イルカがせめてきたぞっとは、イルカが攻めてきたことを警告する声である。
小学館が1970年から発行した「なぜなに学習図鑑」という児童向け学習図鑑シリーズの第9巻「なぜなに学習図鑑9/なぜなにからだのふしぎ」(監修/医事評論家 石垣純二、指導/科学評論家 相島敏夫)内に掲載された、とあるイラストの描き文字。
この図鑑は児童が抱くであろう素朴な質問に対してイラスト付きで回答が記載されるといった形式であった。そして「人間より、いるかのほうが頭がよいのですか。」という質問に対する回答が、この「なぜなに からだのふしぎ」の第60ページおよび第61ページの見開きで掲載されている。
この見開きページの下方4分の1程度には質問に答える文章が掲載されており、イルカがとても頭が良いということを説明した上で
もし、いるかが人間と同じようにりくの上でくらすとすると、知えのほうで、きっと人間をまかしてしまうだろうという人もいます。
と最後を結んでいる。
そして、この見開きの上方4分の3程度には大判のカラーイラストが描かれていた。
このイラストでは、スキューバダイビングで使うタンクのようなものを背負ったイルカが直立して陸上を侵攻し、光線銃のようなもので人間を射撃している。その背景では巻貝のような異様な形態の戦車らしき兵器が人類の街を破壊している。そして、この地獄絵図に添えられた描き文字が「イルカがせめてきたぞっ」であった。イラストの向かって右下隅には「S. Komatsuzaki 1971」と署名がされており、空想科学イラストレーターとして著名な「小松崎茂」による作品であると思われる。
一般的には可愛らしいイメージが強い動物であるイルカが無慈悲に人間を殺戮しているというギャップのある光景であり、また直立するイルカというシュールな絵面ながらも小松崎茂の画力によって躍動的な印象を保ったこのイラストは、「イルカがせめてきたぞっ」という手短かかつ端的なフレーズも相まって見た人間に強烈な印象を残す。そんなわけで、現代でも「面白画像」としてインターネット上でも盛んに流布されている。
ただし興味深い事に2017年になって、小学館の学習雑誌「小学四年生」の1970年3月号に収録された「ショッキング画報 もしもこうなったら」という特集内の「もしもイルカがせめてきたら」という記事にかなり似通ったイラストが掲載されていることが発見され、Twitterに画像付きで投稿された。[1]
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https://twitter.com/kan_ei_sen/status/907980286805213185
こちらのイラストでも「タンクを背負って直立したイルカたち」が「光線銃で人間を射撃」しており、さらに背景では「巻貝でできた戦車」も描かれている。ほぼ同じモチーフと言って差し支えない。だがこの「もしもイルカがせめてきたら」のページには「え・伊藤展安 カット・高須礼二」と記載があり、このイラストは小松崎茂によるものではない。
「なぜなにからだのふしぎ」の初版発行年ははっきりしないが、上記の小松崎茂のサインに「1971」とあることから1971年以後であると思われ、おそらく「小学四年生」1970年3月号の方が先に出たものと思われる。この「もしもイルカがせめてきたら」のイラストを小学館の編集者が小松崎茂に渡し、「これを参考に描くように」と指示したものだろうか。また、伊藤展安は小松崎茂の弟子であったとのこと[2]であるため、弟子と師匠の間でモチーフを融通しあうことがあったとしてもおかしくはない。あるいは、この2つが共通に参照したさらに大元のイラストが存在するという可能性もある。
なお余談だが、上記のTwitter投稿に続くかたちで寄せられたリプライによると、鉄腕アトムのアニメ第1作の「イルカ文明」の回(1964年放映)で既に「人間と対立する文明化したイルカ」というストーリーが描かれており、これが元ネタになっている可能性もあるのでは?とのことである。[3]
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最終更新:2025/12/09(火) 23:00
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