UAVとはUnmanned Aerial Vehicleの略称であり、無人で飛行する航空機(ここでは無人機とする)の総称である。
交戦能力を持つものはUCAV(Unmanned Combat Aerial Vehicle)と呼ばれる。
無人機の開発は冷戦時代初期にまでさかのぼる。アメリカでミサイル発射訓練や空戦技術習得のためのターゲット・ドローンとして標的機が開発されたのが最初で、当初は有人機・あるいは洋上の艦艇からの無線誘導などがスタートだった。概念的にはいわゆるラジコン飛行機と異ならないものであり、このような遠隔操縦の無人機は「RPV(remotely piloted vehicle)」と呼ばれていた。
アメリカ海軍でも第二次世界大戦時代に建造された艦船で運用する小型無人回転翼機としてQH-50 "DASH"が作られている。これは無線誘導の回転翼機で、遠距離での潜水艦攻撃用として開発されたが、あまりに損失率が高く(それだけ取り扱いが難しく)途中で使われなくなってしまった。当時の技術力では制御方法などに色々難点があったのも事実である。
冷戦時代も中ごろを過ぎると、無線技術や自動制御技術(を運用するエレクトロニクス技術)の発達に伴い、無人機の技術的ハードルがクリアになりつつあった。国情から人的資源が限られるイスラエルなどで危険性の高い敵勢地域においての偵察任務に無人機を使うプランが持ち上がり、これがアメリカ側でも知られると開発がスピードアップしていくことなった。こうした、GPS誘導や事前のプログラムなどによるある程度の自律航行能力を持つ機体について、従来のRPV(遠隔操縦機)に留まらないより広い概念を指すものとして用いられるようになったのがUAV(無人航空機)の語である。
UAV のネックは大きくわけて二つあり一つは操縦方法と、二つめは回収方法である。
操縦方法については標的目的であればある程度の自立航法に問題はないが、偵察などの任務で使用する無人機では現状の自律航行能力では不測の事態に対応する術がない。
見通し距離内であれば目視による無線誘導も可能だが、長距離の飛行を行う無人機では無理な話で、当然人工衛星を経由しての遠隔操縦などが取られているが必然的に設備や技術が必要となる(衛星通信設備や移動する無人機が正確に衛星などを指向するアンテナなど様々な技術がいる)。長距離・長時間の航行を念頭に置いた戦略偵察用UAVでは航行を基本的に事前のプログラムに依存するような方策も採られている。
回収方法については、使い捨てを念頭にある程度コストを抑えたタイプであれば特に問題はないが、長距離偵察目的のUAVなどは高価ため、可能な限り安全に回収したいと言う要求がある。有人飛行機でも着陸は航空機操縦においてもっとも困難な部分であり、各種の計器による支援や自動操縦機能が発達してきたとはいえ、無人機による自律着陸は依然としてハードルの高い問題である。パラシュートで海上に落下させる、ネットに引っ掛けるという回収方法もあるがこれらについてはどうしても機体破損の可能性がある。
とはいえ、人工衛星を介在しての無線(画像)通信と誘導技術が発達するとともにUAVの運用は軌道にのってきており、UAVからカメラにより捉えた画像を安全な地域にいる誘導員が操作することによって飛行ルートの変更、偵察位置の確認、着陸までを行えるようになるとその重要性は飛躍的に高まった。
人が乗らないため比較的小型で作れることもあって、発見されるリスクは少なくなる。なにより無人機であるため撃墜されたとしても人的損失はほとんどない。これは人的損失が軍事的だけではなく政治的にもかなりのダメージを及ぼす先進国軍隊において重要なポイントだった。
最初は戦域内部での簡単な偵察任務だったのが次第にアメリカ本国にいながらにして地球の反対側、アメリカ本土から中東などでの作戦活動すら可能になってきている。無人機のサイズが大型化するにつれ、積載能力も増えたことによりある程度の武装が可能になった。これが戦闘も可能なUAV、UCAVの誕生を促した。
もっともこの手のUAVの進歩について従来の航空機パイロット達の思惑は複雑であるともいう。高いハードルを突破してパイロットになり、高い資質があるという自負がある彼らにとってUAVを操作しているのが普通の(どこにでもいる)オペレーターが操作しているという現実はどうも釈然としないらしい。
また、UAVを扱うオペレーターたちにも問題があり、敵勢地域での飛行操作など長時間高いストレスがかかる作業があったとしても実際は安全地域にいるため、任務終了後、いきなり日常空間に戻るそのギャップに苦しむことがあるという。
また、イラク及びアフガニスタンに展開する陸上部隊の多くからUAVの派遣要請が多く届いているとのことで、現在UAV運用部隊の増加及び省力化が求められているという。UAV部隊の省力化目標としては自動着陸機能などにより人を極力解さないこと、あるいはターンアラウンド時間(任務終了から整備、再任務準備までの時間)の短縮などが求められているとかいないとか。
UAVとは「人間の乗っていない航空機全般」を指す幅広い概念であり、サイズ、任務、運用範囲、機体構造などによって大まかに分類されているが、その呼び名は運用国によってHandheld、Close、Tacticalなど様々である。詳しくはwikipediaなども併せて参考にしてほしい。
UCAV(Unmanned Combat Aerial Vehicle)は敵との交戦が可能な、あるいは交戦することを念頭に設計されたUAVである。訳語には様々あるが防衛省では「戦闘用無人機」と訳している。
現状ではプレデターなどの戦術クラスUAVにヘルファイアやスティンガーなど比較的小型のミサイルを搭載し、武装偵察任務に当てているレベルだが、アメリカでは攻撃任務を念頭に置いたUAVの研究も進んでいる。
人を乗せないUAVでは撃墜されても人的損害が出ない、パイロットの疲労や肉体的限界(耐G制限など)を考慮する必要がないと言う点に加えて、コクピットを設置する必要がないことからステルス性を高めることが可能になる点もメリットとしてあげられる。
しかし現在の自律操縦+遠隔操作では有人戦闘機パイロットがこなしているような瞬時の複雑な判断と視覚情報の収集は行えないと見なされているため、UCAV開発は事前に把握されている拠点に対する対地攻撃のような任務に投入することが念頭に置かれている。たとえば、ステルス性を生かした開戦劈頭の敵防空網制圧/破壊任務(SEAD/DEAD)など、高い損失率が予測される任務などである。
やや余談ではあるが、無人戦闘機はしばしばフィクションにおいても活躍しており、無人戦闘機(マシン)と人間の関係を軸にすえた作品としては戦闘妖精・雪風などがあげられる。
日本におけるUAVの歴史はアメリカとはまた異なるスタンスから発達した。
その一つの系譜は山間部の農地に対する農薬散布目的で開発された民生用ののラジコンヘリである。後にはGPSによるプログラム制御飛行などUAVとしての機能を備えるようになり、民生用でありながら軍事転用可能なものとして中国に対する不正輸出目的で問題にもなった(商談相手企業から中国人民解放軍が購入を希望している旨打診しがあったという)。
実際に、陸自もこのラジコンヘリに目をつけ、イラク派遣時にヤマハのR-MAXを導入している。
自衛隊・防衛省はじめ国としてののUAVの運用については、予算の都合もさることながら、日本的事情というかUAVの運用については航空法の問題やら運輸省などの横槍やら色々なハードルが高いのは実情でもある。BMD対策としてUAVの運用が検討されたことが時の担当大臣の発言から明らかになったがうやむやのうちになくなってしまった。
2010年10月には、中期防でRQ-4グローバルホークの導入が行われるという報道もあったが、実際には見送られている。まだ内部での検討事項という形なのかもしれない。
陸上自衛隊向けには前述した農薬散布用無人機から派生した回転翼タイプのUAVとしてFFOS(遠隔操縦観測システム)が正式導入されている。導入目的は砲兵(特科)観測目的で、長射程の火砲・ロケット弾を使用するための観測機材である。
とはいうものの正直言って、あまりの仰々しさでも有名で失敗作じゃないのかといわれてもいる。なにしろ全長4m弱のUAVに対して運用機材として大型トラックを中心に6台!もの支援車輌が必要なのである。アメリカほど高いデータリンク設備がない自衛隊としてはどうしても機材が多く必要になりがちな面もあるが、ちょっと大掛かりすぎるだろう。
ただ自衛隊だけではなく気象庁などにも火山観測用などに導入されている珍しいUAVでもある。流石に自衛隊もこれではまずいと思っているのか、新たなUAVの開発にとりかかっているともいう(後述)。
このほかにも運用を終了したF-104を無人機運用が出来るように改良、標的機として運用したケース(こちらはすべて"撃墜"されて運用が終了した)や、海上自衛隊が上述の遠隔操縦ヘリDASHを使用していたこともある。また現在でも訓練用のターゲットドローン(J/AQM-1)などが運用されている。
とはいえ自衛隊も昨今の状況を鑑みて、各種UAV開発について邁進している。
精力的に取り組んでいるのは陸上自衛隊で、TRDI(防衛省技術研究本部)で公開された歩兵運用型UAVがあげられるだろう。紙飛行機を思わせるほどの小さいUAVで、歩兵が投擲…つまり、人力で空中に投げて飛行を開始。事前に入力されたプログラミング・パターンと内蔵されたGPSを基に飛行を行い、搭載されたカメラで状況を撮影するというシロモノで、これをノートPCで受信するというものらしい。これは陸上自衛隊隊員には非常にウケがいいアイテムだともいう。
(丘や林など遮蔽物の向こう側を知りたい場合など、気軽・簡単に観測できるため)
最終的には5cmサイズまで小さくする予定とも言われる。
この他にも各種UAVの開発は進められているとみられ、2010年11月、防衛省技術研究所(TRDI)が主催した防衛技術シンポジウムにおいて研究成果として球体飛行型のデモが行われたほか、北海道でも現在開発中のファンローター?型の無翼タイプUAVのデモが行われているほか、現在、デジタルネットワークの部隊導入訓練中である第二師団の報道では、有翼タイプのUAVの存在も確認されている。
http://www.asagumo-news.com/news/201101/110120/11012011.html
航空自衛隊では多用途小型無人機計画、TACOM(多小無の頭文字らしい)の研究開発が進められている。
F-15に搭載されて空中発射。飛行か ら着陸までを自律(つまり人の手を介在しないで)行うことが出来るかたちとなっておりアメリカではこの手の無人機着陸技術について人の手を介在させているのに比べると興味 深いアプローチともいえるだろう。有人機の自動操縦機能としての離陸・着陸機能はわりと昔からあるがUAVではあまり行われていないのも事実である。
特徴的なのはおそらく滞空時間能力よりも高速性を求めたと思われる機体形状で、島嶼での問題が発生したときにいち早く高速で状況を知るため強行偵察することを目的としているものと思われる。
…ところが2010年2月、試作機4機のうちの2号機がエンジントラブルで飛行が不能になり、指令のもと海上へ落下処分したという発表が あった。エンジンはアメリカのテレダイン、あるいはアリソン製のものと言われているが、落下水域の水深が深いため機体回収が行われないことで原因は不明と なった。まぁ、文句を言いたい納税者もいるだろうが、試作機はトライ&エラーのためにあるのでこういうケースは今後ともあるだろう。どうか暖かく見守っていてほしいものです。
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最終更新:2024/04/26(金) 02:00
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