世界名作劇場とは、かつてはフジテレビ、現在はBSフジで放映中の、世界の名作文学をアニメーション化した一連のアニメシリーズである。
1969年に、フジテレビ日曜19:30~20:00の時間帯において「カルピスまんが劇場」がスタート。当初放映したのは手塚治虫原作の「どろろ」であった。しかし低視聴率により同年10月には瑞鷹エンタープライズ製作・東京ムービー→虫プロダクション制作で「ムーミン(第一期)」がスタート。こちらは人気が出たため、1971年の「アンデルセン物語」をはさみ、1972年末まで「ムーミン(第二期)」が放映される。
1973年には瑞鷹エンタープライズがスタッフを独自に集め「ズイヨー映像」を設立、「山ねずみロッキーチャック」を放映。翌74年には「アルプスの少女ハイジ」を放映する。「ハイジ」においては、テレビアニメ初のロケーションハンティングが行われ、リアリティのある作画と可愛らしいキャラクター、そして細かい心情描写で大ヒット(高視聴率)を記録、以後作風は「ハイジ」の路線が引き継がれる。
しかし、1975年には瑞鷹エンタープライズとズイヨー映像との間に不和を生じ、同年6月にズイヨー映像のスタッフが「日本アニメーション」として独立。当時放映中であった「フランダースの犬」は第4話から制作:日本アニメーションと表記されるようになり、現在まで日本アニメーションが制作を続けている。なお、シリーズ名が「世界名作劇場」となるのは「赤毛のアン」からで、それまでは「カルピスこども劇場」「カルピスファミリー劇場」などと呼ばれていた。しかし現在はすべて「世界名作劇場」に統一されている。そしてズイヨー映像時代に制作された「ロッキーチャック」「ハイジ」の二作は瑞鷹(株)の版権管理であるため、日本アニメーションのホームページでは世界名作劇場として扱われていない。
長年の間「よい子のためのアニメ」として放映が続いてきたが、長期にわたって続いたためにマンネリ化は避けられず、さらに野球中継が頻発したために視聴率が低下、1997年の「家なき子レミ」を最後に一旦シリーズは終了。しかし存続を望む声も大きく、2007年にメディアをBSフジに移行し、「レ・ミゼラブル 少女コゼット」が放映開始。
主に1800年代~1900年代半ばを舞台とする海外の名作文学(例外あり)をメジャー、マイナー問わず格調高くアニメーション化する。登場人物の心情描写や背景画の美しさには定評がある一方で、激しいアクションは基本的にはない。また、あくまで「よい子のためのアニメ」であるため、エロチックなシーンや過激な下ネタ、ギャグは挿入されない。また、作品の主人公が大人だったりする場合には、ターゲットの視聴者層(=子供)に合わせる形でオリジナルの子供の主人公が設定されたり、本来は主人公ではないキャラクター(この場合も子供のキャラクターが選ばれる)に主人公を演じさせることが多い。さらにキャラクターグッズの商品展開のために本来物語には登場しないはずの動物を登場させることもあった。
そして世界名作劇場で展開される物語は現代の流行に左右されない普遍的なテーマであり、現在でも再放送やネット配信が行われ、新たなファンを増やし続けている。削除ガイドラインが整備される前のニコニコ動画も(非合法ではあるが)ファンを増やすための媒体となっていた。そのファン層の広さは30年前以上の作品を使い現在までキャラクタービジネスを展開することを可能にし、近年の作品数減少に悩む日本アニメーションの家計を立派に支えている。
舞台は主に欧州、北米であり、それ以外の地域はわずかである。なぜこのような偏りが生まれるかについては不明であるが、「日本人が「外国」と聞くと金髪碧眼の西洋人をイメージしてしまうため」「スタッフの中に(欧州・北米で優勢な)キリスト教の敬虔な信者がいるため」「TBS系の「まんが日本昔話」に対抗するため」など諸説ある。しかしどれも決定的な証拠は存在しない。
なお、上述のように「子供向け」として作られてはいるものの、主人公は5歳~15歳の少女が比較的多かったためか、80年代のアニメ雑誌においては一部の作品が「ロリコンアニメ」の一つとして扱われていた時期があった。また90年代に入ると、逆に一部の作品がボーイズラブ系やショタコン系の同人誌の題材として取り上げられることがあるなど、子供たちだけではなくアニメオタクの間でも一定の支持を受けていた。
ともかく、長年にわたり「子供たちが安心して見られる健全なアニメ」を提供し、子供たちに世界の名作文学に触れるきっかけを与えてきたという点で世界名作劇場の果たした役割は大きく、これからも存続してほしいと願う声もたえない。
作品名 | 放映年月 | 原作者名 | その他 | |
1 | どろろ(~13話) →どろろと百鬼丸(14話~) |
1969年4月~9月 | 手塚治虫 | 「カルピスまんが劇場」 |
2 | ムーミン(第一作) | 1969年10月~1970年12月 | トーベ・ヤンソン | 制作:東京ムービー(~26話)→虫プロダクション(27話~) |
3 | アンデルセン物語 | 1971年 | ハンス・クリスチャン・アンデルセン | これ以降各作品1月~12月まで放映。 |
4 | ムーミン(第二作) | 1972年 | トーベ・ヤンソン | |
5 | 山ねずみロッキーチャック | 1973年 | ソーントン・バージェス | ここからズイヨー映像制作 |
6 | アルプスの少女ハイジ | 1974年 | ヨハンナ・スピリ | |
7 | フランダースの犬 | 1975年 | ルイス・ド・ラ・ラメー | ここから日本アニメーション制作「カルピスこども劇場」 |
8 | 母をたずねて三千里 | 1976年 | エドモンド・デ・アミーチス 「クオレ」より |
アニメ版は原作を大幅に脚色したもの。 |
9 | あらいぐまラスカル | 1977年 | スターリング・ノース「はるかなるわがラスカル」 | 名劇唯一の「自伝」(原作者=主人公) |
10 | ペリーヌ物語 | 1978年 | エクトル・マロ「家なき娘」 | 「カルピスファミリー劇場」 |
11 | 赤毛のアン | 1979年 | ルーシー・モード・モンゴメリ | 「世界名作劇場」 前後二部構成。 |
12 | トム・ソーヤーの冒険 | 1980年 | マーク・トウェイン | |
13 | 家族ロビンソン漂流記・ ふしぎな島のフローネ | 1981年 | ウィース 「スイスのロビンソン」 |
主人公のフローネはアニメオリジナル。 |
14 | 南の虹のルーシー | 1982年 | フィリス・ピディングトン 「南の虹」 |
前後二部構成。 |
15 | アルプス物語 わたしのアンネット |
1983年 | パトリシア・セント・ジョン「雪のたから」 | |
16 | 牧場の少女カトリ | 1984年 | アウニ・ヌオリワーラ | |
17 | 小公女セーラ | 1985年 | フランシス・ホジソン・バーネット「小公女」 | 「ハウス食品世界名作劇場」 (ハウス食品一社提供) |
18 | 愛少女ポリアンナ物語 | 1986年 | エレナ・ホグマン・ポーター「少女パレアナ」「パレアナの青春」 | |
19 | 愛の若草物語 | 1987年 | ルイザ・M・オルコット 「若草物語」 |
新田恵利の歌唱力不足により、15話から急遽OPED変更。 |
20 | 小公子セディ | 1988年 | フランシス・ホジソン・バーネット「小公子」 | 名劇初となる、同一人物による別作品のアニメ化。 |
21 | ピーターパンの冒険 | 1989年 | ジェームズ・M・バリ | 名劇で唯一、異世界を舞台とした作品。 |
22 | 私のあしながおじさん | 1990年 | ジーン・ウェブスター | 主人公の年齢を高校生(相当)→中学生(相当)に変更。 |
23 | トラップ一家物語 | 1991年 | マリア・フォン・トラップ 「サウンド・オブ・ミュージック」 |
OPの「ドレミの歌」は権利問題によりDVD版では差し替え。 |
24 | 大草原の小さな天使 ブッシュベイビー |
1992年 | ウィリアム・スチーブンソン | 名劇唯一のアフリカを舞台とした作品。 |
25 | 若草物語 ナンとジョー先生 | 1993年 | ルイザ・メイ・オルコット 「第三若草物語」 |
「愛の若草物語」ではなく、原作版の続編にあたる作品。 |
26 | 七つの海のティコ | 1994年 | なし | 原作無しのオリジナル作品。 「世界名作劇場」(9話~) |
27 | ロミオの青い空 | 1995年 | リザ・テツナー「黒い兄弟」 | |
28 | 名犬ラッシー | 1996年1月~8月 | エリク・ナイト「名犬ラッシー」 | 12月まで放映できず、8月までの放送短縮の憂い目に会う。 |
29 | 家なき子レミ | 1996年9月~1997年3月 | エクトル・マロ「家なき子」 |
主人公を少年→少女に変更するも、人気を取り戻せず。 |
30 | レ・ミゼラブル 少女コゼット |
2007年 | ヴィクトル・ユゴー |
「ハウス食品世界名作劇場」 10年ぶりに名劇復活。 |
31 | ポルフィの長い旅 | 2008年放映中 | ポール・ジャック・ボンゾン 「シミトラの孤児たち」 |
日本アニメーションで「世界名作劇場」として紹介されているのは「フランダースの犬」~「ポルフィの長い旅」までのみであり、「アルプスの少女ハイジ」については一切触れていない。また、「ハイジ」のホームページは瑞鷹(株)の関連会社(株)サンクリエートが独自に運営しており、日本アニメーションの作品と同様現在に至るまでキャラクタービジネスが行われている。
「フランダースの犬」では最終話において主人公が死んでしまうという悲劇的結末を迎え、多くの視聴者の涙を誘ったが、「主人公が死ぬ」ことに対する批判的意見も多く、これ以降主人公が悲劇的結末を迎えるような作品はなるべく題材としないようになった(やむを得ず選んだ場合でも、ストーリーを改変してハッピーエンドで終わらせるなどの処置をとっている)。
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最終更新:2024/04/20(土) 11:00
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