シャム(競走馬) 単語


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シャム

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シャム(Sham)は、1970年生まれのアメリカの元競走馬・元種牡馬。

確かな実力を持った馬ではあったが、「怪物」の異名をほしいままにしたセクレタリアトの同期であるという不運に泣かされ「生まれる年が悪すぎた馬」ともなってしまった。

概要

父Pretense、母Sequoia、母父Princequilloという血統で、名門クレイボーンファームの生産所有馬。

父プリテンスが勝ったサンタアニタハンデキャップや母セコイアが勝ったスピナウェイSはグレード制導入から現在まで一貫してGIとして施行されていることからも分かるように格の高いレースである。母の全姉にハウ(ケンタッキーオークス・CCAオークス)とチェロキーローズ(CCAオークス)がおり、前者の孫にトムロルフ、後者の孫にアックアックと既に牝系から活躍馬が複数出ている良血馬である。

ちなみに馬名の「Sham」とは「偽物」「詐欺師」といった意味の単語で、更に余談だが父プリテンスは「見せかけ」である。

三冠戦線まで

シャムは成長すると16.2ハンド(約164cm)という体高になった筋骨隆々の馬で、同牧場のアーサー・ハンコック・ジュニア代表をして「最高の馬になるかもしれない」と言わしめたほどの期待馬であった。

しかし、本馬が2歳になっていよいよデビューするという時になって、ハンコックは膵臓癌で倒れ入院。その直後の8月末にデビューしたものの初戦は3着、2戦目も2着と惜敗し、2戦目の翌日にハンコックは死去してしまった。その9日後に出走した未勝利戦でも2着に敗れた。

11月になって、クレイボーンファームの現役馬は繁殖馬の維持費と相続税に充当するため全て売却され、本馬はシグムント・ソマーという不動産業者に20万ドルで購入された。厩舎もウッディ・スティーブンス厩舎からソマーの専属のフランク・マーティン厩舎に移った。その後、12月の未勝利戦を6馬身差で圧勝して2歳シーズンを終えた。

3歳時は西海岸に拠点を移し、元日に一般競走を15馬身差で勝利するという衝撃の始動戦を見せた。続けて出走した一般競走も6馬身差で圧勝し、サンタカタリナS(GII)でも2馬身半差で快勝して一気に一線級に躍り出たが、次走のサンフェリペS(GII)ではリンダズチーフの7馬身差3/4差4着に敗退。サンタカタリナSで2着だったアウトオブザイースト(3着)にも先着されるという少々だらしない結果となった。

サンタアニタダービー(GI・9ハロン)ではサンフェリペSの上位3頭が全て出走し、勝ったリンダズチーフが単勝1.5倍の圧倒的1番人気だったのだが、リンダズチーフはスタート直後にナイトリードーンという馬に大きな不利を受け、その間にシャムが先行してそのまま勝利した。しかし、スタートでの不利はリンダズチーフ鞍上のブラウリオ・バエザ騎手からレース後に裁決への抗議が出たほど大きかった上に、ナイトリードーンが本馬と同厩だったことから、結果としてはやや後味の悪いものとなってしまった。

それでもサンタアニタダービーの勝ち時計はレースレコードタイであり、レコードホルダーのラッキーデボネア(1965年)も後にケンタッキーダービー馬となっていたため、シャムは有力馬の一頭としてウッドメモリアルS(GI・9ハロン)に向け東征。本馬のデビュー戦で勝利したアングルライト、そしてアングルライトの同厩馬で、これまでシャムとは未対戦であった前年エクリプス賞最優秀2歳牡馬・年度代表馬のセクレタリアトと対峙することとなった。

ところが蓋を開けてみると、アングルライトがスローで逃げ、そしてシャム鞍上のラフィット・ピンカイ・ジュニア騎手も後方のセクレタリアトの方を警戒した結果、猛追したもののアングルライトにアタマ差届かず2着に終わった。しかしセクレタリアトは4馬身離れた3着だった上、セクレタリアトの父のボールドルーラーは当時は種牡馬として三冠競走の勝ち馬を1頭も出していなかったこと、シャムと違ってセクレタリアトはマイルまでしか走っていなかったこともあって、まだ勢力図ははっきりと定まっていなかった。

三冠戦線

ケンタッキーダービーでは、セクレタリアトが2.5倍で1番人気、シャムが3.5倍で2番人気となった。シャムは好発からスムーズに先行していたが、実はスタート時にゲートに頭をぶつけて歯を折ってしまい、口内に血が出た状態で走ることになってしまっていた。直線ではよく粘ったが、スタートから加速ラップを踏み続けたセクレタリアトにあっという間に交わされ、2馬身半差の2着に敗れた。セクレタリアトのタイムはノーザンダンサーのレコード・2分0秒フラットを0.6秒更新する1分59秒4という好時計で、本馬も1分59秒8でこれに食らいついており、3着アワーネイティヴも8馬身後方に置き去りにしていたのだが、ピンカイ騎手は「スタートでアクシデントがなくても、これより速く走るのは難しかっただろう」というコメントを残しており、セクレタリアトは残りの二冠でもかなりの難敵となりそうだった。

ところで、実は当時は勝ち馬以外は着差しか計測されていなかったため、シャムの公式タイムは存在していない。このためシャムの勝ち時計は着差を元にした推定とピンカイ騎手のコメントによる「1分59秒8」という数字が有力視されている一方で「2分0秒2」だったという説もある。
ただし、現在ではシャムを扱った書籍「Sham: Great Was Second Best」の筆者が中継映像を元に推定着差を10フレーム(≒0.348秒)としており、これに従えばシャムも1分59秒台で走っていたというのはかなり信憑性が高いと思われる。

さて、次のプリークネスSでは、ケンタッキーダービー組が上位3頭を除いて全て回避し、別路線組も頭数が揃わず6頭立てとなった。今回も先行策を取ったが、後方から2コーナーでまくって先頭に立つという競馬を見せたセクレタリアトを最後まで捉えることができず、またも2馬身半差で2着に惜敗した。3着はまたしても8馬身差でアワーネイティヴであり、セクレタリアトを除けばシャムがこの世代のトップクラスにいることは明らかだった。

最終戦のベルモントS(5頭立て)では、セクレタリアトが1番人気、シャムが2番人気というのはケンタッキーダービーと同じだったものの、オッズはセクレタリアト1.1倍・シャム6.1倍とかなり開いていた。両馬とも12ハロン戦は未経験であったため、シャムの方がスタミナで上回っているという僅かな可能性に賭けて、陣営はセクレタリアトを前に出させない競馬を選択した。

しかしレース前からシャムは異常に入れ込んだ上、ゲートが開くとセクレタリアトがスタート直後から積極的に先行し、レースはかなりのハイペースとなった。そしてシャムは中間地点で早々に失速してしまい、勝利したセクレタリアトの31馬身後方……の2着トゥワイスアプリンスの更に14馬身後方、すなわち45馬身差の5着(最下位)で入線した。

更に悪いことに、8月のホイットニーハンデキャップへ向けた調整中の7月に管骨を骨折。手術を経てそのまま引退となり、セクレタリアトにリベンジする機会は遂に得ることが出来なかった。セクレタリアトとの対戦成績はウッドメモリアルS(2着)で先着しただけの1勝3敗であった。

種牡馬として

レイズアネイティヴなどを繋養したケンタッキー州の名門であるスペンドスリフトファームで種牡馬入りしたシャムは、初年度産駒からシェリーペッパーズ(スピナウェイS)やジャーゼイロ(愛2000ギニー、サセックスS)などを出して成功を収めた。日本でもプリンスシンが京都記念を勝ち、母父として出したエイシンワシントンが短距離路線で活躍した。
ステークスウィナーは47頭であり、三冠馬として鳴り物入りで種牡馬入りしたセクレタリアト(57頭)とは環境の違いを考えると割といい勝負であった。しかしフィリーサイアー寄りの成績だったことが災いして、残念ながら父系は現在に至るまでにかなり衰退してしまった。

1992年にウォルマック国際ファームに移動し、翌年4月に心不全のため23歳で死亡した。検死の結果、心臓が普通のサラブレッドの平均の2倍にもなる18ポンドという重さだったことが判明している。

血統表

Pretense
1963 黒鹿毛
Endeavour
1942 鹿毛
British Empire Colombo
Rose of England
Himalaya Hunter's Moon
Partenope
Imitation
1951 栗毛
Hyperion Gainsborough
Selene
Flattery Winalot
Fickle
Sequoia
1955 鹿毛
FNo.9-h
Princequillo
1940 鹿毛
Prince Rose Rose Prince
Indolence
Cosquilla Papyrus
Quick Thought
The Squaw
1939 黒鹿毛
Sickle Phalaris
Selene
Minnewaska Blandford
Nipisiquit

クロス:Selene 4×4×5(15.63%)

主な産駒

  • Jaazeiro (1975年産 牡 母 Rule Formi 母父 Forli)
    • 1978年アイリッシュ2000ギニー(愛GI)、1978年サセックスS(英GI)、1978年セントジェームズパレスS(英GII)、1977年シェーヌ賞(仏GIII)
  • Sherry Peppers (1975年産 牝 母 Jaffa 母父 Palestine)
    • 1977年スピナウェイS(米GI)
  • Safe Play (1978年産 牝 母 Bori 母父 Quadrangle)
    • 1982年ラカナダS(米GI)、1981年フォールズシティH(米GIII)
    • Defensive Play(米GI2勝)の母
  • Arewehavingfunyet (1983年産 牝 母 Just Jazz 母父 Exclusive Native)
    • 1985年オークリーフS(米GI)、1985年デルマーデビュータントS(米GII)、1985年ランダルースS(米GIII)
  • プリンスシン (1987年産 牡 母 Hempens Syn 母父 Symmetric)
    • 1991年京都記念(GII)

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