巨大生物(フォーリナー) 単語

キョダイセイブツフォーリナーネタキジ

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 巨大生物(フォーリナー)とは、Xbox360専用ゲーム「地球防衛軍3」に登場する敵キャラクターである。

 ここでは「黒蟻」「赤蟻」「蜘蛛」「女王蟻」「蜘蛛の王」「ヴァラク」「ガンシップ」「ヘクトル」「四足要塞」「空母型円盤」「マザーシップ」について記述する。ガンシップなどは機械兵器だが、合わせて記載する。

 ゲーム本編については→「地球防衛軍3」を参照とする。

 PS2用ゲーム『THE 地球防衛軍』シリーズに登場する巨大生物については→「巨大甲殻虫」を参照とする。

 なお以下の記載は次の書籍の情報に基づく。
  「たたかえ、ぼくらのE・D・F!!!」
  「EDFの戦い 2017年」
  「サンダー! 結城隊員の軌跡」

巨大生物の概要

  • 巨大生物とは
     地獄の悪魔と呼ぶに相応しい人類の天敵である。外見は蟻や蜘蛛に酷似しているが、乗用車を越える大きさであり、強力な顎による噛みつきと強酸性の体液や粘着性の糸で攻撃し、そして人間を捕食する。さらに地中に巣穴を形成し、より巨大な個体である女王の産卵によって増殖する。巣穴からの出口が街中に出現することも珍しくなく、避難の遅れた大都市では市民に甚大な被害が出た。
     これら生物兵器タイプの他に、ガンシップや二足歩行ロボットなど機械兵器タイプの敵も存在する。
     陽動によって包囲するといった高度な戦術を用いる場合もあるが、猪突猛進の突撃が基本であり、その圧倒的な数をもって津波のように押し寄せる。移動速度は黒蟻で最高70~90km/hとEDF主力戦車に匹敵し、蜘蛛に至っては百メートル以上を一気に跳躍する。瓦礫が散乱する悪路でも踏破能力は損なわれず、ビルや崖などの垂直の壁を登れることから浸透力も極めて高い。
     低高度では酸や糸の投射で戦闘ヘリですら撃墜されるため、航空兵力が壊滅して空爆が望めない状況では陸戦隊がゲリラ戦で迎え撃つしか方法がなく、各地のEDFは苦戦をしいられた。

詳細

  • 黒蟻
     2017年のファーストコンタクトで最初に確認された巨大生物。逃げ遅れた市民が食害という形で犠牲になったことからも有名で、フォーリナーの巨大生物と言えばこの「黒蟻」が挙げられる程である。
     空に浮かぶ超未来的な造形の円盤に比べて蟻という見慣れた姿だったために、巨大生物とフォーリナーとの間にどのような因果関係があるのか、EDF内部でも議論が続いた。
     「宇宙からの来訪者を歓迎しよう!」というのが当時の国際世論であり、人類が自らの歴史から突き付けられる「征服、略奪、虐殺」という恥ずべき経験則を、異星人に当てはめることは劣等感の証明であると非難する……それこそ罪悪感の反動と言うべき浮ついた風潮が蔓延していた。
     とくにその設立に際して政治・民族・宗教といったあらゆる問題と衝突したEDFにおいては「好戦的意見は厳に慎むべき」という認識が上層部で広まっていた。

     「あれは我々の船舶の底に付く貝と同じように、フォーリナーの宇宙船に寄生して来た異星生物である可能性が高く、フォーリナーが意図をもって出現させた……つまり彼らに攻撃の意思があったと早急に判断するのは危険である。あの宇宙船は爆弾一つ落としていない。不幸な事故ではあったが、これは我々の防疫体制の問題であり、巨大生物の駆除とフォーリナーとの意思疎通の確立を早急に実現しなければならない」

     以上が国連安全保障理事会とEDFが連名で発表した声明である。
     巨大生物がフォーリナーの先兵であると正式に認められるのは数日後、円盤から直接投下されているのが確認されてからであった。
    (中略)
     この巨大生物は、外見は極東に生息するクロオオアリ(Camponotus japonicus)に酷似しているが、回収された死骸を解剖した結果からは、我々がよく知る“小さな蟻”とは全く異なる生物であることが判明した。類似点として挙げられるのは酸素を呼吸し、水中では活動できず、水を嫌う性質のみである。
     最も異なるのはその大きさであり、全長7メートル、全幅2メートル(脚を開くと5メートル)、全高は起立状態で4メートルに達する。
     この巨体を支える外骨格である外皮は非常に硬く、かつ弾力性を備えており、小口径の拳銃ではダメージを与えられない。加えて軽量で、同量の強化プラスチックよりも耐久性に優れている(この事から、黒蟻と赤蟻の外皮はアーマーの素材として利用された)。
     感覚器官では複眼が高度に発達しており、触覚や嗅覚よりも視覚によって外界を認識する。無論、視覚がメインであっても嗅覚は鋭敏であり、触覚は大気の微細な振動さえ察知することができる。
     特筆すべきは、この生物が感覚器官のダメージコントロールに長けている点である。例えば音響閃光手榴弾が至近距離で起爆しても、伝達神経を一時的に遮断することで神経中枢を守り、同時に別の感覚器官が外環境に対応するという機能である。このため「触覚を切り落とす」「普通の蟻が嫌がるフェロモンを噴霧する」などといった手段で無力化することはできない。
     移動については左右3対ずつの脚で歩行するが、筋肉と言うべき組織は存在しない。筋肉に代わって体を動かしているのは、全身の間接に存在するモーターセル(駆動細胞)である。モーターセルは間接の接合部分……パーツとパーツが接する部分に緩衝材のように挟まれており、一つの間接につき数千万個のモーターセルが存在している。有力な仮説としては、それら無数の微小組織が震動することによって身体を構成するパーツの連結状態を変化させ、脚を曲げて“歩く”という動作を行っていると考えられている。
     このように全身で膨大な数となるモーターセルに比べて、それを制御する脳と思われる中枢神経は極めて小さい。最近の研究では各関節にあるモーターセルの集合体が脳の役割を果たしており、各部の脳は複数の神経網で結ばれ、中枢神経と思われる部分はハブ・ステーションに過ぎないと考えられている。このように複数の脳が連携して活動するメカニズムは完全には解明されてないが、この生物は中枢神経を物理的に取り除いても全く問題なく動き回る。
     そうして動かされる6本の脚は先端に爪を持ち、急傾斜の壁を登る際には爪の付け根から、極微量だが充分に粘着性のある体液を分泌することで接着を可能としている。この粘着性の体液の成分構造は蜘蛛型巨大生物の糸と同様であり、蟻と蜘蛛という異なる巨大生物が非常に近い生物(または同様の生物兵器)であることを示している。
     幸いなことに、この強靭な脚は歩行のみに使用されており、攻撃や捕獲は頭部先端の顎で行われる。左右に牙を生やした顎の力は尋常ではなく、戦車の複合装甲に穴を穿つほどであり、ファーストコンタクトにおける市民の食害事件は極めて凄惨な様相を呈した。 
     もう一つの攻撃手段が、強酸液の噴射である。
     腹部の末端に無数の噴射口があり、中に赤色の強酸液が満ちたゼリー状の球体を、腹部を下向きに振り出す際の遠心力で投射する。この“強酸液の水風船“は噴射口を覆っている粘着性の膜を、内部から強酸液の圧力で膨らませ、一定量で噴射口を閉じて分離することで形成される。このゼリー状の球体は人体などに衝突すると簡単に弾けて強酸液を撒き散らすが、空気抵抗で割れることはなく、黒蟻の投射姿勢によっては数十メートル上空まで届くため、戦闘ヘリでも撃墜される恐れがある。
     また対象物に合わせて強酸液は稀釈濃度が調節されるため、重装甲の戦車と言えども長くは耐えられない。
     この強酸液を人間が生身で浴びた場合は重度の化学熱傷を負い、即死の可能性も高い。耐酸性のボディアーマーを着ていても、一部なら装甲脱落で事なきを得るが、全身に浴びれば致命傷は免れない。最新のアーマーはマイクロマシン塗装が施されているが、強酸液との反応を抑制・遅延するに過ぎず、完全に無害化するものではない。
     一度に噴き出される強酸液の量は約500mlから最高で15000mlだが、驚くべきことにこの巨大生物が活動可能な状態で噴出できる体液の限界量は全重量の60%を越えると言われており、大群の場合、強酸液の枯渇や噴射行為が黒蟻の活動時間を縮めることは期待できない。逆に体液を排出することで軽量化し、俊敏性を増すことが確認されている。
    (中略)
     黒蟻は強酸液を噴出する際に腹部を大きく振り出すため、動きをよく観察し、並行に移動して避けることを心がけなければならない。
    (中略)
    「いかにすれば、この悪魔に迅速な死の鉄鎚を下せるか」
     このテーマの答えを求めてEDFと各国の研究者は回収した死骸はもちろん、捕獲した個体を隅々まで調べ、あらゆる攻撃テストを行った。
     しかし、分かったことは「弱点らしい弱点が存在しない」ということであった。人間で言うところの急所が無く、体液の半分を失っても身体活動に障害が現れず、たとえ頭部・胸部・腹部を切り離してもそれぞれが動き回る始末である。
     この化物を殺すには集中攻撃か大火力でもって徹底的に粉砕するのが最も確実であり、その結果を前にして研究者の多くは口を揃えて「何者かに兵器としてデザインされたとしか考えられない」と語った。

  • 赤蟻
     黒蟻の亜種と考えられる巨大生物であり、黒蟻よりも一回り大きく、外皮の硬度や顎の力も黒蟻より優れる。当然、重量も黒蟻を上回るが、俊敏性は損なわれておらず、高い耐久力を活かして突撃の前衛として押し寄せる。
     最たる特徴は活動時間の長さであり、死骸の解剖データから推測するに理論値で黒蟻の百数十倍に達する。反面、強酸液を噴出することはない。
     赤色に見えるのは、黒蟻と同じ黒い外皮の上を、さらに透明の殻皮が覆う二重構造になっており、その隙間を埋めるグラス・ファイバー状の血管網を赤い体液が循環しているからである。これは体液の循環によって熱の蓄積を防ぐためと考えられ、レーザー照射テストでは黒蟻よりも25%ほど高い耐久値を示した。
     これらの特徴から、地熱が高く過酷な環境となる地底深くでの巣を作る掘削作業に特化した巨大生物と考えられる。
     酸や糸の投射攻撃がないことから個体レベルでの脅威度は低いが、大群になると耐久力の高さを活かして迎撃効率を著しく低下させ、さらに黒蟻や蜘蛛の盾となり、強力な顎で文字通り防衛線を噛みちぎって突破口を開く役割を担うため、決して油断してはならない。
     また活動時間の長さから、退却する部隊や避難民を狙って執拗に追撃してくることでも有名である。
     中国戦線では、北京を脱出してシベリア司令部に向かっていたEFD極東方面軍の残存部隊が1000キロ以上もの距離を進む間、赤蟻の群から絶え間ない追撃を受けた。止まることを許されない強行軍を強いられたことで大量の脱落者が発生し、中国政府と軍の首脳部を護衛していた本隊も振り切ることができずに全滅。途中の万里の長城における阻止作戦では城壁が喰い破られ、死守を命じられていた部隊は僅か数十分で壊滅したと言われる。

  • 蜘蛛
     そのあまりに醜悪な外見と極めて高い危険性から「凶蟲」と報じられた巨大生物である。
     黒蟻や二足ロボットよりも遅れて出現したため、水平弾幕の形成を重視した初期の対巨大生物戦術では対応できない。一説には、人類の戦術を分析したフォーリナーが、地球の蜘蛛を参考に造った巨大生物ではないかと言われている。それ故か、蟻と蜘蛛という大きく異なる生物でありながらサイズはほぼ同じである。
     外見は世界各地の温帯に生息するオオツチグモ科(Theraphosidae)に近く、4対の脚と1対の触肢、鎌状の牙を持つ。硬い体毛を有するが、地球の蜘蛛のように刺激毛として飛散させることはない。眼の数や配置はハエトリグモ科(jumping spider)と同じく肥大化した4つの眼を持ち、黒蟻以上に高度な視覚能力を有する。どちらの特徴も徘徊性であることを示しており、糸によって巣を作る習性は確認されていない。
     移動については全くと言っていいほど歩かず、跳躍でもって進行する。その飛躍距離は巨体に反して長く、百メートル以上を一気に跳び越える。数メートルの近距離でさえ跳躍で移動するが、これは8本の脚が跳躍のみに特化した間接構造となっているためである。
     運動器官における黒蟻との大きな差異としては、間接のモーターセルとは別に、脚の内部に筋肉が存在することである。むしろ脚はそれ自体が1つの筋肉組織と言うべきもので、接地旋回時には間接のモーターセルで無理矢理に脚を曲げている。
     跳躍による3次元的な動きで接近し、着地時の衝撃を吸収してほとんど音を出さないために奇襲を受ける可能性が高く、その独特の攻撃手段もあって、中東方面軍の壊滅は蜘蛛の登場が原因と言われている。
     岩石に覆われた荒野と見晴らしのよい砂漠という地理的条件、さらに軍事力と戦訓の豊富な国家が多い中東地域は、石油戦略によって欧米諸国から戦前以上の軍事的援助を取り付け、初戦では優勢を誇っていた。
     問題はイスラエル、イラン、エジプト、サウジアラビアなど各国が政治的に対立しており、各国から戦力を抽出する形で結成されたEDF中東方面軍もその影響を受けていたことである。
     各国は巨大生物を互いの国土に追い込むように戦い、とくにシナイ半島における包囲殲滅戦ではイスラエル軍がアラビア半島側へと巨大生物の群を押しやったことで、聖地絶対防衛を掲げていた他の中東諸国が激怒、EDFが仲裁に入ったものの、一時は人類同士が再び銃を向け合う事態に陥った。
     その隙を突く形で、紅海と地中海に潜航していたフォーリナーの空母型円盤が浮上、シナイ半島に集結していた中東方面軍の後方に蜘蛛型巨大生物を投下したのである。跳躍を繰り返して阻止線を飛び越える蜘蛛の群に各国とEDFの連合軍は大混乱に陥り、狭めていた包囲網が仇となり、逆に包囲殲滅されることになった。
     この時、イスラエル航空宇宙軍のAH-64Dを中核とするEDFの戦闘ヘリ部隊を壊滅させたのが、蜘蛛型巨大生物の攻撃手段である糸であった。
     一般的にも蜘蛛の糸が強靭なバイオ・ファイバーであることは知られているが、この巨大生物の糸の強度は同じ太さの鋼鉄の10倍、伸縮率がナイロンの6倍と通常のそれを大きく凌ぎ、さらに黒蟻の強酸液と同様の威力を有している。
     糸は一本一本が無数の穴の空いた管のような構造をしており、その中に強酸液が満ち、物体に付着すると強酸液が滲み出るようになっている。この直径1ミリに満たない極細の糸が腹部末端の出糸突起内で束ねられ、直径数センチの束糸となって噴き出される。一度の噴射で放射される束糸は十数本に及ぶため、数体の蜘蛛が同時に放射すると視界を覆うような糸の壁が形成される。
     糸そのものの粘着性も高く、一本でも容易く全身に絡みつくため致命傷を負いやすい。糸の粘着性と強酸液によって機械的かつ物理的な損傷を負ってしまう戦闘ヘリは、とくに注意が必要である。
     この巨大生物も人間を捕食するが、強酸液を満たしていない糸で捕獲する習性も確認されている。救助された者が皆無であり、撃墜した空母型円盤や地底の巣においても生存者や遺体が発見されていないことから、捕食以外で人間を捕獲する目的は不明である。
     幸いなことに黒蟻や赤蟻に比べて耐久力は低く、充分な距離があれば着地の瞬間を狙うことで撃破は容易だと言われている。とくに4つの大きな目が脆弱で貫通しやすい。欧州戦線の北欧防衛戦では2人のスナイパーが合わせて1000体余りの巨大生物を撃破しているが、このうちの800キル以上が蜘蛛型巨大生物の目を狙撃したと言われている。

  • 女王蟻
     日本列島戦線の地底進攻作戦において巣の最深部で確認された超巨大生物であり、たださえ巨大な黒蟻型巨大生物の10倍以上という、もはや荒唐無稽な大きさの化物である。
     攻撃手段は強酸液のみであるが、粘着弾で投射することはなく、腹部末端の噴射口から霧状に噴き出す。噴霧範囲は広く、一度の噴射で部隊が全滅することも珍しくない。
     通常の蟻にも存在する女王蟻と同じく産卵する能力を持つが、本来は抜け落ちる筈の羽根が残っており、解剖結果からも飛翔能力を有することが判明している。日本列島戦線において女王の飛翔を見ることがなかったのは、多大な犠牲を払いながらもEDF日本支部が巨大生物の掃討と巣穴への攻撃を断続的に行っていたからだと言われている。なぜなら、1つの巣における個体数が一定数を超えると女王は産卵を辞め、新たな王国を築くために移動するからである。
     女王の飛翔が確認された中央アジア戦線では、一時期を機に巨大生物の個体数が爆発的に増加した。これによってEDFの欧州方面軍とシベリア方面軍は分断され、ウラル山脈攻防戦の敗退、しいては欧州陥落の遠因となった。
     なぜ巣の拡散を許したかについては、ロシアが白ロシア地域以東の、とくに中央アジアの防衛を放棄したことが最大の要因と言われている。
     ロシアと近隣諸国との紛争はEDF設立時に中東問題に次いで紛糾した問題であり、ロシア側は譲歩の条件としてウラル山脈以東の防衛をEDF単独で行うこと、さらにロシア連邦軍からの戦力抽出を人員に限定することを通達した。
     チェチェン紛争の平和的解決と、後の核兵器全廃計画への協力を条件に欧米諸国はこれを承認。サンクトペテルブルクに予定されていたEDF方面軍司令部はシベリアに建設されたが、派遣された戦力が兵役に就いて間もない新兵や重度のアルコール中毒(ロシアでは軽度のアルコール中毒など珍しくない)などの健康障害を抱える者であったことからも、当時のロシア政府がEDF構想を軽視していたことが窺える。
     ロシア連邦軍にもその能力がなかったとは言え、EDFシベリア方面軍の限られた人員と装備で中央アジア全域をカバーすることは不可能であり、逆に両者の間に協力体制があれば巣の拡散速度を抑えることはできた筈であり、政治的な失策であったと言える。ウラル山脈を飛び越えた数体の女王が産卵を繰り返し、溢れ返った巨大生物によってウクライナの穀倉地帯が壊滅し、赤の広場を蹂躙されたことも考えれば、代償はあまりにも大きかった。

  • 蜘蛛の王
     前述の女王蟻と同等の大きさを誇る、蜘蛛型巨大生物の超個体。
     あまりの重量によって跳躍距離は短くなっているが、大きさが大きさであるため、実質的な移動距離は通常の個体よりも長い。
     また腹部を振り上げた際の出糸突起の高さを活かして、遠距離からでも糸を放射してくる。束糸の太さと数量、なによりもその重さは尋常ではなく、生身で直撃されると衝撃で内臓破裂などの重傷を負うのは確実であり、隠れていても遮蔽物ごと貫通される怖れがある。無謀な突撃は速やかな死に繋がるため、撃破するためには入念な攻撃計画を練られなければならない。
     超個体は自身が絶大な戦闘能力を有していながらも、単独で行動することはなく、常に巨大生物を随伴させており、とくに蜘蛛の王はその傾向が顕著である。具体的には王を中心に同心円状の陣形が組まれ、死角のないキルゾーンが形成される。このような方陣を組まれると容易には手を出せなくなり、“彼ら”もそれを理解しているらしく、侵攻においても群での移動を徹底している。
     その習性を逆手に取り、日本列島戦線や欧州戦線ではエアーバイクSDL2を用いた誘導殲滅戦が試みられた。これは数台のSDL2で群を挑発、放棄された市街地や渓谷などの地形に誘い込み、事前に設置しておいた高性能爆薬の起爆で一網打尽にするという戦法である。
     単純ではあるが、それ故に成功率は高く、欧州では民衆が避難する時間を稼ぐために志願兵によって繰り返し行われた。EDF構想に参加せず、最後まで一国武装中立を貫いたスイスでも同様の戦法が試みられ、アルプス山脈には幾多の英霊が眠っていると言われる。
     なおEDFにおいて使用されたのはC70爆弾である。
     これは小型の戦術核兵器や燃料気化爆弾に代わる“使い勝手の良い”戦術級戦域制圧兵器として開発されたMOAB (Massive Ordnance Air Blast bomb:大規模爆風爆弾兵器)「Cシリーズ」の中でも、最も新しく、最も威力が高く、そして最も多く巨大生物を殺した英雄的爆弾として知られており、MOABの別称「Mother Of All Bombs:すべての爆弾の母」にかけて「ビッグ・マム」の愛称で兵士から親しまれている。
     かつて特定の爆弾の固有名称であったMOABが近年急速にカテゴリー化した背景には、EDF構想と並行して計画、実施された核兵器全廃計画の存在が大きい。
    (中略)
     EDF創設が世界政府準備機関の下準備であったこと、そして世界政府樹立構想が宇宙からの来訪者を迎えるための政治劇であったことは周知の通りである。
     フォーリナーとの壮絶な戦いを経験した現在では性質の悪い冗談にしか聞こえないが、大戦前、世界はフォーリナーの来訪を心待ちにしていた。好意的に見れば、多くの人々は映画E.T.のような光景を純朴に思い描いていたと言えるのかもしれない。だが、実際には「賢い宇宙人が、地球人類の抱える諸問題を解決する叡智を授けてくれるだろう」という旨の無責任な楽観論が蔓延していたと言わざるをえない。彼らは人類の文明レベルが格段に進歩することを、異星人の協力によってユートピアが築かれることを“そうあるべき未来”として期待した。まるで中世ヨーロッパの野蛮人が古代ローマの復活を夢見るかのように。
     無責任な楽観論に陥った民衆の多くが厚顔無恥に“そうあるべき”を主張するのは歴史の常であり、核兵器全廃は最も魅力的な“そうあるべき “事柄の一つであった。
     また、
    「フォーリナーが核兵器の存在を知ったらどう思うだろう?」
     この何気ない問いに、世界の列強国も本気で顔を見合わせていたのである。
     「人類は危険種族と思われて“駆除”されるかもしれない」という議論が大真面目に語られたことからも分かる通り、特定の人々には「高等な異星人によって人類が下等生物と断定される事態」は極めて遺憾な予測であった。とくに有色人種に対して優越心を抱いている人々ほど、恒星間航行でやって来る異星人へのコンプレックスは顕著であった。
     そもそも世界政府という構想自体が「人類は一人前である」と異星人に誇示するためだけに発案された政策であり、その実践に宗教的使命感を持っていた人々は核兵器全廃計画も驚くべき早さで実現してしまった。その際、日本を含む数ヶ国が「ヒロシマやナガサキといった“人類の過ち”を素直に告白すべきだ」と主張したが、 ある国が「それはアメリカの過ちである」と名指しで糾弾し、また別の国が「過ちではない」と反論するなど紛糾した。
     このような理想主義と言うのも憚られる空虚な政策の中で、フォーリナーを警戒した純軍事的な政策であるEDF構想が後に世界を救ったことは、人類に大きな教訓を残した。
     2016年には米・露・英・仏・中の核保有国連安保理連常任理事国、インド・パキスタン・イスラエルなど準核保有国、さらに複数の核保有疑惑国も含めて公式上の核兵器は全て解体破棄、または永久封印された。人々は手放しで喜んだが「EDF構想が緩衝材として機能しなければ、軍事バランスの急激な変化によって世界は致命的な混乱に陥っていただろう」というのが、後世の歴史家の評価である。

  • 宇宙生物ヴァラク
     極東の日本列島戦線でのみ確認された超巨大生物であり、獰猛な姿と圧倒的な攻撃力から「魔獣」と怖れられ、公式に「宇宙生物ヴァラク」と命名された。
     当初は単独で出現したが、その後2体で出現した際の行動パターンなどから女王蟻のような超個体ではなく、あの大きさで通常の個体であると考えられる。なお確認されたのは3度であり、最後に出現した1体はフォーリナーによって機械的改造を施されていた。
     二足歩行する姿は古代の肉食性恐竜を思わせるが、全身の各所に装甲のような部分を有している。これは硬質化した表皮であり、甲殻であると同時に外骨格の役割を果たしている。内部の骨格も外骨格との整合性を保ちながら発達しており、これによって高い懸架性と衝撃吸収分散性を実現、大きさと重量を考えれば立つことも適わない巨体を支え、疾走させ可能にしている。
     巨体を前傾させて行う突進は強大な運動エネルギーを有しており、これを防ぐことのできる建造物は地球上に存在しない。なお完全に腕として発達した前脚と、全長の半分近くを占める尾は前傾突進時のバランサーの役割を果たしている。
     黒蟻の強酸液や蜘蛛の粘着糸と同じく、この巨大生物もあるものを噴射する。
     火炎である。
     正確には酸素と反応して発火燃焼する化学物質であり、本来は捕食対象を対外消化するために吐き出すものと考えられている。結論から述べれば、この超巨大生物は自分よりも大きな“何か”を襲う……言わばクジラを群で襲うシャチのような生物であると考えられる。
     根拠としては、まず他の巨大生物と違って人間を捕食しないことが挙げられる。獅子が蟲を主食としないように、咥内の大きく鋭い牙や消化器系の特徴もそれに準じている。
     そして、前脚にある凶悪な爪は獲物を切り裂くナイフではなく、何かに喰い込ませて自身を固定するアンカーのような性質を有している。円錐型の爪には無数の“返し”がノコギリ状に並んでおり、それら刃の列が多重螺旋を描くように重なり合うことで、食い込むと容易には抜けない仕組みになっているのである。また爪そのものが硬質化した表皮ではなく、体外に突出した腕の骨格である。つまりこの生物は手がなく、拳を握ることも指を曲げることもない。爪と一体である指は僅かに歪曲しており、巨大な銛を思わせる。
     全高40メートルを越えるこの超巨大生物の攻撃・防御力と獰猛な性格を鑑みるに、捕食対象はより大きく、より強靭な生物であると推測される。
     もはや我々の常識では計り知ることはできないが、何処かの天体に常軌を逸した生態系が存在するのは確かであり、あまりにも広大な宇宙……自然というものに畏怖を感じずにはいられない。そういう意味では、フォーリナーも我々人類と同じく自然に依存する生命体に過ぎず、決して神などではない。
     なおフォーリナーによって機械的改造を施された個体は、切除された腕の代わりに高出力の光学兵器が搭載されていた。近接迎撃用の散布地雷も有しており、量産されていれば甚大な被害が出ていたと予想される。
     最後に、日本列島に出現した3体のヴァラクは、全て1人の陸戦隊員によって撃破されている。他地域のEDFは「さすがニホンは怪獣との戦いに慣れている」と冗談を口にしたが、直に壮絶なジャイアント・キリングを目撃した日本支部では「化物だ」と呟いた者が少なからずいたと言われている。

  • ガンシップ
     大戦初期、マザーシップと空母型円盤に対する世界的な航空作戦において、人類側の戦闘機を壊滅させたフォーリナーの飛行兵器である。
     銀色のノーマルタイプと、赤く染められたレッドカラーという高性能タイプの2種が確認されている。赤蟻との混同を防ぐため、赤いタイプは「親衛隊」と呼称されている。
     空母型円盤もアメリカのSF番組に登場するスターシップを彷彿とさせるデザインだが、この飛行兵器も古典的なUFOと言うよりは宇宙戦闘機の印象を受ける。
     胴を丸めた猛禽のような姿をしており、遠目に見る影は球体に近い。航空力学を完全に無視した形状だが高速で飛行し、あらゆる速度域で鋭角的な急機動が可能である。
     その飛行は奇怪としか言う他になく、進行方向と機首が一致しない、高速直進中に関わらず機体が緩やかに回転している、後ろ向きのまま飛んでくるなど、人類の航空機とはかけ離れている。
     誤解を恐れずに、かつ厳密に言えば、この飛行物体は「揚力や推力によって飛行」しているのではなく、内部にある「装置」に牽引されることで「進行方向に落下」している。
     一説には「仮想重力源を数学的に設定することで装置内部に疑似的な引力を発生させている」と言われているが、物理空間の基幹情報を書き換える干渉手段を含めて、現段階では実証不可能である。以上は仮説の域を出ないが、撃墜された残骸を回収して復元したところ、機首や翼部分には空気抵抗を減らすための斥力場(フォースフィールド)を発生させる装置しかついておらず、機体中心部に埋め込まれた球体状の装置以外に推進機関らしき装置が見当たらないことから、超常的なオーバーテクノロジーが使われているのは明白である。同様の装置は、サイズこそ異なるが、空母型円盤やマザーシップの残骸からも発見されており、フォーリナーにとってはありふれた技術に過ぎないと思われる。
     なお残骸回収の際にフォーリナー“星人”の遺体が発見されることを期待する者は多かったが、そのようなものは、少なくとも人間が見ることのできる異星人の死体は発見されなかった。
     空母型円盤やマザーシップも同様であり、これによって「ガンシップやマザーシップ自体が機械生命というべき存在ではないのか」といったフォーリナーの正体をめぐる論争は紛糾し、現在も決着を見ていない。構成物質が有機物か無機物か、そもそも生命の定義とは何なのか……その答えが出ない限り、確かなことは「フォーリナーは人類の敵だ」という事実だけであり、それが生き物であろうと兵器であろうと、我々は戦うのみである。
     ガンシップの武装は短射程のパルス・ビームのみであるが、数と機動力で人類側の戦闘機を圧倒するため、戦力的に劣るということはなかった。
     初戦の航空作戦失敗で最新鋭戦闘機を失った人類は退役した旧式機を掻き集め、さらには民間機を改造して戦闘に投入した(自動操縦のボーイング旅客機に爆薬を満載して特攻させる「カミカゼ・キング」がネーミングの悪さもあって有名である)が、レーザー機銃を搭載した決戦要塞X3を除き、航空戦で人類は勝利を掴むことができなかった。
     反面、ガンシップは対地攻撃では平面的な機動を取ることが多い。これは斥力場の衝撃緩和作用によって追突の危険がないことから超低空の匍匐飛行が可能で、然るに地表の遮蔽物を利用するためと考えられている。確かに、この高速匍匐飛行によって従来の対空ミサイルは無力化され、対空車輛も一撃離脱のパルス・ビームを浴びて撃破されたが、物陰に隠れた兵士の狙撃によってガンシップに損傷を与えることは可能であった。
     この点に注目したEDFは低威力ながら高機動な小型ミサイルを開発、ゲリラ戦をしかけ、少なからず戦果をあげた。その後、高性能なセントリーガンが投入されると、対空十字砲火の罠で牽制・足止めしたところを、フォーリナー技術を転用した対物スナイパーライフルで狙撃する戦術が確立された。大戦末期に実用化されたレーザーライフルに至っては1:20以上の彼我優勢(1人の兵士で20機以上のガンシップを撃墜可能)と言われている(大戦初期の彼我優勢はガンシップ1機を撃墜するために数人の兵士が必要だった)。
     このような人類の新戦術に対して、フォーリナーはガンシップのみによる地上攻撃を減少させ、二足ロボットや巨大生物との併用を徹底。戦いは激化の一途を辿った。

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関連項目

  • 地球防衛軍
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