アウトドローモ・テルマスデリオオンドとは、アルゼンチン北西部にあるサーキットである。
4月にMotoGPが開催される。
MotoGPのアルゼンチンGPでは、ドルナが製作した開催地紹介ビデオが流される。
アルゼンチンは様々な観光名所に恵まれた素晴らしい国である。
詳しくは、アルゼンチンという記事の、観光という項目を参照してください。
首都ブエノスアイレスから北西へ1,000km離れた場所にテルマスデリオオンドという街がある。
テルマスデリオオンドのテルマスとは温泉の意味であり、アルゼンチン屈指の温泉リゾート地である。
MotoGP開催時には人口2万7千人の街に数万人の観客が押し寄せるので、ホテル代が数倍につり上がる。
ブエノスアイレスの高級ホテルと同じぐらいになり、貧乏なプライベートチームにとって頭が痛くなる。
テルマスデリオオンドには『Casino del SOL(太陽のカジノ)』というカジノがここにある。
人工の貯水池であるリオオンド貯水池があり、そこにはヨットが並んでいる。
ここにダムを築いてあり、画像検索すると放水の画像も見つかる。
リオオンド貯水池に面した場所にサーキットがある。
湖に面しているので、湖から吹き込む風に用心したいところである。
航空写真で見てみると、アンデス山脈の麓にあることがわかる。サーキットの標高は280mである。
サーキットから西に目を向けるとアンデス山脈が見える。
レース関係者にとってはとにかく移動が大変な場所にある。
日本から本サーキットに行く場合の一例として、まずドイツのフランクフルトへ11時間かけて飛び、
ここでアルゼンチンのブエノスアイレス行き飛行機に乗り換えて13時間フライトし、
エセイサ国際空港から車で移動してホルヘ・ニューベリー空港へ辿り着き、
テルマスデリオオンド空港へ2時間かけて飛ぶ・・・乗り換えも含めると片道50時間の大旅行となる。
もちろん、国際空港から国内空港へ移動するときに車が来ないだとか、飛行機の発着が遅れるだとか、
そういう南米特有ののんびりペースにも合わせねばならない。
ブリヂストンは日本で生産したタイヤを空輸していたが、2014年の開催では遅滞させてしまった。
2017年4月6日(木)、アルゼンチン国内の交通分野の労働組合連合がゼネストを敢行した。
このためミシュランはタイヤの一部を時間通り届けることができず、4月9日(日)の決勝に影響が出た。
こんな具合にストライキが頻発するのもこの国らしい。
アルゼンチンは首都ブエノスアイレスに人口と産業が集中する一極集中の国で、
そのブエノスアイレスからかなり遠く離れていることから、
本サーキットでのレース開催は年間数回のみと非常に少ない。
サーキット近辺にアナホリフクロウが生息している。動画1、動画2 実物はこんなに小さい。
本サーキットは南緯27°30′の位置にある。これは日本の奄美群島と同じ程度の緯度である。
本サーキットに近いサンティアゴ・デル・エステロで一番寒い月の平均最低気温は5.0度。
日本の鹿児島市で一番寒い月の平均最低気温は4.6度なので、それと同じぐらい。
このサーキットの辺りは12月から3月までが雨季で降水量が多い。MotoGPの開催される4月上旬は
雨季の終わり頃となり、雨に祟られる可能性がある。
こちらやこちらが現地の天気予報。
2007年にサーキットが建設され、2012年に改修され、2013年5月に再オープンした。
2012年の改修を行ったのはイタリア人のヤルノ・ザッフェッリで、
インタビュー記事から察するにサーキット周辺の施設やセーフティーゾーンを設計したようである。
サーキットの形状や色々な数値を入力すると2輪車の転倒頻度や4輪車のコースアウト頻度を算出できる、
そういう独自のソフトウェアを駆使してセーフティーゾーンの設計をしたという。
彼の率いる会社は色んなサーキットから安全性検査の依頼を受けている。
2007年建設時のサーキットと2012年に改修されて出来上がったサーキットはだいたい同じである。
日本語版Wikipediaの右下に旧レイアウトが表示されている。
2012年改修時に追加されたのは2コーナー~4コーナーと、
8~9コーナー(アップダウンと切り返しがある難しい場所)の2ヶ所だけとなっている。
ヤルノ・ザッフェッリは高速コーナーが好みであると語っており、鈴鹿サーキットやイモラサーキットや
スパ・フランコルシャンサーキットを好きなサーキットに挙げている。
ライダーがコーナーを楽しめるようなコースを作るべきと熱弁し、
さらにはヘルマン・ティルケのストップアンドゴー型サーキットに対して少しばかりの批判をしている。
2007年建設時から存在する高速コーナーを温存したのはそのためだろう。
本サーキットはライダーからの評判が良く、「気持ちよくアクセルを開けていける」「走っていて楽しい」
など賞賛の声が絶えない。
真っ赤に塗装されたピット施設の屋上部分に観客が入りこんで立ち見することができる。
ライダーからはこんな風に見える。
砂埃が多かったり路面の凹凸が激しかったりと、なにかと路面状況の悪さが目立つサーキットである。
本サーキットでのレース開催は年間通じて数回と非常に少なく、路面の上に砂埃が山盛りとなっている。
2015年と2016年は砂埃にまみれた非常に汚い状態でレースウィークが始まった。
あまりの砂埃の多さに「晴れているのに、まるでウェット路面を走っているようだ」との発言があった。
砂埃が多い路面だと、当然滑りやすいのだが、それに加えてタイヤの消耗も速くなる。
路面の砂埃がサンドペーパー(紙やすり)のようにタイヤをこすり、タイヤをすり減らしてしまう。
さらにはアブレーション(abrasion 「摩耗」の意味)といって、タイヤが荒れる現象が発生する。
タイヤが荒れてしまうと、その荒れた部分を中心にどんどん消耗が進んでしまう。
決勝当日が近づくにつれ、多くのマシンによって路面の砂埃が掃除された格好になり、
走行ラインの路面の上にべったりとタイヤのラバーが乗って黒くなり、グリップが良くなっていった。
ところが、ちょっと走行ラインを外してしまうと砂埃が多く、滑ってしまう。
ベテランの多い最大排気量クラスでさえ走行ラインを少し外して転倒、という例が多く見られた。
やっと運営者も学習したのか、2017年はレース開催の2週間前にサーキットが2日間無料で開放された。
多くの2輪ファンがトラック走行を満喫し、計120台のオートバイが走行したことにより、
砂埃がだいぶ掃除された。
MotoGPライダーたちからは「去年(2016年)よりはマシ」というコメントが多く寄せられた。
2017年の開催は路面の凹凸が酷く、特に最終14コーナー立ち上がりとメインストレートエンドに
大きな陥没があり、多くのライダーがマシンを震わせながら走行する羽目になった。
このオンボード動画を見ても、メインストレートの最初と最後でライダーの体が上下に弾んでいる。
こちらがメインストレート走行中の動画。上下に弾んでいる。
2コーナーにも陥没があり、最大排気量クラス決勝では2コーナーで転倒するライダーが続出した。
マルク・マルケスとダニ・ペドロサの両雄が全く同じ転倒を喫している。
2018年3月に大金を投じて路面が再舗装された。全面舗装ではなく一部古い路面が残っているが、
路面の状態は非常に良くなった。
正確に言うと、10コーナーから最終14コーナーを経て3コーナーまでの区間が再舗装された。
ライダーの感想はまずまずで、凹凸がなくなって走りやすいという好印象のコメントが多かった。
ただ、ザラザラとして摩擦係数が高くてタイヤがグリップする路面を作る技術は足らなかったようで、
タイヤのグリップは今ひとつという声も聞かれた。
路面のカント(傾斜)が少ない、フラットなサーキット。
低・中・高速コーナーがいい間隔で入っていて、アクセルを存分に開けていくことができる。
コース幅が16mと広いのだが、走行ラインを外すと砂埃が多いのでコース幅を広く使った走行は難しい。
こちらがMotoGP公式サイトの使用ギア明示動画である。1速に落とすのは13コーナーのみである。
主なパッシングポイントは、2コーナー、バックストレートエンドの5コーナー、
7コーナー、9コーナー、13コーナー。
MotoGPが開催される時期は4月上旬で定着しているが、これは現地においては夏の終わり頃にあたる。
晴れ上がった場合、路面温度が高くなる。2016年開催の金曜は気温33度・路面温度53度まで上昇した。
大きくコーナーリングしながらアクセルを回してパワーを掛けていく左コーナーが2ヶ所あり、
リアタイヤの左側が強く発熱して痛みやすい。
2016年の最大排気量クラスのFP4(土曜日の練習走行)で、
6コーナー走行中のスコット・レディングのリアタイヤのトレッド部(一番外側のゴム)が
突如剥離して吹き飛ぶ事故が起こった。
この事故を受けてミシュランは「構造がガチガチに硬いリアタイヤで25周のレースをする」ことと
「それまでのリアタイヤを使うが周回数は20周にし、10周で強制乗り換え。タイヤ1組で10周だけ走る」
の2案を提示した。結局後者の案が採用され、決勝はレース中の乗り換えを強いられることになった。
この後者の案は2013年フィリップアイランドサーキットのオーストラリアGPとほぼ同じ形式である。
レディングの事故は走り始めて7周目に発生したので不安視する声もあったが、無事にレースは終わった。
本サーキットは硬いリアタイヤが推奨される。
2015年はブリヂストンからハードをさらに上回る硬さの「エクストラハードのリアタイヤ」が支給され、
これを履いたヴァレンティーノ・ロッシが見事に逆転優勝をおさめた。
2015年にブリヂストンがエクストラハード・リアタイヤを供給したのはこのサーキットのみである。
硬いリヤタイヤには耐久性があり、レースの最後までアクセルをガンガン開けて走りきることができる。
ただ、乗り心地が悪く、操縦性が悪く、どうにもこうにも機敏に動けない。
柔らかいリアタイヤは全く逆で、乗り心地が良く、操縦しやすく、機敏に動けるが、
レースの後半になってくるとタイヤがタレてしまい、アクセルをあまり開けられない。
2015年のロッシは硬いリアタイヤを選びつつも機敏にバイクを操縦していて、
そのことをホルヘ・ロレンソが絶賛していた。
最終14コーナーはどのライダーもインの縁石をゴリッと踏んで加速していく。
メインストレートはかなり短い。途中に地下道があり、転倒してコース内側に放り出されたライダーは、
ここを通ってピットに戻る
メインストレートエンドの1コーナーは転倒多発地帯であり、フロントから転ぶ例が多く見られる。
大きく回り込むUの字の2コーナーは有力なパッシングポイント。
3コーナーからバックストレートを経て5コーナーに至るまで長い上り勾配となっている。
3~4コーナーで勢いを付けて本サーキット最長のバックストレートへ突入していく。
この3~4コーナーはコーナーリングしながらアクセルを回してパワーを掛けていくコーナーで、
リアタイヤ右側を激しく攻撃してしまう。
バックストレートの長さは1076mで、ずっと上り勾配になっている。
バックストレートエンドの5コーナーは最有力のパッシングポイントになる。
5コーナー立ち上がりはバイクが右に傾いているので、左に切り返して6コーナーへ入る。
6コーナーは下り勾配で勢いがあり、コーナーリングしながらアクセルを回しパワーを掛けるコーナーで、
リアタイヤ左側が強く発熱する。リアタイヤに対して非常に厳しいコーナーである。
2018年はアレックス・リンスのリアタイヤから白煙(青白い煙)が上がっていた。
7コーナー~8コーナーは右・右の複合コーナーで、パッシングポイントの1つとなる。
7~8コーナーの外にはアルゼンチン国旗カラーの水色に塗装された部分があり、ここは水はけが悪い。
水色塗装の所に水が溜まり、じわじわ水がコース上に流れ込んでくる。
2018年4月7日(土)の最大排気量クラス予選において7~8コーナーだけびしょ濡れで、
他の部分はどこも完全に乾いている、そういう非常に面倒な状況になった。
レインタイヤで走ると乾いた部分が多いので全くタイヤが持たない。
スリックタイヤで走ると7~8コーナーの部分でハイドロプレーニング現象が起こり滑りまくる。
スリックタイヤを履いたジャック・ミラーはこんな具合に思いっきり滑っていた。
9コーナーは進入で上り、そして脱出で下るというダイナミックなコーナーであり、ここも抜きどころ。
これらの動画を見ると上り下りの起伏がよく分かる。動画1、動画2、動画3
9コーナー直後に右へ切り返す10コーナーがあり、そしてすぐに左の11コーナーへ入っていく。
このあたりはアップダウンと切り返しがあって、ライダーたちは高いレベルの操作技術を要求される。
11コーナーも、コーナーリングしながらアクセルを回してパワーを掛けていく左コーナーで、
またしてもリアタイヤ左側が強く発熱する。リアタイヤに対して非常に厳しいコーナーである。
緩い角度で右に切り返すのが12コーナーで、最大排気量クラスでは時速230km以上で切り返す。
高速走行中の切り返しなのでマシンがずっしり重く感じられる。
緩い角度の12コーナーを経て、キツい角度で右に曲がるヘアピン13コーナーへ突入する。
13コーナーに進入するあたりは急な下り勾配になっていて、ブレーキングが難しい。
バイクを寝かせながらブレーキングする場所であり、フロントタイヤを酷使する。
13コーナーは最後の勝負所であり、この13コーナーで前に入ってしまえば、
その勢いで最終14コーナーを回り、そのままチェッカーラインまで押し切ることが可能である。
最終14コーナー立ち上がりの直後にチェッカーラインがあるので、
13コーナーで無理矢理前に出てしまえば、抜き返されずにそのまま勝つことができる。
2014年に青山博一、2015年にカル・クラッチローが、
最終ラップの13コーナーで見事にパッシングしてゴールした。
2016年に最終ラップの13コーナーで、3番手を走行するアンドレア・イアンノーネが
2番手を走行するアンドレア・ドヴィツィオーゾに思い切り追突し、 2人とも転倒した。
彼ら2人はドゥカティワークスのチームメイト同士だった。
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最終更新:2025/12/09(火) 21:00
最終更新:2025/12/09(火) 21:00
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