富士(列車) 単語


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フジ

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富士とは、国鉄・JR東日本・JR東海・JR西日本・JR九州で運行されていた列車名である。

概要

富士は日本最初の特別急行列車として設定された伝統ある列車である。富士の列車名が使用されたのは大きく分けて「戦前の特急」「戦後の東海道本線昼行特急」「東海道新幹線開業後の寝台特急」の三つに分けられる。

戦前特急富士

特急富士が設定されたのは明治最終年の1912年(明治45年)の事で、東京と下関駅を結んでいた。設定当初はまだ東京駅や関門トンネルは開業していなかったので、当時の東海道本線ターミナルの新橋駅から関門航路に接続する本州最西端の下関駅とを結んでいた。ただし列車名が付けられるのは1929年の事である。

それまでは新橋~神戸間に急行の上位種別で、初めて運賃以外の料金を要する最急行という種別として1906年から運行されていたが、神戸駅発着から下関駅発着になったと同時に種別も特別急行に変更されている。この列車は下関駅で関門航路に接続して九州へ向かうのは勿論の事、関釜航路に接続して朝鮮半島・満州国を経由しシベリア鉄道を使ってモスクワやパリまでの国際列車としての一端という性格もあった。

この頃の停車駅には平沼駅・馬場駅・宮島駅・柳井津駅・三田尻駅と21世紀には見慣れない駅名が並んでいるが、当時の横浜駅・大津駅は現在の東海道本線から外れた支線上の桜木町駅・浜大津駅にあったので、本線上にある平沼駅・馬場駅に停車する事で対処していたからである。尚、平沼駅は廃止されているが馬場駅は大津駅と称していた時代を経て膳所駅として存続している。また、宮島駅・柳井津駅・三田尻駅はそれぞれ宮島口駅・柳井駅・防府駅の改称前の駅名である。

1914年には東京駅が開業した事から東京駅発着となり、1923年7月には日本第二の特急として同じく東京~下関間に特急が増発されている。しかしこの列車は三等車のみの編成であり従来からある特急の一・二等車のみの編成に比べるとやや劣っているが、これは従来の特急は国際列車の為の列車であったがこの列車は沿線住民の為の特急だったからである。

そして来る1929年に欧米に倣い特急2往復に列車名を付ける事となったが、この際に公募が行われた。結果は一位から順に富士大和千鳥疾風であったので、一・二等車の特急に一位の富士が、三等車のみの特急に三位のが採用された。二位のが採用されなかったのは、当時は一等車の車体には白帯・二等車には青帯・三等車には赤帯が塗られていたので青色と白色のテールマークの富士とピンクのテールマークのとの対比がわかりやすかったという理由もある。尚、二位のは翌年に運行開始が決定されていた、東京駅と神戸駅を従来の特急より2時間半早く結ぶ超特急の列車名として使われた。また、この時に応募された上位十傑は大和千鳥を除き全て後の時代に特急や新幹線名として使われ、急行まで含めると全ての列車名が使われている。

1942年には関門トンネルが開業したので特急富士は下関駅から長崎駅発着となり長崎港では上海航路に接続するという性格も持ち合わせるようになる。ただし特急は鹿児島駅発着になるものの列車名の無い急行に格下げされているので、富士は関門トンネルを経由する唯一の特急列車となった。

しかし1年後には前述の特急が急行格下げになった「戦争の激化」という同じ理由で超特急が廃止され富士も博多駅発着に短縮されてしまう。そして1944年には最後の特急(1943年7月からは第一種急行と称していた)であった富士も廃止され、このまま終戦を迎える。

東海道本線の特急は1949年に復活するが、山陽本線の特急は1953年のかもめ、長崎本線の特急は1957年の寝台特急さちかぜまで待たなければならなかった。

東海道特急富士

戦前に運行されていた特急4往復の内、は戦後初の特急へいわの改称で1950年に、は特急つばめの臨時増発特急として1951年に、は戦後初の山陽本線特急かもめとして1953年に復活しているが、富士のみは戦前の日本を代表する列車だったという事で「富士の列車名に相応しい立派な列車が出るまでは保留」という理由で中々復活しなかった。1956年の初の寝台特急あさかぜや、1958年の初の電車特急こだまの設定の際に富士の列車名が使用される事が検討されたが、結局のところ特急富士が復活するのは特急列車が全国的に大増発される1961年の事であった。

1961年のサンロクトオと呼ばれる全国的なダイヤ改正で特急富士は復活したのだが、これ以上立派な列車は出ないと踏んだのか前年の宇野線電化を機に宇野駅で宇高連絡船に接続する四国方面の列車として使われる事となった。しかしながら特急富士は東京駅から唯一大阪駅以西を発着する昼行特急とはいえ、当時の国鉄の看板特急こだまつばめに比べると地味な印象は拭えなかった。しかも2往復中1往復は神戸駅発着で、翌年の1962年には山陽本線の電化が広島駅まで到達した事により特急つばめ1往復が東京~広島間の運行となったので、富士は東京駅から唯一大阪駅以西を発着する昼行特急というアドバンテージも無くなってしまった。

宇野駅の宇高連絡線の先での高松駅で接続していた列車は、四国初の急行列車として半年前に設定された松山駅方面宇和島駅発着の急行四国と、特急富士と同じダイヤ改正で設定された土讃本線初の急行である高知駅方面窪川駅発着の急行黒潮と、当時の高徳本線には急行が無かったので徳島駅方面の準急であった。また、特急富士は宇野駅で大阪駅発着の特急うずしおとして折り返していた。

このまま富士は大きな変化も無く東海道新幹線開業を待つものと思われていたが、10月1日の東海道新幹線開業を控えた1964年4月24日に東京発宇野行特急下り第1富士は静岡市草薙駅近くの踏切でダンプカーと衝突してしまう。これに伴い使用車両の151系12両の内6両が脱線し、特に先頭車でパーラーカー(展望車のようなもので1等車)の「クロ151-7」は廃車せざるを得ない程に大破した。半年後の東海道新幹線開業に伴う151系の九州乗り入れ改造の為に予備車も無かった事から、翌日の4月25日からは事故をした富士では無く何故かこだまに急行型の153系が使用されるようになる。153系はスピード面では151系と遜色は無かったものの車内設備の面では明らかに劣っていたので特急料金を割り引くこととなったのだが、これが後に「特急かえだま」等と揶揄されてしまう事となった。

尚、「特急かえだま」はゴールデンウィーク終了後の5月7日からは臨時特急ひびき用の157系が使用され、6月1日からは上越線特急ときの一部編成に157系を使用しときで使用されていた161系の先頭車を「特急かえだま」で使用する151系の先頭車として使用し、7月1日からは161系の中間車を151系の先頭車に改造する工事を行って9月30日まで運行されていた。

そして1964年4月24日を除いて大きな変化の無かった昼行特急富士は翌日の東海道新幹線開業を控え9月30日の運転を以て廃止され、翌日からは寝台特急富士として再スタートを切ることとなった。ちなみに新幹線開業でも運行区間に影響の無かった新大阪~宇野間は特急ゆうなぎとして分離されている。

寝台特急富士

東海道新幹線開業に伴い特急富士は昼行特急から東京駅と日豊本線を結ぶ寝台特急列車となった。当初の運行区間は東京~大分間であったが、これは単に東京~熊本・大分間を運行していた寝台特急みずほの大分駅発着編成を分離しただけである。こういった経緯から東京駅と九州を結んでいた九州ブルトレあさかぜはやぶささくらみずほ富士の中では富士が最も遅い設定となった。

設定翌年の1965年10月には富士は日豊本線経由西鹿児島駅発着となる。大分~宮崎間には京都~小倉~長崎・宮崎間の特急かもめが設定されていたが、宮崎駅以南は富士が初の特急(厳密には鹿児島本線区間の鹿児島~西鹿児島間には寝台特急はやぶさが設定された時から1年半だけ運行されており西鹿児島駅は通過していた)となった。24時間以上掛けて道中を運行しており、この時の運行距離1574.2kmは歴代の定期特急列車で最長である。

西鹿児島駅発着時代は前述の通り24時間以上掛けて運行されていたので東京駅で発車した時間には前日に東京駅を発った富士がまだ西鹿児島駅に到着していないという現象もあった。しかしながらやはり非効率な運用であったので、富士設定当初とは異なり日豊本線にはエル特急にちりんも設定されている事から1980年には宮崎駅発着に短縮されている。

国鉄民営化後も運行区間が南宮崎駅発着になったり大分駅発着になったりした程度の変化しかなかったものの、2005年には単独運転していた東京~下関間のあさかぜと、はやぶさと併結していた東京~長崎間のさくらが廃止された事から、富士はやぶさと併結するようになる。末期には運行開始当初の東京~大分間での運行となっており、はやぶさと共に東京駅を発着する最後のブルートレインとなっていて「富士ぶさ」等と呼ばれていたが、時代の流れで寝台列車が避けられる傾向にあり利用者数が減少した為に09年3/14ダイヤ改正で廃止されてしまった。

ちなみにヘッドマークは○型と△型とがあったが、戦前から使用されていたオリジナルの物は△型となっている。その為、大宮区の鉄道博物館にも展望台付き客車には△型のテールマークが取り付けられている。

廃止直前の資料集

東海道特急富士

列車種別
特別急行
運行会社
日本国有鉄道(国鉄)
運行区間
東京駅~神戸駅・宇野駅(589.5km・755.7km)
経由線区
東海道本線(東京~神戸間)
山陽本線(神戸~岡山間)
宇野線(岡山~宇野間)
使用車両
151系12両編成
発車時刻
下り東京駅8:00(第1富士宇野行)・15:30(第2富士神戸行)
上り神戸駅7:30(第1富士)・宇野駅12:40(第2富士)
所要時間
7時間(神戸駅発着)・9時間20分(宇野駅発着)
列車番号
下り2001M(第1富士)・2005M(第2富士)
上り2006M(第1富士)・2004M(第2富士)
最終運転日
1964年9月30日

停車駅

駅名





























宇野駅発着
神戸駅発着

寝台特急富士

列車種別
特別急行
運行会社
東日本旅客鉄道(JR東日本)
東海旅客鉄道(JR東海)
西日本旅客鉄道(JR西日本)
九州旅客鉄道(JR九州)
運行区間
東京駅~大分駅(1263.1km)
経由線区
東海道本線(東京~神戸間)
山陽本線(神戸~門司間)
鹿児島本線(門司~小倉・西小倉間)
日豊本線(小倉・西小倉~大分間)
使用車両
14系客車6両編成(東京~門司間ははやぶさとの併結で計12両)
発車時刻
東京駅18:03・大分駅16:43
所要時間
17時間14分~17時間15分
列車番号
1・2
最終運転日
2009年3月13日(始発駅基準)

停車駅

○は運転停車のみで客扱い無し。

広島駅以東
駅名




































下り富士
上り富士
広島駅以西
駅名


































下り富士
上り富士

列車名の由来

日本一高い山である富士山より。

年表

戦前特急富士

1912年6月 新橋~下関間に日本最初の特別急行が設定される。当時は列車名は無かった。
停車駅は新橋 - 平沼 - 国府津 - 山北 - 沼津 - 静岡 - 浜松 - 豊橋 - 名古屋 - 大垣 - 米原 - 馬場 - 京都 - 大阪 - 三ノ宮 - 神戸 - 兵庫 - 姫路 - 岡山 - 糸崎 - 広島 - 宮島 - 柳井津 - 三田尻 - 小郡 - 下関

1914年12月 東京駅開業に伴い東京~下関間の運行となる。

1929年9月 特急富士と命名される。

1934年12月 丹那トンネル開業に伴い御殿場線を経由しなくなる。

1942年11月 関門トンネル開業に伴い東京~長崎間の運行となる。

1943年7月 種別を特急から第一種急行に変更。

1943年10月 東京~博多間に運行区間短縮。

1944年4月 第一種急行富士廃止。

東海道特急富士

1961年10月 東京~神戸・宇野間に昼行特急富士が2往復設定される。
停車駅は東京 - 横浜 -熱海 - 名古屋 - 岐阜 - 京都 - 大阪 - 三ノ宮(宇野駅発着のみ) - 神戸(神戸駅発着のみ)- 姫路 - 岡山 - 宇野

1964年10月 東海道新幹線開業に伴い新大阪~宇野間は特急ゆうなぎに分離して特急富士は後述の寝台特急となる。

寝台特急富士

1964年10月 東京~熊本・大分間運行の寝台特急みずほの大分編成分離で東京~大分間に寝台特急富士が設定される。
停車駅は東京 - 横浜 - 熱海 - 浜松 - 名古屋 - 京都 - 大阪 - 岡山 - 広島 - 岩国 - 防府 - 宇部 - 下関 - 門司 - 中津 - 別府 - 大分

1965年10月 運行区間を東京~日豊本線経由西鹿児島間に延長。
大分駅以南の停車駅は大分 - 佐伯 - 延岡 - 日向市 - 宮崎 - 都城 - 隼人 - 鹿児島 - 西鹿児島

1980年10月 運行区間を東京~宮崎間に短縮。

1990年3月 運行区間を東京~南宮崎間に延長。

1997年11月 運行区間を東京~大分間に短縮。

2005年3月 東京~門司間を東京~熊本間を運行するはやぶさと併結するようになる。

2009年3月 廃止。

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関連項目

  • 鉄道列車名一覧
  • 東海道本線・長崎本線・日豊本線
  • 151系・20系客車・24系客車
  • 日本国有鉄道・JR東日本・JR東海・JR西日本・JR九州
  • 09年3/14ダイヤ改正
  • さくら(列車) - 戦前特急時代にコンビを組んでいた特急
  • うずしお(列車) - 東海道本線特急時代に宇野駅で折り返していた特急
  • 彗星(列車) - 関西発着の日豊本線の寝台特急

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