プティエトワール 単語

プティエトワール

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プティエトワール(Petite Etoile)は、1956年生まれのイギリスの元競走馬・元繁殖牝馬である。馬名はフランス語で「小さな星」を意味する。

概要

父Petition、母Star of Iran、母父Bois Rousselという血統。

父ペティションはエクリプスSの優勝馬。母スターオブイランは1勝馬だが名牝ムムタズマハルの曾孫で、その全兄に凱旋門賞馬ミゴリ、伯父に英ダービー馬マームードがいるという良血馬である。母父ボワルセルは英ダービーを物凄い脚で差し切り、種牡馬としても*ヒンドスタンなどを出した。

イスラム教イスマーイール派のイマーム(指導者)であるアガ・カーン3世殿下と息子のアリ・カーン王子によって生産されたが、本馬が1歳時にアガ・カーン3世殿下が死去したため、競走馬としてはアリ王子の単独所有馬となり、イギリスのノエル・マーレス厩舎に預けられた。

アリ王子は大変な道楽者で、あまりの素行の悪さのためかアガ・カーン3世殿下が後継者にアリ王子の息子であるカリム(後のアガ・カーン4世殿下)を指名したために、8世紀中期に成立したイスマーイール派の歴史の中で前代未聞となる「現イマームの実子が後継者に指名されない」という出来事を招いた。一方でアリ王子は大変な馬好きでもあり、息子カリムが競馬に興味が無いと公言していたこともあって、アガ・カーン3世殿下の事業の中で競馬に関するものはアリ王子が相続していた。

芦毛で、名前通りの小柄な馬だったが、マーレス師が「peculiar」(狂っている)と評するほどの気性難で、唯一落ち着くのは自身と同じ芦毛の馬が近くにいる時だけだったという。

2~3歳時

2歳5月のデビュー戦は、2頭立てで勝ったクライス[1]から8馬身差の2着に敗れた。続く2戦目を5馬身差で勝ち上がり、3戦目のモールコームS2着を挟んだ後、4戦目を131ポンド(約59.4kg)という斤量で勝利した。しかしこの斤量が祟ってレース後に異常歩様を呈し、年内休養となった。2歳時はあまり目立たない評価であった。

3歳時は、始動戦のフリーハンデキャップで主戦だったレスター・ピゴット騎手がエリザベス女王の所有馬ショートセンテンスに騎乗したため、ダグ・スミス騎手に乗り替わった。ハンデも126ポンド(約57.2kg)のトップハンデだったが、これを3馬身差で勝利した。

このレースでスミス騎手は本馬の素質を見抜いていたらしいが、1000ギニーでも自分に手綱が回ってくるようにと思ってそれを黙っていたため、他の関係者からの期待はあまり高くなく、ピゴット騎手は同厩のコリーリアに騎乗し、アリ王子の専属騎手だったジョージ・ムーア騎手もプティエトワールより期待されていたパラグアナに騎乗。こうしてスミス騎手の手綱で挑んだ1000ギニーを鞍上の期待通り1馬身差で差し切って勝利し、高い素質を証明した。

主戦がピゴット騎手で固定されるようになったプティエトワールは続けてオークスに向かったが、血統面で距離不安が囁かれていたため2番人気にとどまった。しかし結局プティエトワールはそんな不安を一蹴し、1番人気に推されていたカンテロに3馬身差を付けて完勝を収めた[2]。続くマイル戦のサセックスSは古馬牡馬相手に130ポンド(約59kg)で勝利し、再び12ハロンに戻したヨークシャーオークスも勝利した。

流石に14ハロンとなると不安があったのか、この後牝馬三冠がかかる英セントレジャーには出走せず、チャンピオンS(10ハロン)に出走。単勝1.18倍という人気に推され、無敗で愛セントレジャーを勝ったバークレーなどを破って勝利し、3歳シーズンを6戦無敗で終えた。タイムフォーム社のレーティングでは英愛調教の3歳牝馬としては当時の史上最高値となる134ポンドのレーティングを獲得し、3歳馬の中ではジョッケクルブ賞・サンクルー大賞を勝ったエルバジェ(136ポンド)に次ぐ2位となった。

4~5歳時

4歳時は始動戦を勝利したが、その5日後の5月12日にアリ王子が自動車事故を起こして死去してしまった。このため、競馬に関してはズブの素人だった息子のアガ・カーン4世殿下が本馬を含むアリ王子の所有馬を全て引き継ぐことになった。

続くコロネーションカップでは、同期の英ダービー馬*パーシアを抑えて単勝1.33倍という人気に推された。そしてレースでも*パーシアを豪快に差し切り、1馬身半差で勝利した。その後キングジョージVI世&クイーンエリザベスSに単勝1.4倍の1番人気で出走したが、雨でタフになった馬場でピゴット騎手が慎重に乗りすぎたのかアグレッサーに半馬身届かず2着と惜敗した。

この後馬インフルエンザに罹患したため、この年はこれが最後の出走となった。それでも、タイムフォーム社のレーティングでは古馬トップタイの134ポンドを獲得した。

5歳初戦はコロネーションS[3]に出走し、130ポンドのハンデを跳ね返して勝利。コロネーションカップではウィンストン・チャーチル元首相所有の*ヴィエナをクビ差で抑え、53年ぶり史上3頭目の連覇を達成した。

その後ラウス記念S(1マイル)を勝ち、アリ王子の追悼競走「アリ・カーン国際記念ゴールドカップ」に出走したが2着に敗れた。その後はマイル戦を2戦し、スカーボローSを1着、クイーンエリザベスII世Sを2着として、通算19戦14勝2着5回という安定した成績で引退した。この年のタイムフォーム社のレーティングは131ポンドで、古馬牝馬では1位であった。

ちなみにアガ・カーン4世殿下が父から受け継いだ馬には本馬以外にもシャーロッツヴィル(ジョッケクルブ賞、パリ大賞典)、シェシューン(ゴールドカップ、サンクルー大賞)、*ヴェンチア(セントジェームズパレスS、サセックスS)といった活躍馬がおり、本馬の4歳時にはシーズン開幕時に1頭も馬を持っていなかった殿下がシーズン閉幕時にはフランスのリーディングオーナーになるということもあった。

繁殖牝馬として

繁殖牝馬となったプティエトワールだが、不受胎や死産が多かったこともあって3頭しか産駒を残せなかった上に、その3頭は揃って競走馬として大成出来ず、競走成績と比べると雲泥の差で終わってしまい、没年も不詳である。

しかし、18歳時に産んだ唯一の牝馬ザーラの牝系をアガ・カーン4世殿下が手元に置き続けた結果、この牝系からディアヌ賞(仏オークス)とサンタラリ賞を勝ったザインタや、障害競走で活躍したザイヤドが登場。21世紀に入ると生涯7戦7勝の凱旋門賞馬ザルカヴァや南アフリカで大活躍したイググが相次いで現れ、ザルカヴァの息子ザラクがサンクルー大賞を勝つなど、プティエトワールの牝系が再び日の目を見つつある状況となっている。

血統表

Petition
1944 黒鹿毛
Fair Trial
1932 栗毛
Fairway Phalaris
Scapa Flow
Lady Juror Son-in-Law
Lady Josephine
Art Paper
1933 黒鹿毛
Artist's Proof Gainsborough
Clear Evidence
Quire Fairy King
Queen Carbine
Star of Iran
1949 芦毛
FNo.9-c
Bois Roussel
1935 黒鹿毛
Vatout Prince Chimay
Vasthi
Plucky Liege Spearmint
Concertina
Mah Iran
1939 鹿毛
Bahram Blandford
Friar's Daughter
Mah Mahal Gainsborough
Mumtaz Mahal

クロス:Lady Josephine 4×5(9.37%)、Gainsborough 4×4(12.5%)、Chaucer 5×5(6.25%)、Carbine 5×5(6.25%)

  • 父ペティションは2歳時に連戦連勝を挙げ、超大物と噂されたテューダーミンストレルに次ぐ評価を受けていたが、2000ギニーのスタートで落馬した際に故障してクラシックを棒に振った。その後4歳時にエクリプスSで優勝した。
  • 祖母マーイランの牝系からは現代においても愛ダービー馬*アラムシャー、ワールドクリーク、スマートファルコンなどの活躍馬が多く出ている。

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関連項目

  • 競馬
  • 競走馬の一覧

脚注

  1. *後に短距離路線を歩み、翌年のキングズスタンドSで優勝した。なお、その際の3着にはプティエトワールをモールコームSで破ったクラーケンウェイクが入った。
  2. *敗れたカンテロは、その後ダービー馬*パーシアなどの牡馬相手にセントレジャーを勝利した。
  3. *現在も行われている同名のGI競走とは別競走。現在のブリガディアジェラードS(GIII)の前身に当たる。
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