緊急事態宣言とは、「緊急事態」であることを宣言すること、およびその宣言である。
何らかの緊急事態であると宣言するもの。大災害・紛争・疫病の大流行など、多数の人間の生命・安全に関わる重大な問題が発生している場合に宣言される。
また、「緊急事態」が法的に規定されており、その「緊急事態」に入ることで行政上の何らかの変化が起きる場合には、その「法的に定められた緊急事態に入ることを宣言する」ことも指す。
2012年に成立・公布され、2013年に施行された日本の法律「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の第三十二条では、「緊急事態宣言」が規定されている。
(新型インフルエンザ等緊急事態宣言等)
第三十二条 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等(国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものとして政令で定める要件に該当するものに限る。以下この章において同じ。)が国内で発生し、その全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態(以下「新型インフルエンザ等緊急事態」という。)が発生したと認めるときは、新型インフルエンザ等緊急事態が発生した旨及び次に掲げる事項の公示(第五項及び第三十四条第一項において「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」という。)をし、並びにその旨及び当該事項を国会に報告するものとする。
一 新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき期間
二 新型インフルエンザ等緊急事態措置(第四十六条の規定による措置を除く。)を実施すべき区域
三 新型インフルエンザ等緊急事態の概要2 前項第一号に掲げる期間は、二年を超えてはならない。
3 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等のまん延の状況並びに国民生活及び国民経済の状況を勘案して第一項第一号に掲げる期間を延長し、又は同項第二号に掲げる区域を変更することが必要であると認めるときは、当該期間を延長する旨又は当該区域を変更する旨の公示をし、及びこれを国会に報告するものとする。
4 前項の規定により延長する期間は、一年を超えてはならない。
5 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等緊急事態宣言をした後、新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施する必要がなくなったと認めるときは、速やかに、新型インフルエンザ等緊急事態解除宣言(新型インフルエンザ等緊急事態が終了した旨の公示をいう。)をし、及び国会に報告するものとする。
6 政府対策本部長は、第一項又は第三項の公示をしたときは、基本的対処方針を変更し、第十八条第二項第三号に掲げる事項として当該公示の後に必要とされる新型インフルエンザ等緊急事態措置の実施に関する重要な事項を定めなければならない。
法律名からは「新型インフルエンザ」のみに関する法律であると勘違いされがちだが、「等」と付いていることからもわかるとおり、新型インフルエンザ以外の疾患についてもその対象にできる。
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 新型インフルエンザ等 感染症法第六条第七項に規定する新型インフルエンザ等感染症及び同条第九項に規定する新感染症(全国的かつ急速なまん延のおそれのあるものに限る。)をいう。
緊急事態宣言を行えるのは「政府対策本部長」であるが、この役職には原則として内閣総理大臣が就くことが明記されている。
第十六条 政府対策本部の長は、新型インフルエンザ等対策本部長(以下「政府対策本部長」という。)とし、内閣総理大臣(内閣総理大臣に事故があるときは、そのあらかじめ指名する国務大臣)をもって充てる。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症「新型コロナウイルス感染症」(COVID-19)が世界中、そして日本国内で蔓延した2020年には、3月10日に「新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律案」が提出され成立、3月13日に公布され、翌14日より施行された。
この改正によって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)もこの「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の対象とすることが法律内に明記された。
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(新型コロナウイルス感染症に関する特例)
第一条の二 新型コロナウイルス感染症(病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(令和二年一月に、中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る。)であるものに限る。第三項において同じ。)については、新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律(令和二年法律第四号。同項において「改正法」という。)の施行の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日までの間は、第二条第一号に規定する新型インフルエンザ等とみなして、この法律及びこの法律に基づく命令(告示を含む。)の規定を適用する。
2 前項の場合におけるこの法律の規定の適用については、第十四条中「とき」とあるのは、「とき(新型コロナウイルス感染症(病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(令和二年一月に、中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る。)であるものに限る。)にあっては、そのまん延のおそれが高いと認めるとき)」とする。
3 前項に定めるもののほか、第一項の場合において、改正法の施行前に作成された政府行動計画、都道府県行動計画、市町村行動計画及び業務計画(以下この項において「行動計画等」という。)に定められていた新型インフルエンザ等に関する事項は、新型コロナウイルス感染症を含む新型インフルエンザ等に関する事項として行動計画等に定められているものとみなす。
(検討)
第二条 政府は、この法律の施行後適当な時期において、この法律の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
「新型インフルエンザ等対策特別措置法」が定める「緊急事態」において可能になる措置は多彩であり、条文も長文に渡るため、ここに文面を全て転載することは控える。正確かつ詳細な情報が知りたい人は、日本政府の運営するサイト「e-Gov」において、法律の条文全文が読めるため、条文を表示した状態で「緊急事態」をページ内検索されたい。
一部をかいつまんで紹介すると、以下のような措置が可能となる。
これらの他にも様々な条文がある。債務・融資・価格安定・埋葬・火葬・補償……などなど。地方の行政機関に「相互に協力するよう努めなければならない」としたり、医療機関や運送機関や通信機関やインフラ事業者などにそれぞれで「必要な措置を講じなければならない」としたりと、「まあ普通そうだろう」とか「言わずもがなでは?」と思えてくるような条文も多いので、それらの紹介は省く。
逆に「何ができないのか」というと、法律の条文を読む限りでは、一部の外国で行われたような「都市封鎖」(ロックダウン)や、処罰を伴う「外出禁止令」を行うことは難しいようだ。
上記の「第四十五条の1」で可能としているのはあくまで「外出自粛などの要請」でしかないため。
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最終更新:2025/12/08(月) 06:00
最終更新:2025/12/08(月) 05:00
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