部活問題 単語


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部活問題とは、日本の学校で行われている部活動に関する問題である。

概要

部活問題の主なものは次の通り。

  • 生徒に対して部活動への加入を強制している学校が存在する。生徒の「部活動に参加しない自由」が保障されていない(学習指導要領では部活動は「生徒の自主的,自発的な参加によるもの」とされているのに)。
  • 教師に対して部活動の顧問を強制している学校が存在する。無賃or最低賃金以下の賃金での労働を強制されることも(あくまでも「教師が自主的にやっていること」として処理しているとかなんとか)。
  • 休日がほとんど設けられていない部活動が存在する(1997年に文部省(現文部科学省)が提示した指針を真っ向から無視している)。
  • 部活動の活動実績が内申書に記載され、高校入試で加点される対象になっている(千葉県立高校の事例)。

他にも様々な問題があると思われる(加筆求む)。

なお、これらの部活問題の解決を目指して署名活動が行われている。

部活動強制加入システム(生徒の「部活動に参加しない自由」が保障されていないこと)の問題点

これはもう学習指導要領違反と解釈できる。学習指導要領には、部活動について次のように記述されている。

第4 指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項

(中略)
  • (13) 生徒の自主的,自発的な参加により行われる部活動については,スポーツや文化及び科学等に親しませ,学習意欲の向上や責任感,連帯感の涵養等に資するものであり,学校教育の一環として,教育課程との関連が図られるよう留意すること。その際,地域や学校の実態に応じ,地域の人々の協力,社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行うようにすること。
学習指導要領 第1章 総則:文部科学省[1]

学習指導要領にははっきりと「生徒の自主的,自発的な参加によって行われる部活動」と明記されている。これはつまり『「部活動に参加しない自由」は保障されなければならない』と解釈することが可能である。学習指導要領は日本全国の学校で適用されるので、日本全国で「部活動に参加しない自由」は保障されなければならないのである。それなのに、学校側が生徒に対して部活動への加入を義務付けている事例が存在するという。

例えば岩手県においては、中学校の99%で部活動への加入が義務付けられているという。その辺りの話は以下のリンクで詳述されている。部活動以外のことをしたい生徒や放課後休日はのんびりしたい生徒からしてみれば迷惑極まりない話である。

特に公立中学校において部活動への加入が義務付けられているのは最悪である。中学校は義務教育である(そして生徒が自由に学校を選択できない場合が多い)ため、部活動を強制される運命を逃れることがほぼ不可能である。部活に入りたくないからという理由だけで越境通学が認められた事例は聞いたことがないし、仮に認められても通学の負担は確実に大きくなる。ゆえに部活動に加入したくない場合は、部活動が強制されない中学校に通える学区に引っ越すor部活動が強制されない私立中学校を受験する他に有効な手立てはなかなか存在しない。地獄である。(余談だが、初版執筆者は千葉県で小中高と通った。小中高とも部活動は任意参加だったが、部活加入率はかなり高かった。小学生時代に中学校説明会で「部活動は任意加入かどうか」を質問した記憶があるが、それほどまでに初版執筆者は部活動に対して恐怖心を抱いていたようだ。学校に拘束されていじめ(という名の犯罪)の脅威にさらされる時間が増えるだけでも地獄である。)

学習指導要領に違反した上に生徒の自由と権利を不当に侵害しているのが部活動の真の姿である。ゆえに部活動強制加入システムは直ちに廃止されなければならない。生徒が当然有する『部活動に参加しない自由』を回復するために、Change.orgにて署名活動が行われている。キャンペーン ・ 文部科学大臣 馳 浩 様: 生徒に部活に入部する・入部しないの自由を!入部の強制に断固反対! ・ Change.org

部活動は教師の無賃労働(労働基準法違反)で支えられている!?

ここまで生徒視点での部活問題に触れてきたが、教師視点での部活問題にも触れていきたい。部活動には大抵の場合顧問教師が1人以上ついてくる。部活動の中には平日の夜遅くまで、あるいは休日にも活動しているところがあるだろう。それらの全てを顧問教師が監督するとなれば、顧問教師は長時間労働・休日出勤をこなさなければならない。ここで労働基準法について軽くおさらいしておこう。

  • 1日8時間労働
  • 週40時間労働
  • ↑が原則だが、所謂サブロク協定の締結により、時間外労働をさせることが可能(但し時間外手当を支払う義務が発生)
  • 最低でも1週間(7日)に1日の休日が必要

これくらいはおそらく誰もが知っていると思われる。詳細は労働基準法も参照

労働者に残業をさせたらきちんと残業代を支払わなければならない。誰もが知っているルールである(これを守らない企業はもれなく「ブラック企業」の烙印を押される)。しかし、教師には(明らかに残業をしているのに)残業代が出ないのである。

厳密に言うと、教師には残業代が出ないという表現は一部不正確かもしれない。「教師には原則として残業が存在しない&所謂超勤4項目で残業することを想定して追加手当を支払う代わりに残業代を出さない」という表現が正確だろうか。ここで「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法とも)及び「超勤4項目」について説明しよう。

第一条 この法律は、公立の義務教育諸学校等の教育職員の職務と勤務態様の特殊性に基づき、その給与その他の勤務条件について特例を定めるものとする。

(中略)

第三条 教育職員(校長、副校長及び教頭を除く。以下この条において同じ。)には、その者の給料月額の百分の四に相当する額を基準として、条例で定めるところにより、教職調整額を支給しなければならない。

2  教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない。

(中略)

第六条 教育職員(管理職手当を受ける者を除く。以下この条において同じ。)を正規の勤務時間(一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律 (平成六年法律第三十三号)第五条 から第八条 まで、第十一条及び第十二条の規定に相当する条例の規定による勤務時間をいう。第三項において同じ。)を超えて勤務させる場合は、政令で定める基準に従い条例で定める場合に限るものとする。(注釈:「政令で定める基準」が「超勤4項目」)

公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法[2]
(参考)『超勤4項目』:
  1. 教育職員については、正規の勤務時間の割振りを適正に行い、原則として時間外勤務を命じないものとすること。
  2. 教育職員に対し時間外勤務を命ずる場合は、次に掲げる業務に従事する場合であって臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限るものとすること。
    • イ 校外実習その他生徒の実習に関する業務
    • ロ 修学旅行その他学校の行事に関する業務
    • ハ 職員会議(設置者の定めるところにより学校に置かれるものをいう。)に関する業務
    • ニ 非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務
中央教育審議会 初等中等教育分科会 教職員給与の在り方に関するワーキンググループ(第8回)議事録・配付資料 [資料5]-文部科学省[3]

まず、「教育職員については、正規の勤務時間の割振りを適正に行い、原則として時間外勤務を命じないものとすること。」より教師には残業が原則として発生しないシステムに(建前だが)なっている。つまり教師は原則として必ず定時に帰れる(という建前)。そして、教師に残業させることができる例外的な業務が『超勤4項目』。…つまり『超勤4項目』以外では教師が残業することは無いんだから、『超勤4項目』の分だけ予め支払っておけばいちいち残業代を計算して出さなくても問題ないよね!?という(問題ありまくりな)理屈である。その理屈で公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法によって「教職調整額」(←原則として給料の4%・これが超勤4項目による残業代になると思われる)の支払いと教師が『超勤4項目』以外では残業をしないこと、そして教師に残業代を支払わないことが定められている(と初版執筆者は解釈している)。

だが実際には、部活動の顧問教師は部活の面倒を見るために残業している。部活の顧問業務は『超勤4項目』に含まれていないため、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法第六条(超勤4項目以外で教師に残業させてはいけない)に反している。法律違反がまかり通っているのだ。控えめに言って異常である。部活の面倒を見ても残業代が出ないという悲劇。部活によって休日が無くなるという悲劇。その辺りの話は部活問題 対策プロジェクト - 部活の問題点 教師編に詳しい。こちらの問題もなんとか解決すべく署名活動が行われている。キャンペーン ・ 部活がブラックすぎて倒れそう… 教師に部活動の顧問をする・しないの選択権を下さい! ・ Change.org

ちなみに、1997年に文部省(現文部科学省)が提示した指針には、運動部の休養のあり方について、以下のように記述されている。

〔運動部における休養日等の設定例〕(参考)

  • 中学校の運動部では,学期中は週当たり2日以上の休養日を設定。
  • 高等学校の運動部では,学期中は週当たり1日以上の休養日を設定。
  • 練習試合や大会への参加など休業土曜日や日曜日に活動する必要がある場合は,休養日を他の曜日で確保。
  • 休業土曜日や日曜日の活動については,子供の[ゆとり]を確保し,家族や部員以外の友達,地域の人々などとより触れ合えるようにするという学校週5日制の趣旨に適切に配慮。
  • 長期休業中の活動については,上記の学期中の休養日の設定に準じた扱いを行うとともに,ある程度長期のまとまった休養日を設け,生徒に十分な休養を与える。
  • なお,効率的な練習を行い,長くても平日は2~3時間程度以内,休業土曜日や日曜日に実施する場合でも3~4時間程度以内で練習を終えることを目処とする。長期休業中の練習についても,これに準ずる。
運動部活動の在り方に関する調査研究報告 (中学生・高校生のスポーツ活動に関する調査研究協力者会議) :文部科学省[4]

文部省が直々に「部活動は程々にして、きちんと体を休ませなさい」という指針を出した。それなのに月月火水木金金なスケジュールで活動する部活はどう考えてもおかしい。この指針をキチンと守って(学校の休日に休養日を持ってきて)いれば生徒も教師もきちんと休めるというのに。きちんと休むことは健康に過ごすためにも必要なはずなのに。日本人はもっときちんと休む習慣を身につけなければならないと思うのは私だけだろうか。精神論と非効率的なやり方から脱却し、きちんと休むようにしないとせっかくの完全週休2日制が台無しである。

中学校の部活動が高校受験にも影響を与えるという現実

「部活動をしないと内申に響く」と教師に言われた経験がある人はいるだろうか。中学時代の部活経験が高校受験に影響を及ぼすと言われてもいまいちピンとこない人もいるかもしれないが、(少なくとも千葉県においては)中学時代の部活の実績が高校受験をある程度左右するといえるのだ。その実態はこちらの記事(初版執筆者が運営しているブログの記事)でも述べているが、

  • 高校受験時に中学校から送られる内申書(調査書)に「部活動」について記述する欄が独立して存在している
  • 高校によっては一定の基準で「部活動」についての記述を点数化し、入試の得点にプラス(合否判定を直接左右する資料になる)
  • 得点化はしなくても、やっぱり内申書の内容(部活や生活態度等の記述)が良い人のほうが受かりやすい(特に最後の一人を決定するときなど)

…などの事情で、中学校の部活動は高校受験に対して一定の影響力を持っている。所謂「幽霊部員」が発生する原因の一つはこれ。部活に所属してさえいれば(サボりまくっても)「〇〇部所属」の肩書だけは得ることができるため、相対的に帰宅部(部活動について記述する欄には「特記事項なし」とだけ書かれる)よりも有利になる。入試で有利になるならとりあえずサボり通しても文句を言われ無い〇〇部に籍を置いておこう…となるのもお分かりいただけるかと。

また、部活動が内申書を左右する=部活動が受験を左右するという構造になっている関係上、どうしても部活動は学校側が生徒を管理するために使われてしまう側面は否定出来ない(何かあれば「内申書に響くぞ」の一言で生徒はもう学校に逆らえない)。「生徒が自主的に行うもの」であるはずの部活動が「生徒を学校に縛り付けて生徒の自由を奪うもの」になってしまっているのも嫌な話だ。

現行の部活動システムは廃止すべきかもしれない

正直な話、これだけの問題を抱えた現行の部活動システムをこのまま継続することは不可能である。もはやどこからツッコミを入れればいいかもわからない状況であるため、いっそのこと現行の部活動システムを完全廃止した上で学校とは無関係の別組織に再編(当然ながら「加入しない自由」を確実に保障)するという選択肢が出てくるくらいだ。

日本の学校の部活動は、内部にとてつもなく大きな歪みを抱えながら、更には法律にも違反したまま肥大化しすぎてしまった。部活動への加入を義務付ける学校で生徒はやりたくもない部活動に時間も自由も奪われて苦しみ、教師も部活動に時間を奪われて授業の準備やプライベートを奪われて苦しみ、生徒や教師の家族もまた部活動に支配されて苦しんでいる(その辺りの話は部活問題 対策プロジェクトで詳述されている)。これだけの人を苦しめながら現行の部活動システムを維持する意義はどこにあるのか?そもそも法律違反な現状を放置している事自体がおかしいのではないか?…現行の部活動システムは、すでに終わるべき時を迎えたのかもしれない。時には伝統や慣習を破壊する勇気も必要である。

もちろん部活動には良い面もあるかもしれないし、良い面を残したまま現行の部活動システムが抱えた負の側面を解決できるというのであれば、それがベストかもしれない。伝統を断ち切ることには抵抗もあるだろう。しかし、現行の部活動システムに苦しめられている人がいることはきちんと考えなければならない。部活動システムで苦しむ人の存在や、部活動システムが法律や学習指導要領にも違反している事を考慮すれば、現行の部活動システムに「現状維持」の選択肢はもはや許されていないのだ。これまで日本の学校で大きな影響力を持っていた部活動について、現行システムの完全廃止も視野に今一度考えなおすことが求められているのではないだろうか。

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関連項目

  • 中学校
  • 高等学校

脚注

  1. *学習指導要領 第1章 総則:文部科学省
  2. *公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法
  3. *中央教育審議会 初等中等教育分科会 教職員給与の在り方に関するワーキンググループ(第8回)議事録・配付資料 [資料5]-文部科学省
  4. *運動部活動の在り方に関する調査研究報告 (中学生・高校生のスポーツ活動に関する調査研究協力者会議) :文部科学省
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