令和の新本格ミステリ・カーニバル 単語

レイワノシンホンカクミステリカーニバル

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令和の新本格ミステリ・カーニバルとは、星海社FICTIONSで2022年から刊行されている本格ミステリ作品群のシリーズ名(?)。

概要

星海社FICTIONSは、星海社が2011年から刊行しているB6判・スピン(しおり紐)つき・本文フルカラーイラストつきの小説レーベル。
北山猛邦『ダンガンロンパ霧切』シリーズや、中村あき『ロジック・ロック・フェスティバル』などときたま新本格系のミステリも出たが、基本的には芝村裕吏『マージナル・オペレーション』や柗本保羽『銀河連合日本』が主力シリーズの、SF系の作品が多いライトノベルレーベルとして扱われることが多かった。

そんな星海社FICTIONSが2019年あたりから徐々にミステリに力を入れ始め、手代木正太郎『不死人の検屍人 ロザリア・バーネットの検屍録 骸骨城連続殺人事件』や筒城灯士郎『世界樹の棺』といった新作ミステリや、円居挽が担当した『FGO』のシナリオ『鳴鳳荘殺人事件』『虚月館殺人事件』のノベライズなどを刊行。2021年には紙城境介のラブコメミステリ『僕が答える君の謎解き』がミステリファンの間で話題になり、2巻が「2022本格ミステリ・ベスト10」で11位にランクインを果たす。

こうした流れの中、2022年3月に星海社から「新本格」の仕掛け人である編集者・宇山日出臣への没後15年追悼文集『新本格ミステリはどのようにして生まれてきたのか? 編集者宇山日出臣追悼文集』が出版(これはハードカバー)。
そして同年6月、星海社FICTIONSから北山猛邦『月灯館殺人事件』伊吹亜門『京都陰陽寮 謎解き滅妖帖』柴田勝家『メイド喫茶探偵 黒苺フガシの事件簿』の3作品が同時刊行。そのオビに記されていたのが「令和の新本格ミステリ・カーニバル」の文字である。刊行時の告知にいわく、

 新本格ミステリの父と謳われた名編集者・宇山日出臣が没して十五年余り。昭和に始まったこの新本格ミステリ・ムーブメントはその発端となった「小説」の垣根を越え、漫画・舞台・映像・ゲームなどあらゆる表現ジャンルへと飛翔を続けています。
 だからこそ、我々星海社はあえてこの令和の世に「新本格ミステリ」を真正面から標榜し、原点たる「小説」として問い直したいと思います

 「新本格ミステリ」の魂(スピリット)を愛し、次代へと発展、継承すべく集ったとっておきにして腕ききの小説家陣による「新本格ミステリ」の、最前線にして現在の到達地点を、どうか存分にお楽しみください。

星海社FICTIONS編集長 太田克史

……だそうである。

この約30年前の1993年8月、講談社ノベルスから「スーパーミステリ・ビッグ5!」と銘打って、麻耶雄嵩『夏と冬の奏鳴曲』二階堂黎人『聖アウスラ修道院の惨劇』竹本健治『ウロボロスの偽書』井上雅彦『竹馬男の犯罪』黒崎緑『柩の花嫁 聖なる血の城』の5作品が同時刊行された。
1987年の綾辻行人のデビューに始まる「新本格」ムーブメントの中核を担ったのが講談社ノベルスだが、ある月の刊行タイトル全てが新本格系のミステリになったのはこれが初だった。これが当時大きく話題になり、「新本格」は講談社ノベルスの主力としての地位を確立した――らしい。

というわけでそれに倣って始まった、星海社FICTIONSの新本格路線の作品群のシリーズ名(?)が「令和の新本格ミステリ・カーニバル」である。
とはいえ以降の星海社FICTIONSのミステリ作品が全てこのシリーズになっているわけではなく、オビに「令和の新本格ミステリ・カーニバル」のロゴがある作品とそうでない作品がある(たとえば逸木裕『世界の終わりのためのミステリ』や、はやみねかおる『少年名探偵 虹北恭助』シリーズの新装版などにはオビにこのシリーズのロゴがない)ので、星海社の中では何か線引きがあるらしい。

開始当初はミステリファンも「なんかよくわからんものを星海社が始めたなあ」という感じの反応だったが、2023年の手代木正太郎『涜神館殺人事件』が高評価を得て本格ミステリ大賞候補となり、2024年には南海遊『永劫館超連続殺人事件 魔女はXと死ぬことにした』が「2025本格ミステリ・ベスト10」で5位にランクイン、幻の作家・古泉迦十の24年ぶりの新作『崑崙奴』を刊行するなど、以降は定期的に話題作を送り出している。

なお、星海社FICTIONSは基本的にイラスト表紙で本文中にもフルカラー挿絵が入るのだが、このシリーズの作品は表紙がキャラクターイラストではなく挿絵もない、一般文芸に寄せた装丁のものが多い(イラスト表紙・挿絵ありの作品もある)。

また、星海社は2023年から作家のサイン会やトークイベント、新作発表会などからなるイベント「ミステリ・カーニバル」を開催している。

刊行リスト

  1. 北山猛邦『月灯館殺人事件』(2022年6月)
  2. 伊吹亜門『京都陰陽寮 謎解き滅妖帖』(2022年6月)
  3. 柴田勝家『メイド喫茶探偵 黒苺フガシの事件簿』(2022年6月)
  4. 佐藤友哉『少年探偵には向かない事件』(2022年10月)
  5. 宮田眞砂『ビブリオフィリアの乙女たち』(2022年10月)
  6. ハハノシキュウ『オルタナティブ・ラブ』(2022年10月)
  7. 手代木正太郎『涜神館殺人事件』(2023年10月)
  8. 百壁ネロ『轟運探偵の超然たる事件簿 探偵全滅館殺人事件』(2023年10月)
  9. 南海遊『永劫館超連続殺人事件 魔女はXと死ぬことにした』(2024年3月)
  10. 森晶麿『切断島の殺戮理論』(2024年3月)
  11. 深水黎一郎『真贋』(2024年5月)
  12. 宮田眞砂『セント・アグネスの純心 花姉妹の事件簿』(2024年5月)
  13. 清涼院流水『コズミック 世紀末探偵神話 新装版』(2024年8月)
  14. 市川憂人『牢獄学舎の殺人 未完図書委員会の事件簿』(2024年8月)
  15. 汀こるもの『紫式部と清少納言の事件簿』(2024年8月)
  16. 清涼院流水『ジョーカー 旧約探偵神話 新装版』(2024年9月)
  17. 乙一『大樹館の幻想』(2024年9月)
  18. 西澤保彦『ファイナル・ウイッシュ ミューステリオンの館』(2024年9月)
  19. 清涼院流水『神探偵イエス・キリストの冒険 The Adventures of God Detective Jesus Christ』(2024年10月)
  20. 古泉迦十『崑崙奴』(2024年11月)
  21. 太田忠司『レッドクラブ・マーダーミステリー』(2024年12月)
  22. 南海遊『パンドラブレイン 亜魂島殺人(格)事件』(2025年2月)

関連リンク

関連項目

  • 星海社 / 星海社FICTIONS
  • ミステリー / 本格ミステリ / 新本格
  • 太田克史
  • 宇山日出臣
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