QWOPフルマラソンとは、Bennett Foddy氏が制作したブラウザゲーム、「QWOP」の遊び方の一種である。
ここでは距離以外のルールが同じ、QWOP駅伝についても説明する。
概要
本来自身が走ることによって行うフルマラソンを、QWOP内のランナーを操作することによって行うというのが、この競技の趣旨である。
もっとも、QWOPでは最長でも100m先の砂場までしか走ることができないため、1回のゲームで走った距離を毎回足していくことでフルマラソンを行う。(例えば、1回目のゲームで7.8m進んでゲームオーバーとなった後に、2回目のゲームで101.5m進んでクリアしたならば、総距離は7.8+101.5=109.3mとなる。)
42.195kmは毎回100m走り切ることができたとしても422回繰り返さねばならない距離であり、1走1分と考えたとしても7時間ほどかかるため、「最初に走った人物以外に行うものはいないのではないか」と考えられたこともあった。
2021年1月現在、QWOPフルマラソン完走者は4名(5回)存在する。
最初のQWOPフルマラソンは、2020年4月15日から17日にかけて、八重沢なとりによって行われた。これ以前にこの競技が試みられた記録はなかったため、細かいルールは彼女によって決められた。このルールは現在まで追従されている。まともにランナーを走らせることすら難しいQWOPでの挑戦は極めて困難であるとの指摘もあったが、休憩を挟みつつ着実に距離を重ね、ついに4月17日の10時39分、42時間29分かけ、(内休憩7時間20分)42.195kmを完走した。この挑戦は各方面に反響を与え、ネットで記事が執筆された他、制作者のBennett Foddy氏が八重沢なとりに対して祝辞を贈ることにもなった。ツイート
ちなみにRTAを目的とした挑戦ではなかったため、時間は計測されていなかった。
次のQWOPフルマラソンは、その2日後の4月19日のもので、Miroku 369氏によって行われた。記録は15時間47分17秒であり、休憩は挟まなかった。
3番目に達成したのはくろうど氏で、5月30日、記録は9時間56分52秒であった。氏は10mの世界記録保持者であり、さらにその後100mの世界記録(当時)を更新したため、10mと100mとフルマラソンの世界記録を保持したことになった。(ただしフルマラソンは非公認の競技であるため、この世界記録が言及されることは2021年1月現在皆無である)
6月14日には、aMSaによる挑戦が行われた。記録は13時間11分32秒。初めの八重沢の挑戦時にQWOPを完走していなかった人物による、2021年1月現在まで唯一の完走例である。
9月8日にはMiroku 369氏による再走が行われた。記録は9時間54分45秒であり、くろうど氏による(一応の)世界記録を2分8秒更新した。また、Miroku 369氏はQWOPフルマラソンを2度走った唯一の人物となった。
現状競技者が少ないため、タイムの比較が行われることは皆無に等しいが、果たしてQWOPフルマラソンに競争の側面が加えられることはあるのだろうか?
ルール
非公式の競技であるため、明確に定められているわけではないが、QWOPフルマラソン走者が現在まで共通して守っているのは、
- 計測開始は最初にランナーを操作した瞬間、計測終了は42.195kmを達成するようなゲームが終了した瞬間(転倒またはゴール)とする。
- 5m未満で終了したゲームは、ランナーがまともに走ったとみなすには距離が短すぎるため、総距離には算入しない。(ちなみに5mはおおよそ3歩分である。)
- 間に休憩を取ってもよい。(ただし休憩を挟んだ例は八重沢なとりの初完走時しかない。)
の3つである。
また、ルールには書かれていないが、これまで5回の完走例では、距離の算入はプレイヤー自身が電卓かExcelを使用することで行われていた。(つまり、画像認識によるツールなどの手段で自動的に総距離を求めているわけではないということ。)そのため、総距離の計算の手間を出来るだけ短くすることも、タイムを縮める際には重要となる。
完走例
達成順に記載する。
なおバージョンは、八重沢なとりによる記録のみFlash版とHTML5版の両方で走行を行い、他は全てHTML5版である。
達成順 | 名前 | 走行日時 | タイム | 休憩 | 時速 | 達成報告 | 備考 |
1 | 八重沢なとり | 42時間29分 | 有(7時間20分) | 0.9932km/h | ツイート | ||
2 | Miroku 369 | 2020年4月19日 | 15時間47分17秒 | 無 | 2.6726km/h | ツイート | |
3 | くろうど | 2020年5月30日 | 9時間56分52秒 | 無 | 4.2417km/h | タイマーが途中数度止まる。 | |
4 | aMSa | 2020年6月14日 | 13時間11分32秒 | 無 | 3.1985km/h | ツイート | |
5 | Miroku 369 | 2020年9月8日 | 9時間54分45秒 | 無 | 4.2567km/h | ツイート | 2回目。 |
ちなみに、世界記録において、5m以上走ったゲームは512回であったが、そのうち完走した回数はなんと313回であった。ツイート
割合にしておよそ6割である。人間はどこまで進化するのだろうか……。
QWOP駅伝
Miroku 369氏による5回目の完走以来、QWOPフルマラソンを完走したものは出ていないが、12月11日、QWOPでの箱根駅伝の並走企画をくろうど氏が明らかにした。(RTAではなくあくまで企画) ツイート この企画は、くろうど氏、Miroku 369氏、シャーフロイ氏、りゅういっち氏、aMSaの5名が、QWOPで襷を繋ぎながら箱根駅伝の往路を並走するものであり、距離以外のルールは上記と全く同じである。区ごとのタイムが現実の箱根駅伝の各区の11位のタイムと同じになるような、距離の調節が行われている。
年が明けた2021年1月2日、箱根駅伝のスタートと同じ午前8時にQWOP駅伝はスタートした。
結果は以下の通り。
区 | 名前 | 走った距離 | 自己ベスト | タイム | 時速 |
1区 | aMSa | 3824.6m | 1:02:46 | 0:58:03.5 | 3.9525km/h |
2区 | シャーフロイ | 5247.1m | 1:07:58 | 1:03:00.2 | 4.9970km/h |
3区 | Miroku 369 | 5161.4m | 1:03:12 | 1:00.16.1 | 5.1384km/h |
4区 | りゅういっち | 5551.8m | 1:02:51 | 1:02:13.3 | 5.3536km/h |
5区 | くろうど | 6889.5m | 1:12:56 | 1:13:21.4 | 5.6351km/h |
合計 | 26674.4m |
本番での好記録続出により、距離は異なるが現実の箱根駅伝の往路優勝タイム(創価大学・5時間28分9秒)よりも11分速くゴールした。
今回は1チームによる単走であったが、いつか2チーム以上による競争が行われる日は来るのだろうか?
QWOP世界とタイム
QWOPフルマラソンのタイムは往々にして10時間を超え、気の遠くなるほどゆっくり走っているように思われる。
だが待ってほしい。実はQWOPのプレイ画面は、QWOP世界のランナーの動きを1/10倍のスローエフェクトを通して映し出されたものなのだ。
具体的に言うと、現実世界の10秒はQWOP内の1秒になる。このことを踏まえて最初の記録を見ると、42時間29分は、QWOP内での4時間14分54秒(内休憩44分)となり、なんと現実のフルマラソンとさほど変わらなくなるのだ。
世界記録の9時間54分45秒は、QWOP内では59分24秒であり、現実のフルマラソンどころか車いすマラソンの世界記録(1時間20分14秒)よりも速い。
それでも、現実のフルマラソンでよく定められる目標が、QWOPフルマラソンでもそれなりに妥当な目標になることは興味深い。
以下参考
QWOP世界 → 現実世界
サブフォー → 40時間
サブスリー → 30時間
2時間24分 → 24時間
サブテン → 21時間40分
サブツー → 20時間
1時間20分14秒 → 13時間22分20秒
サブワン → 10時間
関連動画
数少ない動画
関連項目
関連リンク
- 八重沢なとり 「QWOP」で42.195km完走! 配信時間は35時間超え(初完走当時に書かれた記事。)
- 箱根路をQWOPが駆け抜ける!? QWOP箱根駅伝並走会(QWOP駅伝について取材した記事。)
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