バンザイ(競走馬)とは (バンザイとは) [単語記事]

バンザイとは、1921年生まれの日本の元競走馬、元種牡馬である。鹿毛の牡馬。

生産者：千本松牧場、調教師：仲住与之助、馬主：松方巌

主な勝ち鞍
1924年:帝室御賞典(東京、春)、優勝内国産馬連合競走(東京、秋)

※当記事では馬齢は旧年齢で表記します。

概要

父ダイヤモンドウェッディングは英国三冠馬ダイヤモンドジュビリーの産駒で1909年に日本に輸入され、種牡馬ランキングで2位を獲得した大種牡馬。母宝永は1913年にオーストラリアから輸入された豪サラでホーヱイ^[1]の名でもって阪神の帝室御賞典を勝った名牝。半姉妹に帝室御賞典を勝ったピユーアゴウルド、カーネーシヨン(コクホウ)、全弟に帝室御賞典を勝ったコウエイ、甥にダービー馬スゲヌマが居り、思わず超良血馬と言いたくなるような血統である。

千本松牧場は困窮する元武士を救済する目的で松方正義が設立した牧場で馬主の松方巌はその息子で十五銀行頭取、当時としては珍しいオーナーブリーダーだった。

仲住与之助は横浜の根岸競馬場の調教師で明治時代に日本一の名騎手とされた大野市太郎の一番弟子。

馬名は牧場内にあった邸宅万歳閣に由来し、万歳閣の名は後の大正天皇と日露戦争勝利に万歳三唱したことにちなむ。

4歳～デビューから連合二哩まで～

1924年4月26日、バンザイは目黒競馬場の新呼馬でデビューした。終生のライバルとなるラレードとのマッチレース約1800ｍを1.57.37のレコードタイムで7馬身つけて圧勝。翌日の帝室御賞典約1800ｍを1.53.71というスーパーレコードで3馬身半つけて勝利、前年の勝ちタイムより７秒近く速く、それまでのレコードを２秒半更新したため、時計が壊れているのではと疑われたほどの大勝利だった。

５月６日の内国産新呼馬優勝戦ではラレード以外の馬が回避したためマッチレースとなり大差で勝利した。

秋はこの年から阪神の鳴尾競馬場でも当時の最高レースである優勝内国産馬連合競走(関西版は通称関西連合、または阪神連合)が行われることとなっており、それを目標に関西へと遠征した。「松方公の３万円の名馬バンザイ来たる」と報道され、大注目を集めたが10月4日の初戦を9頭立ての2着に敗れてしまう。しかし、相手は帝室御賞典勝ち馬であるオーキツドであり、その後７年更新されなかったレコードのハナ差２着であったため、次戦では回避が相次いでマッチレースとなったが6馬身つけて圧勝。もはや、本戦での勝利は望めないと関西の有力馬は３頭を残して阪神連合を回避する。しかし、肝心のバンザイも回避してしまいその翌12日の呼馬優勝戦を勝って関東へ帰って行ったため、何しに来たんだと皆真意を測りかねたという。

その優勝戦の２着馬はオーキツドであり、それ程までに敗戦が陣営にとって衝撃だったのだろう。何しろ、オーキツドのレコードは前年にバンザイの姉ピューアゴウルドがオーキツド相手に叩き出したレコードを更新するもので姉越えを目指すバンザイ陣営にとっては重大事件であった。馬鹿を見たのは一生に一度の大競争を不意にした関西の馬たちであり、サトミアマゾンの例のセリフが思い起こされる。セリフの全文は着拾いを考えた自分を叱咤するものだが

などと書いたが、阪神競馬倶楽部の大正13年度秋季競走記録を閲覧したところ全く別の事実が書かれていたので併記する。まず、10月4日の初戦は長年本で伝えられてきたハナ差惜敗ではなく、6馬身つけられての2着完敗であり(３着を６馬身離してはいたが)、次戦はマッチレースになっておらず10頭が参戦してのハナ差勝利と伝承と違って苦戦している。ハナ差で破ったカツタマは阪神新呼馬約1800ｍと約2000ｍのレコード持ちの実力馬だが1923年秋デビューなので阪神連合の出走資格はなく、阪神連合回避はやっぱりオーキツドとの勝負を優先したのだろうか。12日の優勝戦はオーキツドとレンドという姉のライバル達をキッチリ負かして陣営を安堵させている。

関東の目黒競馬場に戻ると11月15日の呼馬で翌日の帝室御賞典を勝つことになるフロラーカツプに２馬身差で勝利。22日に東京目黒の優勝内国産馬連合競走(通称連合二哩)に出走するも、ラレード以外が回避してしまったためにマッチレースとなり、8馬身差で勝利した。

5歳～引退まで～

1925年は５月10日の呼馬から始動しオーキツドを３着に破って勝利。次戦の優勝戦でも帝室御賞典馬のゴールドウヰングに勝利と絶好調。もうこの馬に勝てる馬はいないのかと思われたが、オーキツドと大舞台で決着を着けるべく出走した秋の初戦、11月23日の濠抽混合で前走で3着に破っていた同年春の帝室御賞典馬ラシカツターに4馬身差つけられて、まさかの2着に敗れてしまう。

28日には真のライバルオーキツドを3馬身差で破り、翌日の優勝戦で本家ライバルラレードに4馬身半つけて勝利し引退、万歳の名で種牡馬入りした。

通算成績13戦11勝［11-2-0-0］

まさに歴史的名馬であり、政府買取による種牡馬制度の第1号となった。バンザイは国家により血を残すべき名馬と認められた最初の1頭であり、その先には輝かしい未来が待ち受けているはずだった。

サラ系の烙印

1925年政府買取による種牡馬制度と時を同じくして我が国でも公的な血統登録が始まった。当然バンザイも血統登録を行うこととなったが、おそらくバンザイの血統表を確認した職員は困惑したことだろう。

母宝永1909年生、母母Appearance1908年生

どういうことなの！？

本当に口リ婚だった。
宝永の生年が間違っている。
他の豪サラとホーヱイのの血統書が入れ替わった。
そもそも血統書自体が偽物。

一番可能性が高いのは２だろう。実際ウイキペディアや各種サイトでは宝永は1907年生になっていて母より年上の娘になっている。ダメじゃんと思っていたらこれが正解だった。宝永の母Appearanceは血統書紛失により1897年生まれであること以外わからなくなってしまった血統不詳馬で1908生のAppearanceとよく混同されるが同名他馬である。バンザイは血統登録により良血のエリートからどこの馬の骨とも知れないサラ系となってしまった。

ライバルのラレードが種牡馬として重賞馬を出した一方、300頭も居たバンザイの産駒はさっぱりだった。祖母Appearanceから右が空欄となっているバンザイに付けに来るのは血統を気にする必要のない肌馬なのだからやむを得ない。後輩たちが続々と種牡馬入りしてくるとバンザイは居場所を失い1936年に淘汰のために売却され行方不明となった。

輝かしい前半生とは逆の悲しい最期を遂げたバンザイだが20世紀のベストホース100にその名を残している。

血統表

*ダイヤモンドウェッディング 1905 鹿毛	Diamond Jubilee 1867 鹿毛	St.Simon	Galopin
			St.Angeia
		Pardita	Hampton
			Hermione
	Wedlock 1884 栗毛	Wenlock	Lord Clifden
			Mineral
		Cybale	Marsyas
			Maid Of Palmyra
*宝永 1907 鹿毛	Loombah 1900 黒鹿毛	Grafton	Galopin
			Maid Marian
		Bragibagee	Forest King
			Verbena
	Appearance 1897 鹿毛



競走馬の4代血統表