収得賞金 単語

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シュウトクショウキン

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収得賞金しゅうとくしょうきん)とは、競馬において競走条件(クラス)を区分するための賞のこと。

本項においてはJRA日本中央競馬会)のそれについて解説していく。

レースにおいて入着した際に獲得できる本賞金(獲得賞)とは別の概念なのでややこしいが、収得賞金と本賞金は全く関係というわけでもなく、さらに本職の競馬関係者が収得賞金のことを「本賞金」と呼んでいたり、競馬情報サイトが獲得賞のことを「収得賞金」と表記したり、『ダービースタリオンシリーズが収得賞金を「本賞金」と表記したりといった用混乱が横行しているので非常にややこしい。ニコ百競馬記事でも混同してることが結構ある。
さらに地方競馬ではクラス分けのシステムが異なり、中央競馬における「本賞金(獲得賞)」をそのまま「番組賞」としてクラス分けに用いているため、地方競馬では「獲得賞」のことを「収得賞金」と呼称することもあるややこしすぎるわ!

というわけで以下、本記事では中央競馬における「本賞金(獲得賞)」と「収得賞金」の違いから順に説明していく。

本賞金(総賞金、獲得賞金)

競走馬レースに出走し、5着以内に入着すると、着順に応じた賞を獲得できる。これが「本賞金」である。

この賞額は基本的にレースグレードが高いほど高額で(一部例外あり)、1着の賞を基準として、2着40%、3着25%、4着15%、5着10%となる。
たとえばGⅠ日本ダービーであれば、1着賞が3億円(2023年から)なので、2着で1億2000万円、3着で7500万円、4着で4500万円、5着でも3000万円がもらえる。こうして積み上げた額に、「付加賞」(後述)を合わせた合計がそのの「獲得賞(総賞)」となる。

レースに勝てなくても5着以内に入れば本賞金は貰えるため、グレードの高いレースでコツコツと掲示板入りを積み重ねた結果、あまり勝てなくてもそこらのGⅠ以上の獲得賞を稼ぐもいる。
GⅠは1勝だけだが10億円以上を稼いだステイゴールドシュヴァルグランGⅠ勝利で6億円を稼いだナイスネイチャバランスオブゲーム重賞勝利で4億円以上を稼いだサウンズオブアースカレンブーケドール、通算1勝で2億円を稼いだエタリオウなどが代表的な例で、こういったは「馬主孝行」と言われることも。

ちなみに賞馬主が総取りするわけではなく、おおよそ馬主80%調教師10%騎手5%、厩務員5%の割合で配分される(障害レース騎手は7%)。

獲得賞JRA歴代1位ウシュバテソーロの22億1567万8200円地方海外レース含む)レースのみではキタサンブラックの18億7684万3000円が最多。地方所属ではフリオーソの8億4544万6000円が最多記録。(※いずれも2023年11月末時点)

付加賞

特別競走(特別登録が必要なレース。端的に言えば「○○賞」「○○ステークス」「○○特別」などのレース名がついているレース)では、集められた特別登録料の総額が、1着・2着・3着に7:2:1の割合で賞として配分される。これを「付加賞」といい、この額も獲得賞に加算される。

レースごとのそのの獲得賞が書かれている競馬情報サイトで、賞額の端数の部分にあたるのがこれ。たとえば2022年日本ダービーでは勝ったドウデュースの賞は2億2697万8000円となっているが、1着本賞金は2億円なので、2697万8000円が付加賞ということになる。
ここから計算すると、2022年日本ダービーの特別登録料の総額は3854万円であったとわかる。もちろんこれは実際に出走した18頭だけでなく、実際には出走しなかった・できなかったも含めた特別登録料の総額である。

出走奨励金

なお、たびたび「5着までに入らずとも8着までは確実に、9着と10着にも賞が出る時がある」と言われるが、6着~8着、オープン特別以上の競走では10着までに入線したに出るのは「出走奨励」であり、1着賞を基準に計算されているものではあるが本賞金とは別2022年からは条件戦以下のレースでも9着まで出走奨励が出るようになった。

他にも各種出走手当など、レースに出ると賞以外にもいろいろ貰えるお金があるが、獲得賞として計算されるのは「本賞金」と「付加賞」のみである。

収得賞金

一方、競走馬をその実に応じたレースに出走させるための区分として設定されているのが競走条件(クラス)であり、それを区分するために設定されているのが「収得賞金」という概念である。感からするとなんか「獲得賞」の専門用っぽい呼び方にも聞こえるが、この賞は実際に支払われるわけではない。

要するに、「賞」という名前がついていて単位が「万円」なだけの、競走馬に対する評価点と考えればよい。

「収得賞金」は「本賞金」とは獲得条件も異なり、それぞれ別に計算される。そして競走馬は、年齢・時季とそれまでに獲得した収得賞金の額に応じて以下のようにクラス分けされる。

2歳

収得賞金額 クラス
0円 ・未勝利
1万円以上 オープン

2歳季~3歳

収得賞金額 クラス
0円 ・未勝利
500万円以下 1勝クラス
501万円以上 オープン

3歳

収得賞金額 クラス
0円 勝利
500万円以下 1勝クラス
501万円~1000万円以下 2勝クラス
1001万円~1600万円以下 3勝クラス
1601万円以上 オープン

3歳季以降

収得賞金額 クラス
500万円以下 1勝クラス
501万円~1000万円以下 2勝クラス
1001万円~1600万円以下 3勝クラス
1601万円以上 オープン

レース勝利し、収得賞金を加算していくことでクラスが上がっていき、クラスが上がるとそれ以下のクラスレースには出走できなくなる。たとえば2勝クラスは、未勝利戦1勝クラス条件戦には出走できない。
なお、上記の表で時季によってオープンの基準が変わるのは、単純に2歳季には条件戦自体が、2歳季~3歳季には2勝クラス3勝クラス条件戦が存在しないからである。

1勝クラス3勝クラスに属するを俗に「条件」と呼び、その属するクラス条件戦のことを「自己条件」という。属するクラスより上のクラスレースに挑戦することは「格上挑戦」と呼ばれる。

この収得賞金の獲得条件と獲得額は、以下のように定められている。ちなみに10万円以下の端数は切り捨て。

レース区分 収得賞金に加算する額
新馬戦未勝利戦 1着 400万円
1勝クラス 1着 500万円
2勝クラス 1着 600万
3勝クラス 1着 900万円
2歳リステッド競走 1着 800万円
2歳九州産馬限定戦 1着 500万円
2歳その他オープン 1着 600万
3歳リステッド競走 1着 1200万円
3歳その他オープン 1着 1000万円
3・4歳以上リステッド競走 1着 1400万円
3・4歳以上その他オープン 1着 1200万円
2歳GⅢ・格付けなし重賞 1着 1600万円、2着 600万
2歳GⅠGⅡ 1着・2着とも本賞金の半額
3歳以上重賞 1着・2着とも本賞金の半額

と、見ての通り、重賞以外では1着、重賞でも2着以上にならないと収得賞金を得られない。なので、たとえば未勝利戦で2着になると200万円の本賞金がもらえるが、収得賞金は0円なので1勝クラスに上がることはできない。また「重賞2着以上」はもちろんGⅠまで含まれるので、GⅠで3着であっても収得賞金は得られない。少なくとも収得賞金のルール上においては、GⅢでの2着の方がGⅠでの3着より価値が上である

そしてレースにおいて、フルゲート(最大出走可数)以上のが出走登録した場合、優先出走権を獲得したを除いて、この収得賞金での足切りが行われる。収得賞金の多い順に上から並べて、足りないは容赦なく除外される。当落線上で収得賞金が同額で並んだ場合は抽選となる。

そのため、特に3歳のクラシック競走では、調子を上げてきた注や仕上がりの遅かった後の名が賞不足で出走できなかったり、ギリギリで抽選を通って出走できたがそのまま勝利したりと、この収得賞金による除外・抽選を巡って悲喜こもごものドラマが繰り広げられる。有名なところでは、1988年菊花賞でのスーパークリークの出走を巡るアレコレとか。
ニコ百競走馬の記事でも、「賞を加算できた」とか「賞加算に失敗した」とか「賞不足で出走できず」とか書いてあれば、この収得賞金のことをしている。

オープンとなればその後は収得賞金をいくら積み上げても出られるレースは変わらないが、もちろんフルゲートになれば収得賞金によって(正確には後述の「出走決定賞」によって)抽選・除外が発生するので、標のレースに確実に出走するためには収得賞金を積んでおくに越したことはない。ただし、あまり収得賞金が多くなると、負担重量が賞別定のレースには出走し辛くなる(これも詳しくは後述)

なお、同着が発生した場合、本賞金は同着の着順の賞とその1つ下の着順の賞とを合計して両者で折半する形になるが、収得賞金は同着でも本来のその着順で得られる額がそのまま加算される。
たとえば2010年オークスではアパパネサンテミリオンが1着同着となり、本賞金は1着9700万円+2着3900万円=1億3600万円を2頭で分け合い両者6800万円となったが、収得賞金は1着本賞金9700万円の半額である4850万円が両者に加算された。
2着同着でも同様で、2022年エリザベス女王杯ではライラックウインマリリンが2着同着となり、本賞金は2着5200万+3着3300万を2頭で分け合い両者4250万円となったが、収得賞金は2着本賞金5200万円の半額である2600万円が両者に加算されている。

ちなみに未勝利(収得賞金が0円のは基本的に重賞には出走できないが、2歳季や、3歳G1トライアル競走には未出走・未勝利でも出走可重賞があり、未勝利で出走して2着になると通算0勝のままで収得賞金を加算することができる。
収得賞金を得れば通算0勝でも定義上では「未勝利」ではなくなるため、重賞にも出走可になり、トライアルであればGⅠの優先出走権も獲得することができる。なので、たとえば未勝利GⅡ青葉賞に出走して2着になれば収得賞金と日本ダービーの優先出走権が獲得できるので、ルール上は勝利日本ダービーということも可である。ハリボテエレジーが未勝利GⅠに出られるのもあり得ない話ではなかった。

2023年現在、まだ未勝利重賞で2着となって通算0勝で未勝利を脱した例はないが(未勝利重賞を勝った例は、1998年北海道3歳優駿(統一GⅢ)を未勝利で勝ったキングオブサンデーの例がある)、2021年には函館2歳Sで未勝利グランデが3着、小倉2歳Sで未勝利のデュガが4着と好走しており、そのうち達成するが現れそうである。

出走馬決定賞金

(4歳以上)の出走できる重賞およびリステッド競走では、単純なそれまでの収得賞金の総額だけでなく、そこに「過去1年間の収得賞金」と「過去2年間のGⅠレースの収得賞金」が上乗せされた上で計算される。これを「出走決定賞」という。
なお、2022年までは地のオープン特別競走もこのルールだったが、2023年からは条件戦に類似した、直近8週3着以内→出走間隔順という方式に変更になっている。

たとえば収得賞金は2億円だが過去2年間2着以内がないAと、収得賞金は1億円だが過去1年間に1着本賞金3億円のGⅠで2着(本賞金1億2000万円÷2=収得賞金6000万円)が1回あるBであれば、Bには「過去1年間の収得賞金」と「過去2年間のGⅠレースの収得賞金」としてそれぞれ6000万円が加算され、Bの出走決定賞は1億円+6000万円×2=2億2000万円となり、Aを上回ることになる。

なお、古オープンでは上位クラスに優先して出走権が与えられる。たとえば過去1年間に未勝利戦1勝クラス2勝クラス勝利している収得賞金1500万円の3勝クラスCと、過去1年間収得賞金を獲得していない収得賞金1650万円のオープンであるDであれば、Cは出走決定賞の計算上では3000万円となりDを上回るが、出走決定賞順に並べた際にはオープンであるDの方が上位に置かれる。

また、GⅠレースではこの出走決定賞に優先して、出登録した中でレーティング上位5頭と外に優先出走権がある。グランプリである宝塚記念有馬記念の2競走については、第1回特別登録を行ったの中でのファン投票上位10頭に優先出走権が与えられる。

実際の例

2021年優駿牝馬(オークス)を制したユーバーレーベンを例にとって本賞金と収得賞金を計算してみよう。ユーバーレーベンは収得賞金不足で桜花賞を断念したのだが、桜花賞までの戦績は以下の通り。

レース 格付 着順 本賞金 収得賞金
2歳新 -- 1着 700万円 400万円
札幌2歳ステークス GⅢ 2着 1200万円 600万
アルテミスステークス GⅢ 9着 0円 0円
阪神ジュベナイルフィリーズ GⅠ 3着 1600万円 0円
フラワーカップ GⅢ 3着 880万円 0円
合計 4380万円 1000万円

見ての通り、この時点でユーバーレーベンは5戦中4戦で入着を果たしており、新馬戦1着700万円+札幌2歳S2着1200万円+阪神JF3着1600万円+フラワーC3着880万円で、既に本賞金4380万円を稼いでいる計算になる(出走奨励等は除く)。
これは桜花賞で3着だったファインルージュ新馬戦2着+未勝利戦1着+フェアリーS1着で4290万円)や5着だったアールドヴィーヴル(新馬戦1着+クイーンC2着で2100万円)より多い。

ところが2着以上になったのが新馬戦札幌2歳Sだけのため、ユーバーレーベンの収得賞金はGⅠで3着を取っていても新馬戦1着400万円+2歳GⅢ2着600万円=合計1000万円だけであった。
一方、ファインルージュ未勝利戦1着400万円+フェアリーS1着1750万円(本賞金3500万円の半額収得賞金2150万円アールドヴィーヴルも新馬戦1着400万円+クイーンC2着700万円(本賞金1400万円の半額収得賞金1100万円となり、いずれも収得賞金ではユーバーレーベンを上回るのである。前述した通り、GⅠで3着を取っても加算されない収得賞金というシステムの厳しさが伺える。

この年の桜花賞は収得賞金1000万円が抽選ラインだったため、ユーバーレーベンも抽選を通れば出走可だったが、抽選のは2しかなかったため、オークスに照準を切り替えて桜花賞を回避。
続くフローラSGⅡ)も3着でまたも賞加算に失敗したが、オークスは抽選ラインが900万円となったため、どうにか除外を回避して出走を果たし、2勝GⅠオークスで挙げることとなった。
もちろんオークス1着は本賞金1億1000万円なので、ユーバーレーベンは収得賞金5500万円を獲得し、事にオープンとなっている。

同様に、大レースで活躍しながら、なかなか収得賞金を積めずにいた最近の事例として、2022年ダノンベルーガがいる。

レース 格付 着順 本賞金 収得賞金
2歳新 -- 1着 700万円 400万円
共同通信杯 GⅢ 1着 4000万 2000万円
皐月賞 GⅠ 4着 2300万円 0万円
東京優駿 GⅠ 4着 3000万円 0万円
天皇賞(秋) GⅠ 3着 5000万円 0万円
合計 1億5000万円 2400万円

上記のようにGⅠで好走しながらも2着以上を獲れずにいた結果、天皇賞(秋)終了時点での収得賞金は2400万円、出走決定賞ジャパンカップ登録時点で4400万円。JRA登録17頭中、下から2番の16番手になってしまっていた。この年のジャパンカップは外6頭が登録、最終的に4頭が出走したため、賞順では抽選の余地すらない除外対だったのである。
幸いにして天皇賞(秋)の好走でプレレーティング120を獲得し、前述した「出登録した中でレーティング上位5頭」で優先出走権を確保してジャパンカップに出走できることになった。そのジャパンカップも5着(本賞金4000万円)と収得賞金の加算に失敗してしまい、翌2023年2月には「過去1年間の収得賞金」として加算される共同通信杯2000万円も消えて、出走決定賞2400万円ではGⅠへの出走は心もとないことになってしまった[1]

その後、3月ドバイターフ(G1)に遠征し、2着となったことで100万ドル(後述する「地方海外レースに出た場合」を参照)の賞を得たことで、6590万円の収得賞金を得ることに成功し、この窮地を脱している。

収得賞金と負担重量

レースにおける出走の背負う負担重量の決め方にはいくつか種類があるが、その中には収得賞金によって負担重量を決定するレース(収得賞金による別定戦。通称「別定」)が存在する。負担重量の記事も参照。

別定のレースは基本的にGⅢ以下のレースで、収得賞金額が高くなるほど負担重量が大きくなる。重い負担重量を背負わせて走らせることはに大きな負担をかけるため避けるのが普通であり、これにより、GⅠを勝って多額の収得賞金を積み上げているような実績が、実に見合わないグレードの低いレースに出てくることを抑制している。

例として、引退時のアーモンドアイが当時のGⅢ京都牝馬ステークスに出走しようとした場合を考えてみよう。アーモンドアイ引退時(2020年12月時点)の収得賞金は9億680万円。当時の京都牝馬S負担重量は「5歳以上53kg、収得賞金1600万円毎に1kg増」なので、9億680万÷1600万=56.675、すなわち+56kgとなり、アーモンドアイ負担重量は53+56=109kgとなっていた。当然、こんな重量を背負わせたら走る以前の問題であり、こういった実績はこれらのレースには事実上出られないわけである。

ただし、負担重量革に伴い3(4)歳以上の重賞に関しては2023年から、このような賞別定戦は全て勝ち別定に変更。3歳限定の重賞に関しても2024年から、重賞は全て齢重量に変更になったため、この決め方が残るのはオープン特別・リステッド競走のみになった[2]

なお、賞別定重賞があった時代も3歳限定重賞は基本的に最大+1kgであった。また2歳重賞は収得賞金で差がほとんどつかないため当時から全て齢重量であった。

地方・海外レースに出た場合

JRAに所属する競走馬地方および海外レースに出走した場合の収得賞金については、以下のように定められている。

本賞金 収得賞金に加算する額
1着:1200万円以上 本賞金の半額
2着:480万円以上 本賞金の半額
1着:400万円以上1200万円未満 400万円
2着:160万円以上480万円未満 160万円
1着:10万円以上400万円未満 そのままの額
2着:160万円未満 そのままの額
1着:10万円未満 10万円

もちろんJRAレースと同じく、2着で収得賞金が加算されるのは重賞のみである。ただし、地方から中央に転厩してきたの場合のみ、地方登録時代に(JRAレースおよびダートグレード競走以外で)2着の本賞金が100万円以上のレースに関しては2着でも上記の基準で加算される。
たとえば大井からJRAに転厩したトーセスーリヤの場合、地方時代の成績はデビュー戦の出囃子賞(大井)2着→2歳200万(大井)1着→川崎ジュニアオープン川崎)4着だが、出囃子賞2着の本賞金100万円と、2歳200万の本賞金190万円が上記の表の基準に基づいて収得賞金に加算され、収得賞金290万円で1勝クラスからのスタートとなった。

また、地方重賞以外の定交流競走にJRA所属が出走した場合、上記の表の規定にかかわらず、JRAにおける区分に応じて1着に未勝利400万円、1勝クラス500万円、2勝クラス600万円、3勝クラス900万円、オープン1000万円が加算される。もっとも重賞以外の定交流競走は、JRAの区分では2勝クラス相当までしか存在しないが。
たとえば岩手競馬東京カップけやき賞は1着の本賞金は250万円だが、JRAの区分では3歳以上2勝クラスに相当するため、中央所属勝利すると収得賞金に600万円が加算される。
こうしたレースで勝ったの場合、収得賞金が獲得賞を上回るという事が発生することもある。2023年の嘉特別()で初勝利を挙げたヴァンドゥランの場合、獲得賞62万円で収得賞金400万円となった。

海外競馬の賞については、いつの時点の為替レートで計算するかという問題があるが、これは年ごとにその年の1月1日時点の為替レートを用いて、ユーロを基準にした換算レートが定められている。例えば、2023年の場合exit

となるため、1ドル=(0.93756÷0.71100)×100円と計算する、ということである。なお、当然だが、1ユーロは1ユーロであるため、凱旋門賞など賞ユーロ建ての場合は、普通に1を100円あたりのユーロで割って、100掛け算すればよい。
メディアではレース開催時点の為替レートで賞が記述されがちなので、実際に算入される賞とは差異が生じる。2023年オーストラリアザ・ゴールデンイーグル勝利したオオバンブルマイの場合、1着賞525オーストラリアドルメディアでは約5億1000万円と報道されたが、換算レート1月1日時点の1ドル=0.63723ユーロだったため、実際にオオバンブルマイの本賞金に加算されたのは約4億7000万円であった。収得賞金の計算ももちろん、実際に加算された本賞金の額に応じて上記の表に準ずる。

また、海外競馬でも同着の場合の収得賞金は内と同様、本来のその着順で獲得できる本賞金を元に計算される。しかし何しろ極めてレアな事例だけに、2022年3月ドバイターフパンサラッサが1着同着となった際にはJRA側も混乱したようで、パンサラッサの収得賞金は本来の1着賞290ドルではなく、2着100万ドルと折半した同着賞195万ドル半額が加算されることに。その後、半年後にJRA側が取り扱いミスを認めexitパンサラッサドバイターフの収得賞金は本来の1着賞290ドル半額に訂正された。

また、中央競馬では算入する収得賞金に上限がないため、海外の高額レースで1着をとると非常に多額の収得賞金が加算されることになる。例えばパンサラッサは上記翌年の2023年2月サウジカップ(1着1000ドル)を制しているが、換算結果13億1864万9700円の半額(10万円未満の端数切捨て)の6億5930万円が加算されている。

障害競走の場合

障害競走の場合はクラスが「未勝利」と「オープン」の2種類しかない(1999年以降)ため、1勝でもすればオープン扱いとなる。障害競走の収得賞金は以下の通り。

レース区分 収得賞金に加算する額
勝利 1着 400万円
オープン一般 1着 600万
オープン特別 1着 750万円
重賞 1着・2着とも本賞金の半額

ただし、地競走と障害競走の収得賞金は合算されない。そのため、地でたとえ重賞を勝っていても、障害に転向すると収得賞金は0円扱いで未勝利からのスタートである(例:タガノエスプレッソニシノデイジー等)。

同様に、障害でどれだけ稼いでいても地の収得賞金には加算されない。たとえば障害でJ-GⅠを9勝、重賞を合計15勝したオジュウチョウサンは、障害での収得賞金は4億3000万円に達したが、地では500万下(現:1勝クラス)と1000万下(現:2勝クラス)の2勝しかしていないため、収得賞金は1100万円で3勝クラスの条件であった。
ちなみにオジュウチョウサンがこの2勝を挙げたのは障害転向前ではなく、2018年有馬記念に出るために一時的に地に戻ってきたときのことである。オジュウチョウサン障害転向前は地で2戦0勝だったため収得賞金は0円であり、ファン投票でどれだけ票を集めてもそのままでは有馬記念に出られなかったことによる。

勝利オープンしかクラスがない障害の収得賞金は何に使うのかというと、重賞以外のオープン競走における負担重量の決定に用いられている。障害競走における収得賞金による別定戦は「別定SA」と「別定SB」の2種類があり、「別定SA」は「収得賞金700万円ごとに1kg増」、「別定SB」は「収得賞金400万円過額300万円ごとに1kg増」と定められている。

なお、1999年以前は「地の収得賞金は障害のそれにはしないが、障害での収得賞金は地での収得賞金に加算する」というルールだった。障害競走負担重量ルールはこの制度だった最終年の中山グランドジャンプ中山大障害が定量である以外は賞別定で、障害で勝てば勝つほど酷量を背負わされることになる一方、障害で稼いでいるため地の如何に関わらず抽選にも勝ちやすくなっていることなどもあり、天皇賞(春)を筆頭に地の長距離レース障害が出走するということもあった(例:1998年日経賞に出走したアワパラゴンテンジンショウグン

降級制度(廃止)

2018年まで、JRA地競走には4歳の夏競馬の開始時にそれまでの収得賞金を一半減する降級制度が存在した(障害競走には元々存在しない)。

これは上位クラスに上がったもののそこで頭打ちになってしまたへの救済措置。たとえば新馬戦と2歳重賞を勝って収得賞金が2000万円となりオープンとなったものの、その後伸び悩んでそれ以降は収得賞金を上積みできていないようなに対し、収得賞金を半減(→1000万円)して1000万下現在2勝クラス)の条件戦に出られるようにしてあげるもの。

経済動物である競走馬は自分の食い扶持も稼げなくなってしまえば引退せざるを得ないわけで、降級制度によって下位のクラスでもう一度賞を稼ぐチャンスを与え、競走馬に現役を長く続けてもらおうという制度であった。

2019年、下位クラスレースを減らして上位クラスレースを増やすなどの的で、降級制度は止となった。これに伴い、それまで「500万下」「1000万下」「1600万下」という収得賞金額で区分されていた条件戦もそれぞれ「1勝クラス」「2勝クラス」「3勝クラス」という現在の表記に変更された。

ちなみに1987年までは4歳(当時の表記は5歳時だけでなく5歳(当時の表記は6歳)時にも2回の降級があり、当時の降級制度は「そのの収得賞金を減らす」ではなく「クラスの昇級に必要な収得賞金額を増やす」という形であった。そのため、たとえば現在2勝クラスにあたる900万下ではレース条件に「4歳900万下5歳1800万下、6歳上2700万下」とか書かれたりしていた。
この制度下において、1987年から88年にかけて、ビギンビギンという同一クラス900万下)を5勝するという記録(?)を達成し[※1]、さすがにこれはおかしいということになったのか、1988年に2回の降級は止された。

なお、「クラスの昇級に必要な収得賞金額を増やす」から「そのの収得賞金を減らす」に仕様が変更されたのは2006年競馬からである。例えば、2006年湘南ステークスが「4歳1600万下5歳以上3200万下」であるのに対し、同年の横岳特別が「3歳以上500万下」となっている。
変更時はこの切り替えを5歳以上のにも適用するため、2002年以前に生まれたについては、2006年6月16日(この年の競馬は翌17日から)以前に獲得した収得賞金を一半減する措置が取られた。

この増額ルールだった時代、2000年朝日杯3歳SGⅠ)勝ちメジロベイリー未勝利戦(収得賞金400万円)と朝日杯勝利(本賞金5300万円→収得賞金2650万円)のみで長期休養した結果、GⅠなのに条件に降級した(4歳以降はオープン入りに収得賞金3201万円以上が必要なのに対し、メジロベイリーは上記の通り収得賞金3050万円だったため)という記録がある。

[※1]…ビギンビギンの現役当時の収得賞金は新未勝利戦300万円400万下1勝クラス)が400万円、900万下2勝クラス)が500万円であった。ビギンビギンは旧4歳(85年)に未勝利戦400万下勝利し収得賞金700万円で900万下となったが、その後は勝ちきれず旧5歳(86年)400万下5歳800万下)に降級。旧6歳(87年)1月900万下を格上挑戦で勝利し収得賞金1200万円となって900万下(6歳1800万下)に復帰。しかし旧6歳になると2度の降級で900万下の在籍条件は「6歳上2700万下」になってしまい(それを回避しようとしてか直前の6月1400万下に格上挑戦しているが3着に敗れている)、その後彼は900万下を3連勝(500万×3)したが収得賞金は2700万円ジャストで同一条件を4勝しても900万下のままだった。結局旧7歳(88年)の6月900万下での通算5勝を挙げて1400万下に昇級している。

降級制度があった時代の実際の例

降級制度があった時代の収得賞金の計算例として、重賞勝利の獲得賞最多記録を持つサウンズオブアースの収得賞金の履歴を見ていくと、このようになる。

レース 着順 加算額(万円) 収得賞金(万円)
3歳未勝利 1着 400 400
はなみずき賞(3歳500万下) 1着 500 900
京都新聞杯 2着 1050 1950
神戸新聞杯 2着 1050 3000
菊花賞 2着 2250 5250
4歳6月半減処理 -2625 2625
京都大賞典 2着 1300 3925
有馬記念 2着 5000 8925
日経賞 2着 1350 10275
ジャパンカップ 2着 6000 16275

2019年以降のシステムでは京都新聞杯2着の時点で収得賞金が1600万円をえているので恒久的にオープン入りとなるが、当時(3歳時は2014年、4歳時は2015年)は降級制度があったため、この時点での1950万円のままであれば4歳競馬の開始時に半減され975万円となり、1000万下(現:2勝クラス)に降級することになる。
続く神戸新聞杯2着の時点でもまだ収得賞金3000万円であるため、このままでは半減で1500万円となり1600万下(現:3勝クラス)への降級となる。
菊花賞2着で5250万円となった時点で、半減されても1600万円をえるため、ようやく全にオープン入りしたことになるわけである。

勝ち得戦(廃止)

前述した通り、現在ルールでは自分の所属するクラスより下の条件戦レースに「格下挑戦」することはできない。ただし、この「格下挑戦」が可だった時代があった。
1988年までは同一開催であれば、特別競走に限り既に勝ち抜けたクラス条件戦にもう一度出ることが可だったのである。開催1週に400万条件(現:1勝クラス)を勝ったが、開催4週の400万条件の○○特別に中2週で出る、なんてことができた。ただしもちろんノーリスクではなく、斤量が1kgか2kg増えることになるが。この制度は俗に「勝ち得戦」と呼ばれた。

このルールを使った有名なとしてはタマモクロスがいる。1987年10月18日の第4回京都開催4日の4歳以上400万下条件を勝ったあと、中1週で同じ第4回京都開催8日藤森特別(400万下)に向かい連勝。この後、GⅠ3勝を含む怒濤の重賞6連勝が始まることになる。

また1984年エリザベス女王杯を勝ったキョウワサンダーは、その年の6月の400万条件を勝ったあと、9月の第4回阪神開催2日GⅢサファイヤSで2着となり収得賞金を加算したのち、中2週で開催7日の布引特別(900万下)に出走している(3着)。

収得賞金の確認方法

競走馬の獲得賞は各種競馬情報サイトにて手軽に確認できる一方で、収得賞金を確認できるサイトは実はほとんどない。

収得賞金を確認できるサイトとしては、JRA公式サイトexit競走馬情報ページと、スポーツナビexitがある。また、netkeiba.comexitなどの競馬情報サイトでは、クラシックの時期が近付くと3歳の収得賞金順位の記事を出してくれたりもする。

特に収得賞金で運命が大きく変わるクラシックレースの前など、気になるの収得賞金が足りているかどうか確認したい人は調べてみよう。

まあ、古重賞だと出走決定賞を使うのだが、GIならJRA出走馬決定順exitを出してくれてるのだが、GII以下だとどうしても手作業で計算しないといけなくなって面倒なことになるのは変わらないが。

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関連項目

脚注

  1. *実際、2023年大阪杯(フルゲート16頭)ではボーダーが4700万円であり、18位のアラタでさえ3600万円積んでるので、レーティングで優先出走権もらえなければ除外は確実といったレベル
  2. *例として、オクトーバーステークス(L)の場合3歳55kg/4歳以上57kg、2kg減、収得賞金1600万円1200万円ごとに1kg増という規則になっている。仮に先述したアーモンドアイが出走する場合、(9億680万-1600万)÷1200万=74.233…なので、57-2+74=129となり、負担重量129kgとなる。
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