虎よ、虎よ!(Tiger! Tiger!)とは、アルフレッド・ベスターのSF小説である。
概要
ジョウント効果と呼ばれるテレポーテーション能力が社会に組み込まれた25世紀。漂流した宇宙船にただひとり取り残されたガリヴァー・フォイルは、接近した輸送艇に救難信号を発するも見捨てられる。その後、科学人に捕らえられ虎のような消えぬ刺青を顔に掘られた彼は、科学人の小惑星を破壊し脱出。地球へと帰還し、自分を見捨てた輸送艇とそれを所有する財閥に対し復讐するため動き出す――。
アレクサンドル・デュマの小説『モンテ・クリスト伯』(邦題『厳窟王』)を下敷きとした復讐劇であり、オールタイムベストSFのひとつにも挙げられるベスターの代表作。狂気じみた濃密さを誇るSFガジェットと壮絶な展開、そしてクライマックスに繰り広げられるタイポグラフィを駆使した文体実験が読者を圧倒する、半世紀を経てなお読み継がれるSF史上屈指の傑作である。
原題は『Tiger! Tiger!』、1956年発表。初出時は『The Stars My Destination』というタイトルであり、中田耕治訳による邦訳版も『わが赴くは星の群れ』というタイトルで講談社から1958年に刊行されたが、64年に『虎よ、虎よ!』に改題され早川書房で再刊。ハヤカワ文庫版は2008年に寺田克也の装画による新装版が刊行された。
その後の作品に与えた影響も大きい。特に石ノ森章太郎は本作に多大な影響を受けており、たとえば原作版『仮面ライダー』の一文字隼人の「感情が高ぶると手術の傷跡が顔に浮かび上がる」設定や、『サイボーグ009』の「奥歯にある加速装置」などは本作が元ネタ。他、梶尾真治『クロノス・ジョウンターの伝説』など、本作のガジェットをモチーフとした作品は多い。
アニメ『巌窟王』の監督である前田真宏は、元々はこの作品をアニメ化するつもりだったが著作権の関係で果たせず、本作の元ネタである『巌窟王』を制作したという経緯があったりする。
冒頭に、ウィリアム・ブレイクの詩「虎(The Tyger)」の最初の段落が題辞として引用されており、その書き出しが本作のタイトルの由来でもある「虎よ!虎よ!(Tyger Tyger,)」である。
この後、原文は「burning bright. In the forests of the night:」…などと続いていき、本作では「ぬばたまの夜の森に燦爛と燃え」…と訳されていく。
当然ながらこの詩は和訳者によって日本語での言い回しが違うが、本作におけるバージョンは、自身が作家・舞台演出家であった中田耕治の手による翻訳のためか大仰で絢爛な雰囲気を持ち、本作全体の印象も牽引している。
やる夫スレでAAストーリー化が為されているので、どんな話か試しに読んでみたい人はこちらから入るのもいいかもしれない。これ自体大変な力作なので、原作を既に読んでいる人にもオススメである。
関連動画
冒頭の詩の和訳例。本作のバージョンと見比べてみると、互いの特徴がわかりやすい。
関連項目
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