SARS-CoV-2/COVID-19関連のデマ・陰謀論の一覧 単語

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よって、この記事に書いてある内容を鵜呑みにしてはいけません

特に、根拠を外部リンクで示していない記述は信頼しないでください
根拠が外部リンクで示してあっても、それが学術的なサイトでないならば疑ってください

あえて「デマ/陰謀論」と言う強い言葉を用いていますが、正確には「確たる根拠が示されていない情報」であることにも注意してください。「根拠は示せていなかったが実は正しい情報だった」という可能性も(ちょっぴりは)残されています。

この記事について

この記事では、2020年現在は「新型コロナウイルス」と呼ばれることが多いウイルス「SARS-CoV-2」、およびそのウイルスによって引き起こされる疾患「COVID-19」に関するデマや陰謀論を紹介し、それらの根拠が曖昧である事を示す。

なお、この記事における「デマ」や「陰謀論」とは「根拠が曖昧であるもの」「確かな根拠が示されていないもの」を指す。この場合「どの程度の根拠をもって確かだと判断するのか」についてが問題となるが、ひとまず「匿名の人物や不明な情報源からの伝聞」を根源としたものは疑わしいとする。

そのため、この記事には「本当は正しい情報であるのに、誤ってデマ/陰謀論だと見なしている可能性」は付いてまわる。実際、匿名の人物がSNSで流した情報が正しかったという実例はわずかながらある(「ある企業のある事業所で感染者が出たそうだ」という情報。翌日にはその企業が公式発表した)。可能な限りそのような事態が生じそうな情報は避けるが、確たる根拠が新たに登場した情報については訂正を願う。

「なんで確たる根拠が無ければデマ/陰謀論扱いなんだよ。確たる根拠が無くても、疑う理由があるのならデマ/陰謀論ではないだろ……」という考え方の人からすると受け入れがたい記事になっているかもしれない。そういった方はここから下には目を通さず、信じたいことを信じて生きていくことをお勧めする。

ちなみに、このウイルスについてのデマ・陰謀論は本当にウンザリするほど多いので、すべてを網羅することは最初から諦めている。例えば有名なAFP通信のファクトチェックウェブサイト「AFP Fact Check」で「coronavirus」で検索してみよう。やたら多いぞ。日本のファクトチェックウェブサイト「ファクトチェック・イニシアティブ」では「新型コロナウイルス特設サイト」を設けているほどだ。

「このウイルスは熱にとても弱いのでお湯を飲むと防げる」

SNS上やチェーンメールにおいて2020年2月下旬に広まった。

「○○から教えてもらった情報です!このウイルスは熱にとても弱く○℃の熱で死滅するそうです!そのため、感染しないためにはお湯を飲むのがいいらしいです!」といった内容で流布された。

「教えてくれた人」は「海外/国内の専門家/医療関係者」であったりバリエーションがある。「○℃」の部分もバリエーションがあったようだが、「26-27℃」または「36-37℃」であったりしたようだ。

人間の体内で増殖できるウイルスがそんな温度で死滅するのは常識的にありえないが、一応報道機関が複数の専門家に確認している。みなさん「ありえない」で一致している。

医学的には「専門家の意見」は意外とエビデンスとしてのレベルは低いのだが、これはそういう問題は通り越しているだろう。防ぎたいなら素直に厚生労働省や日本感染症学会のページで勧める予防法を守ろう。

ちなみに派生した話題として「26~27℃とか36~37℃って、それって「お湯」か?」という議論も生じたようだ。割とどうでもいいな!

「トイレットペーパーは中国からの輸入に頼っているので、今回のウイルスの流行のせいで不足する。急いで確保しなくてはならない」というデマ

2020年2月末ごろに流布されたデマ。

「どのような根拠からデマと言えるのか」という点も含めて、詳細は「トイレットペーパー騒動」の記事に詳しいのでそちらを参照されたい。

「○○駅でコロナウイルス患者の中国人が血を吐いて痙攣してぶっ倒れた」

2020年2月下旬に、TwitterなどのSNSで流布された。「○○駅」は様々だが、京都駅という投稿が特によく出回ったようだ。実は日本国外でも、血を吐いて倒れている人の画像に「コロナウイルス罹患者だ」という説明を付けてSNSで流す例は少なくないらしい。

割と初歩的な問題点として「血を吐いて痙攣してぶっ倒れた人がいたとしよう。その人がコロナウイルスの罹患者だとなぜわかったのだ?」という点がある。あなたはぶっ倒れた人を見たとして、瞬時にその人がぶっ倒れた原因ウイルスを把握できるだろうか?その点を説明せずに「コロナウイルスだ!」と断定する調子でSNSに流す投稿は、全てデマ(すなわち、根拠無し)と言ってよい。

なおCOVID-19で口から血を出す可能性は無くはないのだが、吐血ではなく喀血であろう。食道の方から血が出てくるのが吐血で、気道の方から咳と共に血が出てくるのが喀血。ちなみにCOVID-19の多彩な症状の中において、喀血はさほど頻度が高い症状ではないようだ[1]

「インドの科学者が「このウイルスの中にHIVのタンパク質が挿入されている」ことを発見した。よってこのウイルスは人工のものだ」というデマ/陰謀論

ニュースサイトなどでも取り上げられたので知名度が高いと思われるこのデマ。2020年2月初めに出回った。このデマは後に訂正されたのだが、訂正の方のニュースはさほど出回らなかったので、訂正前の情報だけ聞いたという人も少なくないと思われる。

まずややこしいことに、「インドの科学者が「このウイルスの中にHIVのタンパク質が挿入されている」と示唆する論文を発表した」と言うところまでは事実である。以下のリンク先で、2020年1月31日にウェブ上で公開された。

「じゃあデマじゃないじゃん」と思うかもしれない。しかし、この論文には瑕疵があり、発表したサイトのコメント欄は他の専門家たちからの多数の突っ込みで溢れた。その後、著者たちはこの論文を取り下げている(リンク先に本文が無いのはそのため。上部にある赤い小囲み「This article has been withdrawn.」は「この記事は取り下げられました」という意味である)。つまり、正確には「インドの科学者が「このウイルスの中にHIVのタンパク質が挿入されている」と示唆する論文を発表したが、誤りを指摘されて論文を取り下げた」というのが正確な情報になる。

「そんなことあるゥー?」と思うかもしれないが、あるある。査読有りの学術雑誌に掲載された論文でも訂正が入ることはままある。

さらに、ここで注意したいのはこの論文が投稿されたサイトは「bioRxiv」(bioRχiv)と言うのだが、これはいわゆる「プレプリントサーバー」なのだ。科学論文は多くの場合、査読付きの学術雑誌に送られて、査読担当の専門家が内容をチェックして、問題が無ければ学術雑誌に掲載される、という段階を踏む。しかしその査読に時間がかかるので、スピーディーに発表するために「これ、私たちが書いた論文なんだけど見てくれや」とウェブに掲載するのが「プレプリントサーバー」である。まともな論文も少なくないのだが、査読というチェック機能が働かない分、今回のように重大な瑕疵がある論文が掲載されていることもある。

日本の国立国会図書館の「カレントアウェアネス・ポータル」も、プレプリントの信頼性に絡めてこの件を報じた記事を掲載しているので参照されたい。

ちなみに「瑕疵って、どういう瑕疵だったんや?」と思うじゃん?素早くこの論文の瑕疵を主題として論文を仕上げ、査読付きの学術雑誌に送って査読を通過させて掲載させた研究者がいるので、その論文を読めばどんな瑕疵だったのか丸わかり。これは「晒し上げ」みたいなもんで、やられたインド人研究者は結構ぐぬぬだ。まあ結果的に世界的にデマが流れる原因になっちまったんだから手厳しい仕打ちをうけても仕方ないかもしれないが。しかもその内容が「こうして、誰でもアクセスできるデータベースで検索してチェックすれば、ほらこんな風に初歩的な瑕疵がわかりますね」というとても易しい方法だったので、余計恥ずかしいぞ!

その「晒し上げ」的な論文はタダ(オープンアクセスという)で全文が読めるので、興味があるなら以下のリンクからどうぞ。

このデマの関連動画

「このウイルスは日本の731部隊由来だ」というデマ/陰謀論

「731部隊」「コロナウイルス」でSNS上で検索すると割と流布されている。

しかし、戦後に米軍が731部隊関係者を尋問して得た情報をまとめた機密文書「ヒル・レポート」には731部隊で研究されていた複数の疾患が掲載されており、その中にはインフルエンザや天然痘などウイルスが原因である疾患も混じってはいるが、コロナウイルスは含まれていない[2]

それもそのはずで、731部隊が活動したのは1930~40年代だが人に感染するコロナウイルスが発見されたのは1960年代であり[3]、つまり731部隊の時代にはコロナウイルスは発見すらされていない。

どうもこのデマ/陰謀論を日本語圏で信じて流しているのは、安倍晋三総理大臣に批判的な人が多いようで、「731部隊には岸信介が深く関わっていた」というデマ(「731部隊」の記事の「731部隊に関するデマ」の節を参照)を組み合わせて信じているらしい人も多い。これは安倍晋三総理大臣の祖父が岸信介であるためかと思われる。

「「このウイルスは日本の731部隊由来だ」というデマを中国の軍人が言っている」というデマ

上の派生版で、「デマを流している人物に関するデマ」というなんだか複雑なデマ。

軍服らしき服装の男性が、中国語と日本語で「台湾と、日本の731部隊が、中国に新型コロナウイルスを放流したのだ」と糾弾調に話している動画が中国・台湾・日本のSNSで出回ったのだが、日本語圏のTwitterでは「中国の軍人」と説明する投稿が特に多くのリツイートを集めた。

上記のように「731部隊由来だ」などというこの男性が話している内容は確かにデマである。それはそれとして、この人物の動画は軍人としては何だか妙であることに気付くだろうか。軍服?にバッジを付けているが、そのバッジに「新四軍」と書いてある。「新四軍」とは1930年代~1940年代に存在した軍事組織である。現在の中国の軍隊に「新四軍」という組織が絶対に無いとは言えないものの、本物の軍人ではなく「軍服コスプレ」をしているだけの変な人なのではないかという疑惑が生じる。

よく見るとこの動画の下方には「@刘恕恩」という文字が薄く映っている。この「刘恕恩」という氏名から探ってみると、どうやらこの人物は「刘恕恩」(別名義「刘强」)と言う人物で、2011年に靖国神社に放火し、2012年に韓国の日本大使館に火炎瓶を投げ込んだ犯人であるらしい。

中国におけるWikipedia的なサイト「百度百科」には「刘恕恩」の記事が写真付きで存在しており、動画の男性と同一人物に見える。記事本文によれば、スピリチュアルセラピストのような職業を自称しているようだ。他にも、上記の放火事件なども含めてこの人物について解説した中国語のサイトもあるのだが、ストレートに「奇人」と表現されている。そしてこの2つのサイトのどちらにおいても、軍人であるという情報は記載されていない。

よって現在入手できる情報からは、この人物は「軍人」というわけではなく民間の奇人であるようだ。調べるのに時間がかかった割にウイルスとあまり関係ない話だったが、かかった手間がもったいないので一応この記事に載せておく。

関連リンク

関連項目

  • SARS-CoV-2
  • パスタの棚が完全に空になっているよ
  • トイレットペーパー騒動
  • 買占め
  • デマ
  • 陰謀論
  • フェイクニュース
  • ネットde真実
  • インフォデミック

脚注

  1. *Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in Wuhan, China - The Lancet
  2. *松村高夫, 金平茂紀 『ヒル・レポート』(上) : 731部隊の人体実験に関するアメリカ側調査報告(1947年) 三田学会雑誌 (Keio journal of economics). vol84, no.2 (1991.7), p.508(206)-526(304). 慶應義塾経済学会
  3. *Viruses | Free Full-Text | Human Coronaviruses: Insights into Environmental Resistance and Its Influence on the Development of New Antiseptic Strategies
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