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ディファイアント

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ディファイアントとは、イギリスが開発したいつもの珍兵器単発レシプロ戦闘機である。

概要

第一次世界大戦でイギリスが使用した、旋回銃座を持つ複座戦闘機ブリストル F.2ファイターが一定の成功を収めたため、同じコンセプトの複座戦闘機が開発されることになった。                                    パイロットは操縦に専念し、機銃手は射撃に専念できる。効率的な運用法だと考えられたのだ。

1935年にボールトンポール社の試作機が採用され、ディファイアント(挑戦的な)の名が与えられた。

で、どんな戦闘機?

いきなりですが失敗作です。

・同じエンジン、機体規模で同時期に開発されたハリケーンより機動性が悪い。

ハリケーンMk Ⅰ 最大速度531km/h                                                                                                     ディファイアント 最大速度489km/h

複座であることと旋回銃座の存在でハリケーンより1トンも重い上に翼面荷重が高く、運動性や加速力、上昇力等あらゆる飛行性能で劣っていた。

・武装 7,7mm旋回機銃×4のみ

ディファイアント最大の問題点。                                                        そう、旋回機銃しか装備していないというトチ狂った前代未聞の戦闘機なのだ。                           しかも安全装置のせいで前に向かって撃てない


前述の通りディファイアントは「挑戦的な」という意味だが、それにしたって程があらぁ。


何故そんな狂った設計がまかり通ったのかというと、イギリスは第一次世界大戦でドイツの飛行船や爆撃機に手痛い損害を受けた経験があるため、攻撃より防衛戦闘を重視していた節があり、更に「戦闘機の高速化が著しいから、鼻先を突きつけ合うドッグファイトは廃れる」という予想もこの設計を後押しした。

・・・実際にはジェットの時代になっても前方の固定機銃が無くなることはなかったが。


さあどうなった

1940年、後に名高いバトル・オブ・ブリテンの幕が切って落とされた。                                さぁどんな悲惨な結果が待っているだろうと思えば・・・

・オランダ沖での戦闘でHe111とJu88を1機ずつ撃墜

・ダンケルク撤退戦でJu87やBf110等を計65機撃墜

あれ? 大活躍じゃん。

しかし彼らが相手にしていたのは爆撃機や大型双発機といった鈍重な相手ばかり。                       Bf110もパイロットが「後ろもーらい」と近づいてきたところを不意打ちで撃ち落とされるケースであった。          マトモな精神なら旋回機銃だけを積んだ戦闘機が前線で飛んでいるとは思わない。


そしてある日、ドイツ軍パイロットはとうとう気が付いてしまった。

「あれ? アイツら正面から攻撃すれば手も足も出なくね?」

晴れてディファイアントは駄作機の道を歩むこととなったのだった。

何故失敗したのか

前述のF.2ファイターやディファイアントと競合したホーカー社の試作機ホットスパーも旋回機銃だけでなく、ちゃんと前方固定機銃も装備していた。                                                           旋回機銃座の搭載で重くなった機体を少しでも軽量化したかったのだろうが・・・

更にいくら射撃に専念できると言っても、ぴったり敵機の後ろについて撃つのと、自在に飛び回っている敵機を追尾して撃つのとじゃ命中精度が違いすぎる。                                                    おまけに機銃の射角から逃げられたらどうしようもない。

熟練パイロットなら相手の回避機動に追従して攻撃できるが、ディファイアントはパイロットと機銃手が分かれているため、そういった直感的な動作ができない。                                                  つまり・・・

機銃手「あっ、逃げられた! 右に旋回して!」

パイロット「え、右? 分かった・・・」

機銃手「いや左か! 左に旋回! もっとちゃんと敵に付けて!」

パイロット「こっからじゃ敵の位置が見えねーんだよ! ・・・ぎゃあ正面から来るぅぅぅ!!!」

おまけに旋回銃座は律儀に機銃を上方に向けて旋回銃座を前方に回さないとハッチが開かない。           つまるところ機銃をグルグル回してドンパチやってる最中から即座に脱出できない。

更におまけに銃座は狭く、パラシュートを背負ったまま乗れない。                               もひとつおまけに被弾時に銃座がしょっちゅう故障して動かなくなった。

つまるところ、「もうちょっと考えて設計しようね!」

その後

出オチ的な戦果を残した以外は無残な結果に終わったディファイアント。

戦闘機失格の烙印を押され、ボールトンポール社は「銃座を廃して前方機銃を搭載する」つまり普通の戦闘機にする計画を立てるが・・・

空軍「ハリケーンどころかスピットファイアまであるのに今更そんなもんいらん」

その後は夜間戦闘機として運用され、良くも悪くもない評価だったが、傑作機モスキートの投入でお役御免になり、短命に終わった。

後は訓練機・標的曳航機はおろか、ECMを積んで電子戦機・圧縮ゴムボートを積んで海難救助機といったユニークな任務をこなしていった。

戦うだけが兵器の任務ではない。                                                       ディファイアントに敬意を。

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関連項目

  • 軍用機の一覧
  • 戦闘機
  • イギリス/英国面

※余談

海軍版ディファイアントというべきものにブラックバーン社のロックがあり、こちらはスクア艦上爆撃機をベースに無理やり旋回機銃を積んだ代物で、ディファイアントが良心的に思えるほど劣悪な飛行性能だったそうだ(遅い遅い言われたディファイアントが489km/hに対しロックはなんと359km/h)。                                      おまけにお互いの銃座の互換性が無く、同じ工場でわざわざ別々の物を作っていた。

この機体の導入について当時の海軍航空隊司令曰く「常に躊躇する」。

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