そうりゅう型潜水艦とは、海上自衛隊が保有する最新の潜水艦である。
先代のおやしお型潜水艦をベースに改良された潜水艦。
海上自衛隊で初めてスターリング・エンジンを搭載したAIP(非大気依存推進)機関搭載潜水艦第一号である。
このままいくと最初で最後になるかもしれないが
搭載した液体酸素を使うことで、外気を取り込まずに燃料を燃やして発電できるAIP機関により、数日しかできなかった連続潜航が2週間以上可能となる飛躍的進歩を遂げている。
※ただし、AIP駆動に必要なケロシンや液体酸素を消費してしまうと潜水航行は従来型と同様となる。つまり一回だけの長時間潜行だと思ってもらってよいかもしれない。
搭載のAIP機関はコックムス社製スターリング・エンジン。
これを川崎重工業がライセンス生産し、国産機器を追加したものを積んでいる。出力は1台あたり75kwで4台搭載。
海自はAIP機関の本命として純水素を使った燃料電池を研究していたが、水素保存技術の問題が解決しないため実用化までのつなぎのシステムとしてこちらを採用した。(ただし別の理由から燃料電池搭載艦はしばらくなさそうである。詳しくは後述)
AIP機関は出力が小さく、必要な電力を賄いきれないので、従来と同じくバッテリーとディーゼルエンジンも搭載しており、ハイブリッド型と言える形になっている。
外見的特長は、前級である「おやしお」型の葉巻型の船体を引き継いでいるが、艦尾がこれまでの十字舵からX舵に変更されている。X舵に変更したことで従来の十字舵より舵の扱いが難しくなるものの、高い水中運動性を得られるほか、一つの舵が故障しても他の舵を用いることで艦の航行が可能になるというメリットがある。
また他にも、それまでの光学式潜望鏡だけではなくカメラとモニタの組み合わせによる非貫通型の潜望鏡や、メンテナンスのほとんど不要な交流モーター推進機など、様々な新機軸を搭載している。
注目されないが戦闘システムそのものが大きく更新されており、光ファイバーで構築された艦内LANに様々な機器やコンピュータがつながる分散型コンピューティング構造となっているため、どこかの機器が壊れても、全体でカバーし合うことで機能を維持するので損傷に強く、また新機能の追加が容易になっている。
武装は通常の魚雷のほかに対艦ミサイル、ハープーンblock2を搭載。実はこのハープーンblock2、巡航ミサイルとまではいかないが対地攻撃能力をもつ。つまり「そうりゅう」は水上艦艇も持ちえていない攻撃能力をもったということになる。なお機雷の敷設も可能。
搭載するZQQ-7ソナーシステムはおやしお型搭載ソナーの発展改良型で、強力な探知能力を持つだけでなく、高度な目標運動の解析能力も持っており、6目標の同時追尾・同時攻撃すら可能と言われる。
そうりゅう型は建造途中からいくつかの新装備への変更・追加が行われている。
2番艦「うんりゅう」からはソナーを改良型の「ZQQ-7B」に変更
7番艦からは高速通信が可能な新型通信衛星に対応した「Xバンド衛星通信装置」を搭載
8番艦からは「潜水艦魚雷防御システム」(Torpedo Counter Measures:TCM)を搭載する。
また5番艦から蓄電池を鉛蓄電池からリチウムイオン蓄電池に変更すると言われていたが、結局見送られた。
発火しやすいなど問題点もあるが、メモリ効果による蓄電能力の低下などが低く、長時間の放電が可能であり蓄電量は従来のものにくらべて2.5倍(技術研究本部発表)とされ期待されていたが、高価な事が仇となった。しかし、11番艦からのリチウムイオン電池搭載が決定。これにより船価が100億円ほど増加している。
そうりゅう型の整備は11隻で終了し、以降は完全新型設計の「28SS」型の建造に移行する予定。
28SS型では、そうりゅう型のようなスターリング・エンジンや開発中の燃料電池などのAIP機関は搭載せず、そのスペースに大量のリチウムイオン電池を搭載することで、AIP搭載艦レベルの連続潜航能力だけでなく、AIPでは出力不足でできない、既存通常動力艦を大きく超える高速発揮や高速巡航を可能とする予定である。……猛烈なスピードで発達した蓄電池技術により、AIPが不要とされるとは、いったい誰が予想しただろうか。
2012年7月、オーストラリア海軍がコリンズ級潜水艦後継計画である通常動力型潜水艦(4000トンクラス)について、日本の「そうりゅう」型に興味を示しており、導入を検討していると報道がなされているなど動きがあり、そうりゅう型に使用されている推進機技術(AIPなど)の供与などが話題となった。
これはオーストラリア海軍のコリンズ級潜水艦が数多くの欠陥を抱える問題児であるため、後継艦の調達では大型潜水艦の運用経験が豊富な日本からの技術供与を求めた動きのようだった。
ところが当の問題児を扱い続ける羽目にあったオーストラリア海軍は自国の造船業界を信用してないらしく、
(豪造船所はコリンズ級潜水艦だけでなく、建造中のホバート級イージス艦でも問題を起こしている)
ロイター通信の報道では、日本からの潜水艦輸入が有力な案として検討されているという。
案では日本の三菱重工および川崎重工の造船所で建造し、整備や補修はオーストラリアで行うとされており、
オーストラリアの限られた予算と日本の機密保持にあわせ設計変更した、そうりゅう型豪仕様になる模様。
ただし、この案にはオーストラリア造船業界が強く反発しているため、一筋縄に進むわけではないだろうが、仮にこの案が成立すれば、我が国戦後初の完成兵器の輸出プロジェクトとなるだろう。
それまで潜水艦は「~しお」という名称基準があったが、2007年の名称基準の改正で潜水艦に「瑞祥動物(縁起の良い動物)の名」が使用できることになった。これにより龍、鳳凰、雉、麒麟などの命名が可能となった。
海上自衛隊とその前身である大日本帝国海軍において、艦名に五行思想の五龍(五竜)に由来する「そうりゅう(蒼龍)」が使われるのは三代目となる。
初代は明治時代で御召艦として使われた木造船。二代目は言わずと知れた大日本帝国海軍の空母「蒼龍」である。
二番艦「うんりゅう」も大日本帝国海軍の空母「雲龍」から艦名を継いでいる二代目である。[1]
三番艦「はくりゅう」は五行思想の五龍(五竜)の一つ、「白龍」に由来する大日本帝国海軍の艦艇名を引き継がない日本の艦艇名として初登場の艦名である。
四番艦の艦名「けんりゅう」も同様に初登場の艦艇名となった。
瑞祥動物の青龍(=蒼龍)・赤龍・黄龍・白龍・黒龍の五龍(五竜)の内「蒼龍」と「白龍」が使用済みとなり、五龍の他の瑞祥動物は「応竜」程度であり、今後命名に利用出来そうな「~りゅう」名前の数はそれ程無さそうだ。
他に命名の可能性がある「~りゅう」は、「瑞龍」、「昇龍」と言った感じのいかにも縁起が良い・幸運そうな名前が想定される…。
平成18年度艦(つまり4番艦)までは「~りゅう」となるという話もあり、5番艦からは新たな命名がスタートするのであろう。
⇒5番艦は「ずいりゅう」(2011/10/20)、6番艦は「こくりゅう」と命名されました。(2013/10/31)
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最終更新:2025/12/07(日) 12:00
最終更新:2025/12/07(日) 11:00
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