政令指定都市(せいれいしていとし)とは、地方自治法第252条の19に基づいて、政令で指定する人口50万以上の市。法令上は単に指定都市と表記され、政令市とも略称される。2012年(平成24年)4月1日には、20市が指定されており、現在(2016年(平成28年10月以降))も指定数の増減はされていない。
政令指定都市の制度は、大都市行政の合理化、福祉充実などを図るために、都道府県の権限譲渡などの一般の市とは異なる特例を定めて、昭和31年6月に制度化されている。政令指定都市になるには、下記が絶対条件となる。
指定都市になると、公文書において、都道府県名の記載が省略可能になる。これは指定都市ならびに都道府県名=都市名の県庁所在地だけの特権である。(沖縄市、山梨市、栃木市は県庁所在地ではないため、省略できない)
あと、区(行政区)が設置されることになるが、これは公募によって決められることがほとんどである。仙台市や静岡市みたいに凝った区名になることもあれば、岡山市や熊本市みたいに単純に方角をそのまま区にしたところもある。
なお、大阪市の区の数は東京特別区の数(23)より多く、24区ある。なお、以前は26区であった。
上記の通り法的には50万人以上ならば政令都市にはなれるのだが、
「人口100万人以上」
「若しくは人口80万人以上で、近い将来100万人以上(100万人程度)になる見込みのある市」
というのが従来の実質的な運用基準であった。(堺市は30年近く前から80万人以上の人口であったが、人口動態が横ばいであったため昇格が見送られていた)
施行時は大阪市、京都市、横浜市、名古屋市、神戸市の5市が指定を受け、その後北九州市、札幌市、福岡市、川崎市、広島市、仙台市、千葉市が指定を受けた(そのうち、千葉市のみが100万人には未到達ながら、人口の伸びが顕著であったことから政令指定都市の指定を受けている)。また、この政令指定都市の基準のため、仙台市はベッドタウンの泉市(人口11万人)を、広島市は当時最大の自治体で最大の人口を抱えていた五日市町(10万人目前の町)を合併させ、100万人に到達させた。また、さいたま市は当時埼玉県は1985年時点で人口第五位だったのにかかわらず政令指定都市を持っていなかったため、訴求力と地域ブランドで大きく後れを取っていた(ださいたまと揶揄られた所以)。それで、両市犬猿の仲で合併などありえないといわれていた政治、文化の拠点都市である県都浦和市と、商業と交通の中心地の大宮市が(100万突破させるため与野市を巻き込んで)合併に向けた協議が進められた。
一方、一度基準となる100万人を突破した後割り込んだとしても、政令指定都市の地位が剥奪されることはない。北九州市は工業地帯の門司、小倉、戸畑、八幡、若松が対等合併して誕生した政令指定都市であるが、現在は94万人と100万人を割り込んでいる(それでも新興の政令指定都市と比較するとずっと人口は多い)。
なお、市域人口で100万人以上いる都市のことを100万都市と呼び、英語のmetropolisに当たる都市に適合している。また、million cityという言い方もあり、他にも韓国も広域市移行の条件として大きな節目となっている。
しかし、2001年8月30日より平成の大合併を促進させるため、期間限定で市町村合併を行い概ね70万人程度の人口があれば政令市になれるようになった。
これによる暫定的な規制緩和で静岡市・堺市・浜松市・新潟市・岡山市・相模原市・熊本市が新たに政令指定都市となった。特に本州日本海側で初の政令指定都市となった新潟市にとっては非常に意義が大きいものとなっており、また岡山市が中四国地方で広島市に次ぎ広島の地位を脅かす拠点都市として更に発展する礎となっている。また、静岡市と浜松市のようにお互い県内の覇権争いで相次いで周囲を合併し、政令指定都市移行に至った例もある。
なお、平成の大合併前の人口でいうと、新潟市は約48万人、岡山市は約62万人、浜松市が約57万人、熊本市が約56万人であり、中核市としてそれなりの規模は持っていたことを補足しておく。
一方で、上記のような政令市昇格ラッシュにより、「政令指定都市の価値が下がった!」という声を聞くことがある。確かに、政令市の中でも都市規模に大きな差があるのが実状である。相模原市や堺市の場合、単に沿線のベッドタウンとして人口が急増し政令指定都市に指定されるに至ったのが現状で、大都市の指標を示すCBD面積が地方中核市にも劣っている(川崎市も該当する)。
ほかに、行政区としては国内人口最低の2万人しかいない浜松市の天竜区、旧白根市を中心とする新潟市南区、岡山市北区のうち、旧建部町あたりなどおおよそ政令指定都市(笑)と揶揄られても仕方がないような地区も新たに多く誕生した。
もっとも、別に今回の緩和によってそういう地区が生まれているわけではない。実際、周辺の地方自治体が政令指定都市の箔がつくように、自らすすんで吸収合併を望んだ地区も少なくない。神戸市の北部(とりわけ六甲山地北麓)や京都市北区や左京区に吸収された旧京北町などが一例として挙げられる(なお、京都市と神戸市は戦後すぐに政令指定都市となっており、その後に吸収合併されたものである)。
なお、国が市町村合併推進を一区切りすることを決定したため、この緩和措置は「平成22年3月までに合併した市町村」を対象とすることになっている。(つまりこれ以降は従来の基準を満たしていないと昇格できない)
ちなみに、さいたま市は緩和措置が行われている期間内(2003年)に市町村合併で昇格した都市であるが、人口が100万人以上であったため従来の運用基準で昇格している。
これらの措置により、総数は20都市と一気に増加したが、2017年4月には静岡市が指定都市の実質条件である人口70万人を割り込んでいる。
| 都道府県 | 都市名 | 指定日 | 人口 | 面積 | 人口密度 | 市役所所在地の人口密度 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 札幌市 | 1972.4.1 | 195.1万人 | 1,121K㎡ | 1,725人/K㎡ | 4,945人/K㎡ 中央区 |
| 宮城県 | 仙台市 | 1989.4.1 | 108.3万人 | 784K㎡ | 1,320人/K㎡ | 940人/K㎡ 青葉区 |
| 埼玉県 | さいたま市 | 2003.4.1 | 129.0万人 | 217K㎡ | 5,530人/K㎡ | 12,470人/K㎡ 浦和区 |
| 千葉県 | 千葉市 | 1992.4.1 | 97.5万人 | 272K㎡ | 3,490人/K㎡ | 4,330人/K㎡ 中央区 |
| 神奈川県 | 横浜市 | 1956.9.1 | 373.1万人 | 437K㎡ | 8,360人/K㎡ | 6,920人/K㎡ 中区 |
| 川崎市 | 1972.4.1 | 150.9万人 | 143K㎡ | 9,770人/K㎡ | 5,450人/K㎡ 川崎区 | |
| 相模原市 | 2010.4.1 | 72.2万人 | 329K㎡ | 2,170人/K㎡ | 7,120人/K㎡ 中央区 | |
| 新潟県 | 新潟市 | 2007.4.1 | 80.1万人 | 726K㎡ | 1,120人/K㎡ | 4,810人/K㎡ 中央区 |
| 静岡県 | 静岡市 | 2005.4.1 | 69.6万人 | 1,412K㎡ | 509人/K㎡ | 242人/K㎡ 葵区 |
| 浜松市 | 2007.4.1 | 79.3万人 | 1,511K㎡ | 538人/K㎡ | 5,560人/K㎡ 中区 | |
| 愛知県 | 名古屋市 | 1956.9.1 | 231.1万人 | 326K㎡ | 6,890人/K㎡ | 7,930人/K㎡ 中区 |
| 京都府 | 京都市 | 1956.9.1 | 146.6万人 | 828K㎡ | 1,770人/K㎡ | 14,050人/K㎡ 中京区 |
| 大阪府 | 大阪市 | 1956.9.1 | 271.6万人 | 222K㎡ | 11,940人/K㎡ | 10,220人/K㎡ 北区 |
| 堺市 | 2006.4.1 | 83.1万人 | 150K㎡ | 5,580人/K㎡ | 6,210人/K㎡ 堺区 | |
| 兵庫県 | 神戸市 | 1956.9.1 | 152.7万人 | 552K㎡ | 2,780人/K㎡ | 4,280人/K㎡ 中央区 |
| 岡山県 | 岡山市 | 2009.4.1 | 72.0万人 | 790K㎡ | 890人/K㎡ | 655人/K㎡ 北区 |
| 広島県 | 広島市 | 1980.4.1 | 119.6万人 | 905K㎡ | 1,290人/K㎡ | 8,410人/K㎡ 中区 |
| 福岡県 | 北九州市 | 1963.4.1 | 94.5万人 | 488K㎡ | 2,020人/K㎡ | 4,640人/K㎡ 小倉北区 |
| 福岡市 | 1972.4.1 | 157.0万人 | 341K㎡ | 4,230人/K㎡ | 11,490人/K㎡ 中央区 | |
| 熊本県 | 熊本市 | 2012.4.1 | 73.8万人 | 389K㎡ | 1,890人/K㎡ | 7,244人/K㎡ 中央区 |
各政令指定都市の行政区数は以下の通り(参考までに東京特別区は23)。政令指定都市施行以後、ずっとこの数値というわけではなく、中には分区(例として札幌市厚別区や横浜市都筑区など)されたり統廃合されたり(例として大阪市大淀区など)、対等合併で新区が誕生した(例として神戸市中央区《生田区と葺合区の合併》)例もある。
東西南北と中央(中)といった方角による区名が多いのが特色で、堺市、岡山市、熊本市は住民同士の衝突を避けるためこの法則を踏襲した。一方、仙台市、川崎市、静岡市、北九州市などはゆかりのある地名を区名に採用している。
なお、奥州市(旧水沢市と旧江刺市にちなんだ水沢区や江刺区などがある)などのように政令指定都市ではなくとも区を用いていた例もあるが、これは行政区には該当せず、あくまで地域自治区名である。これがかなり紛らわしかったのか、2018年3月31日をもって使用禁止となった。
だが、姫路市(飾磨区や網干区などがある)などの場合は最初から◯◯町と同等の広域地名として扱われており、今もなお政令指定都市と紛らわしい区名が普通に使われている。
人口70万人以下で最も人口が多い都市は、現時点では船橋市(千葉県・人口約63.3万人)で、その次が鹿児島市(鹿児島県・人口約59.6万人)である。
その他人口50万程度の都市は、政令市化へ向けて合併協議などの取り組みを行っている地域が多い。
(姫路市・岐阜市・金沢市・宇都宮市など)
なお、東京都の世田谷区(92.5万人)、練馬区(73.3万人)、大田区(73.1万人)は2018年4月1日時点で70万人を超えているが、これらは市ではなく特別区なので政令指定都市の対象となっていない。
宇都宮市、岐阜市、金沢市、長崎市、那覇市など都市圏で70万人を突破しており新興の政令指定都市に匹敵するような都市もあり、必ずしも政令指定都市は大都市の旗印というわけではない。
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最終更新:2025/12/09(火) 18:00
最終更新:2025/12/09(火) 18:00
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