MLRSとは、多連装ロケットシステム(Multiple launch rocket system)の略。アメリカが開発した砲兵ロケットランチャーの一種である。
冷戦期、東側の優勢な機械化戦力を制圧するために開発された長射程砲兵ロケット・システムの一種。アメリカ以外ではドイツなどのNATO諸国、日本や韓国などでも運用されている。
M2ブラッドレーIFVの車体をベースにした発射機M270は六連装一組の227ミリロケット・コンテナ二基またはATACMS地対地ミサイル二基を搭載する。ベースを六輪トラックにし、搭載ロケットを半分に減らして軽量化したHIMARSと呼ばれる発射機も運用されている。
ロケットは通常の砲兵に比べて精度に劣るため、多連装化して広い地域を制圧するための兵器として発展してきたが(WW2における”カチューシャ”や”ネーベルヴェルファー”等が著名である)、MLRSはその極致とも言える兵器である。クラスター弾頭を搭載した227ミリロケットは目標上空で数百発の子弾をばら撒き、100×200メートルほどの範囲の非装甲目標を一度に制圧する。
このようなMLRSの一斉射撃による制圧は湾岸戦争において実際に行われ、イラク側は「鋼鉄の雨(スチール・レイン)」と呼んで大変恐れた。
しかし21世紀に入る頃には、クラスター弾頭の不発弾による付随被害が国際的に問題視されるようになり、オスロ・プロセスなどの枠組みで規制されるようになった。日本でもクラスター弾を全廃することを決定しており、自衛隊のMLRSが使用する旧型ロケット弾頭は廃棄することが決定されている。
開発国のアメリカはオスロ・プロセスによる規制には参加していないが、クラスター弾の不発率をなかなか低減出来ないことに加えてクラスター弾が遮蔽物の多い市街地などでは威力を発揮できないこと、大規模な野戦の機会が減ったことなどを受けて、MLRSで運用するロケット弾をクラスター弾頭から単弾頭に移行する方向を見せている。
新型の単弾頭タイプではGPSによる誘導や射程延長などの改良が加えられ、イラクやアフガンなどで実戦投入されている。誘導装置つきの新型弾頭はGMLRS(Guided MLRS)とも呼ばれ、自衛隊が旧型に代えて採用すると見られているのもこのタイプである。「誘導ロケット」ってあんたら今までそれ「ミサイル」って呼んどったんじゃないんかい、と突っ込みたくもなるが結局は言ったもん勝ちである。
射程は通常弾で30~40km、ATACMSは160km。GMLRS(M31弾)で70km前後とされている。
↓市街地におけるGMLRSによる支援砲撃の例。戦車砲や機関砲では届かない角度にいるスナイパーを、GPS誘導による支援砲撃で建物ごと排除している。
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最終更新:2024/04/25(木) 09:00
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