カムイサウルス 単語

カムイサウルス

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分類
鳥脚亜目
ハドロサウルス科
ハドロサウルス亜科
エドモントサウルス族
カムイサウルス

カムイサウルスとは、中生代白亜紀後期の恐竜である。通称むかわ竜。

概要

白亜紀後期に棲息していたハドロサウルス科の草食恐竜。北海道むかわ町でほぼ完全な全身骨格が発見された。

体長8メートル、上腕骨と大腿骨からの推定体重は二足歩行の場合4トン、四足歩行の場合5.3トン。

発見と命名、展示

※人物の敬称略、役職などは当時のもの。

2003年4月に穂別町(現むかわ町)で化石愛好家の堀田良幸が散策中に崖に化石らしきものが見えているのを発見した。 すぐに知り合いの穂別町立博物館(現むかわ町穂別博物館)学芸員の櫻井和彦に連絡し一緒に発掘、更に周辺も調査した結果いくつか同じような化石を含む岩を発見した。

これが最初のカムイサウルス化石の発見だったのだが当時はまだその重要性に気付かれていない。

堀田の発見した化石は穂別町立博物館に寄贈されることになったが首長竜(恐竜ではない)の尾椎骨と判断され詳しい調査は後回しにされることになった。 これはこの地域では既に首長竜の化石は多数発見されていたことと、陸から離れた沖合で形成された地層(海成層)であったため陸上の恐竜化石が産出するとは考えにくかったためである。

この化石が再び日の目を見ることになったのは2010年の事、各地の博物館の収蔵庫で未調査のままになっている首長竜の調査を行っていた東京学芸大学准教授の佐藤たまきが穂別博物館を訪れた。 佐藤は穂別博物館の首長竜化石を調査していく中で2003年に堀田の発見した化石に興味を引かれ化石から岩を取り除くクリーニング作業を行った。 すると明らかに首長竜ではなく恐竜の特徴が現れた。このことを学芸員の櫻井に伝えると櫻井は小さくガッツポーズしたという。

櫻井は恐竜化石の専門家である北海道大学総合博物館准教授の小林快次に鑑定を依頼した。 小林はメールで送られてきた化石の画像を一目見て恐竜化石であることを確信、すぐに返信し博物館で実際に化石を確認することにした。実物化石を確認した小林は恐竜であると判断するとともに博物館スタッフに尋ねた―「続きはどこですか?」

恐竜化石の発見だけでも大発見であるが小林は保存状態と海成層から発見されたことから尻尾だけでなく他の部位、さらには全身骨格残っている可能性が高いと考えた。そのことを確かめるため小林は自ら化石発見現場を調査を行い2012年に新たな恐竜化石を発見した。それも既に発見されている尾椎に続く胴体側の尾椎であった。これは崖側に全身骨格が残されている可能性が非常に高いことを意味した。

全身骨格が発見できることを確信した小林らだが予想される全長は7-8メートルと大規模な発掘作業になることが予想されたことからむかわ町の支援を求めた。恐竜の全身骨格発見となれば大発見だが町の反応は当初いまひとつだった。どうも既に町のシンボルとなっていた首長竜(繰り返すが恐竜ではない)と同じようなものと受け取られたらしい。それでも説得により町から6000万円の予算を取り付け2013年と2014年の夏に計6トンの骨化石入り岩石を採集した。

2016年にむかわ町はこの恐竜の通称を「むかわ竜」と命名し、2017年に全身骨格が公開されると大きく注目された。なお、旧穂別町で発見されていながら「むかわ竜」を通称とすることに再考を求める声も上がっていた。

2019年に全身骨格が復元され、更に新種であることが判明し学名は「カムイサウルス・ジャポニクスKamuysaurus japonicus)」と命名された。「カムイ」とはアイヌ語で神を意味する単語で、学名の意味は「日本の神のトカゲ」となる。

全身復元骨格は2019年6月にむかわ町で一般公開された後、7月から10月に国立科学博物館の恐竜博2019で展示された。その後むかわ町穂別博物館で実物化石の一部が展示されているが全身の復元骨格や実物骨格は展示されていない。これは博物館に展示スペースが足りないためで、展示のための新館建設も計画されていたが2018年の北海道胆振東部地震の影響で計画は保留中。

カムイサウルス(むかわ竜)に関する年表

  • 2003年4月9日、穂別町(当時)の化石愛好家の堀田良幸が散歩中に化石を見つける。その化石は当時は首長竜(恐竜ではない)の化石と判断され詳しく調査されないまま穂別町立博物館(当時)の収蔵庫に収蔵される。
  • 2010年から2011年、東京学芸大学の首長竜の専門家の佐藤たまきが穂別博物館の化石を調査したところ2003年に発見された化石は首長竜ではなく恐竜の骨であることが判明。北海道大学の恐竜の専門家の小林快次に鑑定を依頼。
  • 2013年7月17日、むかわ町穂別でハドロサウルス科恐竜の化石が確認されたことが発表される。[1]
  • 2013年から2014年にかけて本格的な発掘調査を行い、全身骨格が埋蔵されていることが判明。[2][3]
  • 2016年12月3日、むかわ町はこの恐竜の通称(学術的に正式な名称ではない)を「むかわ竜」と命名することを発表する。[4]
  • 2017年4月28日、この時点で全身の5割を超える骨格が保存されていることが判明し、クリーニング作業が完了した分の全身骨格が公開される。[5]
  • 2018年9月5日、化石のクリーニング作業が完了し骨の個数で全体の6割、体積で8割を超える骨格が保存されていたことを発表、全身骨格が公開される。[6]
  • 2019年4月17日、発見された骨格に基づいた全身復元骨格が発表される。[7]
  • 2019年9月6日、新種であることが判明し「カムイサウルス・ジャポニクス(Kamuysaurus japonicus)」と学名が命名された。[8]

特徴

  • 前あしは華奢で細い。
  • 背骨(胴椎骨)の上に伸びる突起(神経棘)が前傾している。
  • ハドロサウルス科の恐竜には特徴的なトサカを持つ種も多いがカムイサウルスはトサカを主に形成する鼻骨が見つかっていないためトサカの有無は不明。しかし鼻骨と接続する前頭骨は発見されていてその形状が板状のトサカを持つブラキロフォサウルスと類似していることからカムイサウルにも板状のトサカがあったのではないかとも推測されている。
  • 全身骨格が発見された個体は少なくとも9歳以上の成体で恐らく12歳以上だった。
  • 海成層で発見されたことから沿岸部に棲息していたことが示唆される。

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関連リンク

関連項目

  • 恐竜
  • ニッポノサウルス(戦前に日本領だった樺太で発見されたハドロサウルス科の恐竜)
  • 北海道
    • むかわ町

脚注

  1. *むかわ町穂別から恐竜化石を発見-ハドロサウルス科恐竜かexit
  2. *平成 25 年度恐竜発掘成果報告-むかわ町穂別から恐竜全身骨格化石を確認exit
  3. *むかわ町穂別産恐竜の頭骨一部を発見exit
  4. *ホッピーだより No. 386 - むかわ町exit
  5. *国内最大の恐竜全身骨格を発見(むかわ竜)exit
  6. *むかわ町穂別産“むかわ竜”の全体像が明らかに~骨化石を岩から取り出すクリーニング作業が終了~exit
  7. *むかわ町穂別産“むかわ竜”全身復元骨格が完成! ~むかわ竜,ついに立ち上がる~exit
  8. *むかわ竜を新属新種の恐竜として 「カムイサウルス・ジャポニクス(Kamuysaurus japonicus)」と命名 〜ハドロサウルス科の起源を示唆〜exit
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