ハットトリック(競走馬)とは、日本の元競走馬、現在はアメリカの種牡馬である。
あまりに激しく短く燃え尽きた現役生活を終えた後、父サンデーサイレンスの威光を伝える種牡馬として世界を舞台に活躍中である。
馬名の由来はもちろんサッカーのハットトリックから。
父は言わずもがなの大種牡馬サンデーサイレンス、母トリッキーコード、母の父Lost Codeという血統。
生産は追分ファーム、馬主は一口馬主会のキャロットファームなのだが、彼の年代はキャロットに社台の資本が入って強化?された二世代目に当たる。
つまりある程度はクラブ発展に寄与するだろうと期待されつつ送り出されたのだが、そんなに一口の売れ行きも芳しくなく、
デビュー直前の2歳の5月に左後脚にボルトを埋め込むほどの重篤な骨折をするなど先行き不安ばかりが募る情勢であった。
イングランディーレを管理した清水美波(女性じゃないよ)厩舎に預けられ、骨折から一年が経った2004年5月にデビュー。同期の連中がNHKマイルだダービーだとはしゃぐ中ひっそりと未勝利戦へ。
上がり最速でぶった斬り快勝。続く条件戦では上がり3ハロン32.9という無茶苦茶な末脚でぶった斬り。
2連勝で気を良くしてラジオたんぱ賞(当時)に乗り込み二番人気に推されるが、福島競馬場の重賞で府中で上がり勝負してきただけの馬が通じるわけもなく9着大敗。休養に入る。
その後、秋になると栗東の角居厩舎に転厩。関西馬としてリスタートを切る。ここから破竹の連勝街道を歩む。
出るレース出るレース上がり最速でぶった斬り。京都金杯と東京新聞杯も上がり最速で駆け抜け4連勝。マイルの新星誕生!と思われたが
マイラーズカップで惨敗すると歯車が狂い、安田記念も見せ場なく惨敗。失意のまま休養に入る。
秋も二戦してイマイチ振るわなかったが、天皇賞(秋)では32.6という恐ろしい上がりを記録していた。勝ち負けからはるかに遠い所で繰り出しただけだったが、惨敗中は上がり最速を記録出来なかったため復調の兆しだったのかもしれない。
続いて出走したマイルチャンピオンシップでは上がり最速こそデュランダルに譲ったが、上がり3ハロン33.3を叩きだす極上の瞬発力でねじ伏せ快勝。GⅠ勝利を飾る。
その勢いのまま香港に遠征。香港名「三連冠」として香港マイルに出走するがここでも外から強襲して前を撫で斬り快勝。なんとGⅠ連勝を海外で決めてみせたのである。
2001年の三連勝はあまりに有名だが、このレース自体はその2001年の勝ち馬エイシンプレストン以来の勝利である。すごい。
この活躍で、JRA賞の最優秀短距離馬に選ばれた。最優秀父内国産馬に入れた記者はちゃんと血統表見ましょうね~
余談だが、彼と1歳下のシーザリオの活躍でキャロットファームは人気のある一口クラブとなった。やったぜ。
このあとは…色んな意味で蛇足である。詳しくは述べないが惨敗惨敗また惨敗。しかし6歳の春に復調の気配を見せつつあったが、アメリカなど海外から種牡馬入りオファーが届き、それをキャロットが受け入れたため引退となった。
通算成績21戦8勝。上がり3ハロン最速級の末脚で勝つか掲示板すら外す惨敗かの二択というある意味豪快な馬であった。
サンデーサイレンス産駒の有力馬は、大体日本に留まって種牡馬入りすることが通例である。海外に行った馬は
・大器と目されたが、骨折で尻すぼみになったアグネスゴールド
・福永がキングヘイローを捨ててまで取ったのに結局GⅠ取れなかったディヴァインライト
・大器と目されたが、調教師がアホで大成出来なかったフサイチゼノン(ちなみにアグネスゴールドの兄)
・名前はかっこいいけどイマイチ君なローゼンカバリー
など、一線級のサンデー産駒とはちょっと言いがたい感じの馬ばかりで、与えられた環境もそうでもなかったためうまくいかない馬が多かった。
しかし、ハットトリックが引退した2007年にディヴァインライト産駒Natagoraが英1000ギニーを快勝。日本のファンが「ダンスインザダークとかフジキセキあたりが向こう行ったらいい線行くかもなあ」 と思い始めたころに、
晩年は惨敗続きだったとはいえ、強かった時期はサンデーサイレンス産駒中屈指の末脚を見せていたハットトリックが海外に渡って種牡馬入りというニュースが入ったわけで、期待されないわけがなかった。
そして彼も、圧倒的な瞬発力を伝えその期待に応えていく。
2008年からケンタッキー州とオーストラリア、2010年にはアルゼンチンに渡るなど精力的に活動。2011年に初年度産駒がデビュー。
フランスで持ち込み馬としてデビューしたDabirsimが2歳GⅠを2勝。無敗のままカルティエ賞最優秀2歳牡馬、さらにはフランス年度代表馬にまで上り詰めた。
そして、たった一頭でフランスの2歳リーディングとファーストクロップ(初年度産駒)サイアーのタイトルを父にプレゼントしたのである。
この孝行息子の活躍で、Lyphardなど大種牡馬を繋養してきたゲインズウェイファームに栄転。2012年よりそこで種付けしている。
初年度産駒からはDabirsimの他にもアメリカで芝のGⅠを勝利したKing Davidが出るなど好調であったが、2年めの産駒はイマイチ振るわない。
しかし、最近もアルゼンチンで2歳GⅠを勝利したZapataを輩出するなど、牝馬の質が上がった今ならもっと活躍できそうである。
2400mの重賞を勝つような産駒もいるなどスタミナも十分。サンデーサイレンスの血を世界に広げる旗頭として活躍して欲しいものである。
産駒の活躍
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最終更新:2025/12/09(火) 17:00
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