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リファンピシン(Rifampicin)またはリファンピン(Rifampin)とは、結核の治療に用いられるリファマイシン抗菌薬である。先発医薬品名はリファジン®

概要

有機化合物
リファンピシン
リファンピシン
基本情報
英名 Rifampicin, Rifampin
略称 RFP
化学 C43H58N4O12
分子量 822.94
化合物テンプレート

リファンピシンは、リファマイシンB誘導体、リファマイシン抗菌薬である。色調は赤色褐色。抗菌による感染症結核、非結核性抗菌症、ハンセン病)の治療に用いられる。世界保健機関WHO)が策定した必須医薬品モデルリストに収載されているエッセシャルドラッグである。

リファンピシンは、放線菌Streptomyces mediterranei現在Amycolatopsis rifamycinica )が産生するリファマイシンBの化学修飾によって得られた。リファマイシンBは、1957年イタリアの製企業Lepetit(レペチ)社によって発見された抗生物質である。活性の低いリファマイシンBを良し、非経口投与だが活性の高いリファマイシンSV開発され、さらに1966年に経口投与可なリファンピシンが開発された。海外では1968年から治療に用いられ、日本でも1971年にリファジン®カプセルの製造販売が開始された。ジェネリック医薬品も販売されている。

リファンピシンは2種類の一般名が併存しており、日本ヨーロッパオーストラリアにおける一般名はリファンピシン(Rifampicin)、アメリカ合衆国およびカナダにおける一般名はリファンピン(Rifampin)である。

リファマイシン抗菌薬ステム“Rifa-”は、1955年開され人気を博したフランス犯罪映画『男の争い』(原題:“Du rififi chez les hommes ”)のイタリア語版のタイトルRififi ”に由来する。“Rififi”(リフィフィ)は、ギャングの喧嘩乱闘を意味するフランススラング。Lepetit社の研究者は収集した土壌のサンプルに映画名前をつけて区別しており、リファマイシンやその誘導体の名に反映された。

「くすり」で変換される絵文字の「💊」は、AppleGoogleMicrosoftいずれのプラットフォームにおいてもの2色からなるカプセル剤として表示される。これは、サンド株式会社が製造販売しているリファンピシンカプセル150mgとよく似ている。一方、第一三共株式会社が製造販売しているリファジン®カプセル150mgの2色からなるカプセル剤であり、ゲームドクターマリオ』のパッケージなどに同じ配色のカプセル剤が描かれている。ただし、『ドクターマリオ』の敵キャラクター細菌ではなくウイルスである。

効能・効果

いずれもマイコバクテリウム属の菌(抗菌)による感染症である。結核結核菌によって、非結核性抗菌症は非結核性抗菌(NTM)によって、ハンセン病はらい菌によって引き起こされる。患者より検出された原因菌がRFP耐性菌であると効果がないため、RFP感性菌であることを確認のうえで治療する。

上記のほか、黄色ブドウ球菌感染症レジオネラ属の菌によるレジオネラ炎(在郷軍人病)、炎球菌による細菌性髄膜炎の治療において、ほかの抗菌薬と併用されることがある。

用法・用量

肺結核などの結核の治療において、1回450mgを1日1回経口投与する年齢や症状に応じて適宜増減し、原則として朝食空腹時に投与する。単剤での治療は結核菌が耐性を獲得して効かなくなるおそれがあるため、ほかの抗結核と併せて3~4剤での治療が推奨されている。感性併用がある場合にはリファンピシン週2日投与も可とされる。

MAC症を含む非結核性抗菌症の治療において、1回450mgを1日1回経口投与する年齢、症状、体重に応じて適宜増減するが、最大投与量は1日600mgである。原則として朝食空腹時に投与する。

ハンセン病の治療において、1回600mg1~2回経口投与する、または1回450mgを1日1回連日経口投与する年齢や症状に応じて適宜増減し、原則として朝食空腹時に投与する。ほかの抗ハンセン病と併せて2~3剤での治療が推奨されている。

作用機序

リファマイシン抗菌薬は、細菌DNA依存性RNAポリメラーゼβサブユニットに結合し、RNAの合成を阻することで抗菌作用を示す。抗菌を含むグラム陽性菌、大腸菌などの一部のグラム陰性菌に効果が認められる。RFPは、ヒト細胞DNA依存性RNAポリメラーゼを阻しない。

RFPは、物代謝酵素のシトクロムP450(CYP)やUDP-グルロン転移酵素(UGT)を誘導する。また、トランスポーターのP糖タンパク質(P-gp)も誘導し、有機アニオン輸送ポリペプチド(OATP)を阻する。このため、多くの剤と物相互作用を引き起こす(後述)。

RFPはアミロイドβの凝集を抑制したとの報告がある。アミロイドβは、アルツハイマー病の発症との関連が示唆されているポリペプチドであり、2023年にはアミロイドβ凝集体を減少させる効果のあるレカネマブレケンビ®)が承認されている。タウタンパク質α-シヌクレインの凝集抑制も報告されており、RFPの神経変性疾患への臨床応用が期待されている。

禁忌・副作用

閉塞や重篤な肝機障害のある患者、過敏症の既往のある患者へのRFP投与は禁忌である。

RFPはCYP3A4をはじめ、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、UGT1A1などを誘導し、これらの酵素によって不活性化される剤の作用を減弱させる可性、または活性化される剤の副作用を増強させる可性がある。また、P-gpの誘導による作用減弱、OATP1B1やOATP1B3の阻による副作用増強の可性もある。ゆえに、一部の抗精神病薬、抗血小板抗悪性腫瘍薬抗真菌薬抗ウイルス薬HIV-1感染症やC慢性肝炎の治療)などとの併用は禁忌であり、併用に注意を要する剤も多数ある。

医薬品 効分類 併用結果 機序
ルラシド
(ラツーダ®
非定抗精神病薬 作用減弱 CYP3A4誘導
タダラフィル
(アドシルカ®
動脈性高血圧症治療 作用減弱 CYP3A4誘導
マシテンタン
(オプスミット®
動脈性高血圧症治療 作用減弱 CYP3A4誘導
ペマフィブラート
(パルモディア®
脂質異常症治療 副作用増強 OATP1B1阻
OATP1B3阻
チカグレロ
ブリリン®
血小板 作用減弱 CYP3A4誘導
ルラチニブ
ローレナ®
抗悪性腫瘍薬 肝酵素上昇 不明
リコナゾー
ブイフェン®
抗真菌薬 作用減弱 CYP3A4誘導
サブコナゾニウム
(クレセンバ®
抗真菌薬 作用減弱 CYP3A4誘導
ホスアンプレナビル
(レクシヴァ®
HIV
HIV-1感染症治療
作用減弱 CYP3A4誘導
アタザナビル
レイアタッツ®
HIV
HIV-1感染症治療
作用減弱 CYP3A4誘導
リルピビリン
エジュラント®
HIV
HIV-1感染症治療
作用減弱 CYP3A4誘導
リルピビリン/テノホビルラフナミド/エムトリシタビン
(オデフシィ®
HIV
HIV-1感染症治療
作用減弱 CYP3A4誘導
P-gp誘導
ドルテグラビル/リルピビリン
(ジャルカ®
HIV
HIV-1感染症治療
作用減弱 CYP3A4誘導
UGT1A1誘導
エルビテグラビル/コビシスタット/エムトリシタビン/テノホビルラフナミ
(ゲンボイヤ®
HIV
HIV-1感染症治療
作用減弱 CYP3A4誘導
P-gp誘導
ドラリン
(ピフェルト®
HIV
HIV-1感染症治療
作用減弱 CYP3A4誘導
カボテグラビ
(ボカブリア®
HIV
HIV-1感染症治療
作用減弱 UGT1A1誘導
レジパスビル/ソホスブビル
(ハーボニ®
抗HCV
(C慢性肝炎治療
作用減弱 P-gp誘導
ソホスブビル/ベルパタスビル
(エプクルー®
抗HCV
(C慢性肝炎治療
作用減弱 CYP3A4誘導
P-gp誘導
グレカプレビル/ピブレンタスビル
(マヴィレット®
抗HCV
(C慢性肝炎治療
作用減弱 P-gp誘導
テノホビルラフナミ
(ベムリディ®
HBV
B型慢性肝炎治療
作用減弱 P-gp誘導
ビクテグラビル/エムトリシタビン/テノホビルラフナミ
(ビクタル®
HIV
HIV-1感染症治療
作用減弱
耐性化
CYP3A4誘導
UGT1A1誘導
P-gp誘導
アメナメビル
(アメナリーフ®
ヘルペスウイルス
(単純疱帯状疱疹治療
作用減弱 CYP3A4誘導
ニルマトレルビル/リトビル
パキロビッド®
SARS-CoV-2 作用減弱
耐性化
CYP3A4誘導
エンシトレルビル
ゾコーバ®
SARS-CoV-2 作用減弱 CYP3A4誘導
アルテテル/ルメファントリン
リアメット®
抗原
マラリア治療
作用減弱 CYP3A4誘導
プラジカンテ
ビルトリシド®
寄生虫 作用減弱 CYP3A4誘導

RFPの副作用として肝機障害障害食欲不振や吐き気)がある。また、RFPやその代謝物によって尿、便、液、唾液、痰、赤色に着色する。つまり、血尿のように見えたり、ソフトコンタクトレンズが変色したり、使用したシャツやタオルに色がついたりするため留意しておくこと。

同種同効薬

リファマイシン抗菌薬RFPのほか、リファブチン(ミコティ®)、リファペンチン、リファジルリファミド、リファキシミン(リフキシマ®)などがある。

リファブチン(RBT)は、RFP投与が困難な患者の結核および非結核性抗菌症の治療に用いられる。また、HIVに感染した患者の播種性MAC症の発症抑制にも用いられる。RBTのCYP3A4誘導作用はRFPのそれと較して弱いとされるため、併用がある場合にRBTが選択されやすい。日本では2008年に承認されたが、海外では1990年代から使用されてきた。

リファキシミン(RFX)は、RFPやRBTと異なり消化管でほとんど吸収されないため、結核の治療には用いられない。腸管内のアンニア産生菌に対する抗菌作用によって血中アンニア濃度を低下させるため、肝性症における高アンニア血症の善に用いられる。2013年に希少疾病用医薬品定され、2016年に承認された。

結核治療は、イソニアジド(イスコチン®)、ピラジナミド(ピラマイド®)、エタンブトール(エブトール®、エサンブトール®)、ストレプトマシンなど。3~4剤を併用する。詳しくは、結核の記事の「治療」節を参照。

ハンセン病治療は、ジアフェニルスルホン(レクチゾール®)、クロファジミン(ランプレン®)、オフロキシン(タリビッド®)など。2~3剤を併用する。

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