2020年アメリカ合衆国大統領選挙不正投票疑惑 単語

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2020年アメリカ合衆国大統領選挙不正投票疑惑とは、2020年のアメリカ合衆国大統領選挙・副大統領選挙において、共和党候補者であるドナルド・トランプに反対する勢力(特に民主党支持層)が不正な操作や妨害工作を行ったとする主張である。

なおこの記事は、最初に「疑惑」とされる主張を挙げたのちに、それに対する反論(すなわち、「疑惑」とされたものがいわゆるフェイクニュースだと判明したという情報など)を後述する、という構成になっている。そのため「疑惑」の部分では、既に誤りだと判明した内容もそのまま掲載されていることに注意されたい。

不正投票疑惑

2020年11月3日から行われた大統領選や副大統領選にて、反トランプや民主党支持層による妨害工作と思わしき動きがあったと報告するツイートが現地で多数発信されていた。例として、アリゾナ州にて集計機が読み取れない油性ペンを共和党員に配布する人物がいた(ソース ※facebook公式はこの投稿に「虚偽の情報 独立した第三者ファクトチェッカーがチェック済み」との注釈を付している)、ミシガン州デトロイトで197歳の有権者が投票していた(ソース)、フロリダ州でも30万枚の投票用紙が行方不明となる問題が起きていた、など。ジョージア州アトランタでは、米国での郵便投票をサポートしていない中国の郵便会社、SF Expressから投票用紙が届いているのが見つかっている(ソース)。

注目を集めたのはウィスコンシン州にて、開票率94%→95%の時にバイデンのみに12万票入った件(ソース)。ミシガン州でも同様な事が起きていた(ソース)との報告もされている。これら2州でバイデン票のグラフが垂直に上昇する様が、『イナズマイレブン人気投票騒動』や『コイルショック』といった隠す気のない工作を連想させるとしてツイッター上で話題を呼んだ。また、この際ウィスコンシン州については開票率が1%上昇したのに対して登録有権者数の2%にあたる12万票をバイデン側が獲得したため、「投票率200%」という目を引くワードとともにまたたく間に拡散した。ミシガン州では集計ソフトによって6千のトランプ票がバイデン票にカウントされていたことも発覚している(ソース ※Twitter公式はこの投稿に注意喚起サインを付している)。ペンシルベニア州では投票者名簿に21,000人の死者の名前が載ったままだとして、公益法律事務所から提訴されている(ソース)。

追い討ちをかけたのがバイデン氏本人の「我々はかつてない最大規模の不正投票組織を設立した」発言(youtube)。当時は何かの言い間違いでは?という意見が多かったが、今回の件でクローズアップされる事となった。

トランプ氏は「投票期限が切れてる投票の開票を中止しろ」と発言しており、さらにはウィスコンシン州やアリゾナ州の件と思わしき発言をしている(トランプ氏のツイッター ※Twitter公式はこの投稿に注意喚起サインを付している)。またミシガン州の郵便局員は、締め切り後の郵便投票の日付を変更しろと指示された、と告発している(ソース)。

一部では本物の投票用紙には秘密裏にQFS(量子金融システム)やGPS、あるいは特殊インクを使用した透かしが入っていると報じられており(ソース ※Twitter公式はこの投稿に注意喚起サインを付している)、それをもとにして不法に投棄された投票用紙が見つかるようになっている(ソース)。

またジョージア州フルトン群の投票では直近の住居移動者が13万人もおり、これらの票が不適格として無効になった場合、トランプ氏が勝利する可能性が高いと目されている(ソース)。

11月8日現在、トランプ陣営は複数の州で不正投票に関する訴訟活動を展開している。

ファクトチェック

以上が「不正投票疑惑」であったが、それらの根拠/ソースとされた話の「ファクトチェック」(事実確認)がなされたところ、実際にはデマや誤りが多数であったことが判明している。

デマや誤りと判明したもの


●ウィスコンシン州にてバイデン票のみ12万票も入った

 → バイデン氏が強いと目されるミルウォーキー市の不在者投票分が追加されたタイミングだった

 → 同じタイミングでトランプ氏にも3万票ほど追加されている

 参考リンク:バイデン氏ウィスコンシン州の開票で不正があった!という主張はデマ【グラフ・投票率】


●ミシガン州でも十数万票のバイデン票のみが加算された

 → 単純な入力エラーであり、現在は訂正されている

 参考リンク:【米大統領選2020】 投票について拡散されたうわさを検証


●集計ソフトによってトランプ票からバイデン票にカウントされていた

 → 誤っていたのは速報値であり、集計は適正に行われている(両陣営が確認している)

 参考リンク:ミシガン州国務省公式見解(英語)


●大量のトランプ票が山に埋められていた

 → 「山に埋められた」とされた動画で埋められていたのは、サウジアラビアの冷凍チキン

 参考リンク:「大量のトランプ票を埋めた」動画は誤り 実際はサウジの冷凍チキンか


●集計機で読み取れない油性ペン

 → 当該の油性ペンを使用して無効票にならず集計されているケースがある(アリゾナ州)

 → 集計機が読み取らなかった場合でも数える方法はあり、集計されている

 参考リンク:【米大統領選2020】 投票について拡散されたうわさを検証


●197歳の人間が投票したことになっている

 → 拡散している画像は2019年12月のニュース映像からとられたもの

 → 仮に偽造して投票したとしても、選挙管理委員会で破棄される可能性が高い

 参考リンク:【米大統領選2020】 投票について拡散されたうわさを検証

 参考リンク:「バイデン氏に1823年生まれの197歳が投票」は誤り。大統領選の「不正疑惑」として拡散したが…


●中国の郵便公社、SF Expressから投票用紙が届いている

 → 在外投票(アメリカ国外からの郵便投票)の場合、アメリカ合衆国郵便公社以外を使用してもよいことになっており、SF Expressの投票用紙は在中アメリカ人からのものと思われる

 参考リンク:中国から投票用紙が送られてくるのはなぜなのか、神の子どもたちはいつまでも踊る


●投票率が100%を超えている

 → 100%を超えたと主張しているサイトが参照している人口データがそもそも間違っている

 → 事前の有権者登録数に対しての投票数は60~90%ほど

 → 投票日にも有権者登録を行うことができ、その場合母数はより大きくなる

 参考リンク:Fact Check: States Did NOT Have More Votes Than Registered Voters


●21,000人もの死者が有権者名簿に載っている

 → 裁判所は有権者名簿の管理に落ち度はなかったと判断を下している

 → CNNの調査では死者が投票した事実は確認されなかった

 参考リンク:死者が投票? 米大統領選の有権者名簿に2万1000人の死亡者の名前があると民間団体が提訴(米)

 参考リンク:米選挙で死者が投票したとの情報拡散、実際に調査した結果


●バイデン氏が「我々はかつてないほどの不正投票組織を設立した」と発言

 → 恣意的に映像の一部が切り出されており、前後の文脈が無視されている

 → 発言自体はバイデン氏のもので間違いないが、「有権者が自分の票が脅かされていると感じた時に相談できる団体を組織した」という意図で発言されている

 参考リンク:バイデン氏が「最大規模の不正投票組織を用意した」? 拡散した動画は切り取り、ミスリードに注意


●本物の投票用紙には秘密裏にQFS(量子金融システム)やGPS、あるいは特殊インクを使用した透かしが入っており、追跡できる

 → 投票用紙は地域ごとに作成され、連邦政府は用紙作成に関与していない

 → トランプ氏自身、QFSや独自の透かしを導入したとは発言していない(トランプ氏のツイッター)

 → そもそも州によっては透かしが入っていることは公然の事実

 参考リンク:大統領選の投票用紙は追跡できるのか、世界の終りとインテリジェンス・インボーランド


●ジョージア州で直近の移住者13万人の票が不適格として無効になる

 → フルトン郡は虚偽あるいは根拠のない主張と回答している

 参考リンク:Fact Check: 132,000 'Likely Ineligible' Ballots Have NOT Been Identified in Fulton County, Georgia

事実であると判明したもの

ただし、わずかながら事実であると判明した不正もある。

 

●ペンシルベニア州で死者が投票したことになっていた

 → 既に死亡した母の名前で有権者登録をして不在者投票用紙を申請し、母の名前でトランプ氏に投票した男性がいたことが確認されている。

 参考リンク:Did a Dead Person End Up Voting in Pennsylvania?

ドミニオン社に関する疑惑について

ドミニオン社(dominion voting systems)は、今回の大統領選で全米のうち33州で投票機を提供している。この投票機に関しては様々な疑惑が持ち上がっている。

報じられている疑惑

発端は共和党下院議員のルイ・ゴーマート氏が、『米軍がドイツに保管しているドミニオン社のサーバーを押収した』と発言したこと(正確には米軍はドイツ政府の許可を得て、選挙データを保管していたフランクフルトのScytl社を捜査し、そこに置かれていたドミニオン社のサーバーを押収した)。(ソース)


上述の通りドミニオン社の投票機は今大統領選において広く使用されたが、トランプ陣営は不正な操作により全米で270万票ものトランプ票が削除された(ソース)と主張している。ドミニオン社の集計機に搭載されている集計ソフトは親会社であるスマートティック社のものを使用しているが、そのスマートティック社は過去にベネズエラの選挙結果を改ざんしている。実際にテキサス州では集計ソフトに問題があるとして、ドミニオン社の集計機は使用されていない。

参考リンク:民主党はドミニオン社の集計ソフトで選挙を盗んだ!?

ドミニオン社は過激な左派が所有しており、民主党への献金があったことや2014年にクリントン財団に献金している(ソース)こと、ペロシ氏(現下院議長で民主党)の元側近を上級幹部として雇っていることが確認されている。


現在(2020年11月21日)サーバーの解析が進められており、票の付け替えやトランプ票の削除を誰がどのタイミングで指示したかなど、バイデン陣営が行った不正の詳細が明るみになると期待されている。

ファクトチェック

以上がトランプ陣営の主張であるが、ファクトチェックが進められたところ、いくつかの事実誤認が含まれていることが判明している。

・scytl社は現在ドイツにサーバーやオフィスを所有していない Sytle社ホームページ

 (フランクフルトで欧州議会に関するプロジェクトのためにサーバーを保有していたことはあったが、2019年9月に閉鎖されている)


・ドミニオン社とスマートティック社は競合会社であり、資本関係にあったことは過去一度もない

 ドミニオン社ホームページ


・テキサス州ではドミニオン社の集計ソフトが使用されていないが、「投票に個別番号をつけて追跡可能にする」というテキサス州の規定を満たすことができないためであって、安全性や信頼性に問題があったわけではない

 参考リンク:【米大統領選2020】 投票機のせいで票が減った? トランプ氏の主張を検証


270万票ものトランプ票が削除された件については、トランプ氏はワン・アメリカン・ニュース・ネットワーク社が出した記事を引用している。当該記事の情報源としてエディソン・リサーチ社の未監査分析が挙げられているが、エディソン・リサーチ社のロジン社長は「我が社はそのような報告書は作成しておらず、有権者による不正行為の証拠は一切持っていない」と発言している。

また献金についてではあるが、ドミニオン社は過去に民主党だけではなく共和党へも献金を行っているし、マコネル上院議員(共和党幹部)が総括する上級委員会にも献金を行ったことがある(アメリカの商習慣としてはよくあることで、自社のシステムを導入してもらうために献金している)。

ペロシ氏の側近を雇っている件についても、共和党関係者も雇っていることから、民主党との癒着の証拠と断定する根拠としては薄い。

参考リンク:【米大統領選2020】 投票機のせいで票が減った? トランプ氏の主張を検証

ドミニオン社およびScytl社のホームページ上では、政治的に中立でありどちらの党派にも所属していないと表明している。

CISAの見解

CISA(サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁)のクレブス長官は11月5日に、「外国の敵対者が米国人の投票を妨害したり、何百万人もの米国人が投票した後に開票結果を変更したりすることができたという証拠はない」と声明を発表した(ソース)。またCISAは同12日に「11月3日の選挙は米国史上最も安全な選挙であった」と声明を出し、不正行為の存在を否定した(ソース)

CISAはトランプ政権時代の2018年11月に国土安全保障省(DHS)の傘下として組織されており、クレブス長官はトランプ氏によって指名されている。

11月17日、クレブス長官は大統領選での不正疑惑を否定したことを念頭に、「非常に不正確だ」としてトランプ氏によって罷免されている(ソース)。

関連リンク

関連項目

  • ジョー・バイデン
  • 民主党(アメリカ)
  • ドナルド・トランプ
  • 共和党(アメリカ)
  • アメリカ合衆国大統領選挙
  • アメリカ合衆国議会議事堂占拠事件
  • フェイクニュース
  • ファクトチェック
  • 陰謀論
  • Qアノン

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