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1. の意味に関する議論はゼノンのパラドックスの記事でお願いいたします。 掲示板情報の一元化にご協力をお願い申し上げます。 (このお知らせ表示は当掲示板レスが>>398まで伸びた時に貼り付けられました) |
アキレスと亀とは、
本記事では2.について説明する。1. については扱わないのでゼノンのパラドックス参照のこと。
アキレスと亀とは、「アキレスがどんなに速く走ったとしても、前を行く亀に追いつくことはできない」という命題及びその解説である。パラドックスの世界でおそらく最も有名な話の1つ。
俊足に定評のあるギリシャ神話の英雄アキレスが、のろまな亀を追いかける事になった。
さて、アキレスが亀に追いつくためにはまずアキレスが亀の出発点まで到達しなければならないのだが、アキレスが亀の出発点に着いた時には亀はもっと先の地点にいる。そしてアキレスがその亀のいた地点に到達した時には、亀はまた先に進んでさらに先の地点にいる。(以下、無限ループ)
従ってアキレスはどれだけ速く走っても亀には永久に追いつけないし、亀はどれだけ遅くても休まずに進み続ける事で永久に追いつかれない。
このパラドックスを提唱したゼノンは、「時間と空間の実在性」を肯定する一派に対し、その一派の主張をつきつめるとこのアキレスと亀を肯定せざるを得なくなるので、「時間と空間の実在性」を肯定する一派の主張は誤りであると否定したかったのだが、その点についてはこの記事では扱わないのでゼノンのパラドックスを参照のこと。大事なことなので二回言いました。
このパラドックスがゼノン自身やゼノンのパラドックスを差し置いて有名になった背景には、「時間と空間の実在性」に関心がない一般人に対しても一瞬納得しかけてしまうような説得力があり、さらに少し考えればその(非哲学的な)理由を説明したり理解したすることが容易であるということがある。
従って、一般人向けの文章において、ゼノンのパラドックスから切り離されてアキレスと亀の話だけが取り上げられた時には、ゼノンの語りたかった哲学上の議論ではなく、人間の思い込みなどを諭す(さとす)ための題材として用いられている場合が多い。
現実にあるわけがないとわかっていても、その理由を言葉で証明できないという方もいると思うので、一応、上記論理の(非哲学的な観点からの)誤りについての解説の一例を記事末尾に記しておくのでタネがわからない人はジャンプして頂きたい。
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この項目は、ネタバレ成分を多く含んでいます。 ここから下は自己責任で突っ走ってください。 |
アキレスが亀よりも速い速度で走っているのは明白であるため、砕いて要約するなら、アキレスが亀にいつまで経っても追いつけないように見えるが、これは追いつく少し前 →ほんの少しだけ前 →ごくごくわずか前…(以下、無限ループ)に追いつけないという話を示しているに過ぎない。時間で現すなら、亀に追いつく1秒前 →0.1秒前 →0.01秒前 →0.0001秒前…を繰り返していけば、追いつくまでの時間差が0秒に到達しない以上アキレスは亀に追いつけない。ように見える。
横軸:t(時間)、縦軸:x(距離)、青:アキレス、赤:亀
亀とアキレスの詭弁は図の緑線の議論をしてるだけに過ぎない。
アキレスの速度を2、亀の速度を1、アキレスと亀の最初の距離を1とすると、
亀の移動距離(説明2のグラフでいうと緑線の縦成分)は
1/2 + 1/4 + 1/8 + ... + 1/2^n + ...
となり、一般項1/2^nの極限(n→∞)は0、総和1-1/2^nの極限は1に収束する。
つまり、nが無限大の時に図の交点に至ることになる。
ここでnは概要にある亀とアキレスのやりとりの回数を表す。
しかし、例えばそのやりとりを1億回繰り返したとしても、両者の間にはなお1/2^100000000の距離があり、交わることは決してない。
緑線だけで考えれば、無限大という机上の空論を持ち出さない限り両者が交わることはない。
しかし実際には交点(t,x)=(1,2)は存在する。
これを考えるにはx軸(距離)だけでなくt軸(時間)も考える必要がある。
概要に「アキレスは永久に亀を追いつくことができない」とあるが、この『永久』がくせ者。
緑線の横成分の総和の極限は、
lim (1/2 + 1/4 + 1/8 + ...) = 1
であるが、これもn=無限大の場合であり、実際に1を超えることはない。
1億回も概要のやりとりが続けば永久の時が流れたような錯覚を覚えるが、1-1/2^100000000しか経っていないのである。
実際は時間は2,3,4...と続いていくものであるのに、t<1と限定し、しかもそれを「永遠」という言葉でカモフラージュしている。
これが「アキレスと亀」の詭弁の正体です。
亀の速度を1とし、時刻tにおけるアキレスの速度を 1 + e-t (eはネイピア数)とし、t = 0におけるアキレスと亀の距離を1とすると、時刻tにおけるアキレスと亀の距離は、
1 + ∫0t (1 - (1 + e-t))dt = 1 + [ e-t ]0t = 1 + e-t - 1 = e-t > 0
1 < 1 + e-t なのでアキレスは亀より速く走ってはいるが、いつまで経っても亀に追いつけない。
あれ?
実はアキレスが亀のいた場所に到達するという動作自体は無限回行われているが、それが行われる時刻は、すべてある時刻よりも前になっている。そのため、その「ある時刻」より後に何が起こるかはこの論法だけではわからないため、「永久に」追いつけないと断定することはできないのである。この論法には、 「無限回の動作を行うのにかかる時間は無限である」という誤った前提が隠されていたのである。
ちなみにその「ある時刻」こそが、アキレスが亀に追いつく時刻である。つまりこれはアキレスが亀に追いつく前の出来事なのである。
現実世界においても、アキレスが亀を抜こうとするならば、アキレスは必ず亀のいた位置を通る必要がある。そして、アキレスが亀が居た位置に到達すれば、亀が必ずその少し先に進んでいるという事態も現実に発生していることになる。この考えは無限に繰り返すことができ、したがってアキレスは論理上この無限ループから脱することはできない。
それにも関わらず、現実世界ではアキレスは亀を抜く。つまり論理的に脱出不可能と思われる無限のループを現実には脱出するのである。ではどうやってループを抜けたというのであろうか?この誰にも説明できない矛盾が、アキレスと亀のパラドックスである。
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最終更新:2025/12/09(火) 14:00
最終更新:2025/12/09(火) 14:00
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