぶ本伝の26話で早くも命を落としたことは、原作の読者に、あるいは原作未見のOVA視聴者に絶大な衝撃を与えた。
作中でもこの事件の影響力は凄まじかった。この出来事がいわばラインハルトの「覚醒」を呼び宇宙の統一へと邁進させることになるきっかけとなっただけではなく、作中でも、物語が後半に至るにつれ頻繁に「キルヒアイスが生きていたら……」と言及され、もしそうであったらラグナロック作戦からロイエンタール叛乱までの全ては無かったかもしれないと言われているほどである。
ジークフリード・キルヒアイスを演じた広中雅志も、そのあまりにも早い退場を惜しみ、あるいは自身の演じたキルヒアイスへの並々ならぬ愛着故に「もしも彼の声をまた演じることができるなら、ほかの仕事を断ってでも駆けつける」と宣言しているほか、原作者の田中芳樹でさえ「早く殺しすぎた」(初期はより短く完結する予定だったため)と発言しているほどである。田中芳樹が後に「タイタニア」で行った同様の展開はより物語のクライマックス近くで発生したことを考えると、この「キルヒアイスを早く殺しすぎた」経験が影響を与えているのかもしれない。
イゼルローン駐留艦隊は、新兵の訓練を兼ねた哨戒活動中、
帝国軍と遭遇し、予期せぬ戦闘状態に陥ってしまった。
帝国と同盟、 再び正面対決の予感。
次回、「銀河英雄伝説」第27話、「初陣」。
銀河の歴史が、また1ページ。
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最終更新:2025/12/09(火) 11:00
最終更新:2025/12/09(火) 11:00
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