僧正(とある魔術の禁書目録)とは (ソウジョウとは) [単語記事]

僧正（そうじょう、魔神僧正）とは、ライトノベル『新約とある魔術の禁書目録』に登場するキャラクターである。

初登場：新約10巻　デザイン画はこちら

概要

異世界・別位相である「隠世-かくりよ-」に住まう魔術の神「魔神」の一柱。
人が“死”に臨んだ姿のなれの果て「即身仏」。後にその要件を全て満たした仏の成り損ないと判明した。
※ここでいう死とは、死を以て生を永遠とする考えである。

即身仏は端的に“僧の死体・木乃伊”を表す言葉なのだが、この認識では少し語弊が残るかもしれない。

起源

その昔に弘法大使・空海が当時の正統仏教を学ぶため『唐』に発つ。それまでの日本仏教は旧態依然としたもので彼が帰国してからの日本仏教は、融合と独自の仏教観を得て大きく進化したと言われている。

唐より帰国した空海は「真言宗」を開いた。真言宗とは密教（秘密仏教）であり、純密の本尊「大日如来」を自然宇宙の真理そのものとした教えのこと。真言密教とも呼ばれる。

とあるシリーズの「僧正」も恐らくこの真言宗。仏教と政治が密接な関係だった時代の高僧とされている。

即身成仏？

密教において宇宙は地・水・火・風・空・識の「六大」要素で解き明かす事ができる。つまり世界の全ての事象こそ宇宙を仏格化した法身「大日如来」の顕れであるとされる。
六大を人が知覚することはできないが、代わりに何か相を成して現れるという考え方を空海は説く。これらは四つの曼荼羅（本質を表した物）に置き換えられている。

一方で、人の日常は身（体）・口（言葉）・意（心）が当然のようにあるのは説明するまでもないが、密教ではこれを煩悩の元と考え「三業」（身業・口業・意業）と呼び、悟りの世界では区別するため「三密」（口密・意密・身密）と言う。
口密は真言（大日如来のお言葉）を唱え、意密は印を結び、身密は仏を観ずる。

これらと一体となって衆生に悟りが開けることを即身成仏…「即やかに身、仏と成る」とする解釈が一般的である。

人は本来なら仏性を持つが普段は煩悩で隠されている。だから三業と三密を一体とし、三密加持の考えを以て仏性に目覚めることができるよ、というのが空海の説く「即身成仏義」を端的に纏めた内容となる。

即身仏？

真言密教は即身成仏「この身、このままで仏-仏陀-になる」と謂う、当時の日本仏教でも革新的な「入定」という観念が背景にあった。

よく混同されがちだが即身仏と即身成仏とでは意味が異なる。どれくらい違うかと言うと「裕福と幸福」くらい違う。

即身成仏義の中でも過酷な修練で、一代で自身が仏となることを目指す高僧の成れの果てを即身仏と呼ぶ。
徳の高い僧が衆生救済の厳しい修行の末、現世の人の身のままで涅槃（ニルヴァーナ,解脱）を得、六道の環を外れて仏となる事を目指したもの。死を死と捉えるのではなく、永遠のものとする考えのもとで行われる自殺行為である。

土を掘り、高僧が地下に潜るとそこを埋める。そして五穀を絶ち、絶命するまで鈴を鳴らし経を唱え続ける。衆生を本気で救うための、しかし現代の見解としてはただの「自殺」に他ならない行為に及ぶ信心深い僧、とも言える。

空海は某山で入定し「56億7千万後に弥勒仏と共に蘇る」と言われているが、そもそも入定したという記録自体が（グーグル先生にでも聞いて頂きたい）。

壮絶な修練を終えて仏となり、現世に木乃伊として姿を現す。これを「即身仏」と称す。本来ならば、教義のもと一種の信仰対象と見做されるのだが……。

魔神「僧正」

魔神「僧正」も入滅した高僧の一人だった。

即身仏という方法はとても回りくどく、他人の協力が無いと決して「仏」と認められないやり方である。
僧正は地下での即身仏の要件をすべて満たしていたが、運悪く仏教間の対立に巻き込まれて信仰だけが得られずに即身仏として祀られなかった。
具体的には僧正に即身仏と成って欲しくない者達が、不動明王をモチーフにした副葬品を死後に身に付けさせ、それを欲にまみれたなどと悪印象に仕立て上げて信仰を得られなくしたのである。

すると彼はミイラ、仏の座に収まれない悪神になった。本来なら悪性のない仏を悪神と言うのもまたおかしいが、厳密には仏の座を与えられていない生きミイラなぞどう表現していいものか…。

ともあれ「衆生」に望まれた「救済」をなすべく、成り損ないの入定ミイラは「破戒僧」となり、魔神と化した。かつて自らが受けた仕打ちを衆生の望むもの（救済）と解釈したのだとか…。上条は僧正と対峙した時に「オティヌスと違って凶気が感じられない」と言っていたが、こうした狂気に満ちた過去を聞いた際はかなり動揺した様子。
　

ネフテュス：僧正。だから貴方は悟れないのよ？いい加減に気づいたら？

娘々：ジジイ、男の泥棒猫とか最悪過ぎね？そりゃ木乃伊になるまで自己を貫いたのに誰からも信仰を得られない訳だわ

　
とまぁあんな可哀想な過去は別としても、共に現世に入ったエジプト・中国の女神様からの評価もちょっと低い。
魔神「僧正」は頭に血が昇ると発言の内容が5秒前と180度変わる神様とも言われている。この性質ゆえ周囲の評価は推して知るべしと言ったところか。

余談だが2015年3月9日、ハンガリーのブダペストにある博物館で新たな即身仏が発見された。どうやら中国の僧侶の即身仏だったようだ。奇しくもその日は、僧正が即身仏と確定した新約12巻の発売前日である（まぁ新約12巻の試し読みもあって、実際にはその数日前に確定していたのだが）。

容姿

木乃伊である。新約10巻の魔神「娘々」の発言から、木乃伊である事は判明していた。

娘々：ジージーィー、木乃伊になって物忘れ激しくなってる？ゾンビ少女もキメラちゃんもみーんなここにいるって。
ただ髪の毛一本分の隙間が無限の距離に広がるここじゃ、巡り合えるのは運任せだけどねー☆

　
網目のように多い皺、焦茶色の肌、紫の法衣を身に纏い、黄金の装飾品、純金の剣を持つ。
この格好は大日如来の化身「不動明王」がモチーフとなっているようだ。

ミイラである彼は元からなのかは不明だが髪が生えてない。デザインを指定した奴にハゲと呼ばれている。

はいむら的デザインのモチーフは高橋留美子の漫画『犬夜叉』に登場する即身仏「白心上人」。

能力

魔神とは元は人の身でありながら魔術を究めた末に、神様の領域にまで辿りついた者を指す。
僧正も魔神であるため世界を創造し、また破壊する事も出来た。

魔神は「無限」の力を持った存在である。そんな者が「世界」に一歩でも入れば世界は魔神という無限の容量を持つ存在に耐えられずに粉々となってしまう。そのため魔神は異世界・隠世-かくりよ-に隠居している。

隠世とは、日本神話における神域・遠き理想郷の名前である。反対に人間の住まう世界は「現世-うつしよ-」とも呼ばれている。僧正は自分たちの居る別位相(異なる世界)を隠世、上条達の居る世界を現世と呼ぶ。

新約13巻だと弱体化しているため、位相の力は使えなくなっている。
そんな僧正でも、上条達の相手は務まる。というか充分過ぎるほど強かった。

土属性

「土」である。彼が土をつかさどる理由については仏教と神道の習合が云々。編集者がそこに明るくないため詳しくは本編を参照して貰いたい。

巨大な「泥の腕」を地面から生やあう。その腕が20階建てのビルを振り回す。土砂を起こす。
これでもフルスペックの魔神のスケールを考えると微妙と言わざるを得ない。

耐久性？

摂氏1000度のマグマを浴びても平然としている。

マスドライバーで宇宙に吹っ飛ばされても普通に過ごしていた。
…というか宇宙で声を伝搬させたり、アローヘッド彗星に乗って（取り込んで？）地球に戻ってこようとした。

つまり無限を無限に分割して弱体化した状態でさえ、普通の方法では死ぬことはないと考えていい。

『鏡合わせの分割』

ブードゥー教の魔神「ゾンビ少女」の生み出した魔神用の術式。

魔神とは曰く“無限”の力を保有する存在だが、現世つまり上条達の居る「世界」はその“無限”の存在を受け入れるほどのキャパシティには至っていない。
魔神が現世に足を踏み入れようものなら「世界」はステンドグラスのように粉々になってしまう。

そこでゾンビ少女が提唱した、無限の存在(魔神)を無限に分割し、「世界」のキャパシティ限界まで魔神の容量を下げた上で、自己と重ね合わせて「世界」を騙す、という理論が重宝されている。

無限と呼べるわたし達の力を無限に等分する事で、この世界で許容可能なギリギリのレベルに自己を留める。 ……でもこれ、見方によっては最悪の変容じゃないかなあ？何しろこれ、殺しても殺してもキリがない。　マトリョーシカやタマネギみたいに、わたし達を完全に殺すには永遠に等しい戦闘を繰り返さなくちゃならなくなったんだから

新約とある魔術の禁書目録12巻　魔神娘々の発言を抜粋

つまり現世に入る為に「レベル∞」を「レベル99999999999999999(ry」に下げたようなもの。しかしそれを無限に近い回数分倒さないと魔神は殺せないのだ。

『鏡合わせの分割』を適用した僧正と娘々、ネフテュスは現世に入ったが、アレイスターに何らかのパラメーターを撃ち込まれて殺せる状態になってしまった。