DCエクステンデッド・ユニバース(DC Extended Universe,DCEU)とは、DCコミックスとワーナー・ブラザーズによる、世界観を共有する一連の映画作品シリーズである。
概要
DCヒーロー同士のクロスオーバー構想は2002年頃のワーナーによるバットマンVSスーパーマン映画の企画や、2007年頃の「マッドマックス」のジョージ・ミラー監督による「Justice League:Mortal」などの制作が進行していたが、同年の全米脚本家組合ストライキの影響や独立性が強くクロスオーバーなど望めそうもない作風の「ダークナイト」シリーズの成功等の理由により中止となった。
しかしダークナイト・トリロジーの完結やマーベル・スタジオの「アベンジャーズ」(マーベル・シネマティック・ユニバース)の成功を受けて、ワーナーは再びスーパーマンのリブート作品である「マン・オブ・スティール」に始まり、「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」より本格的に始動する『DCエクステンデッド・ユニバース』の構想を打ち出した。
結果から言えば、単独作で見れば成功と言える作品はあるものの、2022年時点ではユニバースものとしては成功しているとは言い難い状態である。監督交代や路線変更、主役の役者交代などが相次いでいるほか、最初の集大成ともいえる第5作「ジャスティス・リーグ」が良い興行成績・作品評価を残せなかったのが厳しい。
2022年の出来事
2022年はDCエクステンデッド・ユニバースにとって激動の一年となった。大きな出来事を時系列順に列記する。
- 3月以降、それまでも奇行で周辺を騒がせていたフラッシュ役のエズラ・ミラーの行動がより過激化し、ついには逮捕や起訴に至るまでになってしまった。8月にはワーナーの上層部に謝罪し、自分のメンタルヘルスに問題があることを告白。治療を受けることになった。
- 4月、DCエクステンデッド・ユニバースを制作・配給しているワーナー・ブラザーズが「ディスカバリー・チャンネル」と統合・再編され、「ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリー」が誕生。この新会社の誕生により、DCEUの方針も大きく変更された。
- 7月、バットマン役から降りていたベン・アフレックが『アクアマン・アンド・ザ・ロスト・キングダム』で復帰する事が判明。
- 8月、HBOで配信予定で、完成間近だった『バットガール』のお蔵入りが発表。
- 10月、『ブラックアダム』が公開され、スーパーマン役を降板していたヘンリー・カヴィルがスーパーマン役にカムバック。『マン・オブ・スティール』の続編も匂わせた。
- 10月後半、DCEUの今後10年を任せる人材としてジェームズ・ガンとピーター・サフランが抜擢。今後映画、コミック、アニメを制作する新会社DCスタジオの共同CEOに就任。「DCユニバース」という新しい名称がつかわれ始める。
- 12月、『ワンダーウーマン』第3作の中止が報じられ、その後に前2作の監督のパティ・ジェンキンスも自分が監督から降りたことを認めると同時に、加熱する報道にくぎを刺した。
- ジェームズ・ガンは12月15日にDCユニバースの今後の計画が固まったことを報告し、まずはスーパーマンの若かりし頃を描くと宣言した。つまり、『マン・オブ・スティール』の続編は立ち消えとなった。
- ガンが言及したスーパーマンの作品では、ヘンリー・カヴィルがスーパーマンを演じることはなく、カヴィル自身も自分がスーパーマン役から降りたことをインスタグラムで発表した。復帰宣言から2か月もたっていないうちの降板宣言となってしまった。
まとめ
ワーナーの会社統合と、それに続くジェームズ・ガンのトップ就任により、ユニバースは大きく再編されることが決まった。
2023年に予定されている映画3作品までは既定路線のままであるが、それ以降の2024年からはジェームズ・ガンの計画が見えてくるだろう。
ジェームズ・ガンの計画するユニバースにザック・スナイダーが関わった作品の影響がどこまで残るかも不明であり、これはスナイダーバースの終焉だ、と言う意見もある。
公開作品一覧
- マン・オブ・スティール(2013年) - 監督:ザック・スナイダー
- 記念すべきDCEU一作目。映画後半のメトロポリスの戦いは設定上「ブラックゼロ事件」(Black Zero Event)[1]と呼ばれ、後のBvSに大きな影響を及ぼす。映像ではレックスコープのビルやウェイン・エンタープライズの衛星などが確認できる。
- バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生(2016年) - 監督:ザック・スナイダー
- ワンダーウーマンが映画初登場を果たすほか、ザ・フラッシュ(セリフあり)、アクアマン、サイボーグ、パラデーモン、そしてアルティメット・エディションのみステッペンウルフが顔見せする。
- スーサイド・スクワッド(2016年) - 監督:デヴィッド・エアー
- デッドショット、ジョーカーやハーレイ・クインなど、主にバットマン関連のヴィランが主役を担う作品。フラッシュとバットマン/ブルース・ウェインがカメオ出演。
- ワンダーウーマン(2017年) - 監督:パティ・ジェンキンス
- 現在よりもはるか以前、第一次世界大戦におけるワンダーウーマンのオリジン(誕生秘話)が描かれる。
- ジャスティス・リーグ(2017年) - 監督:ザック・スナイダー→ジョス・ウェドン
- バットマンを主軸に、強大なヴィランに対抗するためのヒーローチーム結成を描く。
- アクアマン(2019年) - 監督:ジェームズ・ワン
- ジャスティス・リーグで登場したアクアマンのオリジンを描く。
- シャザム!(2019年) - 監督:デヴィッド・F・ザンバーグ
- 偶然スーパーパワーを手に入れ、変身できるようになったシャザムのオリジンを描く。
- ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey(2020年) - 監督:キャシー・ヤン
- スーサイド・スクワッド以後、ジョーカーと破局したハーレイ・クインのその後のエピソード。
- ワンダーウーマン1984(2021年) - 監督:パティ・ジェンキンス
- 1984年を舞台になんでも願いを叶える石像をめぐる世界の危機に立ち向かう。
- ジャスティス・リーグ スナイダーカット(2021年) - 監督:ザック・スナイダー
- 2017年公開の「ジャスティス・リーグ」をスナイダーの脚本に忠実に再編集した作品。ファンの要望に応える形で制作され、追加撮影などもされている。
- ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結(2021年) - 監督:ジェームズ・ガン
- 新生”スーサイド・スクワッド”。ハーレイ・クインをはじめとするヴィラン達が、減刑を懸けて命令違反や失敗=死の難関ミッションに挑む。
- ブラック・アダム(米公開2022年10月 日本公開12月) - 監督:ジャウム・コレット=セラ
- 5000年の眠りから覚めたアンチヒーロー、ブラックアダム。彼を危険視したヒーローチームJSA(ジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカ)が彼の前に立ちふさがる。
制作中および企画段階
公開予定日判明済
- シャザム!フューリー・オブ・ザ・ゴッズ(2023年3月)
- ザ・フラッシュ(2023年6月)
- アクアマン・アンド・ザ・ロスト・キングダム(2023年12月)
公開日未定
- グリーン・ランタン・コア
- ゴッサム・シティ・サイレンズ - 監督:デヴィッド・エアー
- サイボーグ
- ジャスティス・リーグ・ダーク
- ジャスティス・リーグ続編(タイトル未定)
- スーパーマン続編(タイトル未定)
- ナイトウィング(タイトル未定)
ドラマ作品
DCコミックス関連は多数のドラマ作品も存在しているが、ここではDCEUに属するとされた作品のみ記述する。
- ピースメイカー
- 『ザ・スーサイド・スクワッド』のキャラクター「ピースメイカー」を主役としたスピンオフドラマ。日本ではU-NEXT独占配信作品。制作には映画から引き続きジェームズ・ガンが関わっている。
DCEUから外れた作品
- ザ・バットマン- 監督:ベン・アフレック→マット・リーヴス(2022年)
若き頃のブルース・ウェイン=バットマンや、ヴィラン達のオリジンを描く。
当初はベン・アフレックが監督・脚本・主演を務め、DCEUに属する作品とされていたが、様々な事情により企画が練り直され、DCEUに属さない単独作品になった。
- バットガール- 監督:ジョス・ウェドン→アディル・エル・アルビとビラル・ファラー
『バットマン』シリーズのキャラクターバットガールを主人公とした作品。当初はジョス・ウェドンが監督脚本を務める予定だったが、2018年2月に降板。その後はアディル・エル・アルビとビラル・ファラーに引き継がれた。
2022年にHBOで配信予定だったが、2022年4月には劇場公開に変更されるのではないか、と言うニュースも流れた。しかし、2022年8月にお蔵入りが発表された。制作費9000万ドルを投じており、すでに撮影も終了していたと言われているが、制作会社のワーナーの方針変更により本作は完成目前にして公開されない事が決定された。
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関連項目
- 映画
- アメリカン・コミックス
- DCコミックス
- マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)
- シェアードワールド
脚注
- *戦いで使用されたクリプトン星人の巨大宇宙船の名前がブラックゼロ。