電車と列車の違い 単語


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この項目では、二つの意味における「電車」と「列車」の使い方の違いについて説明する。非常に複雑であり、間違えると恥をかく事にもなるため、その手の人と話す場合にはきちんと区別をつける必要がある。

概要

「電車」と「列車」には、意味合いの違う2つの分類方法がある。

  1. 線路を走る車両としての「電車」と「列車」の違い
  2. 運転系統としての「電車」と「列車」の違い

以降、分かりやすいように1の意味と2の意味で色分けを行う。混同しないように注意されたし。

線路を走る車両としての違い

列車とは、線路を走って人や物を輸送する車両全てを指す単語である。対して電車とは、列車の一種であり、主に架線から電気を使って走っている。

列車を分類すると、電化区間のみしか走行できない電車の他に、内燃機関としてディーゼルエンジンを用いているため非電化区間を走ることができる気動車や、SLを始めとした機関車牽引の客車などに分けることができる。

故に、そもそもの原理として電気で走っていない気動車や機関車・客車に対して、電車と呼称するのは大きな誤りである。これらは俗に「電車言葉」と呼ばれる。

なお、気動車は「ディーゼル」や「D」[1]とも呼ばれる。また、機関車は電気機関車であっても電車とは呼ばない。機関車に牽引されているのは「客車」「貨車」と呼称する。北海道や四国・九州などの地方では電車も含めた列車すべてを俗に「汽車」と呼ぶ場合もあるが、汽車は鉄道専門用語ではないため、厳密な定義はない。

しかし現実問題として、こうした細かいルールを鉄道に詳しくない一般の人が完全に理解することは難しい。そのため、誤用を避けるために「電車」という単語を避け、汎用性の高い言葉を用いて「列車」と呼ぶことを推奨する。

ここまでならばまだ単純であるが、二番目の違いを論ずると議論は非常に複雑になる。もっとも、二番目の意味に関しては本職の方々と鉄道趣味者以外にはどうでもいい区別であるが、JR東日本の案内表示システムがご丁寧にこれらを区別して表示するために「なぜ統一しないのか」という疑問を抱く人もいる[2]ため、本記事で解説することとする。

運転系統としての違い

ここで解説する「電車」「列車」の区別は、首都圏と京阪神のJRのみに存在する。この区別ができた経緯は国鉄時代に遡る。

かつては電化された区間が少なく、電車が走るのは大都市の近距離を走るものに限られていた。長距離を走る場合は非電化区間にも直通するため、ほとんどが機関車牽引の客車列車だった。これらは信号やシステムの違いが大きいことから、電化区間が拡大して殆どが電車に統一された現在でも電車列車として区別が続いている。つまり、機関車牽引の客車列車をルーツとするものは、今は電車であっても「列車」と呼ばれる。一方、電車をルーツとするものは、列車に対して「電車」と区別されるのである。

東京近郊や京阪神では線路を走る列車の数が多く、上り線・下り線それぞれ2本ずつの複々線を形成する路線も多い。この複々線区間において運転系統の分離が行われる場合、電車が走る線路を「電車線」、列車が走る線路を「列車線」と呼ぶ。しかし、複々線のどちらの線路も電車が走る場合もあり、その場合は単純に「急行線(快速線)」「緩行線」という区別となる。このどちらに該当するかは路線個別の事情が関わってくるため、各路線ごとに以下に詳説する。

なお、首都圏や京阪神以外のJRを走る列車は原則として列車である。すなわち、列車の中で一部の定義を満たしたもののみを、列車の定義から外して電車としているわけである。具体的な違いは以下の通り。

  • 列車:全ての駅で発着時刻が設定されている。ダイヤの最小単位が15秒(これを列車ダイヤと言う)
  • 電車:一部の駅しか発着時刻が設定されておらず、途中駅の多くが標準時刻(発着の目安となる時間)として設定されている。ダイヤの最小単位が10秒(これを電車ダイヤという)

この区別を実感したい場合は、JR東日本の首都圏の主要駅に出ると良い。京浜東北線や山手線のホームでは、案内放送や電光掲示板に「電車がまいります」と案内され、東海道線や宇都宮線のホームでは「列車がまいります」と案内されるはずである。実際に通過駅における中央線の特別快速の通過の案内や、京浜東北線の快速電車の通過の案内放送では「電車が通過します」と案内されるが、逆に成田エクスプレスなどの特急や、東海道線の快速アクティーの通過の際には「列車が通過します」と案内される。

ちなみに、市販の交通新聞社発行の「JR時刻表」では大雑把な区別ができる。巻末にまとめられていて始発と終電しかなかったりするのが「電車」、詳細に時刻が乗っているのが「列車」である(ただし横須賀線や中央線の一部など例外が多いため注意されたし)。

また、JR以外の私鉄においては電車列車の区別自体が存在しない。当然ながら、私鉄では電車線や列車線という呼称も存在せず、急行線・緩行線と呼ぶことになる。

以下、JR各線における状況を述べる。

東海道本線(JR東日本)

東京〜横浜間で、列車線を走行する「東海道線」と、電車線を走行する「京浜東北線」が複々線を形成している。

普通、快速、特急などの種別のある「東海道線」が「列車」に該当し、列車線を走行している。東海道本線に所属する大井町駅や大森駅などは、列車線にホームがないため、普通列車であっても通過する。

並行する「京浜東北線」が「電車」に該当し、電車線を走行している。各駅停車の電車は、普通列車が通過する大井町駅や大森駅にも停車する。ただし、快速電車は一部の駅を通過する。

ここで、新橋駅は東海道線の普通列車が通過するものの、京浜東北線の快速電車は停車する。一見逆転現象にも見えるが、電車列車は基本的に独立しており、東海道本線の「快速列車」「普通列車」と京浜東北線の「快速電車」「各駅停車の電車」は全くの別物として扱われるため、矛盾はしていない。

なお例外として、「上野東京ライン」を経由して東京〜品川間の列車線に乗り入れる「常磐線(快速)」のみは「電車」である(後述)。

東北本線

東京〜大宮間で、列車線を走行する「宇都宮線」「高崎線」と、電車線を走行する「京浜東北線」が複々線を形成している。

「宇都宮線」「高崎線」が「列車」、「京浜東北線」が「電車」である。上野~赤羽の間では電車線と列車線で異なる経路を経由する。

なお例外として、「上野東京ライン」を経由して東京〜上野間の列車線に乗り入れる「常磐線(快速)」のみは「電車」である(後述)。

中央本線(JR東日本)

御茶ノ水〜三鷹間で、急行線を走行する「中央線(快速)」と、緩行線を走行する「中央・総武線(各駅停車)」が複々線を形成している。

快速、特快、通勤快速などの種別のある「中央線(快速)」も各駅停車のみが走行する「中央・総武線(各駅停車)」も「電車」であり、この複々線は両線とも電車線になるため「急行線」「緩行線」として区別される。

「中央線(快速)」が電車線として扱われるのは東京〜高尾間である。そのため、大月行きや河口湖行きなどは列車線に電車が直通している例といえる。ただし、時刻表上では列車との時刻にも混じっていたりする。

ただし、あずさなどの特急列車は「列車」である。こちらは電車線に列車が直通している例となる。

山手線

大崎〜池袋間で、貨物線を走行する「埼京線」「湘南新宿ライン」と電車線を走行する「山手線」が複々線を形成している。

「山手線」は環状運転をする全区間において「電車」である。

貨物線を旅客化して走行している「埼京線」は乗り入れ先も含めた全区間において「電車」、同じ線路を走行する「湘南新宿ライン」は乗り入れ先も含めた全区間において「列車」である。また、この線路を走行する特急列車も「列車」となる。

常磐線

北千住〜取手間で、快速線を走行する「常磐線」「常磐線(快速)」と、緩行線を走行する「常磐線(各駅停車)」が複々線を形成している。

各駅停車のみが走行し、北千住駅から地下鉄千代田線に直通する「常磐線(各駅停車)」は全て「電車」である。

しかし、快速線では以下の両者が同じ線路を走行するため、事情は複雑である。

  • 取手駅より北に直通している「常磐線」
    • 列車」。青い帯を巻き、グリーン車を連結した交直流電車のE531系で運用され、「中距離電車」とも呼ばれる。
    • また、特急列車は全て「列車」である(取手駅以北に直通しないものも含む)。
  • 取手駅以南止まりの「常磐線(快速)」
    • 電車」。緑色の帯を巻き、グリーン車を連結していない直流電車のE231系で運用される。

現在は停車駅こそ同じであるが、以前は「普通列車」の方が「快速電車」より停車駅が少なかった。帯の色やグリーン車の有無を見れば見分けがつくのだが、そうはいってもさすがにややこしいため、2004年に取手駅以南の停車駅が統一され、この区間では旅客向けにはどちらも「快速」と案内されることになった。

このように常磐線に電車列車<が混在しているため、東北本線の東京~上野間に2015年3月14日から復活開業した上野東京ラインを通じて、列車線である東海道線の東京~品川間に初めて「電車」が走るようになった。上野東京ライン内は原則として「列車」、「常磐線(快速)」(南行は上野以南で「各駅停車」と案内)の場合のみ「電車」として区別している。

「横須賀線・総武線(快速)」

戸籍上の路線名を挙げると複雑になるため、運行系統としての「横須賀線・総武線(快速)」について解説する。

こちらも事情は複雑であり、列車とする意見と電車とする意見が存在する。ただし、旅客向けには電車と案内されるため、JR側は電車と解釈しているようだ。

  • 列車とする意見
    • 「横須賀線」内での種別が他路線の電車に用いられる「各駅停車」ではなく、他路線の列車に用いられる「普通」である
    • 歴史的には横須賀は海軍の要所であったため、比較的近距離でも特別に列車となっていた
  • 電車とする意見
    • 駅の放送や電光掲示板での案内
    • 総武線における快速列車のルーツが、101系で運転されていた電車快速(中野~御茶ノ水間は緩行線を走行し各駅停車として運転)である

首都圏の主要路線のまとめ

  • 電車:山手線、京浜東北線・根岸線、横浜線、相模線、南武線、鶴見線、埼京線、京葉線、武蔵野線、中央線(快速)、青梅線、五日市線、中央・総武線(各駅停車)
  • 列車:東海道線、宇都宮線、高崎線、湘南新宿ライン、その他多数の路線
  • 常磐線:電車(緑帯)と列車(青帯)
  • 上野東京ライン:電車(緑帯の常磐線のみ)と列車(それ以外すべて)
  • 横須賀線・総武線(快速):列車電車

東海道本線・山陽本線(JR西日本)

草津〜西明石間において、電車線と列車線による複々線が形成されている。

普通・快速が電車、新快速、特急、貨物が列車と解釈される。原則列車線には特急・貨物・新快速が走っており、電車線には普通電車と快速電車が走っている。

ただし、新快速であっても電車線を走ったり、快速であっても列車線を走ったりする(いわゆる外側快速)ため厄介である。

とはいえ、新快速は敦賀駅から播州赤穂駅までと運転区間が非常に長く、快速・普通は短いことからも、新快速は列車と解釈しても何の問題もない。

ただし、新快速は元々「関西急電」が起源であり、元々は電車線を走る料金不要の「急行電車」であった。これは、国鉄においての急行料金が必要な列車線を走る急行列車とは別物であった(ただし、私鉄との対抗のため、設備は列車に準じていた)が、紛らわしいため「快速電車」と名前を変えることになる。

国鉄最末期までは新快速は電車であった。これは列車線を管轄しているのが国鉄本社であり、電車線を管轄しているのが大阪鉄道管理局であったからで、いわば本社に足を引っ張られていたのだ(ちなみに、ダイヤの編成でも本社の特急列車と大阪鉄道管理局が作成する新快速電車とは独立して作成されたため、大阪駅に同時に発車して特急列車を新快速電車が追い抜いてしまうことが度々あった)。

国鉄分割民営化直前に、ようやく大阪鉄道管理局に列車線の大半(草津~京都間と新大阪~大阪間を除く区間)が開放され、新快速は事実上の列車へと栄転を遂げた(但し、国鉄→JR西日本内での取り扱いは「電車」のままである)。

車両としての違い

近距離通勤客や買い物客の多い電車では4ドアのロングシートの通勤形電車が多い。一方、列車には長距離を利用する客も多いため、トイレを装備し、クロスシートと混在した近郊型車両の電車を採用する事が多い。

実際に、同じE231系電車やE233系電車でも、電車列車で内装が違うのはそのためである。

関連動画

列車電車で案内が区別されている。

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関連項目

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  • 電車
  • 列車
  • 複々線
  • 普通列車
  • 各駅停車
  • 快速
  • 新快速

脚注

  1. *Dieselの頭文字。また、列車番号の末尾にも「1234D」などと用いられている。電車は「1234M」など「M」が使用されるため、列車番号を見ると車両の種類が区別できる。
  2. *JR横浜駅の横須賀線ホームに潜む3つの謎に迫る! - はまれぽ。「謎3:「電車」と「列車」、なぜ統一しない!? に迫る!」で本件が取り上げられている。

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