クェゼリンの戦いとは、大東亜戦争中の1944年2月1日から2月6日にかけて生起した日本軍守備隊vsアメリカ軍の戦闘である。戦闘の結果アメリカ軍が勝利し、日本はクェゼリンを失陥する。
概要
背景
第一次世界大戦以降、ルオットやメジェロからなるマーシャル諸島は日本の信託委任統治領となっていた。中でもクェゼリンは世界最大の環礁を持っており、環礁内に97の小島が点在。クェゼリン本島には第六艦隊の根拠地として潜水艦基地が設営されていた。ハワイ偵察や真珠湾攻撃を支援する潜水艦は全てこのクェゼリンから出撃していたのである。
反攻作戦を企図するアメリカ軍統合参謀本部は1943年7月、1944年初頭の占領を目指して攻略作戦の準備を下令。マーシャル諸島は日本の勢力圏の外郭部にあり、また良好な泊地を有していた。このためマリアナ諸島を目指すうえで攻略しておきたい要地だったのである。投入戦力は空母19隻、戦艦15隻、重巡12隻、軽巡6隻、駆逐艦92隻、護衛駆逐艦21隻、掃海艇や上陸用舟艇などの補助艦艇300隻以上、航空機700機、総兵力8万という膨大なものだった。さらにギルバート諸島から1200機が増派された。
対する日本も連合軍によるマーシャル諸島来襲を予測しており、島々に増援を送っていた。南端のクェゼリン本島には第六根拠地隊司令部と海軍陸戦隊第61警備本隊の計5000名、陸軍の第一機動旅団1030名が駐留。第952航空隊の水上機も所在した。北端のルオット島、ナムル島には約3000名が配備。しかしラバウル航空隊の損耗により航空兵力はほぼ無く、また連合艦隊はマーシャル諸島への来攻は3月頃としていたため、主力艦艇は軒並みトラック島やウルシー環礁に後退していた。
1943年12月5日、アメリカ軍はマーシャル諸島を準備爆撃。日本側が迎撃したためマーシャル諸島沖海戦が生起した。1944年1月22日、クェゼリンの海軍第六通信敵信班が「タラワに敵の有力航空隊指揮官が進出した」と打電。マーシャル諸島への攻撃が近いと察知したが、既に日本からの増援は間に合わない状況だった。1月29日、第58任務部隊艦載機がクェゼリンを空襲。翌30日午前3時20分、200機の米軍機が再度空襲。駐機していた水上機が破壊され、通信設備や集積されていた物資も喪失。さらにアメリカ艦隊がクェゼリンに接近し、上陸作戦は間近に迫った。
クェゼリンの戦い
1944年1月31日早朝、クェゼリンに向けて戦艦3隻と駆逐艦5隻による艦砲射撃が行われた。多くの防御陣地が破壊される被害を受けた。午前7時30分、アメリカ軍はクェゼリンへの上陸を開始するも守備隊の猛攻を受けて撃退される。守備隊がまだ元気な事を痛感したアメリカ軍は夕刻、近隣のヌエブ島に上陸して砲撃用の大砲48門を設置した。そして2月1日、アメリカ軍はクェゼリンに向けて熾烈な準備砲撃を開始。
2月2日午前3時、タラワ島から飛来したB-24が飛来して島内を爆撃。ヌエブ島や艦隊からの砲撃も再開された。その後、水中処分隊が環礁内に侵入し機雷の除去を実施。午前6時30分、第7歩兵師団2万1000名が上陸開始。環礁内のルオット島には2万の米兵が上陸、ナムル島でも上陸が始まった。守備隊は水際反撃を行おうとしたが、沖合いからの艦砲射撃に阻まれて実行できず。上陸支援艦からのロケット砲で防御施設は軒並み破壊された。夕刻までに約1万名が上陸し、内陸部へと侵攻する。奥に進むにつれて日本側の抵抗が激しくなり、第7歩兵師団の進軍速度が低下。ルオット島では頑強なトーチカが進軍を阻んだため、アメリカ軍は火炎放射器を持ち出して1つずつ潰していった。20時頃、前線視察に来ていた司令官秋山少将が敵弾を受けて戦死する。
2月3日未明、阿蘇陸軍大佐率いる戦車隊と第61警備隊が夜襲を実施。かなりの痛撃を負わせたらしく、夜明けとともにアメリカ軍の進軍が止まった。しかし海からの砲撃によって大損害を受け、退却を強いられた。午前4時、ルオット島守備隊が玉砕して組織的抵抗が終了。この日、アメリカ軍は環礁内の島々を占領する事に注力したため、あまり戦闘は生起しなかった。
2月4日、守備隊は残った戦力をかき集めて攻勢に出る。午前10時、第六根拠地隊司令部の将校が自決。残った将兵はアメリカ陣地に突撃し玉砕、戦力の大半を喪失する。それでも生き残った兵は全て阿蘇大佐の指揮下に入り、戦闘を続行した。
2月5日朝より日本語による降伏勧告が行われる。士気旺盛は残存部隊はこれを蹴り、午前10時に突撃を敢行。午後12時30分頃までに壊滅し、同日中にアメリカ軍は全島の制圧と戦闘の終了を宣言。翌6日まで掃討戦を行い、占領した。
2月25日、大本営はクェゼリンとルオットの失陥を発表した。日本側の損害は戦死者4947名、捕虜263名と戦死率は驚異の94%であった。対するアメリカ側の被害は戦死177名、負傷者1037名に留まった。
関連項目
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