クリエとは、和歌山大学にある学生自主創造科学センターの通称である。
1.趣旨・目的
1.学生の自主性・創造性の開拓
学生の自主性,創造性,独創性を開拓することや,構想力と実行力があり,先導的活動ができ,国際的に通用する人材を育成することが要望されています.しかし,学生の勉学意欲の減退,学力不足,大学のレジャーランド化,若者の非常識な行動が問題となっています.また,理工系離れが問題となっています. そのため,既成の教育の枠組みを越え,新たな人材養成や,科学技術教育の方法を創出する必要があります.
2.大学の個性化
一方,大学の個性化が求められています.他大学にない和歌山大学の特徴として,学生にとって魅力ある大学としての基盤整備を急ぐ必要があります.そこで,学生の活動を主体とする日本で最初のセンターを設置することにより,学生とともに大学の活性化を図る必要があります.とくに,大学入学試験の偏差値に縛られない学生個人の多様な能力を重視し,自主的に物事に取り組む学生や科学好きな学生を育て,その能力を開発します.そのために,学部の枠を越えた全学的な取り組みにより,学生のもつ能力を最大限発揮し,世界的水準の教育研究ができる組織や施設が必要です
3.地域社会との連携
大学の成果は社会とくに地域社会に役に立たねばなりません.地域社会に役立つ活動も行います.特に,理工系離れを防ぐには,大学が教育面でも積極的に地域社会との交流を図る必要があります.和歌山大学では,科学技術の面白さを体験させ,自主的創造的能力を高めるように,小中学生等を対象とした体験学習会やフレンドシップ事業や「おもしろ科学まつり」などの主催や支援を行なってきました.これをより積極的に進めるために,小中高校,企業,学生,教員,自治体,ボランティアを包含した活動と連携を行い,地元に貢献するための拠点として本センターが必要です.また,本センターの活動に対して支援を受けるためにも地域との連携が重要です.
2.事業内容
1.「自主演習」科目の開設
学生の自主性や創造性を喚起するために,学生の自発による知的,創造的,システム思考的な活動や努力に対して評価を与えることを目的として,システム工学部では,平成8年度の学部1期生入学時より「システム工学自主演習」という科目を設けています.他の大学にないユニークな新しい試みです.文部省でもよい評価を受けており,テレビや新聞で取り上げられ,全国からも注目されています.すでに1000件以上の履修届が出されています.
平成13年度より,基礎教育科目の総合科目として「自主演習」の科目が開設されます.履修ができるのは3年生までの学生です.教育学部では「教育学部自主演習」が専門科目として開設されます.システム工学部では従来からの「システム工学自主演習」が実施されます.センターでは,これらについての情報提供も行います.いずれも1セメスター1単位で,1セメスターにこれらのうち1科目しか履修できません.基礎教育科目としては2単位までです.教育学部では,「自主演習」と「教育学部自主演習」がそれぞれ別々に2単位まで認められます.経済学部では「自主演習」のみ2単位まで認められます.システム工学部では「自主演習」と「システム工学自主演習」を含めて6単位まで認められます.履修届は通常の科目と別に指導教員の承認を得て,別の様式で提出します.提出締め切り日も通常の科目よりは遅いです.
2.指導者および単位認定
指導教員としては,ボランティアの教員があたっています.自主演習(とくに断りがないかぎり,基礎教育科目と専門科目を含む)を希望する学生が指導を受けたい教員(同じ学部や学科でなくてもよい)に直接交渉し,その教員が認めれば履修できます.あるいは学生から申し出がなくても,教員が学生の自主性創造性を喚起するためのテーマを提示し,自主的に実行する学生を募集することもできます.センターに登録されたボランティアの教員およびその指導分野については,掲示あるいはホームページの形で公開します.指導教員が決定した学生は履修登録を行ない,自主演習を実行します.基礎教育科目とするか専門科目とするかは,指導教員の判断となります.基本的には,自学部の専門と関係あるテーマで当該学部の教員の指導を受ける場合は専門科目,自学部の専門と関係がないあるいは他学部の学生とチームを組んだり,他学部の教員の指導を受ける場合は,基礎教育科目となります.
活動そのものは,基本的に学生の自主的活動です.そのため教員のかかわり方はさまざまです.もっとも簡単なものは,具体的指導はなく,最後に提出する報告書や作品だけで採点することもあるかもしれません.目標の設定,勉強法,具体的活動法,問題点と克服法,報告書の書き方,コンテストへの参加など丁寧な指導をすることもあります.基本的には30時間程度の実働を伴い,報告書や作品を提出したものに対して採点し,その成績が60点以上の場合,単位取得となります.報告書や作品は公開することもあります.
3.活動場所
省令施設としての最大のメリットは新たに建物や設備が確保できることです.しかし,学内センターとして実施するためには,新たな場所は確保できません.現状のシステム工学自主演習では,学生自身あるいは指導教員が見つけたそれぞれ適当な場所(自宅や研究室など)で活動を行っています.とりあえずはこのスタイルを続けますが,空き教室や現在計画中の総合研究棟にも場所を確保することを考えています.
4.活動資金
この科目の活動費は原則として実施する学生の負担です.しかし,学生の負担だけでは,実施をあきらめざるを得なくなる場合もあります.そこで,簡単な活動ができる事務的経費や共通の簡単な設備機器などは学長裁量経費をお願いし,具体的活動のための設備機器の設置や材料費などは,外部資金の獲得を目指し,企業などの寄付をお願いすることを計画しています.
この自主演習の実施者の資金援助や発表会や表彰を行うために,現在,企業主催によるコンテストが行われています.和歌山県下の高専や高校の学生の成果も含めたコンテストとなり,テレビで放送されるため,学生からの人気も高いものとなっています.このような活動ももっと範囲を広げて実施したいと思っています.
5.地域社会への貢献
学生自主創造科学センターは地域社会からの要求にも合ったものでなければなりません.和歌山には伝統あるものづくりの歴史がありますが,IT革命の成果を早急に取り入れる必要もあります.中小企業が多い和歌山においては,IT革命に対応でき,創造性あるものづくりができる人材の育成が緊要の課題と考えられます.しかし,最近の若者の理工系離れはものづくりの伝統を断ち切ってしまう恐れがあります.
理工系離れを防ぐには,大学が自分の大学の学生だけを相手にした活動を行っていても成果が上がりません.大学でできないことは地域社会からの応援を得る必要があります.逆に,地域社会において大学が貢献できることは大学が積極的に地域との交流を図る必要があります.とくに教育面では大学が貢献できます.
前述のように,いままで,和歌山大学では,小中高校生等を対象とした体験学習会やフレンドシップ事業や「おもしろ科学まつり」などの主催や支援を行なってきました.これをより積極的に進め,小中高校,企業,学生,教員,自治体,ボランティアを包含した活動と幅広い連携を行い,地元に貢献します.また,このような活動に対して地域の理解と支援を受けるためにも地域との連携を行います.さらに地元から提案されたテーマも受け入れて,学生が取り組めるようにします.
6.活動組織
学内センターとしては,場所や指導者や予算を十分確保することは困難なため,活動の範囲は限られてきますが,省令施設として計画している部分でも学内センターとして実施可能なことは積極的に進めていきます.一般的活動は,学生自主創造科学センター運営委員会が実施運営していきます.地域社会との連携活動(広報,支援依頼,公開体験学習会など)も積極的に行います.
自主演習については,全教員に調査票を配り,意見を集め,ボランティアの指導教員として参加できる教員の名前や連絡先や担当分野を取りまとめ,掲示あるいはホームページで公開します.学生の履修届は,各学部で行います.指導時間としては,基本的には教員のオフィスアワーとし,具体的には学生と指導教員の話し合いで決めていただきます.重点テーマについては専門部会を設けます.
3.省令施設としての計画
以下の計画は文部省に認められた省令施設となったときに行う予定ですが,学内センターとして前もって実行できることは推進していきます.とくに対外的支援を得る部分は,早期に協力を得る活動をしていく必要があります.
1.一般テーマの実施(一般的環境の整備)
学生の自主的・創造的活動等が基本的にできる一般的環境を整備します.そのために,活動拠点となる建物,設備,指導者を用意します.具体的には,工作室,展示室,アトリエ,実験研究室,計測分析室,ベンチャービジネス支援室,ボランティア支援室,プレゼンテーションルームなど学生が集まってそこで種々の活動ができる大きな建物を用意します.ここで,構想を練り,同志を集め,情報を得ます.さらに,設計,加工,組立,運転などを行い,具体的にモノを作り,実施結果を発表します.付属設備として,コンピュータ,工作機械,計測装置,解析分析装置などを用意します.
これらの活動を行うためには,大学の教員だけでは,研究指導はできても,具体的な工作機械に詳しい教員などは少なく,あまり多くの指導ができません.企業の現場で活躍されているあるいは退職された技術者などの指導支援があれば,高度な技術を使って安全に加工などが可能となります.また,工場で使っている最新の機械でなくても,教育用には1世代古い工作機械でも使用できる場合が多いです.このような機械,技術,資材,資金の提供を企業などにお願いしたいと考えています.
逆に,企業で抱えている問題点で,企業で解決させる時間がとれなくても,学生が実行することにより解決するような問題も多くあります.このような問題を学生や教員に提案して,学生や教員の希望者と共同研究として解決していくことも可能です.
2.重点テーマの実施(高度な活動ができるための設備)
和歌山大学としての特色があり,その時代の学生や社会が求めている重点的なテーマを時限的に5年程度継続させながら,プロジェクトとして実施します.これにより,個々の学生が独立して短期で実施したテーマよりも高度な成果が得られると考えています.最初のテーマとしては「環境センシング」,「若者の理工系離れ対策」,「ベンチャービジネス支援」を取り上げます.これらのための高度な設備機器も用意し,学生,教員,小中高校,自治体,企業等を含めた教育研究活動を行ないます.
3.指導者の確保と新しい教育法の創出
指導者としては,和歌山大学の各学部の教員が学部の枠を越えて指導教員として指導します.学生の活動に対して,「自主演習」科目として単位を与えます.さらに,全体の管理運営と研究と講義を行なう専任教員や客員教員,具体的指導の補助をするティーチングアシスタントや外部のボランティアを置きます.とくに外部のボランティアとしては,小中高校教員や地元企業や定年退職者などに支援をお願いしたいと考えています.
また,これらの活動は従来にない教育法であり,この活動を通じて,実社会の仕組みを知り,人との交流ができ,自主性・創造性のある活動ができる新たな人材育成法や科学技術教育法を創出することが可能です.これらの教育法やその普及についても研究します.
4.成果
グローバル化時代を担う人材の質の向上に向けた教育の充実も求められており,本センターでも国際化を進めるため,海外からの学生を大学におけるインターンシップとして受け入れ,日本人学生とのプロジェクトをつくることを考えています.
ぜひ,学生にとって実りがあり,大学の個性化につながり,地元地域にも貢献できるよい計画となるよう皆さんのご意見をお寄せ下さい.
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最終更新:2024/12/23(月) 13:00
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