アメリカ合衆国大統領選挙(presidential election)とは、アメリカ合衆国において大統領を選出する選挙のことをいう。
4の倍数になる西暦偶数年に行われる。下2桁が4の倍数である自然数は全て4の倍数なので、下2桁が4で割り切れるかどうか考えればよい。夏季オリンピックと同じ年に開催される。
11月第1月曜日の属する週の火曜日に投票が行われる。つまり、11月2日~8日のうちのどれかになる。これを米国では選挙の日(Election Day)と呼ぶ。
大統領選挙に無所属で出馬しても勝ち目がない。ほとんどの候補は民主党かまたは共和党の候補指名を受けるため、それぞれの党の候補者選出レースに参戦することになる。
大統領選挙の前年の1月から、大統領選への出馬を表明する人が出現し始める。
アメリカ合衆国上院は国際条約の締結を承認する権限があり、条約を批准すべきかどうか、頻繁に議論している。このため上院議員は国際的で広い視野を持つとみなされ、有力視されやすい。
州知事は、州議会と攻防を繰り広げながら行政の指導をしていく点で大統領とよく似ている存在である。大統領の職務を務めるのに十分な経験を積んでいるとみなされ、有力視されやすい。
上院議員や州知事の職に留まったまま大統領選に立候補することができる。大統領選挙に落ちたとしても安心である。とはいっても、選挙のため借金を抱える羽目になりやすい。ヒラリー・クリントンは上院議員の身分のまま2008年候補者選出レースに臨んだがバラク・オバマに敗れ撤退、借金を1200万ドルほど(当時のレートで約13億円ほど)こしらえてしまった。
下院議員で大統領選挙に出馬する人はあまり多くない。アメリカ合衆国下院は国際条約の締結を承認する権限がなく、国際的な視野に立っての議論は(上院に比べて)あまり多くない。下院だけの経歴では大統領になるには経験不十分、と思われやすい。
そのほか、神経外科医だとか不動産王といったように、政治経験が全くないのに出馬表明する人も出てくる。
大統領選の前年の8月頃から、さっそく有力テレビ局によってテレビ討論会が開かれる(動画)。
共和党の候補者たちが10人程度集められ、テレビカメラの前でお互いを論難する。民主党の候補者たちも違う日に10人程度集められ、テレビの上での批判合戦に励む。
そして、世論調査が行われ、テレビ討論会で好印象を与えた候補が上位に並ぶことになる。
大統領選挙の年になり、2月になると各地で予備選挙かまたは党員集会が始まる。
予備選挙かまたは党員集会は2月から最長で6月まで続き、それにより民主党や共和党の候補者が決まる。
※2016年大統領選挙では2月から予備選挙(党員集会)が始まったが、2012年大統領選挙では1月から予備選挙(党員集会)が始まっている。本記事は2016年大統領選挙を参考にした記述が多いことから、それに合わせて「2月に始まる」と記した。
予備選挙(Primary Election)は、州政府が資金を出して開催する。
自分が誰に投票するか公表せずに投票できる。いわゆる秘密選挙で、気楽に参加して気軽に投票できる。
一部の予備選挙は閉鎖型予備選挙と言い、参加するのに党籍が必要である。民主党の閉鎖型予備選挙に参加できるのは、民主党員だけである。
また、一部の予備選挙は開放型予備選挙と言い、参加するのに党籍が必要とされない。その気になれば、共和党支持者が民主党の開放型予備選挙に潜入して投票することができる。
2020年の大統領選挙において、共和党候補はドナルド・トランプ現職大統領になることが決まり切っている。そのため、共和党支持者たちは暇でしょうがない。一部の州の共和党支持者は、退屈しのぎに、民主党の開放型予備選挙に行き、自分の好みの候補者に一票投票することも可能である。
党員集会(Caucus コーカス)というのは、政党が開催する。投票するのは、その政党で長い期間活動してきた人のみで、なおかつ自分の名前を公表してから投票する。それゆえ、気楽に参加することができず、参加者が少ない。Caucusとは「幹部会」と訳されることがあり、「限られた人たちによる会議」を表現する言葉である。
州ごとに、予備選挙をするか党員集会をするか、好きな方を選んでよい。
近年は、党員集会から予備選挙に切り替える州が増えてきている。党員集会は、参加しにくいなどの理由から、敬遠される傾向がある。
予備選挙かまたは党員集会で選挙が行われ、選挙人が候補者に与えられる。
共和党の選挙人の割り振り方は、州ごとに制度が違ってややこしい。票数が1位のものが選挙人を全て獲得する勝者総取り制度を選ぶ州もあるし、票数によって選挙人を割り振る制度を選ぶ州もある。
日付 | 開催地 | 選挙人の割り振り |
2016年2月1日 | アイオワ州 | トランプ候補が7人、クルーズ候補が8人、ルビオ候補が7人獲得 |
2016年2月20日 | サウスカロライナ州 | トランプ候補が50人全員獲得。勝者総取り |
一方で民主党は勝者総取り制度を採用せず、全ての州で、票数によって選挙人を割り振っている。
日付 | 開催地 | 選挙人の割り振り |
2016年2月1日 | アイオワ州 | ヒラリー候補が23人、サンダース候補が21人獲得 |
2016年2月27日 | サウスカロライナ州 | ヒラリー候補が39人、サンダース候補が14人獲得 |
2016年共和党の様子はこちらのページが詳しい。最初は比例割り振りが多く、3月15日以降に勝者総取りが集中している。
2016年民主党の様子はこちらのページを見るとよく分かる。全てが比例割り振り。
2月に予備選挙かまたは党員集会が行われるのは、人口が少ない州である。小さい州での小規模な選挙で、各候補の陣営は選挙戦に慣れていく。
2016年の共和党の予備選挙・党員集会の開催日程は次のとおりであった。
2016年2月1日 | アイオワ州![]() |
2016年2月9日 | ニューハンプシャー州![]() |
2016年2月20日 | サウスカロライナ州![]() |
2016年2月23日 | ネヴァダ州![]() |
2016年の民主党の予備選挙・党員集会の開催日程は次のとおり。
2016年2月1日 | アイオワ州![]() |
2016年2月9日 | ニューハンプシャー州![]() |
2016年2月20日 | ネヴァダ州![]() |
2016年2月27日 | サウスカロライナ州![]() |
どちらの党も同じ時期に同じ州で選挙を行っていくというわけである。
2月の序盤戦を終えた時点で、売名の目的を果たした泡沫候補が撤退するのが恒例の風景である。
ちなみにアイオワ州では、州法によって「全国で最も早く党員集会(コーカス)を開くように努力すべし」と決まっている。ニューハンプシャー州にも「全国で最も早く予備選挙を開くように努力すべし」という州法がある。
そうした州の熱意に押され、大統領が「アイオワ州とニューハンプシャー州を一番最初に配置するように」と指示する(トランプ大統領がTwitterでそのことを示唆している)。
順番はいつも「開幕戦アイオワ、2戦目ニューハンプシャー」となっていて、それが始まったのが1972年である。
また、アイオワ州は民主・共和のどちらも党員集会(コーカス)であり、ニューハンプシャー州は民主・共和のどちらも予備選挙である。
アイオワ州とニューハンプシャー州は白人が多く、ネヴァダ州はヒスパニック系(中南米からの移民)が多く、サウスカロライナ州は黒人が多い。2月の序盤戦の4州は、人種という点で、まずまずバランスがとれている。
アイオワ州とニューハンプシャー州の結果は、候補者選出レースに対して大きな影響を与えるとされている。
初戦のアイオワ州において、3番手以内の得票率を獲得しないと、候補者選出レースを勝ち上がるのが難しくなる、と言い伝えられている。実際に、初戦のアイオワ州で4番手以下になってから巻き返した例は、2020年のジョー・バイデンぐらいであり、非常に少ない。これを「アイオワ発の切符は3枚まで There are only three tickets out of Iowa.」という。
初戦のアイオワ州と第2戦のニューハンプシャー州でどちらも3番手以下に落ちた人が候補者選出レースで勝利を収めた例は、1972年から2020年までの中で、2020年のジョー・バイデンのただ1例のみである(記事)。
アイオワ州も、ニューハンプシャー州も、人口が少ないごく普通の田舎なのだが、4年に1度の大統領選挙で全米から注目の的になる。
3月初旬の火曜日に、多くの州で同時に予備選挙かまたは党員集会が開かれる。これをスーパーチューズデー(Super Tuesday 特別な火曜日)という。
2016年は3月1日がスーパーチューズデーとなり、共和党は14の州、民主党は11の州で選挙となった。
このスーパーチューズデーは、政党候補になるための天王山であり、最大のヤマ場である。ここで選挙人獲得数で首位に立った人がそのまま候補になることが多い。
ちなみになぜチューズデー(火曜日)なのか、というと、19世紀の伝統が残っているからである。19世紀の米国は信心深い人が多く、日曜日はキリスト教の安息日なのでしっかり休む習慣があり、日曜日に選挙ができなかった。そして今も昔もアメリカは国土が広く、投票所まで遠い。馬車で投票所に行こうとすると1日かかってしまう。ゆえに火曜日を投票日にすることにした。日曜日は安息日なので休んで、月曜日を移動日にして、火曜日に投票する。これが米国の農家に支持され、火曜日に選挙という形式が定着した。
スーパーチューズデーで大勢が決することが多いのだが、諦めきれない人はまだしぶとく選挙を続ける。
2016年の民主党はバーニー・サンダースが6月14日まで選挙戦を続けていた。この日は首都ワシントンD.C.で最後の投票が行われた(記事)。結局、選挙戦をずっと撤退せずに戦い続けたのである。
2008年の民主党はヒラリー・クリントンとバラク・オバマが4月いっぱいまで互角の死闘を演じ、5月上旬になってやっとオバマが抜け出し、6月3日にオバマが勝利を宣言し、6月7日にクリントンが敗北を認めた(記事)。この年の最終投票は6月22日のネブラスカ州に予定されていたので、選挙戦終了の2週間前にやっと決まったことになる。
ただ、5月とか6月まで選挙を続けることはやはり珍しい。4月までには、民主・共和それぞれの候補が1人ずつに絞られ、他の候補者が全員撤退することが多い。
このため、5月~6月に予定されている予備選挙・党員集会は、単なる顔見せ興行になることが多い。
民主党も共和党も、7月または8月に党大会を4日かけて開催する。共和党の党大会の日程を記したページはこちら、民主党の党大会の日程を記したページはこちら
。
大統領候補が長い間よく考えてから副大統領候補を決定し、それを党に向けて報告する。この党大会で、正式に大統領候補と副大統領候補が指名される。
支持者をさらに広げるため、自分とは違った性格で自分とは違った層に受けが良い人物を見つけ出し、副大統領候補に選ぶ。
2016年のドナルド・トランプは、マイク・ペンスを副大統領候補として指名した。トランプと違ってペンスは下院議員や州知事としての政治家経験が豊富である。トランプと違ってペンスは見るからに質朴で堅実である。そういう具合に、自分と違うキャラの人物を選ぶのがおなじみの光景である。
9月の第1月曜日は労働者の日(Labor Day)という祝日で、日本や英国のメーデー(May Day)
に相当する。この日を境にして激しい選挙戦に突入し、民主・共和それぞれの陣営が火花を散らすことになる。11月上旬まで約2ヶ月の選挙戦になる。
飛行機に乗って広大なアメリカの国土を駆け回り、全米の各地で遊説することを毎日のようにこなす。殺人的スケジュールで精神・肉体に大きな負担がかかるが、この程度の激務すらこなせないようではアメリカ合衆国大統領の地位などふさわしくないとばかりに、超過密日程が組まれる。
ショー・ビジネスを世界で最も得意とする国のため、演説の会場を華やかに見せる工夫が凝らされる。
テレビ広告も大量に流され、両陣営から多額の金がテレビ業界に流れ込んでいく。そうした選挙CMの中には、相手の欠点を強調したネガティブキャンペーンのものがしばしば見られる。
1964年の大統領選挙ではジョンソン陣営が核戦争を連想させるテレビCMを流し、「ベトナムでの戦闘を終わらせるためには核攻撃の選択肢をちらつかせて相手を萎縮させるべきだ」としばしば公言するゴールドウォーター陣営の支持を大いに揺るがせた(記事1、記事2
、テレビCM動画
)
1988年の大統領選挙ではブッシュ(父)陣営が「デュカキスは殺人犯の一時帰休(Weekend Passes)を認めた。一時帰休を認められた殺人犯のウィリー・ホートンは、一時帰休のときに罪を犯した」と執拗にネガキャンを展開し、さらには刑務所に入ったはずの犯罪者が回転ドアでUターンして再び世の中にやってくることを連想させるテレビCMを繰り返し流し、デュカキス陣営に大打撃を与えた。(記事1
、記事2
、テレビCM動画1
、テレビCM動画2
)
テレビ討論会が開かれ、両者の白熱した応酬が全国生中継される。
会場は大学を使うことが多い。有力テレビ局の熟練司会者が巧みに進行役を果たす。9~10月に3回実施されるケースが多い。
2016年大統領選挙でのテレビ討論会の開催日程は以下の通りだった。
日時 | 場所 | 日本語訳のある動画リンク |
9月26日 | ニューヨーク州ホフストラ大学![]() |
リンク![]() |
10月9日 | ミズーリ州セントルイス・ワシントン大学![]() |
リンク![]() |
10月29日 | ネヴァダ州ネヴァダ大学![]() |
リンク![]() |
また、副大統領候補同士の討論会も1回開かれるのが恒例である。こちらでも丁々発止のやりとりが交わされ、両候補が己の資質をしっかりアピールする。2016年は10月4日にヴァージニア州ロングウッド大学で開催された(動画
)。
選挙戦終盤の10月になって、両陣営がひた隠しにしていたスキャンダルが露呈し、選挙情勢に大きな影響を与えることがある。これをオクトーバー・サプライズ(October Surprise)という。
2016年10月8日、有力紙ワシントン・ポストは2005年にトランプ候補が猥談した動画を公開し、トランプ陣営に打撃を与えた(記事)。共和党の有力者が続々とトランプを批判し、中には支持を撤回するものも出て、トランプは自身の発言について謝罪することになった。
2016年10月28日、ジェームズ・コミーFBI長官は「ヒラリー・クリントンの私用メールアドレス問題について、調査を再開する」といきなり発言し、ヒラリーの支持率を急落させた。
このように、10月は何かが起こるものであり、それゆえ最後の最後まで選挙戦から目が離せない。
11月第1月曜日の属する週の火曜日に投票が行われる。11月2日~8日のうちのどれかになる。これを米国では選挙の日(Election Day)と呼ぶ。
この制度が決まったのは1845年である。当時の米国は農業国であり、農家の有権者が多かった。春や夏は植物が繁茂して農家にとって忙しいので、投票日にするわけにはいかなかった。冬は雪が降って交通が麻痺しやすく、この時期も投票には不向きである。収穫が一通り終わった農閑期で、なおかつ雪が降り始める前の時期というと11月上旬である。このため11月上旬を投票日にすることにした。
火曜日になったのは、先述のスーパーチューズデーの項で述べたとおりである。
11月1日を避けるようにしている。月の初めの1日は企業の決算日と重なって忙しいし、11月1日はキリスト教カトリックが諸聖人の日と定めている。
選挙の日は東海岸から順に投票が行われ、東海岸から順に開票していく。
日本の総選挙なら午後8時に一斉に開票が行われ、午後10時には大勢が判明する。それゆえ関係者も夜更かししなくてよい。
ところがアメリカ合衆国は横に長い国で、西海岸と東海岸の時差は3時間もある。東海岸で開票が終わっても西海岸の開票作業が始まったばかり、となり、大勢が判明するまで長い時間待たされる。接戦になった場合は、東海岸の人たちは深夜まで起きていなければならない。
各陣営の選挙対策本部は東海岸のワシントンやニューヨークに置かれることが多く、全員が夜更かしすることになる。
2016年の大統領選挙では親父の選挙に付き合わされたバロン・トランプ(当時10歳)が眠そうな顔で親父の勝利宣言を聞いていた。この動画
の2分19秒当たりであくびをしている。
11月上旬はサマータイムが終わっているので、日本と米国東海岸の時差は14時間、日本と米国西海岸の時差は17時間。
日本 | ハワイ | アラスカ | 西海岸 | 山岳部 | 中西部 | 東海岸 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
翌日8時 | 13時 | 14時 | 15時 | 16時 | 17時 | 18時 | 東海岸で投票を締め切りはじめる |
翌日10時 | 15時 | 16時 | 17時 | 18時 | 19時 | 20時 | 東海岸大勢判明 |
翌日12時 | 17時 | 18時 | 19時 | 20時 | 21時 | 22時 | 中西部大勢判明 |
翌日14時 | 19時 | 20時 | 21時 | 22時 | 23時 | 24時 | 西海岸大勢判明 |
翌日16時 | 21時 | 22時 | 23時 | 24時 | 1時 | 2時 | 全国で大勢判明 |
日本に住んでいると、朝のニュースで出口調査が流れ、昼のニュースで各地の結果が出始め、夕方のニュースで選挙結果が確定するニュースが流れてくる、という状況になる。見物するにはなかなかちょうど良い時間帯となる。
日本の選挙は、どんなに大差が付いても最後の1票まで集計する。
ところがアメリカ合衆国の各州は大雑把で、差が広がってどちらかの候補が過半数を獲得すると判明したら、集計を打ち切ってしまう。数えていない票を数えもせずにどちらかの候補へ付け足すという、日本では考えられない行動をとることもある。
とはいえ、この合理的な行動のおかげで投票日の当日に投票結果が判明して社会が安定する、と言うこともできる。
※この項の資料・・・記事
有権者は、期日前か選挙当日に投票所へおもむいて投票するか、郵便投票を利用するか、どちらかを選択できる。
2016年の大統領選挙は「投票所へおもむいて投票する人」の割合が圧倒的に高く、郵便投票の利用者が少なかった。このため、投票日当日に大勢を判明させることができた。投票所で行われる投票は、投票用紙が綺麗であり、機械で集計しやすいからである。
2020年の大統領選挙は、コロナ禍に見舞われたこともあって、郵便投票の利用者が記録的に増えた。このため、接戦になった州で集計作業に時間がかかり、2020年11月3日の投票日で数えきれない事態となった。郵便投票を集計するためには、1枚ずつ開封し、投票用紙が折り曲げられているなら投票用紙を広げ、投票用紙に書かれている情報と有権者情報が一致しているかどうか目で確認する。こうした作業を作業員が手作業で行うので、とても時間がかかる。
選挙で大勢が決すると、劣勢な候補者から優勢な候補者に向けて譲歩電話(Concession Phone)という電話が掛けられる。そのあと、優勢な候補者が勝利演説(Victory Speech)を行い、また、劣勢な候補者は譲歩演説(Concession Speech)をする。こうした支持者に向けての声かけが選挙の締めくくりとなる。
選挙権(投票する権利)は、いずれかの州か首都ワシントンD.C.(コロンビア特別区)に住む18歳以上のアメリカ国民のうち、有権者登録をしたものに与えられる。アメリカには戸籍制度がないので、自分で自発的に有権者登録をしなければ選挙権をもらえない。
各州において、有権者登録の制度を実際に決めるのは、州知事(Governor ガヴァナー)である。
首都ワシントンD.C.(コロンビア特別区)において、有権者登録の制度を実際に決めるのは、区長(Mayer メイヤー)である。
ちなみに、投票所の数や位置を決めるのも、州なら州知事であり、ワシントンD.C.なら区長である。
有権者登録の制度や投票所の数を操作して、自分の属する政党が有利になるように小細工する州知事・区長も存在する。これを投票抑圧・投票妨害(voter suppression)という。
投票抑圧は21世紀になっても行われている。代表的な手口を2つほど挙げておこう。
1つは、身分証明の厳格化である。有権者ID法を制定し、「有権者登録するためには写真付きの身分証明書の提示が必要である」と要求する。貧困層は写真付きの身分証明書を取得することが難しいので、投票が難しくなる。貧困層からの支持を多く集めているA政党は、貧困層からの投票が減ってしまう。A政党の敵対政党にとって有利になる。
もう1つは、投票所の削減である。B政党を支持する人の多い地区の投票所を削減する。そうすると、投票所に長蛇の列が出来上がり、投票するだけで何時間も待たねばならなくなる。B政党を支持する人の間で投票をあきらめる人が続出し、B政党の敵対政党にとって有利になる。この手口は2018年のジョージア州における中間選挙で採用されたという(記事)。
被選挙権(立候補する権利)は、35歳以上で14年以上アメリカに住んでいるアメリカ生まれのアメリカ国民に限られる。移民大国ではあるが、アメリカ生まれであることを要求している。
アーノルド・シュワルツェネッガーはオーストリア生まれで21歳の時に渡米、36歳の時に米国籍を取得した。彼はカリフォルニア知事になったが、アメリカ大統領選挙の被選挙権がない。このことを不服そうに語っていたことがある。
選挙人の数は、州が輩出する議員の数と同じである。アメリカ合衆国上院は、1つの州が2議席ずつ輩出する。アメリカ合衆国下院は、人口に応じて議席数を配分し、人口の少ない州は1議席となる。
このため、「各州に割り当てられる選挙人は人口に比例する」と憶えておけば、だいたい合っている。2016年大統領選において最も人口の多いカリフォルニア州の選挙人は55人。最も人口の少ないワイオミング州の選挙人は3人。
アメリカ合衆国上院の定員は100人、アメリカ合衆国下院の定員は435人、という体制が長く続いている。このため、「各州に割り当てられる選挙人は100+435で535人」と計算できる。
アメリカ合衆国には、どこの州にも属していない地域が6つある。首都ワシントンD.C.(コロンビア特別区)、米領サモア、グアム
、北マリアナ諸島
、米領ヴァージン諸島
、プエルトリコ
である。
このうち、首都ワシントンD.C.(コロンビア特別区)は、「最も人口の少ない州」と同格に位置づけられ、選挙人3人を割り当てられる。
米領サモア、グアム、北マリアナ諸島、米領ヴァージン諸島、プエルトリコには、選挙人を割り当てられない。つまり、これらの地域の住民には、大統領選挙に投票する権利がない。
どこの州にも属していない6地域は、選挙の事情が特殊である。上院や下院の記事にも詳しく説明されているが、簡単に表にまとめると以下のようになる。
大統領選挙 | 上院選挙 | 下院選挙 | |
首都ワシントンD.C. | 住民に選挙権があり、選挙人3人が割り当てられる | 住民に選挙権がなく、議席を割り当てられない | 住民に選挙権があるが、それぞれの地域に無議決権議席を1つずつ与えられているだけである |
米領サモア![]() |
住民に選挙権がなく、選挙人が割り当てられない | ||
グアム![]() |
|||
北マリアナ諸島![]() |
|||
米領ヴァージン諸島![]() |
|||
プエルトリコ![]() |
州に割り当てられる選挙人は100+435で535人である。州以外に割り当てられる選挙人はワシントンD.C.の3人である。ゆえに選挙人の総数は538人で、半数は269人、過半数は270人である。
民主党候補と共和党候補が269人ずつ獲得でぴったり並んだ場合、連邦議会で偶発選挙というものを行う。アメリカ合衆国上院では100人の議員がそれぞれ1票ずつ投票権を持ち、副大統領(上院議長を兼務する存在)を選出する。アメリカ合衆国下院では「435人の議員にそれぞれ1票ずつ投票権を与える」ということをせず、州ごとに1票が与えられ、50州だから50票で決選投票となり、大統領を選出する。
アメリカ合衆国下院は、最も人口の少ない州で1人、最も人口の多い州で53人である。2人以上の下院議員を選出する州は、州選出の下院議員達が相談し合って、州として誰に投票するか決める。「ある州で、民主党下院議員が10人、共和党下院議員が10人」となっていたら、すったもんだの大揉めになりそうである
アメリカ合衆国上院で副大統領を選出する投票が50対50で並んだらどうなるか?アメリカ合衆国下院で大統領を選出する投票が25対25で並んだらどうなるか?
まぁ、議員というのは、妥協というのが上手だから、そういう事態にならないものと思われる。
大多数の州で、勝者総取り制(Winner-take-all)を採用している。州の中の票数を数えて、1票でも多ければ、州に割り当てられた選挙人を全て獲得できる。
カリフォルニア州では、民主党の候補の得票数が共和党の候補者の得票を1票でも上回ると、55人の選挙人をまるごと民主党が獲得できるのである。
勝者総取り制によって、「○○州が今回の選挙で支持するのはこの人」と立場を鮮明にすることになる。アメリカ合衆国は州の権限が強く、州ごとの独自性が強い。大統領選挙においても州ごとの一体感を重視したいので、こういう制度が採用されている。
2016年の大統領選挙で勝者総取り制度を採用しなかったのはわずかに2つだけで、ネブラスカ州(2016年の選挙人5人)と、メイン州
(2016年の選挙人4人)である。
2016年のネブラスカ州は、州内の下院選挙区がAとBとCの3つに分かれているので、各選挙区で票を多く稼いだ候補に選挙人を1人ずつ割り当てる。そして、州の得票数が1票でも上回った候補に、選挙人2人を割り当てている。
ネブラスカ州における例を挙げると、次のようになる。
A選挙区で共和党候補が1票でも多かったら選挙人1人獲得、B選挙区で民主党候補が1票でも多かったら選挙人1人獲得。C選挙区で共和党候補が1票でも多かったら選挙人1人獲得。
A選挙区とC選挙区で共和党候補がギリギリの票差で勝利し、B選挙区で民主党候補が地滑り的圧勝をして、州全体の得票数を数えると民主党候補が上回ったとする。その場合は民主党候補が選挙人2人を獲得。共和党候補が選挙人2人、民主党候補が選挙人3人、ということになる。
2016年のメイン州もネブラスカ州と全く同じである。州内の下院選挙区がAとBの2つに分かれているので、各選挙区で票を多く稼いだ候補に選挙人を1人ずつ割り当てる。そして、州の得票数が1票でも上回った候補に、選挙人2人を割り当てている。
2016年大統領選挙でのヒラリー・クリントン民主党候補は、全国での得票率が高いのに、獲得選挙人の数が少なく、それで敗北を喫した。
こうした現象が発生するのは、やはり勝者総取り制のためである。民主党の勢いが強い州で圧倒的に得票して、激戦州で僅かな差で負ける・・・これを重ねた結果、得票数がドナルド・トランプ共和党候補よりも多いのに選挙全体で敗れてしまった。
2000年にも同様の現象が起き、得票率が高いアル・ゴア候補が獲得選挙人の数で下回り、ジョージ・W・ブッシュ候補の勝利を許すことになった。
選挙人は儀式的な存在で、11月上旬の選挙で決まった結果に従って、「12月の第2水曜日の後の最初の月曜日」、つまり12月13日~12月19日のどれかの日に各州で投票し、その投票結果を副大統領に送付する。
なぜ副大統領かというと、副大統領はアメリカ合衆国上院の議長を兼任しているからである。
11月上旬の選挙で決まった結果に従うことを誓約書に書いて約束しているので、選挙人が自分勝手に好きな候補へ投票することはできない。
とはいえ、たまにであるが、誓約を破って選挙結果と異なる候補に投票する選挙人が出てくる。2016年大統領選挙において、テキサス州で誓約違反が発生した。38人の選挙人全員がドナルド・トランプ共和党候補に投票するはずなのに、2人が誓約違反して、ジョン・ケーシック候補に1票、ロン・ポール候補に1票が投じられた。
ハワイ州でも誓約違反が発生し、4人の選挙人全員がヒラリー・クリントン民主党候補に投票するはずが1人の誓約違反者が出て、バーニー・サンダース候補に投票した。
いままでに「数十人が一気に誓約違反して大統領選挙の結果をひっくり返してしまう」といった事件は発生していない。そういうことがあったら、おそらく訴訟を起こされて誓約違反した人が敗訴して、投票をやりなおす事になると思われる。
大統領選挙と同日に行われる議会選挙で、アメリカ合衆国上院とアメリカ合衆国下院の議席数が決まる。大統領選挙の翌年の1月3日に、当選した人たちが正式に上院議員や下院議員になる。
大統領選挙の翌年の1月6日に、連邦議会合同会議が開かれる。この合同会議が大統領選挙の選挙人投票を集計して当選者を宣言する、と憲法修正第12条によって決められている。
合同会議を開くのは下院の議場である。なぜ下院かというと、下院のほうが定員435人で議場が広いからである。上院は定員100人で議場が狭い。
副大統領は上院議長を兼務している。副大統領であり上院議長でもある人物が合同会議の議長を務め、最終的に大統領の当選者を宣言する。
赤い州、青い州、激戦州という選挙用語がある。州ごとの様子を表した言葉である。
赤い州(Red state)とは、共和党の勢いが強く、毎回の選挙でいつも共和党が勝利する州である。共和党のイメージカラーが赤なので、そう呼ばれる。
内陸部の田舎の州や、南部の諸州に赤い州が多い。こうした田舎の州は産業に乏しいので、住民たちの有力な就職先は軍隊である。共和党は伝統的に軍隊に対する予算を手厚くする傾向があるので、田舎の州の住民は共和党支持に傾く傾向がある。
テキサス州やアラスカ州も赤い州である。ただし、テキサス州はヒスパニック系の移民が増えて、民主党支持者が増えてきたので、激戦州の仲間入りをしているという指摘もある。
青い州(Blue state)とは、民主党の勢いが強く、毎回の選挙でいつも民主党が勝利する州である。民主党のイメージカラーが青なので、そう呼ばれる。
西海岸や東海岸といった、移民が真っ先に辿り着くような場所に青い州が多い。
カリフォルニア州やマサチューセッツ州、ニューヨーク州などが典型的な青い州である。
所得の高い人や学歴の高いインテリはリベラルに傾くことが多く、つまりは民主党支持に寄りやすい。カリフォルニア州にはハリウッドがあり、高所得の映画俳優が多い。ニューヨーク州には経済大都市のニューヨークがあり、高所得の有名人が多い。マサチューセッツ州はマサチューセッツ工科大学やハーバード大学などの大学があり、高学歴が多い。このため、これら3州は青い州になる。
他にはシカゴを抱えるイリノイ州、首都ワシントンD.C.(コロンビア特別区)、ハワイ州などが挙がる。
日本語版Wikipediaのこのページは、赤い州と青い州の分布がよく分かる。
激戦州とは、共和党支持者と民主党支持者の数が拮抗しており、選挙のたびに結果が揺れ動く州である。選挙結果が揺れ動くので、スイング・ステート(Swing state)と呼ばれることがある。
赤と青を混ぜた色は紫なので、紫色の州(Purple state)と呼ばれることがある。
主な激戦州は、フロリダ州(2016年選挙の選挙人29人)、ペンシルヴェニア州
(20人)、オハイオ州
(18人)、ミシガン州
(16人)、ノースカロライナ州
(15人)、ヴァージニア州
(13人)、ウィスコンシン州
(10人)。
フロリダ州は2000年の大統領選挙において最後の激戦区となった。11月7日の選挙で大接戦になり、数日経っても集計が終わらず、再集計を巡って大荒れになった。12月12日になって連邦最高裁で判決が出て、それでブッシュ勝利で確定した。
オハイオ州は人種構成や産業分布が全米のそれとよく似ていて、「アメリカの縮図」と言われる。1964年の大統領選挙から2016年の大統領選挙まで、オハイオ州が選んだ候補が全て大統領選挙を勝っている。このジンクスにより、「オハイオを制するものが大統領選挙を制する」とまで言われる[1]。
五大湖周辺に位置していて衰退した製造業の工場を多く抱える一帯をラストベルト(Rust belt 錆び付いた一帯)という。ラストベルトに含まれるウィスコンシン州
、ミシガン州
、オハイオ州
、ペンシルヴェニア州
がいずれも激戦州である。
2024年の選挙において激戦州はペンシルヴェニア(19)、ノースカロライナ(16)、ジョージア(16)、ミシガン(15)、アリゾナ(11)、ウィスコンシン(10)、ネヴァダ(6)の7つとされていた。括弧内の数字はその州に割り当てられた選挙人の数である。つまり、激戦7州に割り当てられた選挙人の合計は93人だった。2024年11月5日の投票ではドナルド・トランプ候補が激戦7州をすべて制し、相手候補よりも獲得選挙人の数を86人上回る勝利を収めた。ちなみに、仮にドナルド・トランプ候補が激戦7州をすべて落としていれば、相手候補よりも獲得選挙人の数を100人下回る敗北になっていたことになる。以上のような考察をすると、2024年の選挙における激戦7州の重要性がよくわかる。
大統領選挙において最も重要となるのは、獲得した選挙人の数である。
以下の表では、勝者と敗者の選挙人の差で色分けして見やすくした。
選挙人の差が99人以下 | 接戦 | 赤色 |
選挙人の差が100~299人 | 差が開いた | 黄色 |
選挙人の差が300人以上 | 地滑り的圧勝 | 青色 |
ちなみに、選挙で圧勝することを英語でlandslide(地滑り)と表現する。選挙で1人の候補者に票が流れていく現象と、こんな風に土砂が流れていく現象が似ているからである。
大統領選勝者 | 大統領党 | 勝者選挙人 | 敗者選挙人 | 選挙人の差 | |
1900年 | マッキンリー | 共和党 | 292 | 155 | 137 |
1904年 | T.ルーズヴェルト | 共和党 | 336 | 140 | 196 |
1908年 | タフト | 共和党 | 321 | 162 | 159 |
1912年 | ウィルソン | 民主党 | 435 | 88 | 347 |
1916年 | ウィルソン | 民主党 | 277 | 254 | 23 |
1920年 | ハーディング | 共和党 | 404 | 127 | 277 |
1924年 | クーリッジ | 共和党 | 382 | 136 | 246 |
1928年 | フーヴァー | 共和党 | 444 | 87 | 357 |
1932年 | F.ルーズヴェルト | 民主党 | 472 | 59 | 413 |
1936年 | F.ルーズヴェルト | 民主党 | 523 | 8 | 515 |
1940年 | F.ルーズヴェルト | 民主党 | 449 | 82 | 367 |
1944年 | F.ルーズヴェルト | 民主党 | 432 | 99 | 333 |
1948年 | トルーマン | 民主党 | 303 | 189 | 114 |
1952年 | アイゼンハワー | 共和党 | 442 | 89 | 353 |
1956年 | アイゼンハワー | 共和党 | 457 | 73 | 384 |
1960年 | ケネディ | 民主党 | 303 | 219 | 84 |
1964年 | ジョンソン | 民主党 | 486 | 52 | 434 |
1968年 | ニクソン | 共和党 | 301 | 191 | 110 |
1972年 | ニクソン | 共和党 | 520 | 17 | 503 |
1976年 | カーター | 民主党 | 297 | 240 | 57 |
1980年 | レーガン | 共和党 | 489 | 49 | 440 |
1984年 | レーガン | 共和党 | 525 | 13 | 512 |
1988年 | ブッシュ(父) | 共和党 | 426 | 111 | 315 |
1992年 | クリントン | 民主党 | 370 | 168 | 202 |
1996年 | クリントン | 民主党 | 379 | 159 | 220 |
2000年 | ブッシュ(子) | 共和党 | 271 | 266 | 5 |
2004年 | ブッシュ(子) | 共和党 | 286 | 251 | 35 |
2008年 | オバマ | 民主党 | 365 | 173 | 192 |
2012年 | オバマ | 民主党 | 332 | 206 | 126 |
2016年 | トランプ | 共和党 | 304 | 227 | 77 |
2020年 | バイデン | 民主党 | 306 | 232 | 74 |
2024年 | トランプ | 共和党 | 312 | 226 | 86 |
赤色の接戦の中でも、1916年と2000年と2004年は大接戦と表現される。選挙人の差が40以内となれば、大接戦と表現するのがふさわしい。選挙人20人程度の中規模の州1つが勝者から敗者へ入れ替われば、大統領選挙全体の勝敗も引っ繰り返ってしまう。
選挙人の差が80程度なら、「接戦ではあるが、ある程度の差を付けた」という表現に落ち着く。選挙人20人程度の中規模の州1つが勝者から敗者へ入れ替わっても、大統領選の結果に変わりが無い。
現職大統領が2期目の当選を目指して立候補した場合、現職大統領が勝つケースが多い。
第二次世界大戦終結以降の大統領選の中で、現職大統領が立候補した選挙の結果を抜き出すとこうなった。
現職大統領 | 挑戦者 | 敗北した現職大統領側のおもな失政 | |
1948年 | トルーマン | デューイ | |
1956年 | アイゼンハワー | スティーヴンソン | |
1964年 | ジョンソン | ゴールドウォーター | |
1972年 | ニクソン | マクガヴァン | |
1976年 | フォード | カーター | ウォーターゲート事件で共和党に負のイメージ |
1980年 | カーター | レーガン | 親米国イランに革命が起こり、強烈な反米国になる |
1984年 | レーガン | モンデール | |
1992年 | ブッシュ(父) | クリントン | 冷戦に勝って湾岸戦争に勝ったのに、不景気が続く |
1996年 | クリントン | ドール | |
2004年 | ブッシュ(子) | ケリー | |
2012年 | オバマ | ロムニー | |
2020年 | トランプ | バイデン | 2020年に入ってから新型コロナウイルスの感染拡大の阻止に失敗し、景気の大減速を招いた。2020年5月に黒人差別に対する風当たりが強くなった |
このように、現職大統領が8勝を挙げているのに対し、挑戦者は4勝に留まっている。挑戦者が勝ったときの政治状況を見てみると、現職大統領側に明白な失態があることがわかる。
「大きな失敗をしていない限り、現職大統領が順当に勝つ」と憶えておいてよいだろう。
大統領選挙と同時に、アメリカ合衆国上院とアメリカ合衆国下院の議会選挙が行われる。
アメリカ合衆国上院100議席の3分の1の約33議席が改選される。アメリカ合衆国下院435議席で、アメリカ合衆国下院435議席の全てが改選される。
大統領選挙に勝利した政党が、その余勢を駆って、議会選挙でも好成績を残すことが多い。アメリカ合衆国中間選挙とは対照的な様子になる。
上院は、各州から2名ずつ代表を出すので定員が必ず偶数になる。それゆえ、大統領の属する政党とそれに反する政党が全く同数になることがある。そういうときは、副大統領が大統領に属する政党に加わって1票を投じて決着を付けることになっている。副大統領は上院議長を兼任しているので、そういう措置をとることができる。
だから、大統領が属する政党は、上院で半数を確保すれば「過半数確保」ということになる。
大統領選勝者 | 大統領党 | 上院における大統領党 | 下院における大統領党 | |
1900年 | マッキンリー | 共和党 | 55 半数45 過半数確保 | 200 過半数179 過半数確保 |
1904年 | T.ルーズヴェルト | 共和党 | 57 半数45 過半数確保 | 251 過半数194 過半数確保 |
1908年 | タフト | 共和党 | 60 半数46 過半数確保 | 219 過半数196 過半数確保 |
1912年 | ウィルソン | 民主党 | 47 半数48 過半数割れ | 291 過半数218 過半数確保 |
1916年 | ウィルソン | 民主党 | 54 半数48 過半数確保 | 214 過半数218 過半数割れ |
1920年 | ハーディング | 共和党 | 59 半数48 過半数確保 | 303 過半数218 過半数確保 |
1924年 | クーリッジ | 共和党 | 54 半数48 過半数確保 | 247 過半数218 過半数確保 |
1928年 | フーヴァー | 共和党 | 53 半数48 過半数確保 | 270 過半数218 過半数確保 |
1932年 | F.ルーズヴェルト | 民主党 | 58 半数48 過半数確保 | 313 過半数218 過半数確保 |
1936年 | F.ルーズヴェルト | 民主党 | 75 半数48 過半数確保 | 334 過半数218 過半数確保 |
1940年 | F.ルーズヴェルト | 民主党 | 66 半数48 過半数確保 | 267 過半数218 過半数確保 |
1944年 | F.ルーズヴェルト | 民主党 | 57 半数48 過半数確保 | 244 過半数218 過半数確保 |
1948年 | トルーマン | 民主党 | 54 半数48 過半数確保 | 263 過半数218 過半数確保 |
1952年 | アイゼンハワー | 共和党 | 49 半数48 過半数確保 | 221 過半数218 過半数確保 |
1956年 | アイゼンハワー | 共和党 | 47 半数48 過半数割れ | 201 過半数218 過半数割れ |
1960年 | ケネディ | 民主党 | 64 半数50 過半数確保 | 262 過半数219 過半数確保 |
1964年 | ジョンソン | 民主党 | 68 半数50 過半数確保 | 295 過半数218 過半数確保 |
1968年 | ニクソン | 共和党 | 42 半数50 過半数割れ | 192 過半数218 過半数割れ |
1972年 | ニクソン | 共和党 | 42 半数50 過半数割れ | 192 過半数218 過半数割れ |
1976年 | カーター | 民主党 | 61 半数50 過半数確保 | 292 過半数218 過半数確保 |
1980年 | レーガン | 共和党 | 53 半数50 過半数確保 | 191 過半数218 過半数割れ |
1984年 | レーガン | 共和党 | 53 半数50 過半数確保 | 181 過半数218 過半数割れ |
1988年 | ブッシュ(父) | 共和党 | 45 半数50 過半数割れ | 175 過半数218 過半数割れ |
1992年 | クリントン | 民主党 | 57 半数50 過半数確保 | 259 過半数218 過半数確保 |
1996年 | クリントン | 民主党 | 45 半数50 過半数割れ | 208 過半数218 過半数割れ |
2000年 | ブッシュ(子) | 共和党 | 50 半数50 過半数確保 | 222 過半数218 過半数確保 |
2004年 | ブッシュ(子) | 共和党 | 55 半数50 過半数確保 | 232 過半数218 過半数確保 |
2008年 | オバマ | 民主党 | 59 半数50 過半数確保 | 257 過半数218 過半数確保 |
2012年 | オバマ | 民主党 | 55 半数50 過半数確保 | 201 過半数218 過半数割れ |
2016年 | トランプ | 共和党 | 52 半数50 過半数確保 | 241 過半数218 過半数確保 |
2020年 | バイデン | 民主党 | 50 半数50 過半数確保 | 222 過半数218 過半数確保 |
2024年 | トランプ | 共和党 | 53 半数50 過半数確保 | 220 過半数218 過半数確保 |
1952年以前と2000年以降は大統領選、上院選、下院選の3つで同時に勝利を収めるケースが多い。
1956年から1996年までは大統領選挙を勝っても議会選挙で敗北するケースが多かった。大統領選を勝っても上院・下院の両方を落としてしまうケースが5回も発生している。
大統領選勝者 | 大統領党 | 上院における大統領党 | 下院における大統領党 | |
1900年 | マッキンリー | 共和党 | 51→55 +4 | 187→200 +13 |
1904年 | T.ルーズヴェルト | 共和党 | 57→57 増減無し | 206→251 +45 |
1908年 | タフト | 共和党 | 60→60 増減無し | 223→219 -4 |
1912年 | ウィルソン | 民主党 | 42→47 +5 | 227→291 +64 |
1916年 | ウィルソン | 民主党 | 56→54 -2 | 230→214 -16 |
1920年 | ハーディング | 共和党 | 49→59 +10 | 240→303 +63 |
1924年 | クーリッジ | 共和党 | 53→54 +1 | 225→247 +22 |
1928年 | フーヴァー | 共和党 | 49→53 +4 | 238→270 +32 |
1932年 | F.ルーズヴェルト | 民主党 | 47→58 +11 | 216→313 +97 |
1936年 | F.ルーズヴェルト | 民主党 | 69→75 +6 | 322→334 +12 |
1940年 | F.ルーズヴェルト | 民主党 | 69→66 -3 | 262→267 +5 |
1944年 | F.ルーズヴェルト | 民主党 | 57→57 増減無し | 222→244 +22 |
1948年 | トルーマン | 民主党 | 45→54 +9 | 188→263 +75 |
1952年 | アイゼンハワー | 共和党 | 47→49 +2 | 199→221 +22 |
1956年 | アイゼンハワー | 共和党 | 47→47 増減無し | 203→201 -2 |
1960年 | ケネディ | 民主党 | 64→64 増減無し | 283→262 -21 |
1964年 | ジョンソン | 民主党 | 68→68 増減無し | 258→295 +37 |
1968年 | ニクソン | 共和党 | 36→42 +6 | 187→192 +5 |
1972年 | ニクソン | 共和党 | 44→42 -2 | 180→192 +12 |
1976年 | カーター | 民主党 | 61→61 増減無し | 291→292 +1 |
1980年 | レーガン | 共和党 | 41→53 +12 | 157→191 +34 |
1984年 | レーガン | 共和党 | 54→53 -1 | 165→181 +16 |
1988年 | ブッシュ(父) | 共和党 | 45→45 増減無し | 177→175 -2 |
1992年 | クリントン | 民主党 | 56→57 +1 | 268→259 -9 |
1996年 | クリントン | 民主党 | 48→45 -3 | 205→208 +3 |
2000年 | ブッシュ(子) | 共和党 | 55→50 -5 | 223→222 -1 |
2004年 | ブッシュ(子) | 共和党 | 51→55 +4 | 229→232 +3 |
2008年 | オバマ | 民主党 | 51→59 +8 | 233→257 +24 |
2012年 | オバマ | 民主党 | 53→55 +2 | 193→201 +8 |
2016年 | トランプ | 共和党 | 54→52 -2 | 247→241 -6 |
2020年 | バイデン | 民主党 | 47→50 +3 | 235→222 -13 |
2024年 | トランプ | 共和党 | 49→53 +4 | 222→220 -2 |
大統領の属する政党の好調ぶりが目立つ。下院選で元気よく議席を伸ばすケースが多い。上院選でも議席を増加させるか、議席微減に食い止めるかのどちらかが多い。
アメリカ合衆国中間選挙の記事を参照のこと。
掲示板
169 ななしのよっしん
2025/01/24(金) 14:08:46 ID: SKQbrW/4Fg
いっちゃあ悪いが「世界最大の民主主義国家」を謳ってる割に、アメリカの選挙システムは後進国以上の悪さだよな
代議員システムのおかげで、クリントン氏みたいに総得票数は勝ってるのに選挙では負けたり、選挙人が別の人に入れたり、政治的な事情でワシントン市民の連邦議会選の投票権がなかったり
奇跡的にゲームバランスが取れてるだけで、国が違えば革命が起きてそうな古いシステム
170 ななしのよっしん
2025/01/24(金) 14:10:50 ID: pq/N9HAXnD
かといって選挙人システムがなかったら田舎の州の意見が容れられにくくなってそれこそ反動化しかねないからな
171 ななしのよっしん
2025/02/09(日) 10:07:23 ID: ZVb99ZEphx
合衆国と州の役割分担がちゃんとしてれば問題ない
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最終更新:2025/03/26(水) 11:00
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